家電製品クロスレビュー
シャープ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」
シャープ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」 |
注目の家電製品を複数の人間が交代で使うことで、多角的な観点からレビューする「家電製品クロスレビュー」。今回は、シャープのスチームオーブンレンジ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」を取り上げよう。初回は、共働きで毎日の食事を作っている私のレビューからお届けする。
メーカー | シャープ |
製品名 | ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 32,668円 |
■1人や2人暮らしでも使いこなせるコンパクトなヘルシオ
詳細なレビューに入る前に、まずはAX-CX1の特徴をさらりと紹介しよう。
ヘルシオシリーズは、水で調理する独自の「ウォーターオーブン」機構により、食材の余分な油や塩分を落としながら調理できるというのが最大の特徴。「油で揚げないから揚げ」や、油を使わずにパリッと仕上げる「鶏の照り焼き」など、話題になったメニューも多い。
ヘルシオの人気により、その後各社様々な「ヘルシー調理」を謳った機能を搭載したオーブンレンジを展開してきたが、過熱水蒸気調理を最初に搭載したのはまぎれもなくヘルシオが初めて。さらに、加熱水蒸気だけで最初から最後まで調理するのもヘルシオだけだ。
ただ、ヘルシオにはその独自の機能ゆえ、従来のオーブンレンジとは仕様が異なる。まずは本体サイズが大きい、蒸気を使うために本体の側面や上面、背面にスペースを設けなければならないなど――また、何百というと豊富な自動メニューも、1人暮らしや2人暮らしではなかなか使いこなせないものだった。
そこで、新しくラインナップに加わったのが今回紹介するAX-CX1だ。従来より大幅にサイズダウンした本体と、1人や2人暮らしでも使いこなせる適度なメニュー。さらに、レトルト食品を使った新たなメニューも追加されている。
今回は週のほとんどの食事を自宅で作る「自炊派」の私が使った様子をご紹介していこう。なお、AX-CX1については、ライター「すずまり」さんによる、詳細なレビューも掲載済みだ。今回のクロスレビューと併せて読んでいただけると、より理解を深めていただけるだろう。 [ → リンクはこちら]
本体は、サイズ490×400×345mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約17kg。以前、高級タイプのオーブンレンジのレビューを自宅でした時は、置き場所に困って結局ダイニングテーブルの上に置いて使った――なんてこともあったが、AX-CX1なら自宅にあった棚にすっぽりと置くことができた。重さは約17kgで、決して軽いとは言えないが、ギリギリ1人でも設置できるサイズだ。
庫内の容量は18Lで、ヘルシオのラインナップ中、最も小さいもの。付属の角皿は1枚で、上位機種で対応する2段調理はできない。とはいえ、実際に使ってみて「小さいな」と感じることは一度もなく、ほとんどのメニューが4人分まで対応している。
ヘルシオと一般的な電子レンジ、およびオーブンレンジが一番違うのは、やはり水を使うことだろう。本体の操作パネル下には水タンクが設けられていて、水を使うメニューの際はその度に水を入れる必要がある。また、本体下部分に設けられているつゆ受けには、調理に使った後の水が溜まるので、これもそのつど捨てる。
本体には、角皿1枚、調理網1枚、水タンク、つゆ受け、取扱説明書とレシピ集を兼ねたクックブックが付属する。
扉を開けたところ | 水タンクは本体前面の操作ダイヤルの下に設けられている | 手前に引き出すようにし取り出す |
給水タンク | 横から見たところ | 本体前面下部に取り付けて使用するつゆ受け |
本体付属の角皿(左)と、調理網(右) | 調理網は角皿の上に載せて使用する | 本体付属のクックブック |
■まずは、ヘルシオの得意メニューから
ヘルシオが届いて、まず試したのは「揚げない鶏のからあげ」。ヘルシオの代表的なメニューで、家電量販店の店頭で行なわれている実演でも取り上げられることが多い。AX-CX1では、から揚げがさらに簡単に作れるようになっている。
用意するのは、市販のから揚げ粉と鶏もも肉だけ。鶏肉をカットして、から揚げ粉をまぶす、あとはAX-CX1の自動メニューで焼くだけという手軽さだ。角皿に網を乗せたら、鶏の皮が上になるようにして、置く。後はメニュー番号を合わせてスタートボタンを押すだけだ。材料2人分で、長時間は約20分。ちなみに、鶏のから揚げは水を使って調理するため、事前に水タンクに水を入れておく。
市販のから揚げ粉を使う | 鶏もも肉とから揚げ粉をビニール袋の中であえる | 網を乗せた角皿の上に皮目を上にしてのせる |
調理後のから揚げ |
できあがったから揚げは、見た目は普通に作ったものとそれほど大差ない。噛んだときに、ジュッと油が出てくるあの感じはないものの、肉は柔らかく、みずみずしい仕上がり。私個人の意見としては、これで充分満足できる。最近の市販のから揚げ粉には味もしっかり付いているので、味付けの手間も省ける。
カロリーカットできるのはもちろん、後片付けが圧倒的に楽なのが嬉しい。油が跳びちることもなく、使用後の油を片付ける必要もない。お弁当にも活躍しそうな嬉しい一品だ。
■焼き魚は毎回これになった!
約1ヵ月間のレビュー期間中、なるべく毎日AX-CX1を使ってきたが、最も活用回数が多かったのが、焼き魚。AX-CX1ではサバ、ぶり、あじ、さけなど、一般的な焼き魚に対応している。調理時間はサバの場合約24分、塩ざけの場合約20分(いずれも2切れの場合)と決して短いわけではないが、皮がパリっとして、中はふっくらと仕上がった。
しかも角皿の角には魚から落ちたと思われる油がジワーっと溜まっている。ここでもしっかりカロリーオフできているのだ。
塩サバを加熱する。皮を上にして、表面に切れ目をいれておく | 焼きあがり | 時間はそれなりにかかるが、皮はパリッと、中はジューシーに仕上がる |
塩ざけ4切れを一度に加熱する。4切れの場合加熱時間は約22分 | 焼きあがり | 角皿の端には油が溜まっている |
調理時間の短縮にはならないが、裏返したり、焼き具合を確認したりというような手間が一切ないというのは大きい。私の場合、まず魚をセットして、その間に味噌汁やサラダなどの副菜を作るというのが、定番だった。
後片付けは角皿と網の水洗い、さらにAX-CX1本体の水受け皿の排水を毎回行なう。決して楽チンとは言わないが、備え付けの魚焼きグリルよりは良い。魚焼きグリルだと、どうしても洗うのが手間に感じて、使った後そのままにしてしまうが、角皿を使うAX-CX1の場合は「洗わざるを得ない」状況になるので、結果としてはAX-CX1の方が良い。
■グラタンやパンなどの本格調理にも対応
ロールパンを焼いているところ |
高級機種のオーブンレンジを購入する層というのは、基本的に料理が好きで、しかも健康にも気を使っているという人が多いと思うが、AX-CX1では、一部の機能を省略して本体の小型化などを実現している。では、オーブンレンジを買ったら一度は作りたい手作りのパンや、グラタンなどの手がかかる料理はできるのだろうか……答えはイエスだ。
付属のクッキングブックには、手作りパンからグラタン、ピザまで本格的なレシピも掲載されている。そこで、さっそく手作りのロールパンとグラタンを作ってみることにした。
まずはロールパンから。自分で生地を捏ねて、一次・二次発酵までする本格的なパンだ。発酵や寝かしの時間が含めると、準備してから焼きあがるまでの時間は約3時間弱。楽々・簡単とは言わないが、仕上がりにはかなり満足。やはり焼き立てのパンのおいしさは格別。夫がその場で一気に6個! 完食していた。おいしく作るポイントは、最初の捏ね工程でしっかり時間をかけて捏ねること。
パンの成形や捏ねなど普段なかなかやらない作業なので、子供と一緒にやるのも楽しそうだと思った。
材料を合わせて捏ねていく。この捏ね時間が重要で、時間にすると約10分捏ね続ける | 捏ねた生地をひとまとめにしてまずは一次発酵。40℃に設定して、約45分発酵させる | 一次発酵後の生地。生地の真ん中に穴を開けて戻ってこなければ、発酵がうまくいっている |
生地を9等分して、20分ほど休ませたら成形していく。ロールパンの場合、生地を涙形にして、太いほうから巻いていく | 成形後のパン | 角皿に薄くバターを塗ったら成形後の生地を並べて置く。このあと二次発酵だ。40℃に設定して約35分ほど発酵させる |
二次発酵後のパン。膨らんでいるのがわかる | 生地の表面に溶き卵と塩をあわせたドリュールと呼ばれるつや出しを塗っていく | ドリュールを塗った生地 |
最後に180℃で約22分ほど焼く。外から加熱の様子が見られるのも楽しい | 焼きあがり。初めてにしてはかなりうまくできた | 断面。中に空気の層があって、ふわふわとした食感 |
次に作ったのは、グラタン。付属のレシピには作り方も掲載されていたが、レシピを見るとそれほど特別なことはなかったので、いつもの自己流のグラタンで、加熱だけは自動メニューを利用した。エビやアサリといったシーフードを中心としたグラタンを作ったが、AX-CX1ではグラタンをオーブンではなくグリル加熱で仕上げる。
オーブン加熱では、ヒーターで庫内を全体を熱くして、食品を外側からまんべんなく加熱するが、グリル加熱ではヒーターによる直接加熱と庫内の壁や空気の放射熱を利用して、より短時間で仕上げる。仕上がりの差でいうと、オーブン加熱のほうがよりこんがり、香ばしく、グリル加熱はオーブンより短時間で仕上げるため、食材の水分を飛ばしすぎることなくジューシーに仕上げることができる。
我が家ではいつもグラタンはオーブントースターで加熱するのだが、グラタンに関して言えばグリル加熱の方が断然好み。オーブンで仕上げると外側のチーズがカリっとなって、それはそれでおいしいのだが、中の食材まで硬くなってしまっていることがある。一方、グリル加熱はチーズも中の食材も柔らかくて、とても食べやすい。加熱すると硬くなりやすい舞茸もふんわりと仕上がっていたのには驚いた。
自己流レシピでまずは中の具を炒める。具は玉ねぎ、あさり、エビ、パプリカ、ピーマンに、緑黄色野菜の色がついたマカロニ。意識したわけではないが、かなりカラフルになった。ここにホワイトソースを加えていく | 耐熱皿に分けて、チーズをかけたら後は焼くだけ | 焼きあがり。柔らかくてふわっとした食感になった |
■日常使いにももちろん使える
以上、今回は調理メニューも中心にご紹介してきたが、これ以外にも食品のあたためやお肉や魚の解凍ももちろん、対応している。あたためや解凍はセンサーで自動で制御してくれるため、こちらで時間を指定する必要はない。
豚肉の解凍をする | パックのまま入れることはできないので、ラップの上に凍ったままの豚肉をおいて解凍する | 解凍後。調理するのに便利な柔らかさだ |
パンも焼くことができる | 角皿にパンを置いて焼く | 仕上がり。焦げ目は少ないが、中までしっかり熱が入っていた |
■単なる下位機種ではない使いやすさ
一通り使ってみたが、AX-CX1は、どう捉えるかで、評価が大きく変わりそうな製品だ。週の半分以上のお弁当、夕食を自分で作っている私の場合、ヘルシオの調理メニューは大助かりだし、それで脱塩・脱油までしてくれるならさらに嬉しい。ただ、活用シーンが多い分、レシピブックのメニューがやや少なく感じてしまったのだ。だったら、従来のヘルシオを……という思いもあったが、そうなると、やはり本体サイズや価格がネックになる。
たとえば、ヘルシオの上級者だったらメニューブックを見なくても、あれとこれを組み合わせてアレンジなんてことができるのかもしれないが、こちらは何しろまだまだヘルシオ初心者なので、どうしても選択肢が付属のメニューブックからになってしまう。
だれよりもAX-CX1の魅力を実感できるのは、もしかしたら従来のヘルシオユーザーかもしれない。
ただ、逆にこれは私がAX-CX1を「ヘルシオ」だと考えすぎているからかもしれない。レンジ・水蒸気・過熱水蒸気、さらにはグリル・オーブン加熱までできる高機能オーブンレンジであると考えれば、もっともっとアレンジ幅や活用シーンも広がるだろう。手作りパンを作ったときも、今度は中にソーセージを入れて作ってみようとか、アイディアの幅が広がったのも確か。
普通に考えたら、ハイエンドモデルより容量やサイズが小さく、価格も抑えているAX-CX1は、単なる下位機種として捉えられてもおかしくない。それがそうではなくて、“コンパクト”としての存在感があるのはやはり独自の「ウォーターオーブン技術」を搭載しているからだろう。
数年前に「カロリーを抑えながら水で調理する」という謳い文句と共に発売されたヘルシオを、興味と羨望の目で見ていた人なら、買って損はない製品だ。
2011年6月10日 00:00