やじうまミニレビュー
アドレンズ「エマージェンシー」
アドレンズ「エマージェンシー」 |
今回紹介するのは、アドレンスのメガネ「エマージェンシー」。自分で度数が調節でき、災害時の緊急用や一時的なスペアとして利用できるメガネだ。
メーカー | アドレンズ |
製品名 | エマージェンシー |
希望小売価格 | 4,980円 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 4,610円 |
■必需品としてのメガネ
製品レビューに入る前にちょっとだけ、私にとってメガネがいかに必要な存在であるかという話にお付き合いいただきたい。
私は、小学校高学年から、近視のためメガネを使用している。今は乱視も入っており、毎年行なわれる健康診断の視力検査では毎回「裸眼視力0.1以下」という結果だ。
これぐらいしか視力がないと、メガネは必需品で、掛けていないと日常生活が送れない。自宅にいてもテレビが見られない。外に出ると、交差点の信号が見えないし、駅の案内板も見えない。歩き慣れた経路なので、会社にたどり着くことはできるだろうが、パソコンに向かっても文字が読めなくて仕事にならない。
以上のような状況なので、メガネを壊すと不便な暮らしを強いられる。私の視力が弱いため、レンズの度が強く店頭に在庫がないのだ。少なくとも数日、最悪では1週間ぐらい、暗澹たる日々を送る羽目になる。最近は、さらに老眼が加わり、事態が悪化している。つまり、外を歩くための矯正視力が0.7~0.8程度のメガネと、パソコンの画面を見るための矯正視力0.4ぐらいの、2つのメガネが必要となったのだ。
もちろん、強い度のメガネでもパソコン作業はできるが、大変に目が疲れる。逆に、弱い度のメガネだけで外出してしまうと案内板や周囲の景色が見えなくて苦労することになる。
というわけで、私にとってのメガネは必需品であって、とても“アイウェア”というような軽いファッショナブルな名前で呼べるような存在ではない。
しかし、身近な必需品ほど、扱いが荒くなるのは世の常だ。過去に何回となく、踏みつぶしたり、落としたりして、メガネを壊して来たのだった。正直に言えば、そろそろ古くなったからとか、度が合わなくなったからと言ってメガネを作ったことはない。数年に一度、メガネを壊してしまい、仕方なく視力検査をしてレンズの度を合わせ、フレームをその時の流行に近い(しかし地味なものに)換えて来たのだ。
そして、面倒なことと、高価なことが相まって、予備のメガネを用意することなく、幾星霜を重ねて来たのであった。
■エマージェンシーメガネという朗報
そんなときに、この「エマージェンシー」というメガネを知った。なんと、度が自分で修正できるメガネだという。これが本当であれば、いつでも自分に合ったメガネが手に入るわけで、その名の通り非常用のメガネとして最適だ。
また、自分一人のためだけではなく、家族の誰かがメガネを壊したときにも予備として使える。一家に1つあれば、誰がこわしたときでもスペアがあることになる。自治体などで防災用品としてストックしておけば、災害時にメガネを失った人たちのためにも福音だろう。アドレンズではすでに、1,000個を被災地に寄付したという。
さらに、もし常用できる品質であれば、今使っているメガネと置き換えたい。本を読むときと、テレビを見るときは、そのつど度を調整してしまえば、今のように2つのメガネを掛け替える必要がなくなる。
というわけで夢はふくらむわけだが、アドレンズ「エマージェンシー」には一定の制限がある。まず、矯正できるのは、遠視と近視のみで、視力矯正レベルが-6.0~+3.0ディオプターの範囲だ。この範囲であれば老眼鏡としても使用できる。乱視には対応できない。
また、普通のメガネよりも視野が狭いため、自動車の運転や機械操作などには「絶対に使用しないでください」と書かれている。
さらに、耐久性については「材質がポリカーボネイトであるため、長期間の使用により紫外線による黄変が生じます。見え方に変化はありませんが、室内で少し暗いと感じられることがあるでしょう」とされている。「緊急時に一時的に使用するメガネであるため、早期にメガネ店でメガネの作製をお勧めします」とも書かれている。というわけで、あくまでも緊急用の製品であって、長期間常用するという製品ではなさそうだ。
■独特の構造で度を調節
エマージェンシーの包装は、一般的なメガネケースそのものだった。ケースはクリアタイプで、製品が見えている。フレームは黒だ。
ケースから出してみると、レンズの横にある度を調整するためのダイヤルがとても目立つ。フレームの前の部分を前から見ると、一直線だ。レンズは横幅がある割りに高さがない。フレームが樹脂製なこともあって、度の入っていない防護用のメガネみたいな外観と質感だ。メガネ型ルーペにも似ている。ともかく、普通のメガネには見えない。
パッケージ。「もしもの時に、度数を調節できるメガネ」と書かれている | 操作説明のイラストが、いい味を出している | クリアタイプのメガネケースに入っている |
パッケージを開けた状態 | 裏から見た状態 | 鼻当ての幅が広い |
では、実際に使ってみよう。最初は、片目ずつ度を合わせる作業が必要だ。私は利き目が右目なので、右目から合わせた。まず、両目を開けた状態で遠くを見る。次に、左目の前に手のひらをかざして視界をさえぎる。左目を閉じると見え方が違ってしまうので、手でさえぎるようと指示されている。
そして、右目側のレンズの横にあるダイヤルを回していく。私の場合、調整範囲ぎりぎりに近いところで、なんとか合った。しかし、微妙な見え方だ。右目は乱視もあるので、それは矯正できないからだ。また、普段のメガネは非球面レンズを使っているために、このメガネで見ると視野の周囲が微妙にゆがんで見える。
次は左目を調整する。左目は乱視が弱いので、かなり良い感じで調整できた。ここで、両目を開くと、左右の矯正視力のバランスが悪くて、ちょっと気持ちが悪い。取扱説明書にあるように、利き目の右目を弱くするとバランスが取れた。
メガネを外してみると、レンズの形が変わっていることに気が付いた。実は、エマージェンシーのレンズは、2枚の薄いレンズを合わせた形になっている。この2枚のレンズの位置をずらすことで、レンズの屈折率を変えているのだ。メガネを外した状態で、ダイヤルを回してみると、ほぼ1cmぐらい、レンズが移動することがわかった。レンズをずらす幅が増えると、レンズが二重になっているようで、不思議な外観になる。
左右のレンズ脇に、度数調整用のダイヤルがある | ダイヤルを回すと、2枚のレンズがずれていく | 最大で、これぐらいまで2枚のレンズがずれる。視界が狭いわけだ |
一番ずらした状態のレンズ | ダイヤルは回しやすいように大きく張り出している |
エマージェンシーを掛けてみた第一印象は、視野が狭いということだ。中央部は良いが、ちょっと左右になると見えにくい。このあたりの原因は、レンズの構造によるものが大きいだろう。さらに片方の眼球の頂点からもう片方の眼球の頂点までの距離である「瞳孔間距離(PD)」が固定されていることも影響している。このメガネでは、PDが66mmに固定されているのだ。PDは人によって異なっているので、固定されていると差が大きい人ほど、見え方に影響が出るだろう。なお、フレームのサイズは、「49□25、135mm」と書かれている。
ダミーヘッドに掛けてもらった状態。横方向へ一直線なイメージ | レンズが4枚付いているので、目の周りをアップでみると怖い |
そういえば、エマージェンシーに似た印象のメガネを掛けた記憶があったが、しばらくして思い出せた。メガネを作ったことのある人だと、検眼が終わって、試しに汎用のフレームと円形のレンズで度を確認するためのメガネを掛けさせられることがあるが、あれに似ているのだ。自分の顔に合わないフレームなので、耳の位置やバランスが悪く、顔に何か載せられているようで気持ちが悪い。短時間なら良いが、長時間かけ続けるのは難しい。
斜めから見ると、すこしマトモに見える | 耳掛けは汎用性を考えてか、カーブがゆるい | 上から見た状態 |
10分ほど、このメガネをかけたままの状態でいると、このメガネの見え方になじんでくる。しかし、私にはこれぐらいが限度で、気持ちが悪くなって外したくなる。私の場合は顔が大きく、フレームでこめかみを締めつけられるような状態になることも影響しているだろう。やはり、常に掛け続けているというメガネではないのだ。
なお、このメガネをかけた顔を家人に見せたところ、驚かれてしまった。自分も気持ち悪いが、外から見ても違和感があるというわけだ。
それでも私の場合、アドレンズ エマージェンシーか裸眼か、どちらか選べと言われれば、迷わずエマージェンシーを選ぶ。ともかく、これがあれば、日常生活が普通に送れるようにはなるからだ。ただ、外していても差し支えのない状態では、外していると思う。テレビを見るときや、外に行くときだけ掛けるというイメージだ。
もうちょっと安いと良いとは思うが、1つ買っても良いと思う。しかし、用途はあくまで非常用であり、その範囲内で有用な製品だ。自分で度が調整できるからと言って、このメガネを常用しようとは思わない方が良い。サイズが固定されたフレームと、特殊な構造のレンズという、非常用としては必要な機能が、日常用としての快適さを損なってしまう。
いずれにしても、このメガネが画期的な製品であることは間違いない。私のようなメガネを必需品とする人なら1つ用意しておくと便利だろう。
2011年 6月 8日 00:00
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