藤本健のソーラーリポート

国内最大の太陽光発電所のパネルがまさかの事態で真っ白に!?

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)

国内最大の「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」

鹿児島県の鹿児島湾岸にある国内最大の太陽光発電所「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」(写真提供、京セラ)

 現在、国内最大の太陽光発電所は鹿児島県の鹿児島湾岸にある「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」だ。桜島がすぐ向こう側に見える、このメガソーラー発電所が正式に稼動し、売電をスタートしたのは昨年11月1日だったが、その正式稼動前に取材してきた。記事にするのがだいぶ遅くなってしまったが、活火山のすぐそばに設置されたメガソーラーという世界的にも稀な立地条件のこの発電所がどんなものなのか紹介してみよう。

 実は、この鹿児島七ツ島メガソーラー発電所への取材の主目的は、先日発売された「グリーンパワーブック〜再生可能エネルギー入門」(ダイヤモンド社刊)の執筆のためだった。

 この本、資源エネルギー庁のグリーンパワープロジェクトの公式ガイドブックとして作られたもので、全国の小学校・中学校・高等学校・高等専門学校の中で授業で使いたいと希望する学校へ寄贈している、子供にも分かりやすく解説した書籍である。

「グリーンパワーブック〜再生可能エネルギー入門」(ダイヤモンド社刊)

 昨年夏、この本を作るに当たり、どこに取材にいくといいだろうか? という相談を受けたので、迷わず「今一番大きいメガソーラーに行って写真で見せていくのがいい」と答えた結果、昨年10月1日に行くことになったのだ。

まさかの桜島噴火で、ソーラーパネルが真っ白……!

 早朝、羽田発、鹿児島行きの飛行機に乗って、8時半ごろに鹿児島に到着したところ、まさに雲ひとつない快晴。これは最高の写真が撮れるはず、とレンタカーを借りて現地へと向かったのだ。クルマで10分も走らないうちに、鹿児島湾の見えるところに差し掛かると目の前に、桜島が見えた。個人的には、初めての鹿児島県であり、初めて見た桜島だったのだが、見えた直後に島に異変が。そう、火山の爆発があったのだ。1分もすると、噴煙はどんどん広がっていく。その威力の凄まじさに、取材スタッフみんな驚いたわけだが、調べてみると2013年1月〜9月までで676回も爆発をしていたので、おそらくそれが677回目だか678回目の爆発。鹿児島では、まさに日常茶飯事のことのようである。

 そこから、鹿児島湾沿いに約50km、1時間ほど南に行ったところが取材目的地なわけだが、噴煙を見ながら走っていて、ちょっと不安になってきた。というのも、空は確かに快晴なのだが、その噴煙がどんどんと広がっていき、風の様子から、どうもメガソーラーのほうへと向かっているようなのだ。

飛行機が着いたときは、雲ひとつない快晴だった
移動中に火山の爆発が!
噴煙がどんどん広がっていく
なんとソーラーパネルが真っ白になっていた!

 あと10kmという辺りまで来たときには、空は完全に曇ってしまい、まさに噴煙の真っ只中。フロントガラスも灰だらけで、ワイパーを動かすと火山灰が結構とれるほど。ようやく現地についてみると、天気は少し晴れた感じにはなったが、悪い予感は的中。目の前に広がるソーラーパネルが火山灰で真っ白なのだ。これまで、いろいろな太陽光発電所は見てきたが、白いパネルに遭遇したのは初めて。これで発電なんかできるのだろうか……。現地で案内をしてくれた京セラソーラーコーポレーションの作業所長の北 道弘さんに、鹿児島七ツ島メガソーラー発電所の概要をはじめ、火山灰の影響や対処方法など、いろいろと話を聞いた。

京セラソーラーコーポレーションの作業所長の北 道弘さん

 「このメガソーラーは70MWの発電能力を持つもので、現時点で国内最大規模の太陽光発電所となっています。敷地的には約102万平方メートル、東京ドーム約27個分に相当する土地に、京セラの出力242Wの多結晶シリコン太陽電池パネルが290,080枚設置されていています」と北さん。

 試しにパネル容量で計算してみると

   242×290,080=70,199,360W

 と70MWを若干上回るが、敷地内にはこのパネルで発電した電気を束ねて交流に変換する500kWの容量のパワコンが全部で140台設置されており、これを合計すると70MWになるそうだ。

東京ドーム27個分に相当する土地に、パネル290,080枚が設置されている
京セラの出力242Wの多結晶シリコン太陽電池パネルが採用されている
敷地内にはこのパネルで発電した電気を束ねて交流に変換する500kWの容量のパワコンが全部で140台設置されている

 それにしても、こんなに火山灰が降る土地にどうしてメガソーラーを作ることになったのだろうか。

 「七ツ島という名前からも想像できるように、かつて、ここは小さな7つの島があった場所ですが、高度成長期に造船所用地にと埋め立てられ、IHIが購入した土地でした。しかし、オイルショックと長引く造船不況のために有効利用されないままずっと眠っていたので、ここにメガソーラーを作ろうということになったのです」(北さん)

 この七ツ島メガソーラー発電所を運営する鹿児島メガソーラー発電株式会社は、そのIHIと京セラのほか、KDDI、九電工、鹿児島銀行、京都銀行、竹中工務店の各社が出資するジョイントベンチャーになっている。

活火山の近くにメガソーラー作って大丈夫?

とにかく、見渡す限り真っ白だった

 「今回、本当にタイミングが悪く、パネルも真っ白な状態ですが、ここは鹿児島の中でも火山灰がほとんど降らない、とても珍しい場所なのです。鹿児島県が『桜島降灰量』というデータを毎年作成していますが、それを見てもよく分かると思います。もちろん、まったく降らないわけではありませんが、太陽光発電をする上で問題になることはない、という判断から、ここにメガソーラーを作ることが決まったのです。ただ、2012年もそうでしたが、9月10月の台風シーズンだけ、偏西風の関係で風向きが変わり降灰するのです。今回も台風の影響ですね」と北さん。

 取材に行った日の前後に台風がやってきた、というわけではなかったが、9月にやってきた台風22号、23号の影響で風向きが変わっていたようなのだ。

 「火山灰が積もると当然、発電効果は下がります。量にもよりますが、通常の半分程度まで下がってしまいます」(北さん)。

 そういって見せてくれたのが、取材に行った1週間前、9月24日〜26日の3日間の発電のシミュレーションと実績を比較したグラフだ。これを見ると分かるとおり、3日ともよく晴れているのだが、実際の発電量は大きく異なっている。青い棒グラフが日射量、気温から想定される発電量、赤い棒グラフが実際の発電量なのだが、24日は想定通りの発電をしているのに対し、25日は半分程度に下がり、26日はやや復活している格好である。

9月24日のデータ。青い棒グラフがシミュレーションデータ、赤いグラフが実際の発電量。この日は想定通りの発電をしている
9月25日のデータ。シミュレーションデータに比べると、発電量がかなり少ないのがわかる
9月26日のデータ。前日に比べると発電量はやや復活しているものの、シミュレーションデータには及ばない

 「経験上、風が吹くと灰が飛ばされて、ある程度、発電量が戻るようです」と北さんが話していたが、まさに風によって灰がある程度減ったということなのだろう。

 まあ台風の時期以外、灰が降ることは少ないとはいえ、現にこれだけ降って、発電量が落ちているのを見ると、メンテナンスなどをどうしているのかが気になるところだ。これについて北さんは次のように語る。

 「雨が降れば、火山灰はきれいに流されるので、パネルの灰を落とすという意味でのメンテナンスは基本的には不要だろうと考えてはおります。また、この鹿児島の場合、緯度の点からパネルの設置角度は27.7度が最適となっていますが、隣のパネルの影がかからないように、すべて20度に設置しています。20度と傾斜は少ないものの、雨が降れば灰が落ちるという点でのデメリットはありません。また、このモジュールはフレームに溝が切ってあり、そこから灰が流れ落ちる構造の防汚モジュールというものになっています。これは特許もとっているのです」

パネルの設置角度は27.7度が最適と言われているが、七ツ島メガソーラーでは隣のパネルの影がかからないように、すべて20度に設置している
灰が流れ落ちやすいように、フレームに溝が入っている

1日180人必要で、コストは約800万円

パネルメンテナンスのための高圧洗浄車。全てを洗浄するには、90台必要だという

 なるほど、メンテナンスフリーで発電ができるというのは、大きなメリットだとは思うが、先ほどの9月25日のグラフから理想と現実の差をざっと計算すると143,000kWhもある。kWあたり42円での売電だと考えると、1日あたり

   143,000×42≒600万円

 も火山灰によって損失が出ているということになる。さすがに、これは何等かの手を打ったほうがいいのではないか…と思えるが、その点はどうなのだろうか?

 「パネルを清掃して、灰を落とすということも考えてはいます。実際に行なうかどうかは、今後稼働してからの状況を見て検討することになると思いますが、人手をかけて作業を行なうために、かなり多くの作業量とコストがかかってしまいます。具体的にいうと、高圧洗浄車を90台用意するとともに、作業に当たる人数としては1日に180人が必要になるため、その費用は1日で800万円近くになるのです。降水予報などを見ながら、5日とか1週間近く雨が見込めないということになれば、実施する価値はあるかもしれませんね」と北さん。

 実際、その清掃作業を行うとしたら、どんな感じになるのか、高圧洗浄車を使って実演してもらった。

 作業自体はとっても単純で、水で灰を洗い流すだけ。数分の作業で縦4枚×横3枚程度のパネルの灰を落とすことができたが、この七ツ島メガソーラーにあるパネルの数は290,080枚だから、全部の作業をするとなると、まさに気が遠くなりそうで、清掃作業というのはあまり現実的ではないようにも感じられた。

実際の作業の様子
パネルに直接水をふきつける
数分の作業で縦4枚×横3枚程度のパネルの灰を落とすことができた
全体で見ると、ほんの一部しか終わっていないのがわかる
取材終了後、七ツ島メガソーラーを見渡せる錦江湾公園に行って、撮影した写真。遠目にもパネルが真っ白なのがわかる

敵は灰だけではない!

 ところでメガソーラーのように地面に設置する太陽電池パネルの場合、伸びてくる雑草が大きな敵といわれているが、この七ツ島の敷地を見ると舗装されているわけではないのに、草が1本も生えていない。これはどうなっているのだろうか?

 「この七ツ島は、三方が海に囲まれた漁場として、非常にいい場所です。そのため、除草剤をまいて海を汚すようなことになると大きな問題になってしまいます。防草シートを敷くということも検討しましたが、結局、造成時にトラクターを入れて、抜根した上でで再生砕石をまいてローラーをかける、という処理をおこないました。そのため、草がまったく生えないというわけではないのですが、ぼうぼうに生えて発電の邪魔をするというようなことにはなりません。また整地に関してのメンテナンスの必要もなさそうなので、この方法が一番経済的だろうという判断で行なったのです」(北さん)とのこと。

 また設置に利用された架台にも工夫が施されている。海に面しているだけに、塩害があるため、錆びやすい材質のものだと、すぐに傷んでしまう。そこで、日新製鋼が特許を取得しているZAMという鋼材が用いられているそうだ。

架台には、塩害に強く錆びにくいZAMという鋼材を使用している

 「ZAMというのはZ:亜鉛、A:アルミ、M:マグネシウムを意味する合金となっていて、塩害に強く錆びにくいのが特徴です。さらにラスパート処理という、より錆びにくくする処理が施してあるので、メンテナンスフリーで20年間は大丈夫ですよ」

 その20年が経過した後、どうするかは、出資会社間で話合って決めていくそうだが、今後、この七ツ島メガソーラー発電所から多くの電力が生まれてきそうだ。

 国内では各地に、七ツ島を上回る規模のメガソーラー発電所が建設中であるため、近いうちに国内1位という座を受け渡すことにはなるようだが、機会があれば、また何年かした後、しっかり発電しているのか、見に行きたいと思う。

 ちなみに、この火山灰に埋もれたメガソーラーの写真では、前述のグリーンパワーブック用として、そぐわないということで、後日、カメラマンだけが日帰りで鹿児島出張したのであった。

(藤本 健)