家電製品ミニレビュー
三菱「風神 TC-ZXC30P」
~コンパクトで使いやすい! 国内メーカーのサイクロン式掃除機の大本命
by 阿部 夏子(2013/4/17 00:00)
やっとできた! 軽くて使いやすい国内メーカーのサイクロン式掃除機
今回紹介するのは、三菱電機のサイクロン式掃除機「風神」だ。この製品の特徴を一言でいうと、機能性とコンパクトさを兼ね備えている点。
正直に言って、これまでの国内メーカーのサイクロン式掃除機は、ダイソンなどの海外メーカーに比べて遅れを取っている印象が否めなかった。サイクロン式といいながらも、フィルターを搭載しているものや、ダストボックスがいくつもあって、メンテナンスに手間がかかるもの、サイズが大きくて、移動するだけで疲れてしまうものなど……個人的に国内メーカーのサイクロン式掃除機はまだ発展途上だと感じていたのだ。
それが、三菱電機が3月1日に発売した風神を知って、そのイメージが見事に覆された。コンパクトで軽い、さらにデザインもスタイリッシュ。海外メーカーのサイクロン式掃除機に負けない性能を持ちながらも、国内メーカーならではの機能も備えている。結論から先に言ってしまうと、使ってみてもその印象が変わることはなく、パワー使い勝手ともに、大満足している。
メーカー名 | 三菱電機 |
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製品名 | 風神 TC-ZXC30P |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ヨドバシ.com |
購入価格 | 64,600円 |
実際の使用感を説明する前に、まずは基本的なスペックから紹介する。本体サイズは、216×357×283mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は3.8kg。本体カラーは国内メーカーの掃除機としては珍しい紫っぽい「シャインバイオレット」と、赤系の「ルビーレッド」の2色を展開。今回は新色のシャインバイオレットをチョイスした。
本体には、取扱説明書のほかに図入りでわかりやすい「早わかりガイド」が付属する。サイクロン式掃除機を初めて使う人でも、これを見れば使い方に迷うことはないだろう。
三菱電機では、これまでも「風神」というブランドでサイクロン式掃除機を作ってきたが、今回のモデルは、構造や設計を大幅に見直しフルモデルチェンジした製品となる。まずは、この製品の特徴を2つの項目に分けて紹介しよう。
・お手入れ要らずの本格サイクロン
まず、最初に製品のキモとなるサイクロン機能について。
サイクロン式掃除機では、旋回室と呼ばれる筒の中で強力な気流を起こし、そのときに生じる遠心力で、ゴミと空気を分離する。三菱電機では、強力な遠心力を実現するためには、旋回室にはある程度の長さと直径が必要だとし、従来モデルの「風神 TC-ZXA20P」では、2つの旋回室を横に並べた構造を採用していた。フィルターを使わないサイクロン式掃除機としては、画期的な製品ではあったが、ゴミをサイズによって3つにわける構造のため、ゴミ捨てやお手入れに手間がかかっていた。
それが、新モデルでは2つあった旋回室を1つにした。十分な遠心力を維持できるように、新たな気流技術を搭載し、目詰まりしにくい構造を実現しているという。
もう1つ新しい風神で特筆すべきことが、ゴミと空気を分離する「旋回室」と、ゴミが溜まる「ダストボックス」が別々になっていること。ちょっと分かりにくいが、一般的なサイクロン掃除機では、旋回室とダストボックスが1つになっている場合が多い。ダストボックスが透明なサイクロン式掃除機では、吸引した後のゴミがダストボックスの中でくるくると回転しているのが見えると思うが、これは旋回室とダストボックスが一体になっているからこそ。
では、これを別にして何がいいかというと、吸い込んだ後のゴミの音がしないのだ。従来のサイクロン式掃除機では、コーヒー豆やビーズなど、小さくて固いものを吸い込むと、それらのゴミが回転して、ダストボックスにぶつかって騒音の元になっていた。
風神では、ダストボックス内に起きる風を秒速2mほどに抑えているので、ゴミが舞い上がりにくく、固いモノを吸い込んでも音がしにくい。かなり細かいことではあるが、サイクロン式掃除機ユーザーには、「わかるわかる」とうなずいてもらえると思う。
・フラッグシップモデルで実現したコンパクトサイズ
次に紹介したいのは、本体サイズについて。従来2つ搭載していた旋回室を1つにしたこともあって、本体サイズは大幅に小さくなっている。部品やモーターの素材も軽量なものをチョイスしているので、重量も3.8kgと軽い。とはいっても、最近のサイクロン式掃除機はかなり小型化が進んでいるので、このサイズだけを見てもそれほど驚きは感じない。
ただ、フラッグシップモデルでこのサイズは珍しい。実は、小型のサイクロン式掃除機というのは、中級機種で作られていることが多く、上位機種に比べると性能や機能が劣っているケースが多い。たとえば、掃除機のヘッド1つとっても、モーターが搭載されている自走式のブラシと、モーターが搭載されていないブラシでは、明らかに前者の方が重い。機能面では自走式のブラシの方が優れていても、軽さを重視すれば、モーターがないブラシを選ぶという方法もあるわけだ。
確かな吸引力で不安を感じない
さて、前置きが長くなってしまったが、実際に使ってみると思った以上に良かった。まずはやはり吸引力の点。我が家では、毛足の長いラグを敷いていることもあって、海外製の掃除機じゃなきゃ! という気持ちがどこかにあった。欧米では、室内にカーペットを敷き、その上を土足で歩くので、必然的に掃除機の吸引力も高いものが求められる。
しかし、風神を使ってみると、想像以上にしっかりゴミを吸引してくれる。運転モード「強」に設定すれば、毛足の間に溜まってしまったゴミやホコリまでしっかり吸引してくれる。
また、ヘッド前方に備えられているゴム製のバンパーがしっかり壁に密着してくれるので、壁際の掃除も得意だ。フローリングの隅に溜まった小さなホコリまでしっかり除去できるので、気持ちが良い。
取り回しに関しては、さすが軽量タイプといった感じで、本体を持ち上げるのが苦にならず、部屋の移動が楽にできた。掃除中にヘッドを持ち上げると、自動でパワーダウン、30秒後には自動で運転が止まる機能も搭載されていて、感度も確かなものだった。
本体は、左右に凹凸がないスッキリとしたデザインで、壁やドアにぶつかりにくく、引き回ししやすい。
一点だけ気になったのは、延長パイプの延長できる長さがやや短いかなということ。身長166cmの私が使った時はそれほど感じなかったが、身長175cmの夫が使うと、やや短く感じた。
ゴミ捨ては、ほかのサイクロン式掃除機同様、簡単にできる。サイクロン式掃除機のゴミ捨て方法は、ダストボックスの底面がそのままフタになっているタイプと、ダストボックスを取り出してゴミを捨てるタイプがあるが、風神は後者を採用。本体からダストボックスを取り外す手間があるので、ワンタッチとはいかないが、特に不満は感じなかった。
なお、ダストボックスなどは全て水洗いできる。
日本メーカーならではの配慮も光る
風神は、吸引力や取り回しなど、掃除機の基本性能以外でも、日本製ならではのギミックを多数搭載している。
まずは、中身が見えないダストボックス。これは実は賛否両論なのだが、サイクロン式掃除機を使いたくないという人から「ゴミが見えるのが嫌」という意見をよく聞く。もちろん、「ゴミがどれだけとれたかみたい」というサイクロン好きの意見もあるわけだが、風神は、あえて中身の見えないダストボックスを採用。
これまで、ダストボックスが透明なサイクロン式掃除機を愛用してきた身としては、どうなんだろう・・…という不安もあったが、結果的には満足している。使用時にゴミが見えないというのは個人的には気持ちが良いし、収納時もすっきりとして見える。
あえていうと、紙パック式掃除機に搭載されているような「ダストボックスサイン」などは搭載してほしかった。サイクロン式掃除機は「使用後に毎回ゴミを捨てる」というのが前提になっているが、それができない時もある。透明なダストボックスなら、見た目で「あ、ゴミ捨てしなきゃ」と気付けるが、風神のダストボックスだと、忘れてしまうこともある。ダストボックス側面にゴミ捨てを促す「ゴミ捨てライン」は設けられているものの、鏡面張りのようなデザインを採用しているのでやや見にくい。
一方で、とても便利で、一度使うと「他の掃除機に戻れない!」とまで思ったのが、足で操作できる電源コード巻き取りスイッチと、ヘッドブラシの毛がらみ除去機能だ。
特に毛がらみ除去機能は、本当にスゴイ。ヘッド側面からブラシを引き抜くだけで、ブラシに絡まった毛やホコリが一気に除去できる。憂鬱だったヘッドブラシの掃除から解放された気分だ。
そのほか、布団用ブラシ、カーテンブラシ、延長ブラシなど、アタッチメント類も充実している。
サイクロン式掃除機の1つの完成形
“フルモデルチェンジ”ということで、冒頭ではだらだらと新機構について述べたが、基本的にはシンプルな製品。他社製品に搭載されているようなゴミやホコリを感知して、ライトが光る「ゴミセンサー」や、床面を検知して自動で運転を制御する機能なども搭載されていない。
ただし、掃除機を出してきて、掃除して、室内を移動して、ゴミを捨てる、本体を収納する、という掃除するときの一連の流れがストレスなくできるのは、基本性能が優れているからこそだろう。吸引力が優れているのはもちろん、日常的な使い勝手も考慮して、よく工夫されている。
これまで日本製のサイクロン式掃除機を購入するのに躊躇していた人にも、自信を持っておすすめできる製品だ。