データで読み解く家電の今

多機能よりも特化型が売れている加湿器市場。2万円以上の高価格帯が拡大

販売実績を基にしたデータから、国内家電市場の実態を検証(協力:GfK Japan)

 今回は10月から2月までの売り上げが、年間の9割を占めるという「加湿器」を取り上げる。5,000円未満のモデルが、販売台数ベースで例年5割前後を占めているなか、トレンドの変化が見られるのか。調査会社GfKジャパンの、家電量販店における実売データから読み解いていく。

 GfKジャパン行村真実子アナリストによれば、「加湿器の需要は、乾燥の他にも花粉やインフルエンザの流行と関係があり、世界的に新型インフルエンザが流行した2009年は販売が大きく盛り上がった」という過去がある。

 「今シーズンに関しては例年よりも早い、11月中旬にインフルエンザの流行入りが確認されたことや、暖房需要の盛り上がりがあり、11月は数量前年比35%増と販売が大きく伸長した」

カドーの加湿器「HM-C610S」

 2013年を基準としてここ数年の動向をみると、販売台数は'15年で約10%、'16年には5%下回った。一方で、販売金額は3年連続で2013年を上回る結果となり、平均価格が上昇していることがうかがえる。

加湿器の販売台数・金額指数

 加湿器の税抜き価格帯別の数量構成比に目を転じてみると、ボリュームゾーンである5,000円未満の製品は、'16年の販売台数のうち半数を占める。だがここ数年で、自動で湿度を感知するセンサーなど、付加価値の高い機能を搭載した20,000円以上の高価格帯のラインナップも拡充され、同価格帯の製品は'16年の販売台数の約1割を占めるまでになった。

加湿器の税抜き価格帯別の数量構成比

 加湿器の加湿方式は、超音波式/スチームファン式/ハイブリッド式/気化式に大別できる。販売数量で内訳をみると、'16年では超音波式が37%と、ここ3年で17%拡大し、一番大きな割合を占めた。対して、スチームファン式は25%と、3年で16%の減少。ハイブリッド式は26%、気化式は12%という結果となった。

加湿器の加湿方式別 数量構成比

 超音波式が支持される要因として、平均価格が6,000円前後と手ごろで、ランニングコストも低く、デザイン等のバラエティが豊富なことなどが挙げられる。

 また、行村アナリストは「超音波式のデメリットとされている衛生面への対策として、特殊な成分を使用した抗菌カートリッジやUVライトを搭載した高機能モデルも出てきている」とし、メーカー各社が除菌・抗菌を謳った訴求に力を入れていることも、超音波式のシェア拡大の要因とする。

卓上で使用できる小型モデルなど、バリエーションが豊富な超音波式。写真は無印良品の超音波アロマ加湿器「MJ-AUH1」
内蔵するUV-Cライトを照射して水に含まれるバクテリアを99.9%除菌するというダイソン ハイジェニック ミスト「AM10」

 加湿能力クラス別のデータでは、ここ数年は1時間あたりの加湿量が400ml未満のモデルが主流。行村アナリストは、「ただし、最近は600ml以上の販売数量構成比が徐々に拡大しており、加湿能力の高い製品にも注目が集まっている」と分析する。

 一方で、加湿機能を搭載した空気清浄機やセラミックファンヒーターなどについては、「加湿機能が搭載されていないモデルの方が拡大傾向にある。マルチ機能を搭載したものより、1つの機能に特化した製品を使用シーンごとに選ぶ傾向があるようだ」と語る。

出典「全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ」