大河原克行の「白物家電 業界展望」

2012 International CES白物家電レポート

~韓国勢を中心にスマート家電の展示が続々

 2012 INTERNATIONAL CESが、米ネバダ州ラスベガスのLas Vegas Convention Center(ラスベガスコンベンションセンター)にて、米国時間の2012年1月10日から13日まで開催された。

米ラスベガスで開催された2012 INTERNATIONAL CES

 140カ国から14万人が来場、2,700社が出展するCESでは、例年、デジタル家電を中心とした展示が目立つが、ここ数年、米国の白物家電市場でトップシェアを誇るLG電子や、世界規模で白物家電事業を展開しているサムスンが、白物家電製品の展示を拡大している。特に今年は、スマート家電への注目が集まるなか、韓国勢の白物家電の展示が例年よりも目立つ内容となった。

 その一方で、ハイアールをはじめとした中国メーカーも展示を拡大。また日本のメーカーは、エコやスマートホームを切り口とした展示で韓国勢に対抗する姿勢をみせた。その様子を追ってみよう。


スマートフォンで操作する洗濯機、ホースを追いかける掃除機など――LG電子

LG電子はスマート家電の提案を強化。昨年発表したSmartThinQをさらに進化させた

 LG電子は、スマート家電の提案を強化しており、昨年発表したコンセプト「SmartThinQ」を、さらに進化させたホームネットワークの提案を行なっていた。

 Smart ThinQとは、各家電製品を結び、それぞれの状態を管理することができる構想で、このプラットフォームをベースとしたホームマネジメントシステムを紹介していたほか、独自の通信規格「Smart Link」により、洗濯機や冷蔵庫と携帯電話を接続。家電機器の操作を遠隔から行なったり、冷蔵庫の中に入っている食材の賞味期限を通知したりするという。

家電製品をネットワーク化するシステムSmart ThinQ。各家電製品の状態を管理できる韓国国内でスマートグリッドのテストを行っていることも紹介した
LG電子が発表した縦型洗濯機。Smart Linkに対応している洗濯機の操作部はタッチパネル方式で操作が可能Smart Linkにより、スマートフォンからも洗濯機の操作が可能だ

 個別の機器では、掃除機のホース部と本体部にセンサーを搭載し、移動するとホースのセンサーを本体が追いかけ、本体部を引っ張らずに楽に掃除ができるといった掃除機や、衣類を振動させてホコリを落とし、下からスチームを当てて衣類のシワをとる電子クローゼットなども展示していた。冷蔵庫では5分間で急速に缶を冷やすことができる機能も紹介した。


掃除機のホース部と本体部にセンサーを搭載。移動するとホースを本体が追いかけるため、本体部を引っ張らずに楽に掃除ができる
電子クローゼット。衣類を振動させホコリを落とし、下からスチームを当てて衣類のシワをとる
冷蔵庫の扉を二重化する「DOOR IN DOOR」。ドアポケットに入る量を増やす冷蔵庫は大型化も訴求。26万個以上のジェリービーンズを詰め込んでみせた

 このほか、LG電子ブースでは、白物家電に採用しているコンプレッサーやインバーターといったコア技術を訴求していた点も特筆できよう。

LG電子のお掃除ロボット「HOM-BOT 2.0」。CES会場でひときわ注目を集めた55型有機ELテレビ
スマートテレビの展示にも力が入るLG電子ブースでは、白物家電に採用しているコンプレッサーやインバーター技術といったコア技術での優位性も訴求


SNSやニュースを表示する冷蔵庫、窓ガラスのような液晶画面――サムスン

 一方、サムスンブースの白物家電コーナーでは、同社独自の通信規格「Sumsung SMART HomeNet」によるホームネットワーキングシステムを紹介していた。

サムスンブースは終日、黒山の人だかりとなった白物家電のコーナーではSumsung SMART HomeNetによるホームネットワーキングを紹介

 冷蔵庫には、タッチパネル方式のディスプレイを内蔵。無線LANでネットワーク化することで、天気やニュースなどの各種情報、SNSの情報を表示。情報端末としての利用が可能だ。

サムスンは冷蔵庫のタッチパネル式ディスプレイに天気などの情報やSNSの情報を表示。無線LANでネットワーク化している。ドアの内ポケットは立体的な収納が可能

 また、手元のスマートフォンやタブレット端末から、洗濯機などの白物家電をコントロールする様子もデモストレーションしてみせ、スマート家電が現実の物になりつつあることを示した。

手元のスマートフォンから洗濯機をコントロールする
サムスンのお掃除ロボットは、タブレット端末からの操作をデモストレーションサムスンが発表した55型有機ELテレビ

 試作品展示のなかで注目を集めたのが、透明なガラスの形状をした「Smart Window」。タッチ機能を搭載した透明の46型ディスプレイで、画面に指でタッチすればブラインドを閉めたり、各種情報を表示したりといったことが可能になる。窓ガラスにパネルを利用するといった新たな提案であり、家庭内における新たな活用方法を提示するものだといえよう。

 サムスンでは、エコ関連製品群の展示にも力を注いでおり、太陽光パネルやESS(エネルギー貯蔵システム)、ホームマネジメントシステムもなどを紹介していた。

透明なガラスでありながらタッチ機能を搭載したSmart Window。46型のサイズで、タッチすればブラインドを閉めたり、各種情報を表示したりといったことが可能だ
こちらはSmart Windowの22型の試作品サムスンが展示していたエコ関連製品群。太陽光パネルやESS(エネルギー貯蔵システム)などを紹介ディスプレイに電力消費量を表示するデモも行った

 ほかに、中国のハイアールも例年より大きなブースで家電製品を展示していた。

中国のハイアールも家電製品を展示。ブースは例年よりも大きかったハイアールは黒い鏡面仕様の製品を展示、高級家電シリーズと位置づける
会場では世界ナンバーワンブランドであることを訴求システム提案も行っていたがネットワーク化の展示はなかった


日本のメーカーはエコやスマートホームを切り口として提示

 CESの会場を訪れていたパナソニックの大坪文雄社長は、サムスンおよびLG電子のブースを視察後にコメント。「CESにおける韓国メーカーの勢いには目を見張るものがある」と前置きし、「サムスンは、すべてのAV商品をネットワークに接続し、幅広い製品でコンテンツを共有できるようにしていた。パナソニックも本来はそうなっていなければいけないと感じた。また、LG電子が展示していたスマート家電は、コンセプトという点では、パナソニックも類似のものをやっているが、ネットワークだけでなく、単品そのものの強さを感じた点が印象的だった。ネットワークにつながるだけで、すごいとは思わない。新たな提案して、納得できる個々の商品の強さがすごい。サムスン、LG電子は、それぞれ違う意味で、勢いがある」などと話した。

 そうしたなかパナソニックブースでは、HITブランドの太陽光パネルの展示や、家庭用蓄電システムの試作品を展示。また、同社が取り組む環境事業「グリーンライフイノベーション」のコンセプトを紹介。具体的な事例として、神奈川県藤沢市の藤沢サスティナブルスマートタウンの実証実験や、EVカーにも同社の技術が使われていることを訴求してみせた。

パナソニックは太陽光パネルを展示家庭用蓄電システムの試作品の展示も行った

 「環境先進企業としての取り組みに加え、“まるごと提案”という点では、我々に一日の長がある」(パナソニック・大坪文雄社長)と、環境展示や、まるごと提案での優勢性を強調してみせた。

18650型のリチウムイオンを利用した蓄電池システムも展示藤沢サスティナブルスマートタウンの実証実験の内容も紹介グリーンライフイノベーションのコンセプトを紹介するパナソニックのステージ
EVカーにも同社の技術が使われていることを訴求SMART VIERAの新ブランドでスマートテレビを提案した

 一方、東芝は、買収したランディス・ギアの製品を活用したスマートホームをステージ展示。エネルギーマネジメントシステムを含む、複合的なサービスを最適化した統合型スマートホームクラウドサービスの様子をデモストレーションした。

 スマートグリッドの中核を担うコントロールタワー「Life Design Box」、およびHEMSクラウドサービスと連携し、ホームマネジメントを行なうほか、ホームセキュリティサービスやホームヘルスケアサービス、エンターテイメントサービスなどと連携、スマートコミュニティと連携した統合型クラウドサービスの活用へと発展するという同社のスマートホームのコンセプトを示した。

東芝はネットワークでそれぞれの機器が結ばれたスマートホームをデモストレーションLife Design Boxと呼ばれる試作品。スマートグリッドの中核を担うコントロールタワーとなるスマートメーターの試作品も展示。ランディス・ギアの買収によって製品化したもの
東芝のスマートテレビの展示。タブレット端末から番組表を操作する

 こうしてみると、スマートホームへの取り組みの加速とともに、白物家電製品が重要な役割を示しはじめていることを感じることができたイベントだったといえよう。

 日本のあるメーカー関係者は、「来年のCESでは、日本のメーカーや中国のメーカーも白物家電を展示するというケースが増えるのではないだろうか」とし、デジタル家電が中心だったCESにおいても、今後、白物家電の展示が増加する可能性を示唆する。

 その点でも、転換点を感じることができた今年のCESであった。






2012年1月17日 00:00