やじうまミニレビュー

新富士バーナー「レギュレーターストーブ ST-310」

~超小型でハイパワー。カセットガスで燃料切れも心配無用のコンロ
by 藤山 哲人


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


新富士バーナー「レギュレーターストーブ ST-310」

 家電は日進月歩で進化し続けているが、キャンプ用品の進化もまた目覚ましい。新しい便利グッズが次々発売され、小型化と高機能化がどんどん進んでいる。本日、紹介するキャンプ用のガスコンロ「レギュレーターストーブ ST-310」もその1つだ。

 メーカーの新富士バーナーは、その名前からも分かるとおり、燃焼装置「バーナー」専門の会社。工業用のバーナーに始まり、園芸用、そしてキャンプ用まで手がけている会社だ。

 夏キャンプに向けてそろそろ準備をしている人もいるかもしれないが、このバーナーの専門メーカーが作ったアウトドア用ガスコンロは、どのぐらい使えるものなのか。試してみよう。


メーカー新富士バーナー
製品名SOTO レギュレーターストーブ ST-310
希望小売価格6,300円
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格4,480円


豊富なコンロ市場。“手軽にキャンプを楽しみたい”派なら断然カセットガス

 本製品を紹介する前に、キャンプで使用するコンロにはいくつか種類があるのをご存知だろうか。キャンプ用品店のコンロコーナーを見てみると、(1)ホワイトガソリン式、(2)キャンプ用ガス式、(3)カセットコンロ式の3つに分類される。

筆者の愛用するホワイトガソリン式のコンロ。こちらは2つ口(ツーバーナー)のものだが、かなりデカイ

 これまで大火力のコンロと言えば、ホワイトガソリン(一般のガソリンより揮発性の高い燃料)式が主流だった。燃料代も安く、非常時には車のガソリンも使えちゃう汎用性もある。

 しかし、扱いがとにかく面倒なのが弱み。使う前にはポンピングという作業が必要で、ポンプ式の水鉄砲のように、燃料タンク内に圧縮した空気を溜めてやることで、はじめて使えるようになる。さらにいえば、チョークという空気弁の調整や、火が安定するまでに時間がかかる。しかもサイズもデカイし、まるで飛行機のパイロットのカバンのようだ。

これも愛用品の1つ口(シングルバーナー)コンロ。キャンプ用のガスカートリッジを使用する。薄型でアタッシュケース大のツーバーナーコンロもある

 ガソリン式に代わって、ここ数年で主流になってきたのが、キャンプ用のガスカートリッジを使ったコンロだ。カートリッジは専用の容器となっていて、価格も家庭用のカセットガスに比べるとかなり高い。とはいえ、前述のようなガソリン式のデメリットは一切なく、着火してスグに火が安定する点や、2ツ口のツーバーナーでも、アタッシュケースほどの薄さで持ち運べるのが魅力だ。

 さらに、新しく登場したのが、家庭用のカセットコンロで使えるカセットガスを使った製品だ。スーパーで手に入る安いカセットガスが使えるため、価格の面で有利だった。キャンプ用ガス式のデメリットがなくなった、最新のバーナーだ。

 今回紹介するST-310も、このカセットガスを使ったコンロになる。「キャンプは面倒を楽しむもの」という考えであれば、ホワイトガソリン式もアリかもしれないが、「もっとキャンプを手軽に楽しみたい」という場合は、安価なカセットガス式を断然おすすめする。

こちらが今回レビューするキャンプ用コンロ「ST-310」。コンビニでも手に入るカセットコンロのガスが利用できる薄型アタッシュケースサイズのツーバーナータイプもある

小さくたためるコンパクトさと高い安定性を両立

 では、話をST-310に移そう。まずサイズだが、キャンプ用ガスコンロに比べると、ST-310は収納時が驚くほどコンパクト。展開時は15×30cm程度だが、五徳のロックを押して折りたたむと、ヤッケのポケットに収まってしまうほどだ(ヤッケとは、今で言うウィンドブレーカーのこと。古い表現か!?)。

展開は10秒もあればできる。収納も逆の手順を踏むだけ
あとはガセットガスを差し込んで、半回転させてロック針金のつまみが特徴的。その下にある黒い四角いボタンは点火用のスイッチ
カセットガスも含めると、大きさは15×30cmで、高さは11cm程度最もコンパクトにした状態。五徳とバーナー部分は台座から取り外せる(写真左)

小砂利のサイトでも安定して設置できるのが特徴だ

 コンパクトにできる折り畳み式のコンロは、その構造上、強度やガタつきが弱点となりやすい。しかし、ST-310の五徳の足は、クロムメッキされた4mmの鉄製でとても硬く、ロック機構の遊びが少ないのでガタつかない。しかも重心が低く、4本の足で地面に固定するため、小砂利や砂のキャンプ場でも安定性が非常に高いのが特徴。言うなれば、設置場所を選ばないオールマイティーなコンロだ。

 実は、キャンプ用ガスコンロは、ガスの上部にコンロをねじ込むようになっているため、どうしても重心が高くなってしまう。ガスボンベの底で地面に固定するので、平らな芝や土のサイトでなければ、安定しないのだ。つまり砂利や砂サイトでは使いづらい面がある。

 また、頑強性も魅力の1つだ。火力調整用のつまみに至るまで、すべて金属製となっている。かなり手荒に使っても壊れることはないだろう。


カセットガスなのに大火力。風にも強い

 さっそく屋外で使ってみたが、まず気に入ったのが、風に強いという点だ。

 使用した日は、時折、木々がザワ付くほどの風が吹いていた。気象庁のデータによれば風速3.7m/sの風という。時速にすると13km程度なので、自転車でゆっくりサイクリングをしているときに受けるほどの速い風だ。筆者愛用のキャンプ用ガスコンロは、いつも風防を立てて使っているが、これを外して使ってみたところ、あわや火が消えそうになる状態が何回かあった。

 しかしST-310は、風で消えそうになることは1回もなく常に安定した火力を保持していた。恐らくこれは、炎口(コンロのガスが出る穴)のレイアウトの違いによるものだ。ST-310は中央に集中しているため、風を受けても安定した火力を保持できるのだろう。かたや筆者の愛用品は、円を描くようにレイアウトされているため、強い風を受けると風上から徐々に火が消え出し、風が弱まると、風下側から徐々に火が再点火されるという状態が続いた。

ST-310は炎口が中央にまとまっているので風に強い筆者愛用のコンロは炎口が円を描いているので、ナベの火の回りが均一になる一方で、いかんせん風に弱い

 今回の実験では、一般的なカセットガスを使ったが、新富士バーナー製のガス(専用に配合されたガスが充填されている)を使うと、さらにハイパワーで安定した火力が得られるとのことだ。ただ残念ながら、東日本大震災の影響により、同社のガスは品切れとなっており、性能を確認できなかった。しかし、一般的なカセットガスでも十分強力で安定した火力が得られるようだ。

 火力や安定性に関しては抜群の性能を見せるST-310だが、唯一弱点がある。それはナベの中央部分に火力が集中して、焼き物では中央ばかりがコゲてしまう点だ。このコンロにかけられるのは、直径20cm以下のナベやフライパン類。袋のインスタントラーメンがギリギリ調理できるほど小さなものになるが、それでも炎口は直径4cm程度しかないので、火がナベの中央に集中する。

 そのため目玉焼きを作ると、黄身の下は真っ黒にコゲてしまうのに、白身はまだ火の入りが浅い状態となってしまうのだ。煮炊きをするぶんには問題ないが、焼き物をする場合は、フライパンの位置をこまめにズラして全体に火を行き渡らせるような工夫が必要になる。

目玉焼きを作ってみたが、白身はまだ固まっていないのにコゲ出したー!目玉焼きを裏返すと、黄身の部分はコゲてフライパンにこびりついてしまった。白身はまだ固まってない部分があるのに……

火力は筆者愛用品の2倍!

 さて、ここからはST-310の火力について詳しく見てみよう。

 マニュアルによれば、専用のカセットガスを使った場合の火力は2.9kW(2500kcal/h)という。小さい炎口なのに、火力は一般的な家庭用のカセットガスコンロ同等ということだ。さらに、マイクロレギュレータという装置により、長時間使っても、カセットガス缶が冷えて火力が衰えたり、寒いときに使っても火力が落ちることを防ぐという。このレギュレータは、炎口近くに付けられており、火をつけると自然に暖められ、その熱でカセットガスの缶を暖めることで、火力を安定させているのだ。

ナベに500ccの水を入れて、何分で沸騰するかを実験

 その火力はいかほどのものか。500cc(水温25℃)の水を沸騰させる実験をしてみた。

 ナベの中央に火力が集中しているためか、1分も経たずにナベ底中央には気泡が現れ、ほぼ3分で水温は約90℃まで上がった。100℃に達しグラグラと煮え立つまでにかかった時間はわずか3分49秒だ。


1分もしないうちに、ナベ底の中央に気泡が現れ出す3分49秒で沸騰。インスタントラーメンなら調理時間を加味しても、わずか7分で食べられるという早業だ

 比較のために筆者の愛用品(キャンプ用ガス式)でも同様の実験をしてみたところ、3分半経って、ようやくナベ底に気泡が現れ出し、沸騰するまでに6分50秒かかった。これは、風で火力が安定せず、かなり苦心した影響もあるだろうが、(フルパワーにすると風で火が消えてしまうため、火力は若干絞り気味にした)、結果的には半分の時間でお湯を沸かすことができた。



冷めるのも速いので片付けラクラク

5分もすれば完全に冷えるので、付属ポーチの中にしまえるほど

 片付けに関しては、キャンパーには非常に助かる点があった。それが、使用後にすぐ冷めるところだ。

 たいていのバーナーは、炎口や火力調整つまみ付近は金属の固まりとなっている。そのため、使い終わってもなかなか冷めず、使用後から片付けるまでのタイムラグが10分以上できてしまう。ところがST-310は、必要最低限の金属しか使っていないため、冷めるのが非常に早い。およそ3分で手で触れるほどに冷え、5分もすれば付属のポーチに片付けられる。

 この手のシングルバーナーは、テントなど一式を撤収した後に、コーヒーを1杯飲んでからキャンプ場を出る、というように帰る直前まで使っているケースもだろう。また道の駅やキレイな景色を見かけたら、そこでコーヒー1杯なんてこともあったりする。そんなときにサッと出して、サッと使って、サッと片付けられるST-310は、利用範囲を広げてくれそうだ。


基本はサブバーナーで。ライダーキャンパーならメインでもいける

 超コンパクトで、設置場所も選ばず、組み立てや撤収も一瞬。なおかつ家庭用のカセットコンロなみのパワーを持ちながら、強風にも強い。しかも燃料は、コンビニでも手に入る普通のカセットガスなので、燃料切れの心配もまったくない。非常に便利なガスコンロだ。

 価格については、実売で4,000円台と高めだが、燃料のランニングコストを考えると、かなりお得と言えるだろう。

カセットガスを含めても、コレだけコンパクトにまとめられるのは良い。トレッキングやハイキング、ライダーは重宝するだろう

 ファミリーキャンプであれば、サブのバーナーとしておすすめだ。トレッキングやハイキングでは、本体重量350gという軽さが魅力。リュックのポケットに入れておき、ちょっとした休憩で温かい飲み物で一息つくという、いつもと違う楽しみ方ができるだろう。

 さらにバイクで移動する“ライダーキャンパー”なら、メインのバーナーとして重宝することを約束しよう。なにせライダーのキャンプ飯といえば、レトルトカレーにサトウのごはんかラーメン、ゴージャスな飯でもウィンナー焼き程度だから(いや、シャレじゃなくて本当の話)。ST-310なら余裕でメインのバーナーとして使えるのだ。

 夏キャンプはST-310をポケットに入れて、大自然に飛び出そう!






2011年 6月 7日   00:00