家電製品ミニレビュー

Apple「Apple Battery Charger」

~あのAppleから“オシャレな充電池セット”が出た!
by 藤山 哲人
Appleの「Apple Battery Charger」。2本の充電ができる充電器と電池6本のセット商品だ

 「Apple II」にはじまり、「iMac」、そして極薄の「MacBook Air」、「iPhone」や「iPod」、「iPad」やソフトウェア群に至るまで、Apple(アップル)の製品は無駄にカッコイイ! 

 そんな洗練されたデザインが得意なAppleが、電池をデザインするとどうなるのか? その答えがコレ。「Apple Battery Charger」だ。



メーカーApple
製品名Apple Battery Charger
(アップル バッテリー チャージャー)
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格2,800円

ホワイトのパッケージに中身の写真だけというパッケージ。宣伝文句は一切ない。これはAppleの誇りと威厳を感じざるを得ない!

 なんというか、外箱からして電池のデザインじゃない。高性能さを訴える「長持ち!」やら「デジカメに最適!」なんて宣伝文句は一切なし。そこにあるのは、中身の写真と各国語で書かれた「充電池 + 電池」ということだけだ。「Appleの電池を買うのは高性能と知ってのこと。わさわざ宣伝するまでもない」という、Appleの誇りと威厳すら感じさせる。

 今回は、このAppleの電池の実力はスゴイのか、それともこのデザインはただのハッタリなのか、調べてみることにしよう!



パッケージも電池も充電器も、めちゃめちゃApple!

まるで宝石箱のようなパッケージ。マニュアルは紙ペラ1枚ではなく、豆本になっているあたりもAppleらしいデザインだ

 外箱を開けると、iPhoneやiPodと同じようなデザインの中箱が現れる。中箱の中には、充電器がまるで宝石のように納まっており、そこにはシルバーの電池が2本刺さった状態になっている。

 この充電器は独特の形状をしており、まず、これまで見たこともないほどコンパクトだ。瓶入りの錠剤風邪薬のパッケージとほぼ同じ。透明感のあるグロスホワイトのボディは、角がすべてR(設計用語で曲線のこと)になっていて、可愛らしさすら感じる。

 なによりオシャレなのは、電池のプラスとマイナスが当たる金属部分だ。一般的な金属のタブではなく、プラスの部分は露出部を最低限に押さえ丸く抜いたもの、マイナス部分にいたっては、バネ式の丸い球のようになっている。

 つまり、どこから見てもAppleの製品なのだ!

1本または2本の充電ができる充電器。全体に丸みを帯びていて、小さく可愛いデザインになっている充電器のプラス側の金属端子。ただ単に金属板をプラスチックでカバーしているだけだが、このこだわりがAppleのデザインだマイナス側の端子。エンジニアのはしくれである筆者から見れば「一般に流通しているものを使えばいいのに」と思うところだが、わざわざ独自に面倒な部品を使って丸いデザインを強調させているあたりが凄い!

 コンセントのプラグ部分は折りたたみ式になっていて、持ち歩く際にはコレを引っ込め、充電する場合は90度曲げて刃を露出させることが可能。またコンセント部分は取り外しができ、別売の「ワールドトラベルアダプタキット」を使えば、各国のコンセント形状に交換できるため、世界中のどこにでも使えるようになっている。

 さらに、メガネ型のコネクタを持つ電源ケーブルが差し込めるので「充電器をコンセント差し込むと邪魔になる」という場合は、電気店などで売っているめがねコネクタの電源ケーブルを買ってきて、コンセントから離して充電することも可能だ。

コンセントの刃(プラグ)の部分は工具なしで着脱でき、各国のコンセントに変えられるようになっている電気店で購入できるめがねコネクタの電源ケーブル。これがあれば、充電器でコンセントをふさぐことがない
通常の充電の状態。充電状態を示すLEDも点灯する。最初は何かのリセットボタンかと勘違いしてしまっためがねコネクタを接続しても充電できる

 充電にかかる時間は、マニュアルに「5時間以上」とかなりアバウトに書かれているが、この充電時間を考えると、急速充電器でないというのは確かだ。しかも1回の充電では、1本もしくは2本しかできないので、電池を2本以上使う機器には少し不向き。充電完了の合図は、本体にプチっ! とついているLEDが目印となる。緑に光れば充電完了、オレンジ色なら充電中という合図になっている。さらにオレンジの点滅という合図もあり、これは充電器が対応していない電池をセットしたり、電池そのものの寿命になった場合になっている。

 デザイン面の特長としてはさらに、最近のAppleの製品と同じく、ネジや継ぎ目がまったく見えないという点もある。ネジを隠すカバーをしているわけでもなく、どうやって組み立てて、どうやって分解するのか非常に謎。世界の分解好きが集うWebサイト「ifixit」にも、分解方法は掲載されていない(笑)。

 ちなみにAppleのホームぺージでは、充電器をコンセントに差しっ放しにして、充電が完了した電池をそのまま放置しておいても、一般的な充電器に比べ電力消費が少ないという特長が指摘されている。


電池容量はエネループと同じだけど、ところどころに違いが……

 充電器を一通り見たところで、話を電池本体に移そう。パッケージには、電池が6本付属していると書いてあったが、充電器に刺さっているのは2本。残りの4本はどこにあるの?と探していると、中箱の下段に隠されていた。パッケージを開ける楽しさを演出してくれるのも、またAppleだ!

 電池のデザインはシンプルで、シルバー地に必要最低限の印刷がしてあるだけ。電池の種別はエネループと同じニッケル水素電池で、容量の表示は「Min. 1900mAh」。mAhという単位は、電流(mA)と放電時間(h)を掛け合わせたもので、容量1,900mAhの電池を電流100mAの機器で使用した場合、使用時間の目安は約19時間ということになる。この1,900mAhという容量は、エネループとまったく同じだ。さらには「Made in Japan」の文字も。Webのとある噂では「Appleが電池を作っているという話はないので、電池はエネループのOEMじゃないか?」と囁かれているほどだ。

開封直後に「あれ、電池が2本しかない……」と思ったら、中箱の充電器の下に残り4本の電池が隠されていた。なんてことないかもしれないけど、ビックリ!電池には、アメリカで単3を示す「AA」と、ニッケル水素電池を示す「Ni-MH」、それに電池の容量を示す「Min. 1900mAh」の文字が記されている。3行目には「Made in Japan」の文字も

 試しにエネループと形状を比べてみると、太さは14.2mmでまったく同じ、長さは突起部を含まないと48.3mmでまったく同じだ。

 ただし、突起を含めた長さを測ったところ、エネループが50.5mmなのに対し、Appleの電池は50.3mmと僅かに小さい。たった0.2mmではあるが、エネループが電池ボックスに入りにくいと感じた機器では、このApple電池がジャストフィットするかもしれない。

 またプラス側の電極を見比べてみると、Appleの電池が大きく見える。というのも、エネループのプラス端子はAppleのように正円(真円)ではなく、4カ所だけ少し飛び出したような形状になっている(この形状の意味は後述)。実際に測ってみたところ、Appleの端子の直径は、エネループの飛び出した部分と同じ大きさ。飛び出していない部分で比較すると、僅かに0.1mmだけエネループが小さかった。

エネループと比較。突起を含むとAppleの電池がわずか0.2mmほど短くなっているAppleの電池はプラス端子が正円(真円)になっているが、左のエネループは4隅にわずかな“とんがり”があるマイナス極は、電池ボックスとの接触面がエネループより広い
エネループには、プラス側の電極の付け根に小さな穴が開いている。ニッケル水素電池にはこの穴があることが多いのだが、Appleの電池にはない

 もう1つ違う点があって、それはAppleにはガス抜きの穴がないところだ。エネループのプラス側の電極は、前述の四方の飛び出した部分にガス抜き用の穴ある。しかし、Appleの電池にはソレが見当たらない。エネループに限らず、ニッケル水素電池は電池を極限まで使い切る(使用を中止して充電しなければならない終止電圧の1.0Vを大きく割って使う)とガスが発生するため、これを逃す弁が必要になすはず……なのだが、ドコにあるんだろう? これまた謎だ。

 またマイナス側の電極もエネループと少し違っている。これは電池ボックスとの接地面積が違うだけという話なのだが、測るまでもなくAppleの電池のほうが電極に触れる丸い部分が大きくなっている。


開封直後でもホントに使えるのか? さっそく実験

 と、ここまで外見でAppleの電池を見てみたが、見た目だけではエネループとの差はよくわからない。ということで、実際に使って、電池自体の性能を確かめてみよう。

これが実験に使用した装置。10月に掲載したエネループの連載で活躍しました。まだ見ていない人はぜひご一読を!
 実験に使った装置は、豆電球を10分間点灯し、その後20分間消灯を繰り返すというもの。この電圧の変化で、電池の能力を見るというワケだ。以前に掲載した「エネループとエネループライト」のレビュー記事と同じものとなる。このエネループの連載記事には、ニッケル水素電池の賢い使い方なども掲載しているので、ぜひ合わせて読んで欲しい。

 まずは開封したばかりの電池を測定してみよう。使用するのは、Appleの電池と、7カ月前に製造したエネループ。そして性能を比較するために、エネループと一般的なニッケル水素電池「GP Recyko+」のデータも取ってみた。秋葉原でマニアの方々に人気の電池だ!。

 ちなみに、AppleのWebサイトによれば「自己放電がとても低いので、フル充電して1年間放置しても80%の電気が残っている」という。一方のエネループは1年放置すると85%(三洋電機調べ)とのこと。あくまでメーカー発表の情報ではあるが、充電して長く放置してあっても使えるという点では、Appleもエネループも互角といえるかもしれない。

開封直後、豆電球を10分点灯、20分消灯を繰り返した、間欠利用における電圧の変化の比較。エネループは18時間持ったが、Appleは15時間で切れた

 結果は上の図の通り。豆電球を10分点灯しては20分休ませてを繰り返した間欠利用では、いずれも開封直後の電池なのに、大幅に違いが出た。エネループはほぼ18時間使えたが、Appleの電池は15時間でアウト。その差は3時間だ。

 ただし、厳密にいえば、Appleの電池は製造日が印刷されていないため、エネループと同じ7カ月前のものと同時に比較することはできない。これが双方の性能差をそのまま示しているとは、必ずしも言い切れない。

 意外だったのは、一般的なニッケル水素電池として買ってきたGP Recyko+。中国産ながら、開封直後の状態で19時間も使えたのには驚きだ。こちらもパッケージには製造日が記載されていないが、アキバでは人気の電池だけあって、おそらく製造直後のものと予想される。


フル充電でもエネループとほぼ同じ性能

 開封直後の電池は、Appleの電池が製造からどれだけ経過していたののかが分からないので、一概に比較できなかった。それならば、フル充電した状態で比較しよう。これなら経過期間に依存されないので、同じ土俵で戦えるはずだ。実験内容は先ほどと同じく、豆電球を10分間点灯しては20分休ませる間欠利用だ。

フル充電した電池で、豆電球を10分点灯、20分消灯を繰り返し、間欠利用した電圧変化。Appleもエネループも、いずれも20時間40分で同時に電池切れとなった

 結果は上の表の通り。エネループのAppleの電池も、20時間40分で同時に電池切れ。使用時間は同じで、またもやOEM説を色濃くする実験結果となった。

 ただ、まったく一緒というわけではない。途中のグラフを比較してみると、スタートから序盤の4時間ほどまでは、Appleが0.05Vほど高い電圧を出しており、中盤になるとエネループがわずかに高い電圧を示している。

 一方、比較参考に買ってきたGP Recyko+は、スタート当初から低い電圧となっているものの、エネループやAppleより2時間長い22時間40分をマークしてしまった!

 こういう場合、紹介する電池より寿命が短いものに買い直して再実験し、Appleの電池をヨイショする記事にするという手もあるが、真実を伝える家電Watchなので、そのまま掲載してしまおう。決して再実験が面倒なワケじゃないぞ(笑)。


連続利用でもエネループとほとんど同じでした

 今度は、連続運転での使用時間について見てみよう。以前に掲載したエネループの記事では、ニッケル水素電池は連続利用でも間欠利用でも、実際に電球が点灯している時間はほぼ同じ、という結果が出た。そのため、20時間40分という間欠運転の寿命から、休ませていた時間を除く――つまり、連続利用したときの理論値を計算してみると、だいたい7時間になるのではないかと予想される(GP Recyko+の場合は7時間36分)。

 というわけで、連続運転をスタート。なお充電式の電池は、数回充放電を繰り返さないとパフォーマンスがよくならない(詳細はエネループの連載を参照)ため、開封してから使用と充電を4回繰り返した電池を使っている。

豆電球を連続で点灯した場合の電圧変化。電池は4回充電を繰り返し、性能を安定させたものを利用している。どっちもほぼ7時間という結果だった

 実験結果は、Appleが7時間16分、エネループが6時間53分だった。ほぼ理論値どおり7時間という結果だった。

 エネループがAppleに比べ7時間を割った結果となったが、これは測定する環境の違いだろう。実は、エネループは筆者が寝ている間に計測した測定値で、つまり部屋が寒い状態だ。対するAppleは、筆者が仕事中に計測した値で、部屋は暖かい。電池は温度によって性能差が出てしまうのだ(寒いと能力が落ちる)。

 以上のことを考慮すると、Appleの電池はエネループとほぼ同じ性能を備えているということが言えるだろう。

 なおGP Recyko+は、Apple・エネループよりも長い7時間24分で電池切れとなった。やっぱりコイツスゴイかも!

繰り返し性能以外はエネループと一緒。デザインに価値アリ

 というわけで、このAppleの充電式電池は、基本的な性能でいえばエネループとほとんど一緒。あとは、今回は実験しなかったが、繰り返し使用が何回できるかという違いだけになる(エネループは公称1,500回、Appleには“数百回”とある)。

 用途としては、エネループ同様、デジカメなどの電子機器に使っても何ら問題はないだろう。ちなみにAppleのWebページでは、Apple製のワイヤレスマウスやキーボードに最適と謳っている。

 弱点は、充電器が一度に2本しか充電できず、充電時間も5時間以上かかるという点か。そのため、電池のヘビーユーザーには向きそうにないが、これはニッケル水素電池に対応する市販の急速充電器を別途購入することで克服することも可能だ。

 価格面では、意外とお買い得感がある。実売価格は、充電器と単3電池6本が付いて2,800円(12月7日時点、 Amazon調べ。以下同じ)。一方のエネループは、単三4本と急速充電器付きの「N-TGR01AS」が3,083円、単三4本と充電器セットの「N-TGN01AS」が2,400円。これに、単三2本パック740円が加わると、若干ではあるがAppleの方に割安感がある。まあ、Apple充電器が2本までしか対応していないため厳密な比較はできないが、少なくとも「高くはない」ことは言えるだろう。

 MacやiPhoneユーザーをはじめとするAppleファンの人にはもちろんお勧め。そうでなくても、充電器の小型さやデザインを取るなら、エネループの代わりにAppleという選択肢も十分にアリだろう。





2010年12月9日 00:00