【CEATEC JAPAN 2011】
災害対策用の蓄電池、国内大手家電メーカーから続々登場
映像・情報・通信機器の総合展示会「CEATEC JAPAN(シーテックジャパン) 2011」が、千葉県千葉市の幕張メッセで開幕した。開催日程は10月4日~10月8日の5日間。一般公開日は10月5日~8日で、入場料は1,000円だが、事前登録を行なうことで無料となる。最終日の土曜日は無料。
家電Watchでは、生活家電やエネルギー製品に絞ってレポートをお届けする。
■日立、太陽光発電と連携する家庭用蓄電システムを10月発売
2011年は、東日本大震災による電力不足や、台風による停電など、エネルギーそのものの根本を揺るがす災害が発生した。この状況を反映し、国内家電メーカーのブースでは、例年のCEATECではあまり見られない、蓄電池の姿が多数見られた。
日立の家庭向け蓄電システム「enetus(エネタス) ESK-I03B08-A」は10月下旬発売予定 |
国内大手家電メーカーの中で唯一、家庭向けとして年内の発売が決定しているのが、日立の蓄電システム「enetus(エネタス) ESK-I03B08-A」だ。発売は10月下旬で、福岡県の正興電機製作所が製造し、日立グループの日立コンシューマ・マーケティングが販売する。希望小売価格は210万円。
エネタスは鉛電池を電源とする蓄電池だが、分電盤に直接接続できる点が特徴。停電時にはエネタスが蓄えた電気を分電盤から送るため、自立発電用のコンセントにわざわざ繋ぎ変える必要がなく、普段の暮らしとまったく同じ電気の使い方ができる。
エネタスの容量は7.8kWhで、平時はそのうち5.4kWhが利用できる。エネタスに5kWhの電気が貯まっている場合、消費電力200Wのエアコン、100Wの照明、200Wの冷蔵庫を合計10時間使用できるという。
電気の充電は、深夜電力を使用。電力需要のピーク時には、蓄えた電気を使うことで電力使用量が抑制できるという。
さらに、太陽光発電システムとの連携も可能。長時間の停電時には自立運転に切り替えることで、太陽光で発電した電気を本システムに充電できる。また、エネタスに蓄えた電気を使用することで、太陽光発電の売電量を増やす「放電運転モード」も備えている。
本体サイズは1,200×300×1,370mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約500kg。蓄電池総容量は7.8kWh。鉛電池は日立グループの新神戸電機による「長寿命LL形鉛蓄電池」を使用する。同社では、介護が必要な人がいる家庭や、避難所となる公民館などにお勧めとしている。
停電時には、太陽光で発電した電気をエネタスに貯め、その電気で家庭の電気を使用する「自立運転モード」が使える | エネタスの電気をメインで使うことで、売電量を増やす「放電運転モード」もある | 放電モード中に電気を使い過ぎたら、電力会社からの電気を使う「系統補充運転モード」に変わる |
このほか、リチウムイオンの蓄電システムも参考出品された。本体サイズは700×220×1,600mm(同)と、スリムで背の高い点が特徴。蓄電池総容量は約4kWh。
なお日立では、電気自動車、プラグインハイブリッド車の充電スタンドの名称も「エネタス」としている。
参考出品のリチウムイオン電池の蓄電システム | 電気自動車用の充電スタンドも「エネタス」という名称で統一する |
■パナソニック、普及価格帯の家庭用蓄電システム。業務用は200V出力も可能
パナソニックの家庭向け蓄電システム |
パナソニックのブースでは、家庭用と業務用の蓄電システムが参考出品として展示された。
家庭用の蓄電システムは、太陽光発電システムと連携して使用する。太陽光発電で電池を充電し、停電時にはパワーコンディショナの自立運転コンセントを経由して、家電製品が使用できる。屋外にも室内にも設置できる。
価格や発売日は未定だが、ブースの説明員によれば「普及価格帯を狙っている」とのこと。
本体サイズは400×635×270mm(同)。蓄電容量は960Wh。最大出力電力は120Wで、消費電力が30Wの照明/テレビ/ラジオ/パソコンを同時に使用した場合、3時間持つという。
業務用の蓄電システムについては、太陽電池連携モデルと通常モデルに分かれる。通常モデルは既に受注を開始しており、分電盤と接続することで、停電時に自動的に運転を切り替えられる。また、本体のAC電源に機器を接続して、直接使用できる。希望小売価格は168万円。電源はリチウムイオン電池。
太陽電池連携タイプは、電力会社から送られる電気と太陽光発電からの双方から直接充電できる。また出力では、3相200V、単相100V/200Vが可能となる。蓄電容量は15kWh、定格出力電力は10kVA。
家庭用リチウムイオン電池モジュールのカットモデル | 200Vも出力できる、太陽電池連携タイプの業務用リチウムイオン蓄電システム | 現在受注を受け付けている、業務用リチウムイオン蓄電システム |
■シャープ、東芝からも蓄電システムが登場
シャープの「スマートパワーコンディショナ用蓄電池」 |
シャープのブースでも、蓄電池と太陽光を組み合わせた蓄電システム「スマートパワーコンディショナ用蓄電池」が公開された。
蓄電池はリチウムイオン電池で、停電時には太陽光発電と蓄電池の両方の出力で、家庭内の電化製品が利用できる。こちらも分電盤の直接接続に対応。参考出品のため、発売日や価格など細かい仕様は未定だが、容量は3kWh~5kWh程度になる模様。
シャープではこのほか、鉛電池による停電・災害時バックアップ電源システムも、参考出品された。こちらは停電時にも使いたい家電製品をあらかじめ蓄電池に接続しておくことで、停電時も家電製品が利用できる。また、太陽光発電システムのパワーコンディショナを自立運転に切り替えれば、電池の充電も可能。電池容量は1.4kWhで、液晶テレビは約14時間、携帯電話は約200台充電できるという。
停電時には蓄電池と太陽光発電の両方の電力を使用 | 鉛電池による停電・災害時バックアップ電源システム | 停電時に使いたい家電製品をあらかじめ接続しておく |
東芝のブースでは、蓄電池と太陽光発電システムを組み合わせた業務用途向け「蓄電池付太陽光発電システム」が参考出品された。
業務用の導入を想定したシステムで、通常は商用電力、または太陽光発電から蓄電池を蓄え、停電時には自動的に照明やエアコンなどに供給する。
同システムの蓄電池には、長いサイクル寿命、急速充電性能、高出力性能などを特徴とする、東芝独自のリチウムイオン電池「SCiB」を採用。店舗のPOSシステムが約3時間半、サーバーネットワークが約5.5時間使用できるという。また太陽電池には、“世界トップレベルの発電力”を謳う240Wの太陽電池モジュールを採用する。
東芝の「電池付太陽光発電システム」 | 電池には東芝独自のリチウムイオン電池「SCiB」を採用 |
(正藤 慶一)
2011年10月4日 18:50