家電製品ミニレビュー

パワーマット「POWERMAT WIRELESS CHARGING」

~話題の無接点充電を一足先に体験
by 林 佑樹
パワーマット「POWERMAT WIRELESS CHARGING」シリーズ

 家電製品を使っていると、「どうして各社、電源ケーブルがバラバラなのか」、「同じメーカーでも機種で違うのか」と、一度は感じたことがあるのではないだろうか。

 最近はようやくUSBやmicroUSBでの充電が増えて統一感が出始めているが、それでも気がつくとケーブルの山になっていて、いざ充電するとなって“これはどのケーブルなのか”と、探すのに手間取ってしまう。

 そこに、救世主的に登場した製品がある。アメリカを軸に普及しつつある“無接点充電”で、携帯電話やゲーム機が充電できる「POWERMAT WIRELESS CHARGING(パワーマット ワイヤレスチャージング)」だ。日本でもAmazonをはじめ販売しているサイトがいくつかあり、また類似した商品も出ている。

 今回はこのパワーマットシリーズの中から、iPhone用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone 4」と「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」の2製品と、汎用機器用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for smartphones,music players and more」の計3製品について紹介しよう。

iPhone 4用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone 4」iPhone 3G/3GS用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」さまざまな機器が充電できる汎用モデルの「POWERMAT WIRELESS CHARGING for smartphones,music players and more」

メーカーPOWERMAT WIRELESS CHARGING
製品名for iPhone-4for iPhone3G/3GSfor smartphones,music players and more
参考価格6,980円23,800円
販売店Amazon.co.jp


地味に普及しつつある無接点充電

 商品の説明に移る前に、「無接点充電とは何か?」という話をしよう。

 無接点充電は、ACアダプタやUSBケーブルといったコードを機器に直接繋がずに、充電用のユニットの側に置いておくだけで、電力が伝送できるというもの。生活家電の分野では、コードレス電話や電動歯ブラシで既に広く導入されている。任天堂のゲーム機「Wii」のリモコン用の充電器や、パソコンのマウスの充電にも使用されている例がある。

 なぜケーブルを繋がずに充電ができるのか? それは、「電磁誘導」を利用しているからだ。例えば電動歯ブラシなら、充電スタンドに置いておくだけで歯ブラシ本体の電池が充電できるが、これは充電スタンドから磁力を発生することで、受信側(つまり歯ブラシ本体)に電力が発生しているのだ。そのため無接点とは言いながら、ほぼ密着した状態で充電する必要がある。

 この電磁誘導は、生活の中にもたくさんある。たとえばキッチンであればIHクッキングヒーターや炊飯器、SuicaやPASMOなどの電子マネーにも採用されている。実はお馴染みの技術なのだ。

 とはいえ、現在普及している携帯電話や小型ゲーム機には、充電用のコイルは内蔵されていない。ではどうやって充電するかというと、本製品ではコイルが内蔵された専用のジャケットやアダプターを取り付ける必要がある(詳しくは後述)。ケータイの本体やバッテリーにレシーバーが内蔵されれば、こうしたジャケットやアダプタも必要ないのだが、2011年6月時点では、携帯電話ではシャープの「AQUOS PHONE f SH-13C」のみが無接点充電に対応という状況だ。

 海外のイベントでは、空港や電気スタンド、テーブル、車でワイヤレス充電できるという提案もあるようだが、この無接点充電が広く普及されるのはまだまだ先になるといっていいだろう。


iPhoneにジャケットをかぶせて、置くだけで充電できちゃう

 話をパワーマットに戻そう。パワーマットでは各種モバイル機器が充電できるが、まずは最も簡単なiPhoneの充電方法を説明しよう。iPhoneの充電には、iPhone 4用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone 4」と、iPhone 3G/3GS用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」を使用する。

 さっそくだが、以下にiPhoneを充電している動画を見てもらいたい。基本的な使い方は専用のジャケットをiPhoneに装着し、充電用のマットの上に載せるだけだ。置いた直後に充電が開始されるというのがよくわかるだろう。


「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」の使用風景を録画したもの。本体側には当然ながらケーブルは必要なのだが、受電用のレシーバーが一体となったジャケットはワイヤレスで、置いた直後から充電開始。はじめてSuicaを使用したときの気分を思い出した

 iPhone 4用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone 4」は、ジャケットはiPhone 4のサイズにジャストフィットするように設計されており、充電用のマットもジャケットとピッタリ合うようになっている。

 専用ジャケットのサイズは約63×124×13mm(幅×奥行き×厚さ)で、幅と厚みはiPhone 4よりもわずかに大きいくらいで、一般的に販売されている保護ジャケットと同じような感覚。ただし、長めなので、最初は持った時に違和感があった。重量は約31gと、充電用のレシーバーが内蔵されているにも関わらず、軽い。

 充電マットのサイズは約67×128×16mm(幅×奥行き×厚さ)で、重量は約131g。設置面積はiPhone 4をひとまわり大きくしたくらいで、卓上でも邪魔になりにくいし、大きめのカバンであれば持ち運びも大丈夫だ。加えて、ほどよい重量に加えて、ゴム足がついているので、滑りにくいと使い勝手の面もいい。

 マット側はフラットではなく、iPhone 4がすっぽりと収まるように、四隅にガイドが設けられている。ロゴの位置を厳密に合わせる必要もなく、単純に置くだけで充電が開始される。注意点はただひとつ、ロゴの向き(天地)を合わせること。ケースにもマットにもPOWERMATのロゴがあるので、事前に確認しておくといい。

付属品一式。左から電源アダプター、USBケーブル、iPhone 4専用ジャケット、マット本体ジャケット内側にあるDockコネクタに合わせて本体をセットする背面の写真。カメラから上がセパレートするタイプで、挟み込む感じでジャケットとiPhone 4を固定する
保護ケースとしては普通な作り。フチの部分が少し盛り上がっている充電するときには、POWERMATのロゴの向きを合わせることジャケット下部のUSB端子を経由すれば、モバイルバッテリーを利用しての充電もOK

「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone 4」での充電の様子を録画してみた。マット側にはケーブルが必要だが、本体充電に関してはケーブルレスになる。また充電開始時には効果音が鳴るのでわかりやすい

 iPhone3G/3GS用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」も、iPhone 4用と同様、専用ケースとマットという構成だ。専用ジャケットは、約66×122×16mm(同)、重量は47gで、これもよくある保護ジャケットと大差ない。ただし、背面のレシーバー部が大きく出っ張っており、持ち心地はやや悪い。

 充電マットは約90×90×10mmと四角形で、表面にはくぼみがあり、そこにジャケット側の出っ張ったレシーバー部をセットする。マットの重量は182gで、ゴム足もあって安定してくれるのだが、レシーバー部分しか接点がないため、やや不安定だった。また小型のため、大雑把に設置して充電というのがやりにくかった。卓上で作業していたところ、何かのはずみで接触して、充電が解除されていたこともあったので、離れた場所に置いておくのがいいだろう。

こちらはiPhone3G/3GS用の「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」。専用ジャケットは上下から挟む背面。受電用のユニットがよくわかる付属品一式
「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」のジャケットを装着させたiPhone 3GSを「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone 4」のマットに乗せて充電しているところ

 ちなみにこの両製品、同じPOWERMAT社製品ということもあって、左の写真のように、「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」のジャケットを装着させたiPhone 3GSで、「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone 4」のマットを使用するということもできた。



7種類の変換アダプタでいろいろな機器が充電できる

汎用タイプの「POWERMAT WIRELESS CHARGING for smartphones,music players and more」の付属品一式。マットは2台同時充電に対応。アダプターと専用変換アダプタ、変換アダプターケース、Dockスタンド、電源ケーブル

 次に紹介するのが、さまざまな機器に接続できる「POWERMAT WIRELESS CHARGING for smartphones,music players and more」だ。こちらは充電マットに機器本体を載せるのではなく、付属のアダプターを載せるのがポイント。そのアダプターから伸びるminiUSBケーブルを機器に接続することで、充電できるのだ。

 また、microUSBやPSP、ニンテンドー DS LITEなど7種類の変換アダプターが用意されており、スマートフォンからゲーム機まで、幅広い機器に対応する。変換アダプターには専用ケースも用意されており、アダプターに磁石で取り付け可能。卓上であってもごちゃごちゃせずに済むのがうれしい

 さらに、iPod用のDockコネクタを採用したスタンドも付いており、DSを充電しながら、Apple製品の充電もできる。

 最大2台まで同時充電可能なマットは、約152×90×10mm(幅×奥行き×高さ)の横長タイプ。重量は213gとやや重めで、持ち運ぶとなると邪魔になりそうなので、基本的には部屋に据え置きで使う製品だろう。

「POWERMAT WIRELESS CHARGING for smartphones,music players and more」の充電用マット。横長で2台まで同時に充電できる。卓上に置いておくならコレだDcokスタンドは背もたれの部分が稼働式になっており、全Appleモバイル製品の充電に対応。ただし、iPadは充電できず。自立はするが不安定だった
スマートフォンなどを充電したいときに使用する付属のアダプター。本体側をマットに乗せる付属する変換アダプタ。国内はではあまり見かけないものもある
専用ボックスに変換アダプタを収納できる写真のようにケースとアダプタを磁力で合体させることができるため、卓上での使い勝手はかなりよかった

 こちらも、アダプターを充電マット上に置くだけで、すぐに充電がスタートする。先程のiPhone用と比べて良いと思ったのが、向きを気にしなくて良い点と、アダプターとDockスタンドに磁石が内蔵されているため、マットとピタっとくっつく点だ。マットにある“○”の印あたりに設置するだけで充電できる。

 また、先ほど紹介したiPhone 4、iPhone 3GS専用ジャケットでも充電できた。マット側に内蔵された磁石である程度固定されるため、Dockスタンドよりもこちらの方が使う機会が多かった。帰宅したら、ポイっと乗せるだけで充電できるのはとにかく便利だ。

 充電性能はというと、出力は0.8A(800mA)までといったところか。というのも、iPad 1、iPad 2はともに「充電していません」が表示され、またウィルコム「HYBRID W-ZERO3」も、電源ONの状態では充電できなかった(OFFなら充電ランプが点灯した)。該当製品を持っている方は注意していただきたい。

iPod nanoは問題なく充電できた。Dockスタンドにもちゃんと直立するニンテンドーDSもしっかりと充電できた
PSP(3000)もプレイ中であっても充電可能だった。ただケーブルが短いので、プレイながらの場合は延長ケーブルがほしいところNTTドコモ「T-01A」は、バッテリーが0%の状態でも写真の通り、ちゃんと充電が開始されたこちらはauの「IS06」。Android端末はmicroUSBでの充電が主流なので、この用途が多い人も多いのでは
BlackBerry Boldを充電してみたところ「POWERMAT WIRELESS CHARGING for iPhone3G,iPhone3GS」のジャケットを装着したiPhone 3GSを「POWERMAT WIRELESS CHARGING for smartphones,music players and more」のマットに載せてみたところ。同一規格なので充電できている
iPadは1でも2でも、充電されないことが多かったHYBRID W-ZERO3は起動中では充電が開始されなかったが、電源をオフにした状態では充電を示すLEDが点灯した

iPhone 3GSとiPhone 4の充電を同時に開始したところを動画にしてみた。乗せるだけのカンタン充電がいい感じだ

 ラインナップとしてはこのほかに、ニンテンドーDS用や、HTC製スマートフォン用、モトローラー製スマートフォン用のレシーバー内蔵ケースも発売されている。


小数の機器の充電ならば即導入もOK

 無接点充電は一度利用してみると、“ワイヤレス”の便利さに気がつく。スマートフォンは比較的microUSBで統一され始めているが、ほかのモバイル製品は規格がバラバラで、電源タップやパソコンのUSB端子はすべてふさがっている人も多いのではないだろうか。そう考えると、マット側の電源ケーブルだけで済むというのは実に快適だ。

 この便利さは無線LANが登場したときと似ている。“ワイヤレスは信用できない”などいった意見も当時はあったが、実際に利用してみるとその利便性に驚いた。

 今回紹介した製品では、汎用性に対応するため、レシーバー内蔵の変換アダプターを必要としているが、それでもこれまでに比べたらケーブルは少なくて済む。現時点ではまだ受電用レシーバーが必要な状況だが、広く普及していけば、それこそ無接点充電対応デスクというように、机のどこにおいても充電されるなんていうことになるかもしれない。

 ちなみにこのパワーマット、パナソニックらが推進している規格「Qi(チー)」のマークはなく、対応していない。今後、規格がどちらかに統一されるか、さらに新しい規格が登場するのか、先行きは分からない。そういうリスクはあるが、スマートフォンとiPod/iPhoneを充電するだけというのなら、本製品は便利に使うことができる。ワイヤレス充電の世界を、一足先に体験してみてはいかがだろうか。






2011年6月14日 00:00