やじうまミニレビュー

ストラップヤネクスト「なりきり無線 for iPhone」

~気分は刑事かSPか? ハンズフリーで通話できる無線型スピーカー兼マイク

やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです

 今思うとなぜこんなグッズの通販ページにたどり着いたのかよく分からない。確か電子部品を探していたんだが……。そして購買意欲という名のアドレナリンが溢れ出し、無意識のうちにポチっとなと「買い物かごに入れる」ボタンを押していた。

 それが、「なりきり無線 for iPhone」だっ!

ストラップヤネクスト「なりきり無線 for iPhone」
「被疑者を追跡中ですが、凶器を所持しています。ボス!至急応援を要請しますっ!」

 タクシー無線のマイクじゃない! 実はこれ、iPhone用の無線機型マイク・スピーカーなのだ。スマホのヘッドフォンジャックに差し込むと、通常は相手の声を聞くスピーカーとして使えるが、自分が話すときはスピーカーをマイクとして使えるというものだ。カッコいい! カッコよすぎる! 無線マニアとしてはどうしても使ってみたい!

 しかし、これをiPhoneユーザーだけに使わせておくのはもったいない。っていうか、こういうネタグッズは、iPhoneユーザーよりもAndroidユーザーにウケるってのがセオリーだ(編注:筆者の妄想です)。筆者のAndroid端末でも使えないかと試行錯誤しつつ、使い勝手を見てみよう。

メーカーストラップヤネクスト
製品名なりきり無線 for iPhone
購入場所Amazon.co.jp
購入価格1,240円

こっ! こいつ……、Androidでも動くぞっ!

 レビューうんぬん以前に、iPhoneで使えてAndroidで使えないって点が一番シャクに障る。iPhoneユーザーばっかり楽しい思いをしやがって! なので、レビューの冒頭で反則ワザだが、まずAndroid端末で使えないかを調べてみた。

 結果からいうと、家にある以下のスマートフォン5台ですんなり使えてしまった。

【筆者が動作確認した機種】
・サムスン「GALAXY TAB SC-01C」(docomo)
・富士通「REGZA Phone T-01D」(docomo)
・富士通モバイルコミュニケーションズ「REGZA Phone IS04」(au)
・Apple iPhone3GS SoftBank

動作確認できたスマートフォン。意外と使えました

 パッケージにもWebにも「iPhone」専用と謳っているのに、あっさり動きすぎでしょ(笑)。ただAndroid端末は、世の中に巨万(ごまん)とある。動かないのは一体どんなケースなのだろうか。

 色々調べて分かったのは、スマートフォンのヘッドフォンジャックには、仕様を決めている団体が2社あるということ。iPhoneはCTIA(Cellular Telephone Industry Association)という団体の仕様に基づいていて、Anddoid系はCTIAとOMTP(Open Mobile Terminal Platform)がゴッチャになっている。具体的に言うと、ヘッドフォンジャック(とマイク側のプラグ)に割り当てられている信号が微妙に違う。

CTIA規格は、iPhoneとAndroidの一部が採用している。左右の音声信号とGNDの間にスピーカーを入れると音が鳴る
OMTP規格は、Androidの一部が採用している。CTIAと比べるとGNDとマイク信号の位置が逆になってる。これが動かない原因

 2つを比べると、ジャック根元側のマイク信号と、「GND」と呼ばれる電池のマイナス側につながっている信号が入れ替わっている。そのため、ガチャコンマイクに対応していないAndroid端末で使うと、音声が出なかったり、マイクで声が拾えないのだ。

 Android端末は、当初はCTIAとOMTPの2つの規格が乱立していたが、国内ではCIMAに集約されつつあるようで、筆者が動作確認した端末も、iPhoneと同じCIMAに準拠したもの。2012年モデルからは、国内で入手できる端末のほとんどがCIMA準拠となっているようなので、「なりきり無線 for iPhone」が使える可能性が高そうだ。

 もし非対応機と言ってしょげることはない。変換ケーブルなるものも発売されている。「カシムラ AE-207」や「XPERIA用ステレオ変換アダプター」でネットを検索すれば、1,000円ほどで購入できる。またヘッドフォンやヘッドセットを購入した際に、Xperia用の変換ケーブルが同梱されていた場合は、それを使ってもOKだ。

 もちろん、基本的にiPhone端末専用品なので、Android端末に使う場合は、メーカー保証外になる。

スマホをポケットに入れておけば、マイクだけで電話が取れる

 さて「なりきり無線 for iPhone」がiPhoneと銘打っているものの、ほとんどのAndroid端末で使えると分かったので、以降で説明する動作は、サムスンのGALAXT TABを使った場合となる。機種によっては、細かな操作方法が異なる場合もあるので注意してほしい。

 本製品でまず驚いたのが、スマホを背広の内ポケットなどに入れておき、SPや警察官のようにマイクをクリップで胸ポケットに指しておくと、どこからどーみても無線機に見えることだ(笑)。周りから見ると、私服警官か警備員にしか見えない。可能であればサングラス併用を推奨したい。

 電源は単四形乾電池2本。アルカリ電池利用時で15時間持つので、しばらくの間はバッテリー切れの心配はないだろう。

マイクの裏にはクリップがついているので、胸ポケットなどに引っ掛けておける
厚さ1cm程度のものでも挟めるので、パッドが入ったリュックの肩ベルトなどでも取り付けOK
右側にあるダイヤルがボリューム兼、電源スイッチ。電源が入るとランプが点灯する
電池は本体裏側に単四形を2本入れる。15時間の連続利用ができる

 電話がかかってくると、スマホ本体から着信音が流れ、マイク上部にあるスイッチを押すと電話が取れる。本体の電源スイッチ兼ボリュームを上げれば、相手の声が聞こえる。

GALAXY TABは、電話がかかってくると自動的に取ってくれた
自動的に電話を取ってくれない場合は、上部のボタンを押すと電話がつながる。通話中に押すと回線を切断できる

無線スタイルで通話を楽しもう!

 そしてここからが、なりきり無線の醍醐味! “無線スタイル”で通話ができるのだ。

 スマートフォンをはじめとした電話全般の通話方式は、相手の声を聞きながら、こちらから話もできる全二重通信(フルデュプレックス)。一方で無線機は、相手が話している間は、こちらから話ができない半二重通信(ハーフデュープレックス)方式となる。通話を終えたら「どうぞ」または「Over」と言って、相手にマイクを返して会話を行なう。このため、無線機のマイクには、必ず大きなボタンがついていて、これを押している間だけ、自分の話しを送信できるようになっている。逆にボタンを押していないときは、相手の声が聞こえるというわけだ。このボタンは、押しながら通話することから、PTT(Press to Talk)ボタンと呼ばれている。

無線機のマイクと言えば、大きくて存在を主張するPTTボタンだ。電話は全二重通信なので、本来は必要ないハズだが――

 なりきり無線にも、もちろんPTTボタンがついている。自分がしゃべるときは、PTTボタンを押しながら通話するのだ!

 繰り返しになるが、スマートフォンの通話は、相手の声を聞きながらこちらの声も送れる全二重通信なので、PTTボタンの必要性はまったくないのだ。しかし、なりきり無線にはPTTボタンがある。なぜかっ! ソレっぽく見えるからだっ!

 なりきり無線におけるPTTボタンは、スピーカから流れる相手の声を強制的にミュート(消音)するスイッチ。便利な全二重通信を、わざわざ不便な半二重通信にしてしまう。要は、スマートフォンを無線のコスプレにするマイクなので、使うときは“なりきり”が肝心。こちらから話すときは、PTTを押して通話後、「どうぞ」または「Over」で返したい。Do you copy?(無線用語で分かった? の意味)と言われたら、I copy!(分かった!)と返す。

 そんなことできない! という恥ずかしがりやさんは、PTTを押さなくてもOK。無線風のマイクの根元についている小さな膨らみが本当のマイクになっているので、そこに向かってしゃべればいい。こうすれば、フツーの電話同様に全二重通信で便利に会話できる。ただ、なりきり無線を買った意味の大半がなくなってしまうが……。

実は無線マイクの下にあるふくらみが、本製品の本当のマイクになっている
本体からは相手の音声が常に聞こえ、マイクは常に自分の音声を拾っている。フツーの電話と同じように話せる(笑)

 通話を終える際も、アマチュア無線風に相手に通話終了を伝えてから電話を切りたい。「73(セブンティースリー)、さようなら」(通信終了の俗語)と告げ、マイク上部ボタンを押して回線を切るのがベストだ。

左でマイクを持つときは、人差し指がPTTにかかるように持つとソレっぽい。逆手というのがポイント♪ タクシーの運転手さんは、マイクがダッシュボードのセンターにあるので、この持ち方が多い
右で持つときは、親指をPTTにかける。お巡りさんは左肩にマイクをつけているので、マイクの位置は顔の左に持ってくる人が多いみたい

 では、以下の動画で実際に通話している様子を見てもらい、カッコよく通話するノウハウを学んでいただきたい。「アホか!コイツは!」という突っ込み大歓迎だ。

担当編集者とのやり取りに使ってみたところ(2分31秒)

 無線のような半二重通信は、できるだけマイクを占有しないように、紋切り型の口調になってしまうのが難点だ。下手をすると相手を怒らせる可能性大なので、大事な得意先との通話はPTTを押さずに普通に会話することをお勧めしたい(当たり前だ)。また通話内容が周囲にダダ漏れなので、通話の秘匿性のかけらもない点にもご注意。

手持ちのスマホが「本当の」ハンズフリーフォンになる

 さてこのまま記事を終えてしまうと、無線愛好家以外には単なるオモチャにしか見えなくなってしまうので、実用的な使い方も示しておこう。

 まずはハンズフリーの通話だ。たいていのスマートフォンには、本体スピーカーから相手の声が聞こえるハンズフリー機能がついている。しかし筆者は、車のダッシュボードにスマートフォンを置いて通話している最中に、左右にハンドルを切ったらスススーと助手席に滑っていったり、ひざの上に置いていてブレーキを踏んだらフロアに落ちてしまったことがある。手に持って通話した瞬間、道路交通法的にはアウトなので、拾うことすら許されない。こうなると相手の声は聞こえないわ、大声で話さなければならないわで、ハンズフリーだがフォン(電話)として機能しなくなる。

 しかし、なりきり無線をつなげば問題解決。スマホをセンターコンソールボックス(運転席と助手席の間のスペース)に置いて、シートベルトにマイクを挟めば、安定した通話ができる。大半の機種はかかってきた電話を自動的に取ってくれるので、着信時に操作する必要もない。これぞハンズフリーフォンだ。

よくあるスマートフォンのハンズフリー通話だと、車のダッシュボードに置いている際に、助手席側まで滑って行ってしまうことがある
シートベルトに取り付ければ、安全運転しながらハンズフリー通話ができる
外部スピーカーとしても使える(ただしモノラル・左音声のみ)として使える。音質はスマートフォンよりちょっといいぐらい

 もう1つの便利な使い方は、音楽プレイヤー用のスピーカーとしても使える点。単なるスピーカーではなく、上部のボタンで再生や一時停止、次にスキップ(ダブルクリック)も可能だ。また手元のボリュームで音量調節もできる。

 なおiPhone(4S以降)では、ボタンを長押しするとSiri(音声コントロール)が起動するが、GALAXY TABは無反応だった。

 無線愛好家は、すでに是が非でも欲しくなっている頃かと思うが、最後にそうでない人へのダメ押しをしておこう。なんとこの製品、価格はたったの1,240円(Amazon.co.jp)なのだ。この価格でハンズフリーマイクを買うのはおろか、外部スピーカーですら買えるかどうかというところ。これを機にハンズフリーフォンの便利さを試してみてはいかがだろうか。

藤山 哲人