家電製品ミニレビュー

シャープ「インテリアホン JD-4C1CL」

~デジタルフォトフレームになる固定電話機
by 伊達 浩二

固定電話の付加価値

シャープ「JD-4C1CL」

 ここ十数年の世の中の変化で、真っ先に挙げられるのは携帯電話の普及だと思う。個人個人が携帯電話を持っているのは当たり前になっており、日常的な連絡は携帯電話同士で音声やメールで行なうのが主流になっている。

 とはいえ、固定電話を無くすことも難しい。ある時期までは、一家を構える際に電話があるのは当たり前だったし、社会的信用の面からも住宅ローンの契約時などに固定電話が必要だったのも、そんなに昔の話ではない。特に平均年齢の高い一家の場合、親類や役所などからの連絡を考えると、使わないからと言って、すぐに廃止できるものではない。

 固定電話も、努力をしてこなかったわけではない。一番期待されたのはFAX機能だったし、ナンバーディスプレイなどの機能強化や、IP電話化による低料金化などが図られてきた。しかし、FAXはメール(昔風に書けばEメール)に置き換わり、サービスも縮小気味だ。ナンバーディスプレイは携帯電話では当たり前だし、IP電話化も、機能の制限を伴う場合が多く、思ったよりは普及していない。

 というわけで、捨てるに捨てられないし、新しい展望も見えにくいというのが、現在の固定電話なのだ。

 シャープの「インテリアホン」シリーズは、そこに大型液晶を組み合わせることで、改めて付加価値を高めようとした製品だ。

 今回紹介する「JD-4C1CL」は、シリーズ第二弾となる製品で、最初のモデルに搭載されていたFAX機能などを省略し、本体サイズもひとまわり小さくしたモデルだ。


メーカーシャープ
製品名インテリアホン JD-4C1CL
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格14,135円


 本体に4.3型の液晶を搭載し、デジタルフォトフレームとして使えることを訴求している。本体色はホワイト、ブラウン、レッドの3色で、今回はブラウンにした。

 携帯電話に押され気味の固定電話に、どのような付加価値が追加されたのかを中心に見ていこう。

コンパクトな本体

 JD-4C1CLは、本体というか親機に通話機能はなく、子機とその充電台という構成になっている。親機にケーブルでつながれた受話器をつないでも、あまり使われないだろうという割り切りが感じられる。確かに、携帯電話に慣れた人にとって、位置が固定されている親機で会話するのは違和感があるかもしれない。

 なお、子機は本体に1台付属しているが、2台付属している「JD-4C1CW」というモデルも用意されている。その場合、2台目の子機には別に充電台が用意されている。

液晶は明るく、文字がくっきり見えるデモンストレーション用の画像は鮮やかに表示されるACアダプタは少し大きめだ
子機はニッケル水素充電池を使用している本体裏面は曲線による末広がりの形

 親機の本体サイズは、約225×87×86mm(幅×奥行き×高さ)で、幅はあるが、奥行きは浅くコンパクトだ。

 この製品の特徴である親機の液晶は、4.3型480×272ドットで、大きめではあるが、すごく大きいというほどではない。PSPの液晶が3.8型、iPhone 4Gの液晶が3.5型なので、それより一回り大きいぐらいだ。この液晶は、タッチパネル機能を備えており、メニューなどはわかりやすく操作できる。

フォトフレームとして使う

 フォトフレームとしての機能や操作方法は、単体のデジタルフォトフレームと同様で難しくはない。

 表示できるのは、メモリーカードスロットのカードか、そこから内部メモリーにコピーした画像だ。

 まず、本体側面のカバーを外すと、SD/メモリースティック兼用のメモリーカードスロットがある。画像の入ったメモリーカードを差すと、自動的にメモリーカードが表示対象となる。

本体側面のカバーを外すメモリーカードスロットにメモリーカードを挿す液晶は16対9なので、通常の4対3の画像を表示すると左右が余る
視野角は広い。肉眼で見ると、この写真よりも明るく見える液晶に露出をあわせて撮った。これぐらいが実力スライドショウの設定画面

 写真の表示方法は、一覧表示や1枚表示、スライドショウなどがメニューから選択できる。基本はスライドショウで、メモリーカードがセットされており、3分間操作していない状態が続くと、自動的にスライドショウが開始される。

 液晶の解像度が低いわりには、きちんと写真として表示され、十分に楽しむことができた。ただし、液晶の大きさもあるので、風景や遠景ではなく、アップ気味に撮った人物やペットの写真が向いている。

 なお、データ形式はJPGのみ、解像度は64×64~8,000×8,000ピクセルなので、ほとんどのデジカメデータはそのまま利用できる。

ちょっと面白いフォト電話帳

 フォトフレームの応用として面白いのが「フォト電話帳」という機能だ。

 電話機に登録した電話帳に、サムネール(小さい画像)がつけられるようになっているのだ。つまり、お祖父ちゃんに電話したいときは、お祖父ちゃんの写真をタッチすれば、電話がかけられる。もちろん、登録してあるところから、電話がかかってきたときは、その写真が表示される。

 最初からついてきたサンプル以外に、飼い猫の「鉄蔵」の画像を登録してみたので、写真を見てほしい。

フォト電話帳のサンプル画面鉄蔵を登録。カナ漢字変換は熟語単位右が固定電話、左が携帯のつもり
写真にタッチすると電話がかかる。ここでも写真を表示してほしかったむこうからかかってきたときは写真が表示される電話機としての設定画面。一通り細かい設定もできる

 これを行なうためには、写真を本体に転送し、名前を入力する必要がある。デジタルグッズを扱い慣れていないと、ちょっと難しいかもしれない。この製品を郷里の祖父母に使ってもらう際は、あらかじめ登録作業をしてあげてから送った方が良いだろう。

ライバルは携帯電話

 一通り使ってみた印象では、大型の液晶とフォトフレーム機能を追加することで、固定電話機に新たな魅力をもたらそうという試みは、ある程度成功していると思う。

 ただし、どうしても携帯電話にはかなわないところがある。

 たとえば、携帯電話に写真を送ろうとすれば、メールで簡単に送ることができるが、本機では難しい。写真を追加するためには、メモリーカードが必要だ。

 また、フォト電話帳に写真を登録することを考えてみよう。ほとんどの携帯電話には、内蔵のカメラがあるので、その人がその場に居れば、そこで撮影すれば、簡単に登録できる。ところが、本機では、デジカメなどで撮影した上で、本体に転送して登録する手間がかかる。

 さらに、フォト電話帳に名前を登録する際のカナ漢字変換機能でも、手間がある。携帯電話では入力を先読みしてスマートに変換できるのに、本機では昔ながらの熟語変換だ。たとえば「鉄蔵」と「鉄蔵携帯」という2つを登録するときに、携帯電話であれば、2度目に「鉄蔵」の「て」を入力した時点で、変換候補に「鉄蔵」が表示されるが、本機では「てつぞう」と4文字全部を入力する必要がある。

 そういういろいろなことを含めて、ライバルは携帯電話であるという認識が弱い気がするのだ。

  なんというか、FAX時代に企業や小規模な小売店に売っていた技術のまま、この製品を作ってしまったような気がする。全体に筋は通っているのだが、ちょっと古くさく、親切さが足りないのだ。

 たぶん、設計の人たちが思っている以上に、老齢者にも携帯電話は普及している。一例として、私の母は、もうすぐ76歳になるが、親戚や身近な人たちとの連絡は携帯電話によるメールであり、それは、ここ2年ほどの間に習得したものだ。そういう人たちは携帯電話の操作性や親切さを基準にして評価するだろう。

 もっと携帯電話がないと日常生活ができないような人たちが開発に携わると、使いやすさが大きく変わるのではないだろうか。せっかく、液晶という技術を持ち、それを固定電話と組み合わせるというアイデアを製品化したのだから、もっといろいろな可能性を追求してほしいと思うのだ。





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2010年7月28日 00:00