家電製品クロスレビュー
シャープ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」その2

~時間はかかるが、味は文句なし
by 小林 樹
シャープ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」

 注目の家電製品を複数の人間が交代で使うことで、多角的な観点からレビューする「家電製品クロスレビュー」。今回は、シャープのスチームオーブンレンジ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」を取り上げる。1回目は家庭でいつも料理をしている主婦目線でのレビューだったが、2回目となる今回は、実家で親と同居している私がレビューする。

 本題に入る前に、お恥ずかしいながら我が家の食卓について少し触れさせていただきたい。我が家ではふだん、料理が趣味の母が食事を用意している。だが、親子で生活リズムも食事の時間もバラバラなので、結局自分で自分の食事を用意したり、冷蔵庫に残っている余り物をレンジでチンして食べることが多い。そんな日常にヘルシオがどう馴染むのか、試してみたい。


メーカーシャープ
製品名ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格32,668円

 ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1は、“水で調理する”ヘルシオシリーズの、コンパクトタイプだ。100℃以上の高温の加熱水蒸気で調理するため、食材の栄養素を損なわずに、余分な油や塩分を落とせるという。要するに、健康を意識した人向けのヘルシーな料理が作れるのだ。

 本体サイズは、490×400×345mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約17kg。庫内の容量は18Lで、4人分の調理にも対応する。

 他のヘルシオシリーズに比べると、かなりコンパクトになったというが、今まで普通のオーブンレンジしか使ったことのない私や家族から見ると、やや大きめな印象を受けた。

 設置は、左右どちらかに10cm以上、もしくは両側に5cmずつ隙間を開ける必要があるが、本体背面は壁に沿って設置できる。物が多い我が家のキッチンでも設置することができた。

本体背面は壁に沿って設置できる本体上部に蒸気の噴出口がある


鳥のネギ味噌焼きは、肉に味噌の味が染み込んでおいしい

 調理に入る前に、使い方を確認しておこう。ヘルシオは、調理のたびにタンクに水を入れておく必要がある。取り扱い説明書には、食材と水をセットすれば、時間や温度の設定を自動でやってくれる「自動メニュー」が約50種類用意されていた。

 付属のレシピから、これはおいしそうだ! と目星をつけて作ったのが、鳥のネギ味噌焼き。調理方法はまず、鳥もも肉を1枚、約250gを用意して、身の厚いところを切り開き、皮はフォークで穴をあけておく。調味料は、味噌大さじ2杯と、ごま油大さじ1杯、砂糖小さじ1/2杯、白ネギのみじん切り大さじ1杯、七味唐辛子としょうがの絞り汁を少々。この調味料と鳥肉を合わせてビニール袋に入れ、冷蔵室で約1時間漬けておく。

 付け合わせとして、皮をむいたじゃがいもを6等分にする。1時間後、みそをしごいた鳥肉とじゃがいもを、ヘルシオのアミに乗せ、自動メニューの15番「鶏の照り焼き」でセットする。

水タンクをいれる鳥のネギ味噌焼きを作ってみよう。鳥もも肉は1枚(250g)
付け合わせには、レシピどおりじゃがいもを用意した味付けや仕込みが終わったら、自動メニューの15番、「鶏の照り焼き」でセットする

 調理をスタートして10分もすると、本体上部の蒸気口からボボボボッと白い蒸気が噴出してきた。ヘルシオの中をのぞくと、黒い本体内部を白い蒸気が対流しているのが見える。約25分後、香ばしい匂いと共に、調理が終了した。

 できあがったものを皿に盛った。皿に盛られた鳥のネギ味噌焼きは、油が落ちており、ファミレスで出てくるような、油がテカテカとのっている鳥肉とは違った。

 鳥肉にナイフを入れると、鳥の皮が薄くなっている。油が落ちた鳥の皮は、プルプルした弾力だ。肉は、キュッとしまった感じで、油は滴っていない。

 味はどうだろうか。肉をひとくち口に運ぶと、しっかり味が付いていて、おいしい。調理前は、味噌や塩の分量が少なめなので、味が出るか心配だったが、味噌の味がしっかり肉の中に染み込んでいて、ネギの味がピリリと利いている。油が落ちた肉というのは、もうちょっとササミのようにパサパサした食べ応えなのかと思っていたが、肉の食感は柔らかかった。付け合せのじゃがいもも、ホクホク。鳥肉と合わせてペロリとたいらげてしまった。

鳥のネギ味噌焼きが完成した調理後の網の下には油と水分が落ちている
油の落ちた鳥の皮は、プルプルとした弾力だ肉の油が滴ることはない

 この鳥のネギ味噌焼きのように、自動メニューを使えば、難しい温度や時間を設定する必要がないので便利である。ほかにも、自動メニューの「蒸し野菜サラダ」を選択して、青野菜のとろみあえや、春野菜のごまあえも作ることができた。

web上のヘルシオレシピ

 なお、私はweb上のヘルシオレシピをよく利用した。食材や調理方法からレシピを検索でき、使いやすい。


焼きいもがめちゃウマ! 皮までおいしい

 いろいろヘルシオを使っていく中で、我が家の人気メニューに躍り出たのが、焼きいもである。レシピに載っていたので、「ヘルシオで焼きいも……? 」と思いつつ、試しに作ってみたら、とてもおいしかった。

 作り方は簡単。洗ったさつまいもにフォークで数カ所穴を開け、角皿に並べる。水タンクに水を入れたら、自動メニューで「焼きいも」を選択。約40分後、もくもくとした蒸気とともに、焼きいもができあがる。

さつまいもをセットする直径は5cm以下でなければならないできあがり。皮には水分が少なく、カサカサ、パリパリとした質感だ

 焼きいもを手に取ってみると、皮の質感が蒸し器で作ったものとはっきり異なっていた。ヘルシオで作った焼きいもは、皮がパリッと固く、水分が少ない。皮と中身との間に隙間ができていて、爪を立てなくとも、ペリッと皮がむけるのだ。

 焼きいもを割ると、中から湯気が出てきて、一瞬でカメラのレンズが曇った。外側は触れるくらいまで温度が下がってきても、中身は熱々のまま。しっかり中まで熱も通っている。

 口に入れてみると、柔らかいのにベチャベチャしていなくて、おいしい。自然の甘みがほど良い。

 さらに、皮もおいしい。香ばしい味わいで、手が止まらなくなる。皮までおいしく食べられる焼きいもに出会ったのは、初めてだった。調理時間は40分かかるが、このおいしさなら納得だ。

中身は熱々だ湯気ですぐにレンズが曇る
皮がおいしくて先に食べてしまった端のほうはカリッと焼けていて、さつまいもチップスのような食感だ

デパ地下グルメの味も損なわないスチーム機能。ただし、温めには時間がかかる

 突然だが、最近父がデパ地下グルメにハマり出した。毎晩のように、肉まんや唐揚げを買ってきては、母に「チンして」などと手渡している。

説明書には、惣菜によって加熱方法が記載されている

 そこで、デパ地下で買ってきた家族皆の肉まんと唐揚げを、ヘルシオで温めてみることにした。普段のレンジでは、どちらもおいしくあたためるのが難しい惣菜だ。

 ヘルシオには、独自の「ウォーターオーブン技術」を活かした温め機能、「しっとりあたため」と「サックリあたため」がある。普通のレンジの加熱よりも時間がかかるが、そのぶん食材に適した、キメ細かい加熱の設定ができる。食材によってしっとり温めが良いのか、カラッとしあげるべきなのかは、説明書に一覧で記載されている。まずは、肉まんを「しっとりあたため」で加熱を開始した。

 だがしかし、10分ほど経ってもなかなか調理が終了しない。10分なんてあっという間、と思うかもしれないが、普通の電子レンジで1分程度しかかからないものを10分も待っていると、意外と長く感じるのだ。

 そして、予想も超えることが起きてしまった。「いったいいつまで待たせるんだ! 」……父が星一徹のごとく、テーブルを叩いたのだ。普段はものすごく温厚な父なのだが、食べ物のことになると神経を尖らせるタイプ。仕事で疲れて帰ってきて、全然食事が始まらないので堪忍袋の緒が切れたらしい。

 時間はかかっても、ヘルシオならではのうまみの凝縮を味わって欲しかったのだが、味どうこうよりも、時間を優先せねばならない時もある。そんな時には、素直に手動で加熱を選ぼう。一般的なレンジよりは時間がかかるが、2分前後であたためられる。

 結局父は途中で肉まんをヘルシオから取り出し、いつものレンジに突っ込んで加熱。1分も経たないうちにピーッと加熱終了の音が鳴り、「ほら、見ろ。早くできるだろう」と私を一瞥した。

 私のほうは、ヘルシオであたためていた肉まんを再加熱。それから数分で出来上がった。ヘルシオであたためた肉まんを食べてみると、ふわっとした食感で、中の具はジューシー。これを一緒に味わえたら良かったのになぁ…と思いながら、蒸し器で蒸した時のような味わいを噛みしめた。

肉まんをあたためた蒸し器で温めた時のように、外はふわっ、中はジューシー

 ほかにも、唐揚げや揚げだし豆腐、野沢菜のおやきの温めにも挑戦した。唐揚げも普段のレンジより時間がかかったが、衣がサクッと仕上がった。揚げだし豆腐は普段のレンジだと衣がベチャベチャしてしまうのだが、「サックリあたため」で、衣のサックリ感とプルプル感のバランスがちょうどよく仕上がった。野沢菜のおやきも、普段のレンジだとペタッと縮んでしまうのだが、ヘルシオの「しっとりあたため」では、ほどよく水分を含んで、しっとり仕上がった。

唐揚げの衣はサクサク揚げだし豆腐は、衣のサックリ感とプルプル感のバランスがちょうどよく仕上がったおやきはしっとり仕上がった

 ウォーターオーブンによる温め機能は、幅広い惣菜をにきめ細かい設定で対応する。一方で、おいしく作ろうとすると、調理に時間がかかってしまうのはネックだった。我が家では、買ってきた惣菜を温めるのは、早くご飯を食べたい時。ただ温めるだけなら、普通のレンジでいい。やはりヘルシオは、ヘルシオならではのヘルシーなメニューを口にしたい人が買うべき製品なのだと思った。

時間をとるか、味をとるかという究極の選択

 正直なところ、これまでは健康食とかヘルシー料理というと、どうしても色気のない食卓をイメージしてしまっていた。特に自分は肉が好物なので、健康のためには「ガマン」することが大事だと思っていた節がある。ヘルシオを使ってみたことで、肉のように一般に高カロリーと思われるものでも、色々なレシピのバリエーションによって、ヘルシーに食べる方法があるのだとわかった。ガマンしてストレスをためているよりも、ヘルシーに調理しておいしくムシャムシャ食べる方がよっぽど健康的なのかもしれない。

 ヘルシオが教えてくれたのは、健康な食生活とは、ガマンすることよりも、工夫次第なのだということ。その工夫として、ヘルシオ独自の「ウォーターオーブン技術」があるのだ。この技術を、3万円台前半で導入できるというのは魅力である。

 ただし、現在自分は親と同居しており、レンジは温めの使用がメイン。今後親がもっと健康やカロリーを気にするようになったら改めて、導入を提案しようと思う。






2011年6月17日 00:00