家電製品ミニレビュー
東芝「ミニ羽釜」最速レビュー! 小さくて可愛いけれどその実力は本格派
by 神原サリー(2015/9/28 07:00)
東芝が自動式電気釜を発売してから60周年を記念した記念碑的モデルとして、注目を浴びた真空圧力IHジャー炊飯器「備長炭かまど本羽釜」の少量炊きタイプが11月に発売される。従来モデルが5.5合炊きだったのに対し、今回のRC-4ZPJは2.5合炊きで、その小さな本体サイズに目を見張る。
9月初旬にこの炊飯器を製造している、新潟の東芝ホームテクノの工場に取材したことをきっかけに、発売より一足お先に試用機をお借りすることができた。5.5合炊きタイプにはない「麦ご飯」メニューを含め、その使用感や炊き上がりをご紹介したい。
メーカー名 | 東芝 |
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製品名 | IHジャー炊飯器 備長炭 かまど本羽釜 2.5合炊き |
品番 | RC-4ZPJ |
実勢価格 | 65,000円 |
とにかくミニサイズで扱いやすいのがいい
東芝IHジャー炊飯器「備長炭かまど本羽釜」RC-4ZPJが自宅に届いた時点でびっくりしたのが、その箱の小ささ。昨今の炊飯器は内釜の重量がアップしていたり、圧力方式を採用しているため、とにかく大きくて重いものが多い。高級モデルでは総重量が10kg近くというのがほとんどなのだ。
ところがこの2.5合炊きの「備長炭かまど本羽釜」の本体質量は3.8kg。箱から取り出してみると先日の取材時に見た以上に本体のサイズ感の小ささが印象的だ。ちょうどそばに置いてあった鉛筆と比べてみると、高さは消しゴム付きの鉛筆よりも低く、本体幅がほぼ同じ程度。なんとなくそのサイズ感がわかっていただけるのではないだろうか。
本体の前面にあるボタンを押してふたを開けてみると、5.5合炊きのものと同じような羽釜の形状をした内釜が中に収まっており、約4cmほど上に立ちあがっている。小さいながらも羽根があり、その上にしっかりと高さを持たせているところが“本羽釜”という名にふさわしい。
内釜はまるで釜めしのお釜のようで、片手に載るほどだ。本体はもとより内釜の可愛らしさが感動的で、思わず「ミニ羽釜」という愛称を勝手につけてしまったのだが、自宅であらためて手にしてみて、この愛称がぴったりだなと思ったのだった。
実はこの「ミニ羽釜」は、本体のデザインや内釜の形状は5.5合炊きタイプと同じように見え、まるで相似形のようだが、東芝の特徴的な炊飯方式“真空圧力”は非搭載。
そのため、内ぶたの裏側に真空吸気口の穴や圧力調整ボールのようなものはなく、とてもシンプルな構造になっている。毎日のお手入れも内釜のほかは、内ぶたと蒸気口のみ洗えばいいので簡単だ。
また、電源コードがリール式でなく、磁石式で取り外せるタイプになっているのも相違点。
そして「これは便利!」と思ったのが、1合用の普通の計量カップのほかに0.5合用の計量カップも付属していること。1合用にも1/2カップの目盛がついてはいるが、実際にやってみるとぴったり1/2カップを計るのは思いのほか難しい。
少ない分量だからこそ、正確に計らないと水加減との兼ね合いが難しく、おいしく炊けないという点に着目し、こうした計量カップを同梱してくれているのはうれしいことだ。
4通りの食感から選べる「かまど名人」の炊き分け
それでは実際に炊いてみることにしよう。「ミニ羽釜」には5.5合炊きと同様、白米炊飯時に4つの炊き分けができる「かまど名人」という炊き方があり、早炊き以外ではこの「かまど名人」で炊くこととなる。
炊き分けのところに表示されている4つの名称を見てみると「しゃっきり、おすすめ、もちもち、やわらか」となっている。つまり、東芝では「ややしゃっきり」がおすすめということなのだろう。元々、しゃっきり感のあるほうが好きなので、「おすすめ」で炊いてみることにする。
炊飯の分量は、いつものとおり2合で。確かに5.5合炊きの炊飯器を使っているのに、ほとんど2合しか炊かないので、こうした小さい炊飯器で十分なのだなと思う。炊飯器の天面の操作ボタンで無洗米を選び、かまど名人の炊き分けボタンを2回押して「おすすめ」に設定する。
おもしろいと思ったのは、ボタンを押すとピッと音がするのだが、「白米」「かまど名人」「おすすめ」の3つのところだけは「ピロリン」と違う音がするのだ。つまり、この3つの組み合わせで炊くのがいちばんおすすめということなのだろう。もしかすると、目の不自由な人や高齢者でもこの「ピロリン」の音を目安においしく炊けるようにと考えられているのかもしれない。
炊飯スタートボタンを押して、ピピピピーの音と共に炊飯開始。無洗米のため、白米よりも5分多い60分と表示された。
さて、炊き上がりの合図とともにふたを開けてみると、お米の1粒1粒が立っていて、カニ穴らしきものが見えるのが確認できる。かまど名人「おすすめ」コースはやや硬めで粒感があり、かむと弾力が感じられて甘みが出てくる。
真空圧力がなくても、さすが1,000Wの大火力と釜底に設けられたウェーブや厚みのある内釜の力でおいしく炊き上がっている。真空吸水がないのでどうだろうかと思ったが、ソフトウェアによる制御の工夫でしっかりと吸水時間を取っているという説明が、なるほどと納得できる炊き上がりだと感じた。
白米とのバランスがよい“2割”の麦ご飯
健康な食生活をサポートするものとして、東芝が今年の夏に発売したモデルから採用しているのが「麦ご飯コース」で、この「ミニ羽釜」にも専用コースがついている。
炊き方は難しくなく、まず白米を内釜に入れて「麦ご飯コース」の水位目盛で水加減し、そこに白米の2割の麦を入れて軽く混ぜればOKだ。今回は1.5合の白米で麦ご飯を炊いてみることにする。白米1カップ(150g)あたり2割にあたる30gの麦を混ぜるのが基本なので、1.5合の白米には麦が45g必要ということだ。
購入してあった麦はスティック状の個包装タイプ。1袋はいったい何グラム入っているのだろうと計ってみると、47gと表示された。2gなら問題ないだろうと思い、1袋分を水加減した内釜に投入。軽く混ぜて、炊飯スタート。
麦ご飯の炊飯時間は45分。炊飯が終了したところでふたを開けると、麦がふっくらと炊けている。全体を混ぜ合わせると、2割の麦ご飯はそんなに麦の粒が目立たない印象。食べてみると麦特有のプチプチとした食感はあるものの、これまで食べた麦よりもやわらかく、白米とのなじみ感があってとても食べやすい。独特の香りもそんなにしないので、苦手な人でも続けられそうだ。
これならいつものご飯と同じように、普通におかずと一緒に食べられるなと思いつつ、“麦とろ”をイメージして、手軽に納豆卵かけごはんで食べてみた。これもかなりおすすめだ。
1膳のごはんが「つやつや・ふっくら」、炊き込みごはんもバッチリ
先に述べたように、0.5合のごはんもきっちり計り、おいしく食べられるようにと新たに作られた0.5合用計量カップ。これは1膳のごはんをおいしく炊くという「ミニ羽釜」の想いが込められたものだ。となれば何としても0.5合の炊飯を試してみればなるまい!
ということで続いて試したのは0.5合の炊飯だ。小さな内釜とはいえ、やっぱりお米の量が少ないため、下のほうにちょっとごはんがあるように見える。2合と同じように「かまど名人」の「おすすめ」で炊いてみる。
60分後にふたを開けると、炊き上がりはふっくら、つやつや。2合のときよりもさらにお米の粒が立っているように見える。1膳のごはんを60分かけてここまで丁寧に炊いてくれることに感動する。1人暮らしの人でも極上のごはんを食べられる幸せ。
そして、2.5合炊きにした理由の1つ、「2合の炊き込みごはんがおいしく炊けること」という点も忘れてはならない。きのこや油揚げを入れた炊き込みごはんにチャレンジ。
5.5合炊きの「かまど本羽釜」の取説で学んだ“具材はリング状に入れる”ということをしっかり守り、今回も刻んだ人参や油揚げ、きのこ類をリング状に並べてみたが、いかんせん内釜の直径が小さいのでリングにするのが難しい。なんとか頑張って「炊き方」ボタンを「炊込み」に合わせて炊飯をスタートした。
炊き上がりまで待つこと、50分。具材としょうゆの香りが鼻をくすぐる。2合のお米+具材でも2.5合炊きなので内釜に余裕があり、さらに約4cm内釜に高さがある分、かき混ぜるのも楽々だ。底の部分にはおこげも出来ていて香ばしい。
炊き込みご飯はともするとベチャッとして炊き上がることがあるが、この「ミニ羽釜」はご飯そのものに弾力もあり、理想的な炊き込みご飯になっている。
“朝がゆ”づくりにもおすすめ!
今回、ぜひ試したかったのが「おかゆ」を作ること。おかゆは量が増えてしまうため、2人分でも0.5合のお米で十分だったりする。5.5合炊きの炊飯器でおかゆを作るとどうしてもたくさん作り過ぎてしまい、結局食べ切れないことが多いため、だんだん作る回数が減ってしまう。
「ミニ羽釜」で作れるおかゆは0.5合の「全がゆ」と「5分がゆ」の2種類。5分がゆはかなり水分量が多いので、全がゆを作ることにした。ここでも0.5合の計量カップが役に立つ。「全がゆ」の水位目盛に水加減して「おかゆ」を選んで炊飯スタート。70分後に炊き上がりだ。
出来たてのおかゆは粘りがなく、さらりとして食べやすい。実はこれ、早起きして“朝がゆ”用に作ったのだが、温かいおかゆが空っぽの胃に染み渡る。飲み込んでまもなく胃が暖まるのが実感できるのだ。なんてやさしい朝ごはんだろう。
結局1杯めは切り昆布でさらりとシンプルに、そして2杯めには中華だしの素、ごま油、チリペッパー&ソルトを混ぜ合わせ、青ネギを散らしてエスニックな味付けにして、0.5合分のおかゆを完食してしまったのだった。
「ミニ羽釜」は小さめなべで炊くような感覚でおかゆを炊けるので、特別感がなく、とてもなじみやすい。予約炊飯でもおかゆは作れるので、これはおすすめだ。
保温にも強い万能選手。1人暮らしから3人暮らしまで
おいしさのためにもムダに電気を使わないためにも、いつも炊飯終了後にすぐに保温を切ってしまうのが習慣になっている。余ったごはんはすぐに冷凍保存が基本だ。「ミニ羽釜」は少量炊きの炊飯器なので“食べ切りサイズ”ともいえる。だから、保温機能についてはそんなに期待しなくてもよいのかもしれないが、東芝の真空技術による長時間保温はこれまで特徴の1つだったのも事実だ。
取材時に「真空機能はないが、保温も最大24時間までOK」ということを聞いていたこともあり、今回、あえて5時間後と10時間後の保温状態を検証してみることにした。炊飯後5時間ではほとんど炊き上がりと変わらないレベル、10時間になるとさすがに若干水分量が減ってきたかなという印象を受けた。
だが、ごはんが黄ばんだり、においが気になったりということは全くなく、普通においしく食べられる状態だった。これなら、2人暮らしでパートナーの帰りが遅かったというときでも保温をしておけば、おいしく食べられるだろう。
1膳のごはんも「かまど本羽釜」ならではの連続大沸騰でおいしく炊き上げ、最大2.5合まで炊ける「ミニ羽釜」。ごはんにこだわる1人暮らしの人から、年配の夫婦、そして子ども1人の3人暮らしまで、思った以上に幅広い人たちに愛される炊飯器となりそうだ。
置き場所を取らず、愛着の持てるサイズとデザイン、本当にいいなあと思う。