家電製品ミニレビュー
ダイソン「DC31 motorhead」
■進化を止めない
ダイソンのハンディクリーナー「DC31 motorhead」。従来モデルからモーターの改良などで小型・軽量化が図られている |
ダイソンというのはつくづくスゴイ会社だと感心させられる。
サイクロン方式という新しい技術を掃除機に持ち込み、高級掃除機というジャンルを誕生させたのも画期的だが、その後もハンディタイプやスティックタイプを投入したり、長らく「大きい」と言われ続けてきたサイズをDC26で見事に小型化して見せた。
普通の考え方をすれば、掃除機というのは、もはや成熟したジャンルの製品であり、さほど画期的な進化は見られないだろう、としか思えないのだが、そんな考えをあざ笑うかのようにタイミング良く、しかも驚くべき新製品を投入してくる。
他社製品が付加価値という多彩な変化球で勝負する中、ど真ん中直球勝負というか、あくまでも基本機能の強化で攻めてくる姿は、清々しささえ感じさせられる。こういったあたりは、社内の資源を掃除機の改善という一点に集中させることができる専業メーカーならではの強みなのだろう。
というわけで、今回取り上げるのは、そんなダイソンから昨年秋に登場したハンディタイプの新型クリーナー「DC31 motorhead」だ。ハンディタイプとして以前から発売されていた「DC16」の後継となる製品だが、見事なほどに小型・軽量化が実現されているのが特徴だ。
■これなら疲れない
果たしてハンディと呼んで良い物か……。そんな印象さえあった従来モデルのDC16に比べると、今回のDC31はまさしくハンディ。これなら実際に持ち運べるし、手も疲れないと実感させられるサイズとなっている。
側面。電動工具のようなイメージのデザイン | 背面。上部の丸い部分がモーター。下に充電用のコネクタがある |
本体は322×112×204mm(幅×奥行き×高さ)。数値上は従来のDC16の350×110×225mm(幅×奥行き×高さ)から若干のサイズダウンに過ぎないが、比べてみるとまさに一回りほど小さく、よくよく見比べてみると、取っ手の上の部分、モーターが内蔵されている部分がかなりスリムになっている。
DC31との比較 | 筆者宅で昔から使っているコード式のハンディクリーナー。サイズとしてはさほど変わらない印象 |
モーター部分が大幅に小型化されたおかげで、実用的な大きさと重さになった |
DC31には、同社が4年をかけて開発したという「DDM(Dyson Digital Motor) v2」が搭載されている。このモーターは、DC22DDMにも搭載されていたモーターの後継に当たる最新版で、内部の電流の向きを変えるためにブラシを利用せず、電子回路によって電流の向きを変えるいわゆるブラシレスモーターとなっている。
掃除機などで使われている一般的なモーターは、接触するブラシによって機械的に電流の向きを変えるという方法でモーターが回転するため、接触するブラシの摩擦によるパワーロスが発生するが、ブラシレスモーターではこのようなロスがない。要するに根本的な構造を見直すことで、パワー効率を高めたわけだ。
実際、同社の発表によると、DDM v2は、従来のモーターと比べて同じ電力あたりの効率が2倍とパワフルでありながら、サイズは従来の1/3程度と小型化を実現している。これによって、従来、本体上部で場所を占有し、しかも重さを感じる原因ともなっていたモーター部分が大幅にスリムになっているというわけだ。
実際、従来のDC16は手に余る印象だったが、DC31はようやく手に収まるといった印象になった。重量も従来のDC16の1.55kg(モーターヘッドは1.8kg)から、DC31は1.32kg(モーターヘッドは1.51kg)となっており、手に楽に持ち上げることができる。
今までは、手の上にあるモーター部分が重く不安定な印象があったが、DC31は頭が軽くなり、それでいて取っ手部分の下のバッテリーに適度な重さがあるため、手に持ったときの安定感が非常に良い。楽々とは言わないまでも片手で十分持てるサイズと重さになったので、実用性がアップしたという印象だ。
■吸引力は健在
肝心の吸引力はどうかというと、これはさすがだ。
本体の取っ手部分をつかみ、人差し指の部分にあるボタンをスイッチを引き金を引くように握りこむと、「フィィー」という感じの独特の高い音を立てて空気が吸い込まれる。
掃除の様子。軽く近づけるだけでゴミが吸い込まれる |
この状態で床などのゴミにノズルを近づければ、たちどころにゴミが吸い込まれ、回転しながらダストカップの中に収まる。
背面のスイッチでモードを切り替え。出ている状態が標準モード、押し込むと強モードになる |
従来のDC16と異なり、今回のDC31ではパワーモードも選択できるようになっており、取っ手部分の上、ちょうどモーターの後ろの部分に押し込み式のスイッチがあり、これを押し込んだ状態にすると強モード、もう一度、押して出た状態にすると通常モードになる(吸込仕事率は強力モードで65W、通常モードで38W)。
標準モードでは、さほど強烈という印象はないが、強モードにするとかなりパワフルで、手のひらを近づけるとグイッとしっかりと吸い付いてくる感じで、床やテーブルのゴミなども軽く近づけるだけで軽々と吸い取ることができる。
ただし、通常モードなら約10分間利用できるが、強モードの場合6分しか利用できなくなってしまう。ハンディクリーナーの場合、気になる場所をスポット的に掃除するという使い方になるので、6分動作すれば十分だが、長時間利用したい場合は動作モードをうまく切り替えながら使うと良いだろう。
標準モードと強モードの切り替えの様子 |
■絨毯も楽々掃除できるmotorhead
3つのヘッドが付属 |
今回使用したDC31 motorheadには、先端のブラシを出し入れできるコンビネーションブラシ、隙間ノズル、そしてその名の通り内蔵モーターでブラシを回転させることができるモーターヘッドが付属しているのだが、このヘッドがなかなか便利。
一般的なハンディクリーナーは、フローリングの床やテーブル、家具周りなどにあるゴミを吸い取るのには適しているが、絨毯などにちらばったゴミを吸い取るのはあまり得意ではないのだが、モーターヘッドを使えば楽々掃除できる。
本体からすぐにヘッドという構成になるため、見た目は使いにくそうだが、ヘッドの先端部分が可動式となっており、床に押し当てても常に水平を保つことができる。
実際、ヘッドを絨毯に押し当ててみると、ヘッドが吸い付くような印象で、非常にスムーズに掃除できる。しかも、ヘッド内部のブラシによってゴミが掻き出されるようにして吸い込まれるので、間に詰まったゴミなども確実に吸い取ることができる。
ヘッドの幅が狭いので、あまり広い範囲の掃除には向いていないが、絨毯敷きの部屋がある場合は重宝しそうだ。
モーターヘッドの回転の様子 | モーターヘッドで絨毯を掃除している様子 |
■楽になった充電
お手入れについては、まず充電が楽になった。従来のDC16はバッテリーが本体に固定されていたため、電源ケーブルが届く範囲に本体を置いておく必要があったが、DC31は本体からバッテリー部分のみを取り外せるため、本体はクローゼットなどにしまっておいて、バッテリーだけを充電することができる。
メーカーからの直販で6,000円前後と高いようだが、交換用のバッテリーを単体で購入することもできるので、場合によっては複数のバッテリーを交換しながら使うこともできるだろう。
取っ手部分のボタンを押すとバッテリーを取り外せる | バッテリーのみで充電可能 |
サイクロン方式の欠点はゴミ捨て。ぜひホコリが舞わず、スマートに捨てられる方法を考案してもらいたい |
ゴミに関しては、底面のボタンを押し下げると、クリアビンの底面がパカッと開き、そこから捨てることができる。ただし、開くと同時にホコリが舞い上がり、細かなゴミもひっかかることがあるので、あまり手軽とは言えない。紙パック式に比べると、この手間がサイクロン方式の最大の弱点だ。
よって、掃除機に画期的な進化をもたらしてきたダイソンには、次にこのゴミ捨ての手間を改善してもらいたい。溜まったゴミをホコリを立てず、引っかけず、スマートに捨てる方法をぜひ考案していただきたいところだ。
2010年2月5日 00:00