やじうまミニレビュー

無印良品「トイレットペーパー型消臭器」

~トイレ空間に馴染む存在感のない消臭器
by 伊達 浩二


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


存在感が強い消臭剤

無印良品「トイレットペーパー型消臭器」

 消臭器や消臭剤というのは難しいもので、そこにそれがあることで、かえって悪臭があるということを感じさせてしまう。悪臭があると誰かが感じて消臭器を置いたということが、かえって悪臭を意識させてしまうのだ。

 だから消臭剤は、できるだけ目立たないでほしいと思うのだが、なぜか色も臭いも強烈なデザインのものが多い。むせるほど強烈な芳香や、ピンクや紫の原色のボトルが主流なのは不思議なことだ。たぶん、消臭剤が目立つことによって、ほら脱臭しているんですよ、という言い訳が成り立つことが大事なのかもしれない。

 そういう一般の消臭剤と、まったく逆の方向を目指しているのが、今回紹介する無印良品の新製品「トイレットペーパー型消臭器」だ。この製品が目指しているのは、存在感のない消臭器だ。そこに消臭器があることが意識されず、悪臭が消えることだけが目的なのだ。


メーカー無印良品
製品名トイレットペーパー型消臭器
販売価格2,500円
購入場所無印良品ネットストア


 しかし、脱臭するための器具には一定の大きさが必要で、目立たなくすることは難しい。この製品は、そこにあって不自然ではないモノを装うことで、それを実現している。つまり、消臭剤が一番使用される、トイレという場所に必要な存在であるトイレットペーパーとよく似たデザインなのだ。

 まさに「木を隠すには森の中」というか、「木の葉に擬態する蝶」のような発想であり、世の中には面白いことを考える人がいるものだ。

トイレットペーパーそっくりの外観

 購入した製品の外箱は、最近の無印良品に多い半透明のパッケージで、中にトイレットペーパーの形をしたものが入っているとは思えない上品さだ。

 取り出した本体は、ごく普通のトイレットペーパーと同じぐらいの大きさで、真っ白ではない微妙な色合いも、再生紙系のトイレットペーパーをよく再現している。

半透明なパッケージ開けるとトイレットペーパー(型脱臭器)が出てくる30cm定規と大きさを比較

 取扱説明書は紙一枚で、電池と消臭剤のセットの仕方が中心だ。なお、取扱説明書によれば、製品の型番は「TP-D01」、製品の供給元は三栄コーポレーションで、デロンギなどとも取引実績のある商社だ。

 消臭器としての構造は簡単で、本体内部のファンで、下から空気を吸い上げ、上へ吹き出す。その途中に消臭剤が置かれていて、空気を脱臭する仕組みだ。消臭剤は、アミノ酸系で無香料のタイプだ。製品ページでは、原理を“アミノ酸が水とともに気化し、悪臭成分とのみ結合、化学変化をおこして無臭化します”としている。全体の構造や機能は、以前レビューした東芝の消臭器「エアリオン・スリム」に似ている。

下から空気を吸い込み、カートリッジに触れたあとで、上に吹き出す本体底面。カバーと本体の隙間から吸気される

 なお、吸気は本体とカバーの隙間から行なわれる。カバーは、本体に固定されていないので、持ち上げるときは、ちょっと注意が必要。これは固定できるようにしてほしかった。

 ファンを回す電池は、単三アルカリ乾電池4本が付属している。常にファンが回っていると電池が消耗するためか、約30秒回転すると、約10分休止する。乾電池と消臭剤の寿命は、ともに約2カ月とされている。つまり、電池の寿命をカートリッジ交換のきっかけにしているわけだ。今回の試用ではエネループを使ったが、交換時期を知るためには、推奨通りにアルカリ乾電池を使った方が良いだろう。交換用の消臭剤カートリッジは400円だ。

中に消臭用のカートリッジを入れる消臭カートリッジからフタを外し、シールを剥がしてからセットする本体底部に単三4本を入れる。ここではエネループを使っているが、アルカリ乾電池が推奨されている

 電池を入れて、本体の底にある電源スイッチを入れてみる。緑色のLEDが常時点灯しており、動作中であることがわかる。このLEDが消えると電池の寿命ということで、電池と消臭剤を交換することになる。ファンが回っている時も動作音は小さく、ごく近くでないと聞こえない。

目立たなさは秀逸

 自宅のトイレに置いてみた。棚に積み上げてあるトイレットペーパーに溶け込んでしまい。まったく目立たない。トイレットペーパーに擬態するというのは、なかなか秀逸なアイデアだ。トイレットペーパーと重ねても、空気の吹き出し口が、中心の穴と同じ位置にあるので、空気の流れには影響しない。よく考えられている。

本物のトイレットペーパーと並べてみたこういう形で重ねて設置することもできる
排気口がトイレットペーパーの中心の穴と同じ大きさなので、重ねても動作に問題はないすっかりトイレットペーパーに溶け込んでいる

 しかし、芳香で悪臭をマスクする通常の消臭剤とちがって、置いてすぐに効果が感じられるわけではない。そういう期待をすると、がっかりしてしまうかもしれない。半日ほど置いておくと、そういえば普段より臭いが少ないかなぁ、というぐらいのさりげなさだ。

 ファンも常時回っているわけではないので、即効性は期待できない。空気の流通量が少なめなので、狭くて密閉度の高いトイレほど有効だと思う。逆に、いつも換気されているトイレや、広いトイレでは有効性がわかりにくいだろう。

 使ってみて、外観も効果も、さりげなく目立たないという性格の製品なのだと思った。そういう意味では、LEDを常時点灯するようにした設計者の気持ちもわかる。このLEDがなければ、存在が忘れられてしまいそうなところがあるのだ。

 劇的な効果を期待すると肩すかしをくらう可能性はあるが、強い存在感のある芳香剤になじめない人や、この発想を愛でて楽しむ余裕がある人にとっては、貴重な製品だ。




2010年 12月 14日   00:00