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やじうまロングレビュー

マンションの浴槽をTOTOの「魔法びん浴槽」にリフォームしてみた

by 田中 真一郎
TOTO「マンションリモデルバスルーム WBシリーズ」

 我が家は、築33年のマンションを10年前に中古で購入した。100戸の建物が6棟ある大型の物件で、このあたりに集合住宅が増えるきっかけとなったマンションでもある。

 比較的古いマンションながら今のところそれほど不自由は感じていないが、風呂の追い焚きができないところには不満を感じている。家族と、帰宅の遅い筆者では、入浴する時間に3〜5時間のひらきがある。これだけの時間、浴槽の湯を放置すれば、冬場なら水のようになっているので入れ替えなければならないし、夏でも熱い湯を大量に足す必要がある。

 これまでは、費用や時間の問題もあり、改造を先送りしていたが、風呂全体の老朽化も目立ってきたので、ついにリフォームを決意した。となれば、やはり「追い焚き化」を検討することになるが、我が家では簡単に導入できないことがわかった(理由は後述)。

 そこで導入したのが、TOTOの「マンションリモデルバスルーム WBシリーズ」。わざわざ追い焚きをしなくても、温度低下を防ぐ二重断熱の“魔法びん浴槽”などの機能が特徴だ。

リフォーム前の風呂場 浴槽の中に沸かし口がなく、洗い場と兼用の水栓から湯を溜める


ウチは追い焚きできる? できない?

 この“魔法びん浴槽”を紹介する前に、そもそもなぜ追い焚きという選択肢を諦めたか、ということから話していこう。

 リフォームするにあたって、ご近所さんに追い焚きの可能性について色々と相談してみたところ、あやふやな情報がやたらと入ってきた。改造が「できる」説と「できない」説があって、「構造上、追い焚きにはできない(らしい)」「追い焚きできるようにするには膨大な手続きが要る(らしい)」「お金がすごーくかかる(らしい)」とさまざまな“風説”が流れている。果ては「◇号棟だけは新築時から追い焚きできるように作られていた(らしい)」「○号棟の△さんのおうちは追い焚きできる(らしい)」など、“都市伝説”の様相まで帯びてくる始末だ。

 見積もりを依頼した2つのフォーム業者に聞いてみても「昔、うちでやったことがあるはずだ、意外と安い」「たぶんできるはずだが高い」と、これまた違うことを言う。

 我が家の風呂は、一般的なマンションと同様、部屋の奥のほうに配置されていて、外壁に接しておらず、窓がない。風呂への温水は、ベランダにある湯沸かし器からパイプを通じて供給される。このパイプが、現状では1本しかないのだが、追い焚きに改造するにはもう1本付け足す必要があるらしい。

ベランダにある湯沸かし器 湯沸かし器から屋内への配管。外壁を貫いて台所と風呂場につながる

 パイプを増設するには、ベランダの壁に穴を1つ開ける(=マンションの躯体に穴を開ける)必要があるし、壁の裏のスペースにパイプやら配線やらを通さなければならない。当然湯沸かし器も追い焚き対応のものに取り替える必要がある。

 つまり、やることが大掛かりだし、マンションの躯体をいじるということは規約に触れる可能性があるわけで、お金も手間もかかって面倒極まりないうえに複雑怪奇。

 そうこうするうちに「できる(かも)」と言っていたリフォーム業者も「昔やったときの資料が出てきませんで……」といったように、どんどん後退していく。いい加減面倒になってきたところで、片方の業者が「規約上、マンションの躯体に穴を開けられない」という情報を持ち込み、ついに追い焚き化をあきらめることにした。


魔法びん浴槽とカラリ床に決定

 “理想”の追い焚き化はあきらめたが、やれる限りでベストは追求しておきたい。TOTOのショールームに出かけ、いまどきの風呂がどんなことになっているのかを見ることにした。TOTOに出かけたのは、我が家からもっとも近くにあったのがTOTOだったことと、リフォーム業者の持ってきたカタログもTOTOだけだったからだ。

 ついでに言うと、リフォーム業者は新聞に入っていた折り込み広告をもとに選んだ。以前、洗面所をリフォームしたときに、ある程度規模が大きい業者のほうが、製品の割引率が高いということを学んだので、そのへんも考慮している。

 ショールームにはモデルルームよろしく浴室やトイレ、台所が作ってあって、製品の実物を確かめることができる。リフォーム用のユニットバスには次のようなトレンドがあることを知った。

・すぐ乾燥する床
・冷めにくい浴槽(高断熱浴槽)
・カビやぬめりがつきにくい排水口やパッキン
・配管や形状の工夫で広くなった浴室と浴槽
・段差のない入り口や、オプションの手すりなど、バリアフリー対応
・多様な壁の色や質感など、柔軟なデザイン

 特に気になったのは、冷めにくい浴槽、TOTOで言うところの「魔法びん浴槽」だ。断熱材で浴槽をくるみ、文字通り魔法びんのように保温する浴槽だ。追い焚きを諦めた身には魅力的だし、これに浴室暖房が加われば、冬の風呂も今までよりはずっと暖かくなるだろう。

リフォーム前の風呂場には棚がないため、このようなラックを置いていた

 その一方で妻は、カビやその元となる湿気を嫌うため、すぐ乾燥する床「カラリ床」やパッキンが必須と言う。さらに、浴室内に造り付けの棚もほしいらしい。今の風呂場には棚の類がないので、ステンレスラックを床に置いて、シャンプーの類を収納している。しかし、夫婦に小学生の娘1人の計3人が、それぞれ異なるシャ ンプーやリンスを使っており、さらには筆者には用途が不明の美容グッズがいくつもあって、ステンレスラックから溢れている。棚を標準で装備すれば、だいぶすっきりするだろう。

 TOTOのマンションリフォーム向けユニットバスには「WA」「WB」「WH」と3シリーズあって、定価を見るとWAが95万6,200円〜142万5,000円、WBが75万6,000円〜116万円、WHが39万8,000円〜63万円と、要するに「松」「竹」「梅」という位置づけである。

 最上位の“松”であるWAシリーズは、床が素足でもひやっとしない「カラリ床」であるうえに、柔らかいため音が静かな床「ほっカラリ床」になり、水栓は「シャワーバー」「フラットタッチ」「カバータイプ」とオシャレなものから選べる。さらに、銀イオン水を撒いて床や排水口のヌメリを抑える「ヌメリま洗」という仕掛けまでオプションで用意される。浴槽は当然のように魔法びん浴槽だ。しかし、対応サイズは1216(5)(浴室サイズが1,200×1,650mm)より大きいものが5種類しかない。“億ション向け”といったところだろうか。

 “竹”のWBシリーズは、カラリ床、魔法びん浴槽が標準で付く。カウンターの形状の違いなどで計4つのバリエーションがある。対応サイズは3シリーズ中でもっとも多く、1116J(1,100×1,600mm)から1418(5)(1,400×1,850mm)まで標準で11種類ある。そのうえに、受注生産であまり一般的でないサイズも16種類用意されている。

 “梅”のWHの標準装備はカラリ床だけ。カウンターや棚のあるなしで3つのバリエーションが用意されているが、サイズは1216J(1,200×1,600mm)より小さいものが4種類のみとなっている。

 というわけで我々がほしい魔法びん浴槽とカラリ床、収納を付けると、WBシリーズということになりそうだ。

リフォーム前の風呂場の通風口。ファンがなく、通気はいまひとつ

 さらに欲しいのは換気扇。我が家の風呂とトイレには通風口があるが、これはただの“口”で、ファンの類が付いていない。ここに換気扇を取り付け、より換気をよくしたいわけだ。



業者選びの決め手は“暖房機もサービスで付けましょう”

 2つのリフォーム業者にWBシリーズと換気扇が欲しいという希望と伝えると、それぞれに浴室を調べに来てから、どちらも70万円程度の見積もりを作ってきた。

 業者Aも業者Bも見積の総額はあまり変わりないが、浴室をきっちり調べ、今よりも広いサイズのものが入ることを見つけ出し、わざわざ受注生産のサイズで提案してくれた業者Bのほうが、好感度が高い。家の調査にやってきた時の態度も、業者Bのほうがよく見えた。

 というわけで業者Bに「これに暖房機が付けば決めちゃうんだけど」と電話してみると、「サービスで付けましょう」と即答が返ってきた。暖房機は、浴槽の保温効果を上げるために大いに魅力的だ。以前住んでいたマンションの浴室にも暖房機が付いていて、その効果は実感している。乾燥機能はあまり使わなかったが、それでも梅雨の時期に洗濯物を乾かすのには重宝した。これで業者Bに決定である。

 ちなみに暖房機といえばTOTOの「三乾王」を筆頭に、大手家電メーカーからも発売されているが、サービスで付いてきたのは高須産業のBF-712SRというもの。初耳のメーカーだったが、実は換気扇や暖房機では有名なところのようだ。

 換気扇を暖房機に変更したことで、当初考えていたことから、もう1つ工事が必要なことが分かった。屋内の分電盤から浴室と洗面所に来ている電力では、暖房機を動かしきれず、ブレーカーが落ちる可能性があるのだ。洗面所では、洗濯機やドライヤーといった、消費電力が大きいものを使う。暖房機の消費電力は最大で1,430Wもあるし、梅雨時に洗濯機と暖房機の乾燥機能を同時に動かしたくなる可能性がないとは言えない。

 というわけで、玄関や廊下への配線から電力を持ってくることにした。この工賃が35,000円。“けっこうかかるなー”とは思ったものの、業者Aの見積もりでもこの費用は入っていないようなので、どっちみち払わなければならないものだったのだ、と思うことにした。


膨大なカラーバリエーションから、ユニットバスらしくないデザインを選択

ショールームで壁の配色やオプションを決めると、できあがりのCGをプリントアウトしてくれる

 浴室の大枠が決まったところで、浴室の色やアクセサリーなどを選ぶ。WBシリーズは壁、浴槽、床の色を自由に選べる。壁は21色、浴槽は8色、床は3色、そのうえ1面だけ壁の色を変えるなんてこともできるから、組み合わせは膨大だ。

 これは業者Bの担当者とともにTOTOのショールームに赴き、そこでTOTOのアドバイザーと相談しながら決めた。ショールームには「ドールハウス」と呼ばれる模型があって、これで色の組み合わせを実物でシミュレーションできる。ドールハウスはまさしく、リカちゃんハウスの浴室と同じくらいの大きさの浴室で、壁と床、浴槽のパネルを変えることができるものだ。さらに、コンピューター上でも希望の組み合わせの画像を生成して、確かめることができる。

 我が家にもとからあった浴室は、“いかにもユニットバス”という雰囲気の、黄色味かかったテカテカの素材で作られている。カウンターも収納棚もなし、どこかしら安いビジネスホテルの風呂を思わせるようなものだった。このプラスチックの塊のような浴室に辟易していたので、思い切ってアドバイザーが「モダンな感じ」と推奨する組み合わせ――つまり、3方の壁と浴槽を白く、扉の反対側の壁だけダークウッド風のパネル(ラインダークウッドと呼ばれる)という組み合わせにした。

 また、“プラスチッキー”な感じを減らすために、壁の表面仕上げはすべて光沢の無いマット調のものを選んだ。このほか、水栓の形状やシャワーヘッド、照明などを選び、最終の見積もりを出してもらったところ、合計金額は約75万円となった。

 正月にリフォームを決意、成人の日の連休にショールームへ行き、部屋の調査と相談、リフォーム業者選定、ショールームでの仕様決定と進んで、最終見積りが出たのが2月19日。工事は3月はじめと決まった。

 なお、我が家は関係なかったが、2011年7月31日までに、魔法びん浴槽(高断熱浴槽)と窓の断熱改修か、外壁、屋根・天井・床の断熱改修を同時に行うと、住宅エコポイントの対象となるようだ。

【お詫びと訂正】初出時、エコポイントの期間に誤りがありました。訂正してお詫びさせていただきます。


生まれ変わった我が家の浴室

 工事は予定では2日間。どちらも平日だったので、9時に業者を迎えてから出勤、1日目は工事中で風呂が使えなかったが、2日目の夜に帰宅すると、もう使えるようになっていた。が、入口のサイズが小さくなったことで、壁面の壁紙貼りが増えてしまい、こちらが整うまでさらに1週間ほどかかった。

奥が玄関で、右に浴室。廊下を養生して工事が始まる 解体中の旧浴室

 1日目の夜、まだ工事中で照明がつかない浴室を覗いてみたとき、奥のダークウッドの壁が予想よりも近く、圧迫感があるように見えて「これは失敗したか」と思った。ちょっと良いめのホテルの浴室のような出来上がりを期待していたのだが、そういうホテルほど浴室が広くないので、「もしかしたら……」と危惧していたのだ。が、翌日に照明をつけてみたらさほどの圧迫感は感じられず、ほっと胸を撫で下ろした。

 新しい浴室のようすは、以下に写真で紹介する。

1日目の夜、工事中の浴室。配線工事がまだなので照明がつかない。奥の壁の圧迫感が気になったが…… 入口が細くなったため、壁面部分が増えた(写真の木目部分)。暖房機のリモコンがここに付いた
リフォーム後の浴室 魔法びん浴槽。専用の断熱蓋が付く 断熱蓋のラック。厚くて重そうに見えるが、小学生でも片手で楽に持てる
浴槽の形状が工夫されていて、足を伸ばせるようになった。角がないので掃除もしやすい。排水栓は右にあるボタンをワンプッシュで開閉できる 新しい水栓。横に長いバーでシャワーと水栓、止水を切り替える。バーが大きいので操作しやすいが、シャワー位置と水栓位置の中間の止水位置のクリックがやや弱く、うまく水を止められないことがたまにある
シャワーは根元から空気を取り入れて水流に混ぜ、水量を減らせる「エアインシャワー」を選んだ。全開にしなくても十分な水量が得られる
上下2箇所のシャワーハンガー。上のハンガーは角度調整ができる
3段の棚。棚の板は外して洗える。棚の下のカウンターは細いが、ここもモノを置くのに使えて、あるとないとでは大違い
期待のカラリ床。水を撒いても5分ほどで水滴がぐっと少なくなり、翌朝には乾燥している
排水口。ヘアキャッチャーは「らくポイヘアキャッチャー」と名付けられていて、キャッチャー自体が取り出しやすく、キャッチャーに髪がからみにくい構造になっていて、捨てやすい
オプションのランドリーパイプ。リフォーム前にも便利だったのでオプションで付けた。リフォーム後は使わないときは奥に収納できるようになった
暖房機。入る前に5分ほど浴室を暖房で温めておけば十分。これも足し湯を減らすのに貢献している 月に1度はフィルターを掃除する必要があるが、カバーとフィルターの着け外しは簡単

効果あらたか、魔法びん浴槽

リフォーム前後の浴槽で湯温の変化を見た。計測にはA&Dの赤外線温度計を使用

 期待の魔法びん浴槽だが、期待通りの効果を発揮してくれている。まったく足し湯をしなくて済むということはないが、足し湯にかかる時間、つまり足し湯の量は大幅に減った。

 どの程度の効果があるのか数字で見てみたかったので、リフォーム前の風呂とリフォーム後の風呂で湯温の変化を測ってみた。

 ただしリフォーム前の計測が2月初旬、リフォーム後が5月はじめで、気温がだいぶ違う。なので、なるべく条件を揃えるために、リフォーム前は最高気温となる午後1時から、リフォーム後は最低気温になる午前4時から記録を始め、どちらも開始時の気温が約14℃となっている。

 測定方法は、給湯温度を50℃にセットし、浴槽に7分間給湯し、その後10分ほど蓋を開けたまま放置してから蓋を閉じ、1時間ごとに4時間後まで温度を測った。給湯器と風呂場までの配管は変えていないので、温度と水量の条件は同じはずである。

 10分間蓋を開けたのは、入浴で湯温が下がることの再現を狙っている。実際に入浴するとさらに温度が下がる。だから、これは入浴後に熱い湯をすこし足し湯したときのデータに近いということになるだろう。


1時間ごとの温度
時間 リフォーム前湯温 リフォーム後湯温
(魔法びん浴槽)
給湯時 43.8℃ 43.9℃
1時間後 42.3℃ 42.1℃
2時間後 39.8℃ 41.4℃
3時間後 39.4℃ 40.3℃
4時間後 38.8℃ 40.2℃


温度変化
時間 リフォーム前湯温 リフォーム後湯温
(魔法びん浴槽)
1時間後 -1.5℃ -1.8℃
2時間後 -2.5℃ -0.7℃
3時間後 -0.4℃ -1.1℃
4時間後 -0.6℃ -0.1℃

 どちらも1回ずつしか測定していないので、この温度変化のパターンが正しいとは言えないが、給湯時と4時間後の温度を比べると、リフォーム前で5℃も湯温が下がっていたのに対し、リフォーム後は3.7℃にとどまっている。

 カタログの「6時間経っても、湯温の低下は約2℃」というほどの成果は得られていないが、写真を見れば分かるように、7分の給湯では浴槽の半分程度までしか湯が溜まらない。カタログでは「満水の80%」となっており、湯が多いほど保温効果が高いのは、飲み物を入れる方の魔法瓶でも経験することだろう。

 なお、魔法びん浴槽は専用の断熱蓋を使わないと十分な保温効果が発揮できない。カタログには「ふたを閉じたままの状態で6時間後の温度を測定」となっているが、この実験では1時間ごとの計測時にたびたび蓋を開けている点をご理解いただきたい。

 日々の使用感で変わった点というと、リフォーム前はゴールデンウィーク過ぎまで、いちばん熱い温度設定で湯を大量に足していたのに対し、リフォーム後はそれよりも湯温を下げて足し湯するようになった。そう考えると、やはり魔法びん浴槽の効果は大きい。

 せっかくの熱エネルギーを有効に使うために、リフォーム時には追い焚き機能の有無に関わらず、ぜひ魔法びん浴槽の導入をおすすめしたい。





2011年5月23日 00:00