記事検索
バックナンバー

家電製品ミニレビュー

FDK「富士通充電池」

〜FDKのニッケル水素電池は、eneloopと何が違うのか?
by 藤山 哲人
外見もソックリな富士通充電池とeneloop。はたして中身は同じものかのか?

 先日はFDKの「僕はスマホ充電用の電池です!」という、剛速球ストレートなネーミングのアルカリ電池をレポートした。しかしFDKの電池にはもう1つ強烈なネーミングを持つ電池がある。それがニッケル水素電池の「富士通充電池」である!


「富士通充電池=eneloop」?

 電池業界では老舗のFDKだが、ニッケル水素電池の開発・製造は子会社であるFDKトワイセルが行なっている。このFDKトワイセルという会社は、2009年までは三洋エナジートワイセルという社名でeneloopの製造を行なっていた。

 しかし、2008年に発表された三洋電機とパナソニックの統合で問題になったのが、両者のニッケル水素電池部門だ。パナソニックは充電式EVOLTA、三洋はeneloop(エネループ)でシェアを競いあっていたため、両者が統合されるとニッケル水素のシェアの大部分を押さえてしまう。そのため独占禁止法やアメリカの反トラスト法に抵触しないように、それまでeneloopの製造を行なっていた三洋エナジートワイセルが富士通の子会社であるFDKに売却され、同時に社名もFDKトワイセル変更されたのだ。

 なので、現在発売されているeneloopは、その100%を富士通傘下のFDKトワイセルが製造し、パナソニックが三洋電機ブランドで発売しているという、ややこしい関係になっている。

富士通充電池。今回は単3電池4本と充電器のセット「FC344FX-JP(FX)」を購入

 今回紹介する「富士通充電池」も、eneloopを作っているFDKトワイセルが製造しているため、筆者の周りの電池に詳しい人々の間では「中身はeneloopと同じなんじゃないの?」と囁かれている。何しろ、スペック面はまったく同じ。単三形の容量は1本1,900mAhだし、約1,800回繰り返し使用できる点、満充電後に5年間放置した場合の電池残存率は約70%な点も、双方ともに謳われている。

 そこで当レビューでは、「富士通充電池の性能はeneloopと同じモノか?」ということを主眼に置いて、富士通充電池の性能を探ってみよう。


メーカー FDK
製品名 富士通充電池
ニッケル水素充電器セット
FC344FX-JP(FX)
希望小売赤く オープンプライス
購入場所 Amazon.co.jp
購入価格 2,880円

電池容量はいずれも1,900mAh(単三形1本)。しかも、約1,800回繰り返し使用できる点、満充電後に5年間放置した場合の電池残存率は約70%な点も同じだ。なお、左が富士通充電池、右がeneloopとなる


外観はeneloopそっくり、というかほとんど同じ

 まずは2つのニッケル水素電池を、重さや寸法を測って比較してみよう。比較対象としたのは、2011年にモデルチェンジされた、HR-3UTGB型番のeneloop。型番の横に描かれている王冠マークの下に線があるものだ。


測定項目 富士通充電池
HR-3UTA
eneloop
HR-3UTGB
直径 14.1mm 14.1mm
長さ 50.2mm 50.2mm
プラス極の直径 5.5mm 5.5mm
プラス極の高さ 1.5mm 1.5mm
マイナス極の直径 10.3mm 10.3mm
マイナス極の高さ 0.2mm 0.2mm
重さ 26g 26g

太さもガス抜き穴のないプラス端子もまったく一緒 マイナス側の出っ張りの直径もまったく同じ
重さもまったく同じ26g。う〜ん、そっくりすぎでしょ!

 かなり似ている、って言うか、まったく同じ数値だ。単三形のサイズは、直径は13.5〜14.5mm、高さは49.0〜50.5mmの範囲内に収めることが規格として定められているが、ここまでピッタリだとは思わなかった。そういえば、型番も違和感を覚えるほどに似ている。

 特に似ていると思ったのが、プラス極の形状だ。ニッケル水素電池は、内部にガスが発生した場合のためにガス抜きの穴が開いているのだが、どちらもシール状のカバー下に隠してある。

 そしてよく、よく、よ〜くプラス極を見てみると、製造工程のロボットが掴んだあとなのか、どちらも半円状の跡がついている。

プラス端子をよく見ると、半月状の跡がどちらの電池にもある

 怪しい! 絶対に怪しい! 同じ生産ラインで作っているとしか思えない痕跡だ。

 さらに、これまた非常に似ている充電器も調べてみた。充電時間から見るとFDKの充電器は急速式ではないので、eneloopの充電器も急速充電器じゃない、一般タイプと比較してみよう。


■■ 注意 ■■
・分解/改造を行なった場合、メーカーの保証は受けられなくなります。
・この記事を読んで行なった行為(分解など)によって、生じた損害は筆者および、家電Watch編集部、メーカー、購入したショップもその責を負いません。
・内部構造などに関する記述は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 バラして中を見てみると、ありゃ? ありゃりゃ? すんゲー似てるぞ!

充電器の見た目もソックリなので、もしや同じ基板では? と思い分解してみる 左がeneloopの充電器、右が富士通充電池の充電器。同じじゃん! なお、eneloopは急速充電器ではなく通常タイプで比較している

 部品の一部は、違うシリーズなどの互換品が使われているものの、回路はまったく同じ。試しにFDKの基板をeneloopの充電器のケースに合わせたら、ピッタリ収まっちゃうぐらい互換性あり! 唯一FDKの充電器が異なる点は、eneloopの充電器に比べるとデザインが古臭く見えるところだ(笑)。

 外観やスペック、型番やラインナップ、充電器から見ると「富士通充電池=eneloop」は“同一人物”としか考えられない。

電池の中身はどう違うのか? まずは消費電力が少ない豆電球で実験

 しかし、電池は極わずかな添加物を加えたり、材料の配分を変えるだけで、大きく性能が変わってくる。だから外見がまったく同一でも、中身は別物という可能性が大いにある。

毎度おなじみ? の実験環境。パソコンでデータを取りながらスイッチ類を制御する

 そこでここからは、富士通充電池を実際に使って、利用できる時間や放電カーブを見て中身の検証をしてみよう。性能の比較対象はもちろんeneloop。いずれも2回のリフレッシュ充電(いったん電池をカラにしてから満充電にすること)したものを使っている。以前の実験から2〜5回ほどリフレッシュ充電を行なうと、電池のパフォーマンスを最大に引き出せるためだ。

 なお今回のeneloopは、新品を使用している。当初は「1,800回繰り返し使えるなら、新品じゃなくても結果は同じだろう」と踏んで、20回ほど繰り返し使ったeneloopを利用しようと思ったのだが、測ってみると性能が少し落ちていたので、慌てて新品のeneloopを用意した。


■■ 注意 ■■

・以降の実験結果は、室温がコントロールされていない環境で行なっています。電池は温度により、その特性が大きく変わる点にご注意ください。また、実験結果は記事作成に使用した個体に関してのものであり、すべての製品について共通であるとは限りません
・筆者および家電Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

全体的に同じような曲線を描くが、新品のeneloopは富士通充電池よりも常に高い電圧を保持している。20回使ったeneloopは中盤で富士通充電池と同じ程度

 結果はeneloopが常に富士通充電池より高い電圧を出し続け、8時間31分で電池がカラの状態の1.0Vになった。一方、富士通充電池は8時間12分で電池がカラとなった。eneloopより20分ほど短く電池切れになったことになる。

 電圧のカーブに注目すると、中盤〜後半は電圧こそ違うものの、ほぼ同じようなカーブを描いている。より細かく見ていくと、前半はeneloopのカーブが緩やかなのに対して、富士通充電池は急なカーブを描いてるようだ。

 ただ、ここで20回繰り返して使ったeneloopをテストしてみると、電圧は富士通充電池とほぼ変わらなかった。これだけでは中身が同じか否かを判断する決定的な証拠にならない。さらに実験を続けよう。

デジカメなどの大電力機器で間欠利用すると、FDKはわずかに電圧高め

 豆電球の連続点灯(およそ0.3A)では、富士通充電池はeneloopよりも電圧が低く、利用時間も10分短い結果に終わったが、デジカメなどの大電流機器で使った場合はどうだろうか?

 ここでは、およそ1.2Aの大電流が流れるようにして(抵抗1Ω+電流計の内部抵抗)、電圧の変化と利用時間を調べた。

大電流でもeneloopは高い電圧を保持。一方の富士通充電池は、後半になり急に電圧が落ちてしまった

 大電流では、豆電球より電圧の差が大きくなったが、カーブは豆電球とほぼ変わらない。利用時間で見てみると、富士通充電池が1時間42分で最短、続けて20回ほど使ったeneloopが1時間45分、一番長く使えた新品のeneloopは1時間48分となった。富士通充電池との差6分を長いと取るか、誤差と取るかはかなり微妙な線だ。

こちらは電流で比較したグラフ。オームの法則は〔電圧〕=〔抵抗〕×〔電流〕なので、抵抗が同じ1Ωなら電圧が高ければ電流も高くなる

 これに続けて、先ほどと同様に大電流を流しつつ、20分使っては10分電池を休ませる間欠利用を調べたのが次のグラフだ。

新品の富士通充電池とeneloopはまったく同じと言っていいほど、同じようなカーブを描いている

 グラフで違いが見られるのは下の凸部分だ。これは電池を使っている状態だが、大電流の連続利用と同様に、富士通充電池はeneloopよりも電圧が低くなっている。しかし電池を休ませると、eneloopと同じ電圧まで回復する。しかも、後半2つの上の凸の頂点は、eneloopよりも高い電圧まで回復している。大電流の間欠利用では、富士通充電池が有利のようだ。

 4時間30分を過ぎたところで、eneloopは電池がカラとなる終止電圧1.0Vに対し、1.003Vまで下がった。ギリギリで持ちこたえたが、少しでも気温が違ったらアウトになっていた可能性大なので、あくまで富士通充電池と比べれば、間欠利用には弱いといっていいかも知れない。ただし、20回繰り返し使ったeneloopは、全体的に電圧が低かったためか、終止電圧までまだ余裕があった。

 利用時間で見てみると、新品の富士通充電池とeneloop、20回使ったeneloopともにおよそ5時間で、その差は1分以内となっている。全体的には、やはり両者は似ているということが言えそうだ。


似ているがまったく同じじゃない。デジカメやストロボには富士通充電池が有利かも

 実験したデータを総合的に見てみると、ラジオやLED懐中電灯と言った省電力機器では、富士通充電池は序盤の電圧が低めになる。もしかするとLED懐中電灯では、暗さを感じるかもしれない。また電子辞書などでバッテリー残量計がついている場合は、満充電しているにもかかわらず、残量計が半分を示すといったこともあるだろう。また、スマホの緊急充電器や電池式のモバイルルーターなど、大電流で長時間使う用途ではパフォーマンスを出し切れない可能性もありそうだ。

 一方、デジカメやストロボといった大電力機器の間欠利用では、富士通充電池はeneloopよりわずかだが高い電圧を維持できるようだ。特に後半の回復率が高いので、モデルの撮影会などで、シャッターを切りまくる場合は別として、旅行のスナップ写真を撮る程度であれば、電池の回復がかなり見込まれ、より多くシャッターを切れるだろう。

小電力機器の懐中電灯やラジオ、大電力機器で連続利用するスマホの緊急充電器やミニ四駆などは、富士通充電池よりeneloopがいいだろう デジカメやストロボといった大電力機器の間欠利用では、富士通充電池はeneloopよりわずかだが高い電圧を維持できるようだ

 さて、冒頭の「富士通充電池はeneloopと同じもの?」という疑問に答えを出すときが来た。

 外観やスペック、利用時間はまったくと言っていいほど富士通充電池とeneloopは酷似しているが、この結果だけを見れば、富士通充電池は大電力機器での間欠利用で性能が高くなるようにチューニングされ、eneloopはワイドレンジで使えるようになっているようだ。

 まとめれば、外観がソックリなのは、最終的に電池の金筒に納める製造ラインは同じであるためで、電池の中身の物質や添加物は、富士通充電池とeneloopでは異なる、というのが筆者の推測だ。

ぜひ急速充電器の発売を!

セットで同梱されていた充電器は急速タイプじゃなかった。しかも、電池を1本や3本を充電したり、両端に2本の電池をセットしても充電できない。ここは是非改良を期待したい

 富士通充電池で残念なのが、電池の性能ではなく充電器が弱点という点だ。

 今回購入した電池と充電器のセット商品では、急速充電器ではなく、通常の充電器(低速充電器)が同梱されており、容量1,900mAhの単三電池であれば充電におよそ7時間かかる。しかし、他社では別売品として、電池を2〜3倍高速に充電できる急速充電器を発売しており、通常で3時間半、早いものだと1時間半ほどで充電できる。

 しかしFDK製の富士通充電器では、急速充電器が発売されていないため、急速充電する方法がないのだ。しかも充電は2本もしくは4本単位でしかできず、3本や1本での充電ができないという、非常に使い勝手の悪いものなのだ。これはイザというときに、厳しいハンデとなる。

 さらに電池のマニュアルでは、他社製の充電器の利用を禁止している。eneloopの急速充電器を使った場合はメーカーの保証外になるため、厳密に正しく使用するのであれば、富士通充電池は2012年8月現在急速充電する術がない。いくら電池の性能が良くても充電に7時間もかかってしまうのはいただけない。

 FDKには、一日も早く1本単位で急速充電できる充電器を発売してもらいたい。というか、発売しなければせっかくのいい電池が台無しになってしまう。筆者も今回の実験結果から、一眼デジカメ&ストロボの富士通充電池への乗り換えも検討したいと思っているが、それは急速充電器が発売されればという条件付きだ。

 価格面で見れば、富士通充電池はeneloopよりおよそ200円程度高い。しかし、大電力機器はたいていが間欠利用なので、ぜひデジカメやストロボなどで、富士通充電池のパフォーマンスを実感して欲しい。






2012年8月21日 00:00