老師オグチの家電カンフー

「家電=ファッション説」で今年の家電の流行を解説するよ

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 こないだテレビに出ましてですね。その収録で、「オグチさんにとって家電とは何ですか?」という、メディアにありがちな質問を投げかけられたんですが、思いつきで「家電とはファッションですね」と答えておきました。オンエアーでは、ばっさりカットされていたので、ここで再利用しますね。

 服が必需品であるように、家電も必需品です。こだわりの有無にかかわらず、誰でも買います、使います。まれに家に電気引いてないような人がTVに出たりしますが、先進国ではヌーディストよりも少数派ではないでしょうか。

 そして服が防寒や肌を隠すといった実用面だけでなく、外に対して表現する手段でもあるように、家電も使う人の個性を表現するアイテムになってきました。いい家電を持つことで自分のテンションが上がるし、他人から評価されればまたうれしい。昔は、家電を他人に見せる機会は少なかったですが、今はSNSがありますからね。

 さらにファッションに流行があるように、家電にも流行があります。去年(2016年)は調理家電がトレンドでしたが、2017年は衣類関連の家電がキテます。ハンガーにかけたまましわ伸ばしできる衣類スチーマー、衣類を入れるだけで消臭やしわ伸ばしができるクローゼット、この秋には世界初の全自動衣類折りたたみ機も発売される予定です。

 ファッションに近くなってきた家電と、ファッションの本体である衣類、この2つがついに大接近している。なぜ衣類系の家電がキテるのか、経済状況などから説明もできそうですが、まぁ、たまたまでしょう。

衣類スチーマーブームの火付け役となったティファールの新モデル「アクセススチーム」
消臭・しわ伸ばしするクローゼット、LGエレクトロニクス・ジャパン「LG styler」

 ところで、家電のカテゴリーによって、影響する人体の場所が変わってきます。たとえば調理家電なら、作った料理は口から入ります。空気清浄機なら呼吸器ですし、空調家電なら肌の表面で感じます。

 衣類系の家電の場合は少し間接的で、身体と外部の境界にある服を対象としています。服のシワとかあってもなくても肌には直接関係ありませんから、精神的な作用ですね。これに近いのは、美容家電でしょう。肌や髪をキレイにすることは、生きていくための必要というわけじゃないですし、装飾的な要素が大きいです。とくに「毛」は人体の一部とはいえ感覚がないので、服に近い。

 パナソニックがアンダーヘアもケアできる男性用ボディトリマーを出して話題になっていますが、まさにファッション的なアイテムです。しかも隠れた部分だけに、上級者向けのオシャレですよね。やはり家電はファッション化しているのです。

 オシャレライターとして、シモネタは自粛しております。

パナソニック「ボディトリマー」。試してみたいんだが、売り切れてて買えていない

小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆、マンガ原作、企業サイトのコンテンツ制作を手がけるライター。日経MJの発表した「2016年上期ヒット商品番付」では、命名した「ドヤ家電(自慢したくなる家電)」が前頭に選定された。

Webページ「有限会社ヌル/小口覺事務所」
http://nulloguchi.wix.com/nulloguchi