家電製品ミニレビュー

ダイソン「エアマルチプライアー AM01テーブルファン 30cm」

~心地よい風を生む、羽根のない扇風機
by 小林 樹
エアマルチプライアー AM01テーブルファン 30cm

 先週末、家電量販店に足を運んだ。夏の商戦真っ盛りの量販店では、扇風機売り場が特に混雑していた。店頭には扇風機がズラッと並び、その周りを、扇風機を買い求める多くの人がごった返している状態。まさに“一大旋風”が起きている。

 中でも、ひときわ涼しい顔して風を吹かしている奴がいた。ダイソンのエアマルチプライアーだ。家電Watchでは、すでに昨年スタパ齋藤さんが紹介されているが、もう一度改めて、ダイソン「エアマルチプライアー AM01テーブルファン 30cm」を紹介させていただく。

 


メーカーダイソン
製品名エアマルチプライアー AM01テーブルファン 30cm
希望小売価格39,000円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格43,680円

 

 エアマルチプライアーは、イギリス・ダイソン社の“羽根がない”扇風機である。扇風機といっても羽根がなく、独自の技術で円形の気流が周囲の空気を巻き込む。さらにその吸い込んだ空気の最大で約15~18倍もの風量を生み出して、安全に、ムラなく風を送り出すことができるという。

 私が今回使用したのは、風を送り出す円形部の直径が30cmのテーブルファンタイプだ。本体サイズは356×155×547mm(幅×奥行き×高さ)、消費電力は40Wで、ダイソンの扇風機シリーズの中では、コンパクトなタイプとなっている。我が家は物が多いので、シリーズの中でも小さめのタイプを選んだ。

 組み立ては簡単で、円形部とモーター部を重ねてカチッと接続部をはめるだけだ。

本体背面。本体はツルッとした質感だ本体横面組み立ては簡単。円形部とモーター部を重ねてカチッと接続部をはめるだけ
上から見た図。本体は比較的コンパクトサイズなので、場所をとらずに設置できそうだ本体下部の裏面にはコールセンターの番号などが記載されている

 本体重量は約1.78kgで、片手でも持てる。コードの長さは1.8mで、コードの先は動物の尻尾のように丸い形をしていた。

電源コンセント丸みを帯びた形をしている電源コードの接続部

 カラーはホワイト/シルバーを使用した。ほかに用意されているのは、アイアン/サテンブルー、アイアン/マゼンタ、シルバー/アイアンの3色で、アイアン/マゼンタとシルバー/アイアンの2色は直販サイト限定となっている。

輪っかから風が出てるけど、風がムラにならないの? という素朴な疑問

まずはダイニングキッチンに設置した

 さっそくダイニングキッチンに置いて、動作を確認してみた。家族4人が一軒家で暮らす我が家のダイニングキッチンは、人の出入りが多く、調理で熱がこもりやすい。例年であればもっともエアコンの冷房が欠かせない部屋である。

 なお、製品名にはテーブルファンとあるが、我が家の食卓に置くにはちょっと大きいので、床に置いて普通の扇風機と同様に使った。

 まず、本体下部の操作ボタンに触れて、電源をONにする。本体の前面下部には操作ボタンが3つあり、向かって左から、電源ON/OFFスイッチ、無段階式で風量を調節するツマミ、左右90度の首振り機能のON/OFFスイッチという順で並んでいる。

向かって左から、電源ON/OFFスイッチ、風量を調節するツマミ、首 振り機能ON/OFFスイッチ電源をONにしたところ

 電源がONになると、風が吹き出した。徐々にフワアアアア~……という風が吹く音が聞こえてくる。普通の扇風機だと、“ブゥゥゥン”という羽根の回転音がするのだが、それとは異なる音で、うるさくない。風量を大きくすると、音もつられて大きくなり、ドライヤーのような音がした。

 では、羽根がないのに、いったいどこから風が出ているのかというと、円形部のふちにある、細かな隙間が風の吹出口となっている。なので、円形部から風が出るといっても、円の中央はほぼ無風状態なのだ。試しに円形部の中央にティッシュをかざしてみても、ほとんど揺れない。

 これでは風がムラになるんじゃないか、と心配したのだが、それは杞憂だった。少し距離を置いたところでティッシュをかざすと、ブレのない風が中央付近から吹いているがわかった。少し距離が離れたところにいれば、ちゃんとムラのない風を感じることができるのだ。

羽根がないから、ムラのない風が送り出せるのだという風は、円形部のふちにある、細かな隙間から噴き出している円形部のふちから風が吹いている
円形部の中央からは、風は感じられない少し距離を置いたところでティッシュをかざしたら、ちゃんと風が感じられた

 風にムラがないということは、他の場面でも感じられた。暑い日の夜、帰宅して、食卓につこうとダイニングキッチンの扉を開けた時のことだった。約10畳の部屋には涼しい風が吹いていて、「あれっ、もうエアコンの冷房いれてるの? 」と思わず母に尋ねたら、「ちがうよ。ダイソンの扇風機だよ」と床のほ うを指差した。母の指差す先には確かに、エアマルチプライアーの姿があった。壁際にちょこんと居座りながら、やや上方に向けて風を送り出している。背が低いので視界にも入りにくく、動作音も気にならないので、言われなければ動作していると気づかないほどだ。それでも、約10畳の部屋に涼しい風が巡っているのはわかった。

 羽根のある扇風機だと、扇風機の風が当たっている時とそうでない時とで、肌に感じる風の感触がはっきり異なるのだが、エアマルチプライヤーの風にはそれがない。エアコンの風のように、フワァッと部屋に風の動きを生んでいるような感じだ。

 試しに、動作の様子がわかりやすいよう、本体上部にティッシュをくっつけて、スイッチON→風量を小から大へ調節→首振り機能をON→停止までの一連のようすを撮影した。以下、ご確認いただきたい。


風の様子がわかりやすいよう、本体上部にティッシュをくっつけて、スイッチON→風量を小から大へ→首振り→停止のようす。風量を大きくすると、音も大きくなるのがはっきりわかると思う

 

 なお、高さ調節機能は搭載していないが、上下の角度超調節は上下に10度ずつ可能で、円形部を手で動かし操作する。今回、床に置いて使っていたが、椅子に座って食事する際には首のあたりまでしっかり風が届いていた。

下方に10度傾けたとき上方に風を送るとき手動で調節する

 リビングや和室でも使用した。コンパクトなので、部屋間の持ち運びは楽だ。どちらの部屋でも、電源を入れると、部屋に涼しい風が漂うのを感じられた。低いソファに座ることの多いリビングや、畳に座す和室では、このエアマルチプライヤーの高さがちょうど良かった。また、映画や音楽を視聴中でも、1番小さな風量に設定しておけば、動作音が耳障りだと感じることはなかった。

リビングで使用したところ和室で使用。高さがほど良い

エアマルチプライヤー動作時に手を突っ込んで、安全性を確認

 安全面では、羽根に手を挟む心配がないため、動作中に円形部に手を突っ込んでも、なんら問題なし。これなら、子供がいる家庭でも安心して使用できるに違いない。

 また、本体下部には滑りにくい素材を採用しており、フローリングに置いたところ、押してもあまりズレなかった。

 ここで試しに、動作中に倒してみたところ、停止はせずにそのまま風を出し続けていたが、周りのものを吸い込んだり、巻き込んだりということはなかった。もし万が一倒れてしまったとしても、慌てずに本体を起こせばいいのだ。

円形部に手を挿入するも、無事。これ、一度やってみたかったんです本体下部は滑りにくい素材で、フローリングに置いたところ、ズレにくかった動作中に倒してみたところ、停止はせずにそのまま風を出し続けていた
コンパクトに収納できる

 手入れは、本体を布巾で拭くだけ。本体を分解して手入れする羽根付きの扇風機に比べたら、手間はかからない。また、本体の組み立ておよび解体が簡単なので、使わない季節に収納する際も楽だ。比較的かさばらずに収納できるのも嬉しい。

 いっぽうで、使いにくさを感じたのは、リモコンがないこと。せっかく大風量で遠くまで風が届くのが良いのに、操作の際には本体のボタンを押すために、本体の近くまで行かねばならないので、面倒だ。また、タイマー機能を搭載していないので、就寝時の使用には適さない。


あとはお財布と相談だ

  正直に言うと、今回使ってみるまで、エアマルチプライヤーの1番のウリは、デザイン性だと思っていた。だが、実際使ってみると、見てくれだけじゃなかった。コンパクトなので、ダイニングキッチン、リビング和室など、各部屋に簡単に持ち運べる。さらに、風量は無段階式できめ細かく設定できるので。調理中に暑くなって大風量が欲しい時や、就寝中にそよ風程度の涼しさが欲しい時にも対応する。

円形部の向こう側はしっかり見えるので、インテリアの中で存在感が大きすぎない

 もちろん、デザイン性も良い。設置すると意外と存在を主張せず、インテリアになじむ。おそらく、風を送り出す部分の、輪の向こう側が丸見えだからだろう。そんなに視界をさえぎらないし、むしろ高さがないのであまり視界に入らず、邪魔だと感じることはなかった。

 以上、機能面では文句ナシだが、そのぶんお値段も約4万円と高いのは難点だ。

 先週末の夜、人の波が引いた後の量販店にもう一度足を運んだところ、扇風機の棚は現品すら売り切れ続出で、商品はガラガラだった。だが、エアマルチプライヤーは相変わらず、涼しい顔をして並んでいるではないか。やはり、普通の扇風機とは価格が一線を画しているだけに、なかなか手を出しにくいように思う。昨年は私自身、「いいな~欲しいな~」とは思ったものの、今年ほど電力が逼迫した状況じゃなかったというのもあって、購入までには至らなかった。だが、実際使ってみると、この値段の高さはデザイン料だけではないのだとわかる。

 一軒家などで色々な部屋に持ち運んで使いたい人にはもちろん、暑がりな人や、冷たい風が苦手な人にもオススメできる。夏の間、ずっと傍に置いておく1台として、この上質な風を選択肢に入れてみてはいかがだろうか。





2011年6月28日 00:00