家電製品ミニレビュー

タイガー魔法瓶「電気ケトル わく子 PCH-A」

~業界初の“蒸気レス電気ケトル”を試す
by 小林 樹
電気ケトル わく子 PCH-A

 風が涼しくなり、暖かい飲み物が恋しい季節だ。我が家は来客が多いため、近頃はお客さんが来るたびにサッとお湯を沸かして、温かいお茶を出すようにしている。

 お湯を沸かす際に使っているのが、電気ケトルだ。とにかく沸くのが早い。4人分の600ml程度なら、3分ほどで湧き上がる。相手を待たせずに済むし、沸騰後に電源が切れるので、やかんをガス火にかけるよりも、安心してお客さんに応対できる。

 今回新たに導入した電気ケトルは、これまでの電気ケトルとは一味違う。タイガー魔法瓶の「電気ケトル わく子 さん PCH-A(以下、わく子さん)」は、お湯を沸かす際に蒸気が出ないという“蒸気レス”構造を採用しているのだ。


メーカータイガー魔法瓶
製品名電気ケトル わく子 PCH-A
希望小売価格12,600円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格6,028円

 わく子さんシリーズには、容量0.8Lの「PCH-A080」と、容量0.6Lの「PCH-A060」の2サイズがラインナップしている。カラーはそれぞれベージュとブラックが用意されている。今回使ったのは、容量0.6Lのブラックだ。

 パッケージには、電気ケトルと、電源プレート、取扱説明書の3つがセットになっている。

 電気ケトル本体はコンパクトな円柱型だ。サイズは143×226×181mm(幅×奥行き×高さ)。重量は0.88kgで、片手で持つとずっしりとした重量感がある。

パッケージは、ブロック型のダンボールの梱包で届いた電気ケトル本体と電源プレート、取扱説明書がセットになっている電源プレートに乗せたところ
本体上部。フタには給湯ロックボタンが付属。ロック中はお湯が出ないようになっている本体底面。こちらを電源プレートに差し込む

 ボディの上面にはフタが付属している。フタには蒸気孔は見当たらない。フタを外すと内側は、熱くなりにくいよう、ステンレス製の内容器と鋼板ケースの本体が二重構造となっている。内容器には、「200/400/600ml」の水量の目盛りが記載されている。

フタを外したところ。ステンレス製内容器と鋼板ケースの二重構造を採用して、ボディ側面が熱くなりにくいようにしている内側には、「200/400/600ml」の目盛りが書かれている

 消費電力は1,300W。電源コードの長さは1.3mで、コードは電源プレートの裏に巻き取れる。

 さっそく、わく子さんでお湯を沸かしてみよう。操作はシンプルで、電気ケトルのフタを開けて水を注ぎ、フタを閉めて電源プレートに乗せる。電源プレートのプラグをコンセントに差し込んだら、ハンドルの根元に搭載している「湯沸かしスイッチ」をONに設定。すると、スイッチがオレンジ色に点灯する。

「湯沸かしスイッチ」通常のOFF時加熱中はオレンジ色に点灯する

 しばらくしてお湯が温まってくると、グツグツと煮え立つような音が本体から聞こえる。これはとても小さな音で、静かな場所でないと気づかないほどだ。

 蒸気は確かに出ない。沸騰後、スイッチは自動でOFFになり消灯したが、それでも蒸気は出なかった。なお、沸騰を知らせるブザー音などはなく、スイッチの消灯で沸騰に気づく仕組みだ。


沸騰中も蒸気が全く出ない

 湧き上がったら、「給湯ロックボタン」を押して、お湯を注ぐ。この時初めて、お湯から沸き立つ湯気を見た。

「給湯ロックボタン」を押すと、ロックが解除されてお湯が出るお湯のキレはいい600mlの湯を沸かすと、4人分のお茶を入れてちょっと余った

 蒸気レスを可能にしたのは、フタの内側に搭載された「蒸気キャッチャー構造」だ。沸騰時に出る蒸気を瞬時に検知して、蒸気の量を最小限に抑える。

 そして、湯沸かし時に出た蒸気は、蒸気の取込口からふた内部の蒸気キャッチャーに取り込む。蒸気は蒸気キャッチャー内の冷却通路を通って冷やされ、結露して水滴となり、注ぐ時に出る構造になっている。

 蒸気レスで使うために特別な操作は必要なく、蒸気キャッチャー内の手入れも必要ない。

フタをひっくり返したところ。丸い穴がいくつか開いている。この奥が蒸気キャッチャーだ沸騰時に出る蒸気を検知して最小限に抑え(1)、湯沸かし時に発生した蒸気はフタ内部の蒸気キャッチャーに捕集され(2)、蒸気キャッチャー内の冷却通路で冷やされる(3)

 では、蒸気レスであることによって、どんなメリットが得られるのか。1つ目は、置き場所を自由に選べること。蒸気による結露の心配が無いため、棚の中や、紙類の近くでも使えるのだ。

 特に物が多いキッチン周りでは、置き場所を選ばないという存在は重宝する。

蒸気レスで結露の心配が無いため、棚の中でも使える3口ガスコンロの我が家のキッチン。夕食前ともなると、3口ともに調理用の鍋やフライパンで塞がっており、「ちょっとお茶が飲みたいな」と思ったら電気ケトルの出番
沸騰中や沸騰後も蒸気が出てこない。万が一触れてしまっても危なくない

 2つ目は、高温の蒸気が出ずに安全なこと。うっかり蒸気孔の近くに手を置いて火傷する心配が無い。家族が囲むテーブルでも安心して使える。高齢者や子供のいる家庭には嬉しいだろう。

 そして3つ目は、結果的に部屋に蒸気が放たれず、部屋が暑苦しくならないことだ。調理時のキッチンは、火を使ったり人が動き回ったりしてそれでなくとも熱が篭もりがち。蒸気レスの電気ケトルは、部屋の蒸し暑さに拍車を掛ける心配がない。

湧き上がりはスピーディ、保温性もなかなかのもの

 電気ケトルの基本的な特徴である、湧き上がりの早さにも満足した。水温7.5℃、室温25.7℃という条件下で、湧き上がりにかかる時間を計測した。200mlを沸かすのにかかった時間は88秒。満水時の600mlのお湯を沸かすのにかかった時間は2分58秒だった。これはスペックの数字と大差なく、使ってみても遅いと感じたことはない。

 保温性はどうだろうか。わく子さんは、本体が二重構造になっているため、沸かしたお湯が冷めにくい構造になっているという。

 600mlの水を沸かした場合、沸騰直後の湯温は99.6℃だった。それから1時間後の湯温は76.4℃、2時間後の湯温は61℃、さらに3時間後の湯温は48.1℃となった。

 沸騰から3時間以上経っても、お風呂のお湯よりは熱いままだったが、保温効果自体は、電気ポットや保温マグには及ばない。そもそも、電気ケトルはお湯を素早く沸かすのが第一の目的なのだから、冷めにくいというぐらいで十分だろう。

 ちなみに同社では昨年、同じく蒸気レスタイプの電気ポット「蒸気レスVE電気まほうびん とく子さん」を発売しているので、ご参考にされたい。

本体は熱くならず、転がしてもこぼれない

お湯を沸かした後、本体側面はほんのりと暖かくなる。ハンドルや本体上部は熱くならない

 安全機能では「カラ炊き防止機能」や、倒してもお湯がこぼれない「転倒流水防止構造」を備えている。

 本当に倒れてもお湯がこぼれないのだろうか。試しにわく子さんにお湯を入れた状態で転がしてみた。すると、給湯ロックがかかっている限り、いくらわく子さんを転がそうが、逆さに持とうが、お湯は溢れてこなかった。


本体を転がしても、お湯は溢れない

 わく子さんで物足りなかった点は、沸騰したかどうか、わかりにくい点だ。お湯を沸かしている間は蒸気も出ず、音も比較的静かなので、沸騰を知らせるサインといえば、ハンドツの付け根にある「湯沸かしスイッチ」の色だけ。沸騰中はオレンジ色に点灯していたものが、沸騰を終えると消灯するので、それで沸きあがりがわかる。

 お湯が沸いたら、一瞬でも「ピッ」と音かなにかで知らせてもらえるほうが、わかりやすいと思う。

手元でササッと一杯沸かせる手軽さが良い

汚れが目立ったらクエン酸で洗浄

 手入れの面では、内容器に汚れの付きにくいフッ素加工を施している。内容器の汚れが目立ってきたら、1~3カ月に1回くらいの頻度で、クエン酸で洗浄すればいい。

 具体的には、満水まで入れた水にクエン酸30gを溶かし、お湯を沸かして2時間放置する。2時間後にお湯を捨て、汚れが残っていたらスポンジでこすり落とす。最後にもう一度水を沸かし、内容器と注ぎ口をすすいだら完了だ。



くず湯や生姜紅茶など、暖かい飲み物で迫り来る寒さを乗り越えたい

 こうしてひと通り使ってみると、わく子さんは電気ケトルの基本機能である“素早くお湯を沸かす”ことを十分クリアしている。その上で、蒸気レスのため置き場所に困らず、安全性も高いという、使い勝手も向上させている。

 子供やお年寄りがいる家庭や、キッチンに湿気が篭もってしまうのが嫌な方、電気ケトルの置き場の上に棚がある方などにオススメしたい。







2012年10月19日 00:00