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第1回:LED電球のノイズがラジオやテレビに悪影響与えるってホント?


 新連載「藤山哲人の実践! 家電ラボ」は、暮らしの中で感じたちょっとした疑問を、ライターの藤山哲人氏が追求して答えを出す連載記事です。



 自宅の白熱電球と交換することで、簡単に消費電力が削減できるLED電球。身近な節電方法として注目を集めており、我が家でも導入しているが、前々から気になることが1つあった。「ノイズ」の話だ。

 というのも、ある報道によれば、商店街の街路灯を一斉にLEDにしたところ、アナログテレビ放送の受信障害が多数報告されたという。調査の結果、LED電球が発するノイズがテレビの電波と重なっていたことが影響したらしい。

 また、ある家電メーカーでは、許容値以上のノイズが出荷直前に確認されたとして、LED電球の発売日が突如発売延期になるといったこともあった。さらに、Webを検索すれば、LED電球に変えたらラジオの入りが悪くなった、などを報告しているサイトもある。

 もちろん「LED電球に変えてみたけど、受信障害とはさっぱり無縁。電気代が安くなって大助かり!」という声も多い。かく言う筆者宅も、何も問題ない。

 しかし、電力不足が懸念される今年、節電対策としてこれから家の電球をLED電球化しようと思っている人にとって、「LED電球からノイズが出て受信障害を起こしちゃったりするの……?」というのは大きな不安になるだろう。

 そこで、新連載の第1回目のテーマは、「LED電球のノイズで、ラジオやテレビが乱れちゃうってウソ? ホント?」だ。この疑問について、当研究所の所長であるオレ様・藤山哲人が 家電Watch編集部の小さな小さなお財布からお金をふんだくって(もといっ!研究費を捻出して)LED電球を買い漁り、LED電球のノイズの謎を調べてみることにしよう!

 Do it oneself!

 分からんことは、自分で作る!調べる!やってみる! それが「実践! 家電ラボ」のポリシーであるっ!


今回使用するLED電球は11機種。測定器は自作だ!

 今回、サンプルとして選んだLED電球は以下の表の通りだ。大手から比較的小さなメーカーまで、E26口金もE17口金も、いろいろなLED電球を用意した。ちなみに、店頭に売っているものを中心に集めたため、日本電球工業会に所属していないメーカーの製品も扱っている。

【今回試用したLED電球】
口金タイプ メーカー 品番 消費電力
E17 パナソニック LDA6L-E17 6W
東芝 LDA5L-E17 6W
シャープ DL-JA42L 5W
オリオン LEB-Q400D 5W
オーム電機 LDA4L-H-E17 4W
E26 パナソニック LDA7L-A1 6W
東芝 LDA6L 7W
シャープ DL-LA42 8W
オリオン LEC-M600D 6W
アイリスオーヤマ 普通7.0W 電球色263 8W
山善 GBL-A60L 7W
参考 東芝 普通の電球(60W) 56W
パナソニック 電球型蛍光灯(8W) 9W

 本当は店頭に売っているLED電球をすべて買うつもりだったけど、全部となると金額がバカにならないので、そのへんはご勘弁を。

 しかし、目に見えないノイズはどうやって計測すれば良いのか。メーカーの研究室や調査会社には「スペクトラムアナライザ」という機器を使って、どの周波数にどれだけの大きさのノイズが出ているかが一発で調べられる。が! 我が家の隅っこにある家電ラボでは、そんな高価な測定器もない。

 そこで、ちょっと風変わりな方法でノイズを調べてみた。

今回、測定に使用するのが「広帯域レシーバ」と呼ばれるラジオの一種。通常のラジオ以外にも航空無線やタクシー無線なども受信できる

 測定に使ったのは「広帯域レシーバ」と呼ばれるもので、普通のFM・AMラジオに比べると、受信範囲がとてつもなく広いラジオだ。普段は、羽田空港に降りてくる飛行機の無線をBGM変わりに流すものだが……いや、これは所長の個人的な趣味の話(笑)。今回はノイズの調査に使ってみよう。

 このレシーバでどのようにノイズを測定するのか。それは、レシーバのアンテナをLED電球に近づけて、「ブーン!」という音が聞こえれば、ノイズが出ている可能性アリとなる。これは「ハムノイズ」ってヤツで、ラジオの電波にノイズが入り込み、放送の邪魔していることになる。

 とはいえ、LED電球によってノイズの出る周波数は異なる可能性もある。周波数は電波の波の数を表す単位。ラジオで放送局を選択する際に「594kHz」とか「82.5Mz」とかいうのを見たことがあると思うけど、この周波数が重なる/重ならないで、 ノイズが出てきたり出てこなかったりしちゃう。

 そこで、まずは電球のノイズが出ていそうな部分にアンテナを触れさせて、、ブーンという音がはっきりと聞こえる周波数を調べる。電球の金属分部とアンテナは接触していないので、ショートの心配はない(つまり「絶縁」された状態だ)。周波数を合わせたら今度はLED電球の電源をOFF。これでブーン音が消えば、原因がLED電球だと言えるというワケだ。

 なおラジオは、ノイズに弱いAMモードで調査する。安いカーステレオだと、FMはきれいに聞こえるけど、AMはブツブツ言うっていう現象が度々起こるが、これは自動車のエンジンの点火プラグのノイズを拾っているから。AMラジオからの「ブーン」音とエンジンの回転数は、比例するのだ。

 一方、ノイズの大きさをグラフ化するためには、オシロスコープを使っている。これはただ単純にレシーバのスピーカーの音をオシロスコープに入れているだけなので、専門家から見たら「ノイズの測定じゃない!」と怒られそうだが、だいたいのノイズの大小はコレで分かるはずだ。

 自宅でも実験してみたいという場合は、AMラジオとパソコンだけでもOK。ノイズがはっきり聞こえる周波数にチューニングして、音声をパソコンのサウンドレコーダなどで録音して、その波形を見れば大きさが分かるってわけだ。

 実験装置の全体像は、以下の写真の通り。実にチープだけど、研究開発費が少ない当ラボでは、今はこれが精一杯。

これが、今回の実験環境だ。塩ビのパイプは、オシロスコープに光が回らないようにするため LED電球のノイズ発生源あたりにアンテナを密着させて調査した


というか、基本的にデジタル家電製品はノイズを出します

 さっそくLED電球のノイズを調べたいところだが、その前に、実は家電製品――特にデジタル家電はノイズを出すもの、という事実を先に述べたい。これは特にデジタル家電に言える話で、パソコンを使ったり、液晶テレビを見たりするとラジオが聞き取りにくくなったなんて体験をした人もいるかもしれない。

 えっ!そんなところからノイズが出てるの!?という代表例が、携帯電話のACアダプタだ。

ACアダプタにアンテナを振れさせてノイズを測定。周波数は、4640kHz ACアダプタをコンセントにさす前は、サーというホワイトノイズが聞こえるだけで、グラフには小さい波が現れるだけ コンセントに差し込んだとたん、ブーンという音がレシーバから聞こえる。この音を波形で見ると、上下に激しく振れその波が周期的になっている。この振れ幅がノイズの大きさだ

 波の振れ幅は、最大で48マス(これは筆者が独自に決めた便宜上の単位で、オシロスコープの1マスを10としている)となっていて、激しいノイズと言える。

 また中には、ノイズが耳に聞こえちゃうような場合もある。充電器で充電式電池を充電する際に、コンセントに差し込むと「ジーッ」って音が聞こえるのに気づいた人は多いだろう。でもマニュアルには、「ジーという音が聞こえる場合がありますが、故障ではありません」とある。

充電式電池の充電器。コンセントに差し込むだけで、“ジー”という音が聞こえてくる 携帯電話のACアダプタをブッちぎる激しいノイズが出た。波は測定できる最大値を振り切っちゃってる

 でも、ノイズが出ているからといって、これらが粗悪品っていうワケじゃない。機器に貼られているシールを見てみると「PSE」というマークが付いている。PSEとは電気用品安全法の略で、ノイズを含めた、国の安全基準をクリアしているという認定マーク。つまり、ノイズは出ているものの、一定の基準には収まっており、実用的には問題ない製品というわけだ。

 というわけで、LED電球の出すノイズのみを測定するために、パソコンやディスプレイなど、ノイズの発生源になりそうな機器はすべてコンセントから外してから実験に臨んだ。


電気機器なので当然ノイズは出るが、基本的には少なめ

 前置きが長くなったが、今回の本題となるLED電球のノイズ測定を開始しよう。

 各電球には、2枚のグラフ、左側が電源を入れていない状態の波形で、右側がLED電球を光らせた状態だ。グラフが縦に大きく波打っているものは、それだけノイズが大きいということを示している。また、メーカー/品番の最後に記しているのは、ノイズが最もはっきり聞こえた周波数を示している。

 グラフを紹介する前に、実験結果を先に言ってしまうと、意外にノイズ少ないじゃん!ということが言える。

 ネットでは「LED電球はノイズを出しまくる」なーんて陰口を叩かれている割に、実際には、実験前に測った携帯電話のACアダプタや充電式電池の充電器の方が、よっぼどノイズを出している。

 ノイズは出ているものの、相対的にはそこまで問題にしなくても良い、というのが当ラボでの結論だ。

 それでは測定したグラフを公開しよう。それぞれノイズに大小があるが、どうやら高価だから少ないとか、国内メーカーだから少ないというわけでもなさそう。またE17やE26といった口金の大きさの違いも関係ないようだ。

[参考]E26 東芝 60W白熱電球 4,165kHz

よくあるフツーの電球。ノイズが出ないので周波数はどこでもかまわないが、他のLED電球は4,100kHz近辺だったので4,165kHzとしている 電球が消えた状態 電球が光ってもフィラメントに電気が流れるだけなのでノイズは発生しない(緑の線が上下に大きく振れていない状態)

[参考]E26 パナソニック 電球型蛍光灯(8W) 2150kHz

E17口金のクリプトン電球に付け替えられる電球型蛍光灯。消費電力もLED電球とさほど変わらない9Wだ 電球が消えた状態(左)と点灯した状態(右)。電球型蛍光灯もやはりノイズが出ている


E26 パナソニック LDA7L-A1 2,690kHz

特徴的な形状のパナソニックのLED電球。電球下部のカバーはおそらくアルミの板になっている 電球が消えている状態(以降同じ) 周期的な波が現れているのが分かる。なおこの波形は、厳密に言えばノイズそのものではなく、レシーバで受信している音となる(以降同じ)

E17 パナソニック LDA6L-E17 2,070kHz

こちらはパナソニックでも、小型のE17口金のLED電球 振れ幅は大きいE26と変わらない程度

E17 オリオン LEB-Q400D 1,000kHz

1,000円台で買える安いLED電球。寿命も国産の4万時間に比べると3万時間と短め 周期的なノイズが出ている。問題は周波数で、一番強かったのが1,000kHzとなっており、AMのTBS(954kHz)と文化放送(1,134kHz)の中間。もろにAM放送とかぶっている

E26 シャープ DL-LA42 1,450kHz

シャープのE26タイプ。ほかのE26タイプに比べると軽い。白いカバーの部分はプラスチック樹脂のようだ まとまったノイズの波形が現れているのが分かる。振れ幅は、1マスを10とすると、ピーク時で上下に17ほど振れているのが分かる。周波数はラジオ日本(1,422kHz)のチョット上ぐらい

E17 東芝 LDA5L-E17 1,890kHz

東芝の小型電球。白いカバーの部分は、分厚いアルミ製となっている 振れ幅はこれまでのLED電球とほぼ同じぐらい

E26 山善 GBL-A60L 4,160kHz

概観は東芝のE26タイプにそっくりのLED電球だが、比較的安く手に入れられる。カバー分部はアルミのダイキャスト(鋳造)製になっているようで、細かなフィンは放熱効果を高めている。なお、山善は日本電球工業会の会員ではない 周期的に、大きく尖った振れ幅が見られる

E26 オリオン LEC-M600D 1490kHz

ウェーブのデザインが特徴的な安いLED電球。外側のカバー部分はアルミのようだが、他の電球に比べると非常に重い 最初に見たグラフ(左)に比べると、振れ幅が倍ほどになっている。それだけ強いノイズが発生しているということだ

E26 東芝 LDA6L 2,080kHz

カバーの分部はアルミダイキャスト製。大きな放熱フィンが特徴だ 割と大きめのノイズが出ているが、波形にはパターンがある

E26 アイリスオーヤマ 普通7.0W電球色263 1,835kHz

薄いアルミ板でカバーされている 割と大きめのノイズが出ているが、波形にはパターンがある 振れ幅は30をオーバー。今回試した中でも比較的強いノイズを発生しているようだ

E17 シャープ DL-JA42L 1,725kHz

同社のE26タイプをそのまま小さくしたデザインカバー部分はアルミダイキャスト製 割と大きめのノイズが出ているが、波形にはパターンがある 今回調べたLED電球の中では、一番強いノイズを発生していた。振れ幅は、アイリスオーヤマの35を超えた58をマーク(数値は1マスを10とした場合)

E17 オーム電機 LDA4L-H-E17 1000kHz

オームのLED電球は、店によっては1,000円を切って売っているところもある。実は、ノイズが発生しなかった唯一のLED電球だ。とりあえず他のE17タイプでノイズがはっきりしていた1,000kHzで調査 電球が光っていない状態でも、光らせた状態でもノイズは発生せず。実はこれはこれでデメリットもあるが、次回で説明しよう

今回テストしたLED電球のノイズの比較。横軸は振れ幅の大きさを示す(単位は独自のもの)


LED電球からノイズがどうしても出ちゃうのは、電子回路があるから

 しかし、なぜ白熱電球はノイズが出ないのに、LED電球や電球型蛍光灯はノイズが出るのだろうか。答えは、電球内部にデジタル系の電子回路があるかないか、という単純な違いだ。

 というわけで、LED電球の内部構造を見てみよう。今回は実勢価格3,000円台の東芝のE17口金タイプ「LDA5L-E17」を分解してみることにした。

カバーを外すとLEDモジュールが見える。電球の部品の中で一番高い部品がコイツだ! ネジでLEDモジュールを外すと、冷却用のアルミ板が敷いてある アルミ板を外すと、内部の回路が納められている。写真は、カバーの一部を切断した状態

 LED電球の内部を見ると、半透明カバーの奥にLED(オレンジの発光部分)がマトリクス状に配置されているのがわかる。その下にはアルミ板があり、電球下部のカバーに密着している。LEDが光るときに出る熱を、電球下部のフィンに伝え、たくさんのフィンが空気に触れることで、LEDの熱を空気中に放出しているというわけだ。しかも、より効率よく熱を伝えられるように、接触面は鏡面加工まで磨き込まれている。

 さて、そのカバーの中を見てみると、以下の写真のような電子回路が埋め込まれている。

電球の内部には、携帯電話のACアダプタと同じように、コンセントの100Vの電圧を下げ、交流を直流にする回路が入っている E17の電球が安くならないのは、この回路の集積度が高いためかもしれない

 この回路は、コンセントの100Vの交流電気を、LEDを点灯するために必要な電圧にまで下げ、かつ直流の電気に変えるための装置だ。前者はスイッチング電源、後者は整流回路という装置なのだが、これらは充電用の携帯電話のACアダプタにも採用されている。

 ノイズの原因となるのが、スイッチング電源だ。電圧を100Vまで下げるために、高速でスイッチをON/OFFしており、その瞬間にノイズが発生するのだ。部屋の壁スイッチをON/OFFしたときを思い出してほしいが、スイッチを操作するとラジオなどからプチッ! という音が発生したりする。これもノイズの影響のひとつ。LED電球は点灯中は常にスイッチを高速でバチバチとON・OFFを繰り返すので、断続的なノイズが発生するのだ。


何か問題があった時は、ラジオやテレビとLED電球との距離を開けるべし

 とはいえ、前述の通り、LED電球のノイズは少なく、普通に使う分には、ノイズで悪影響がでるとは思えない。

 でも、もし悪影響が出てしまった場合は、どうすれば良いのだろうか?

 その答えは、「距離を離せば良い」。LED電球のノイズは、正確に言えば電波の一種で、電波は距離を置けば弱くなる性質がある。もし「読書灯の電球をLED電球に変えたとたん、隣に置いてあるラジオの入りが悪くなった」なんていう場合は、電球からラジオをある程度離してやれば、受信状態が回復できる可能性がある。

 では、“ある程度の距離”とはどのぐらいなのかを、再び広帯域レシーバを使って調べてみよう。先程の実験で、比較的ノイズが小さかったLED電球から順番に紹介しよう。

E17 パナソニック LDA6L-E17

電球から0cm 電球から2cm離すと、ノイズが半分ほどまでに小さくなる 電球から5cm離すと、ほとんど受信障害を受けない

E17 東芝 LDA5L-E17

電球から0cm 2cm離すと、やはり半分ほどに減る 5cm離すとほとんど影響なし

 比較的ノイズの小さかったLED電球や電球型蛍光灯では、だいたい5cmほど離せば、受信障害はなくなった。では、比較的ノイズが大きめだったものはどうだろうか?

E26 東芝 LDA6L

電球から0cm 電球から2cm 電球から5cm
電球から10cm 電球から15cm
電球から20cm 電球から25cm

 25cm離すと、ほぼ影響を受けなくなる。

E26 アイリスオーヤマ 普通7.0W電球色263

電球から0cm 電球から2cm
電球から5cm 電球から10cm

 ノイズは大きめだったものの、10cmも離せば問題なくなった。

E17 シャープ DL-JA42L

電球から0cm 電球から2cm 電球から5cm
電球から10cm 電球から15cm
電球から20cm 電球から25cm

 これもまた、25cm離すとほぼ影響を受けなくなる。

数センチ離すだけでもノイズは半減する。ノイズの大きな電球を買ってしまっても、天井の電灯として使えば受信障害になることはないだろう

 というわけで、比較的ノイズの大きかったLED電球でも、基本的には数cm離すだけでもノイズは半減する。ノイズの小さめのLED電球なら、ラジオなどを10cmも離せば受信障害の影響をほぼ受けなくなるし、たとえノイズが大きくても、30cmも離せばまず問題はなくなるだろう。

 基本的には、シーリングライトや廊下のダウンライト、トイレやお風呂の電灯として使う分には、受信障害になることはほとんどないと言えるだろう。AV機器の上にLED電球スタンドなどを置く、というような特殊な使い方をしない限り、LED電球のノイズを気にすることはないはずだ。

 なお、広帯域レシーバ以外に一般的なラジオを使ってみたが、今回使用したLEDで受信障害は確認されなかったことも、念のため付け加えておこう。


それでも障害が起きる場合は“共振”かも

 というわけで、LED電球の出すノイズは、電球から30cmも離せばほとんど受信障害を受けることがない。しかし筆者は、冒頭でも紹介した“商店街の電球を一斉にLED電球にしたところ近隣のテレビに受信障害が発生した”という話の、“一斉に”という部分がずーっと気になっていた。

 おそらくこれは“共振”が影響しているのではないだろうか。LED電球から出るノイズは電波の一種。電波はその字のごとく「波」として周りに伝わる。この波がぶつかり合って、大きなノイズが生まれているのではないか。

 お風呂に入った際に、こんな実験をしてみるといいだろう。湯船につかり、両手で同じような強さの波を立たせると、同心円状に広がる2つの波がぶつかりあったところで、波がより大きくうねることがある。これが、波と波が重なって、より大きな波ができる共振というものだ(逆に、互いの波が力を打ち消しあうこともある)。

 そこで、早速共振の実験だ。同じメーカーの同じLED電球を複数同時に点灯し、ノイズが共振によって激しくなるのかを試してみた。

 次のグラフは、LED電球にアンテナを密着させた状態で、消灯・点灯したときのノイズだ。

測定した周波数は2,090kHZなので、AMラジオより少し上の周波数だ。写真は消灯した状態のノイズ LED電球を点灯すると、ノイズの振れ幅は、目盛りの「15」あたりとなった
共振実験用に作った、ありえないぐらい近くに寄せた電球。アンテナの先端は、4つの電球の中央にセットしてある。こんな状態は実生活にはありえないので、あくまで参考程度に見ていただきたい

 これを基準として、複数のLED電球を点灯した場合を見てみよう。アンテナは各電球から2.5cm離れた4つの電球中央に設置している。はっきり言って、こんな状態は現実の照明器具ではありえないので、かなり意地悪な実験だ。あくまでも参考までに見ていただきたい。実際のこの状態でLED電球を1〜4個同時に点灯させていき、ノイズをグラフ化したのが次のグラフだ。


電球1個のとき、振れ幅は「16」 電球2個のとき、振れ幅は「16」。共振はしていないようだ
電球3個のとき、振れ幅は「14」。波形が少し変わったが、ノイズは逆に減っている 電球4個のとき、振れ幅は「17」。振れ幅が17と大きくなった。もしかしたら、共振が起きているのかもしれない

 というわけで、上記の実験では電球を4つ点灯しても、共振している様子は見られなかった。

 しかし、もしかしたら測定する周波数が違うのかもしれない。電波の特徴の1つとして、基準となる周波数の2倍、3倍、4倍……、あるいは1/2、1/3、1/4……の周波数にも影響を及ぼすというものもある。これは「高調波」というもので(音の世界では「倍音成分」と呼ぶ)、たとえば1,000kHzでLED電球のノイズが大きい場合は、2,000kHzや3,000kHz、さらに言えば、10倍の10,000kHz(10MHz)や、100倍の100,000kHz(100MHz)だったり、あるいは500kHz以下でも影響を及ぼす可能性がある。だから、AMラジオだけで受信障害が起こるというわけでなく、もっと高い周波数のFM放送やテレビにも影響する場合もあるかもしれない。

 これを試したのが、次のグラフだ。先に行なった電球4個の共振実験は、2,090kHzで測定した値だが、実は2倍の4,200kHzでも大きなノイズが聞こえたので、改めて実験しなおしてみた。

電球1個の振れ幅は18。2,090kHzのときより大きい 電球2個の振れ幅も「18」。共振はしていないようだ
電球3個になると、急に振れ幅の大きくなる部分が現れる。このときの振れ幅は「26」 電球4個ではさらに振れ幅が大きくなり「30」となった。おそらく共振の影響と思われる

 このように、共振が現れてしまう周波数というのもあるようだ。ちなみに、この実験機具に複数のメーカーのLED電球を取り付けてみたが、共振は確認されなかった。

 とはいえ、これは同じメーカー、同じ品番の製品を、しかも現実ではありえないほど一度にギュッと集めた実験での話。実際の室内環境でこんな状況はまずないだろうし、そもそもLEDのノイズは、基本的にはそこまで大きなものではない。よっぽど粗悪品を1カ所に集めて使わない限り、家中にノイズが巻き散らかされるなんてことは、普通はないだろう。あくまでも、どうしても障害が出てしまう場合に限定される話なので、特に問題が発生しないご家庭なら、共振を心配する必要はない。

今後はノイズに関する規制が強化される

 LED電球のノイズの問題については、実は政府側も把握している。経済産業省では、2010年8月25日に「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈の一部改正について」という文書を出している。これ自体は“今までの電気製品測定方法などを改正しますよ”というものだが、それに付属する「電気用品の雑音の強さの測定方法」という文書の中に、LED照明のノイズ対策(PDFの102ページ「第7章 照明機器等」)が言及されている。お堅い書類なので「LED電球」なんて言葉は記されていないが、「半導体を有する照明機器」とされているものがLED電球をはじめとしたLED照明だ。

 興味のある読者はPDFに目を通してもいいが、書いてあるのはおおよそこんな感じ。

・測定機器とセッティング、測定方法
・調べる周波数の範囲(今回の実験で筆者が調べた周波数帯とほぼ被っていてビックリ! この書類は実験の後で手に入れたのだ[笑])
・測定したデータから数値を求める計算式など

 LED電球の仕組み上、ノイズの大小があることに違いはない。しかし、これから発売される新製品については、これらのテストにパスししないものは販売できなくなるので、粗悪品は自然淘汰されていくだろう。

受信障害を最小限に抑える賢いLED電球の使い方

 というわけで、冒頭で挙げたテーマ「LED電球のノイズで、ラジオやテレビが乱れちゃうってホント?」については、「基本的には心配なし」というのが当ラボでの結論だ。ただし、念のため「もしかすると、LED電球が機器と近すぎると、問題が発生する電球もある」ということも付け加えておこう。

 最後におさらいとして、受信障害を最小限に抑えるLED電球の使い方のポイントをまとめておこう。

1)ノイズが気になる場合は、LED電球からラジオやテレビを離す

 実験でお見せしたとおり、機器から30cmも離せば、ノイズは小さくなる。何か問題があった場合は、基本的にはこれが一番効果があるだろう。

2)ノイズの原因はLED電球だけじゃないかも

 それでも改善されない場合は、携帯電話やノートパソコンのACアダプタ、充電式乾電池のバッテリーチャーチャーなどは、LED電球よりノイジーなものがあることが分かった。電波障害が発生した場合は、ACアダプタ系も疑ってみるといい。

3)それでも解決しない場合は、同じLED電球を一極集中させるのを控えてみる

 それでもまだ改善されない場合は、もしかしたら同一の形のLED電球をギュッと集めて使い過ぎることで“共振”が起きているのかもしれない。別の電球も混ぜてみるのも1つの対策だ。もちろんこれは、1)、2)の対策でも問題が解決しない場合の話であって、現時点でノイズ問題が発生していない場合は、共振を心配する必要はない。

 家電ラボの講義はこれにて終了。受講生の諸君は、これらのポイントに注意してLED電球を購入し、節電に役立てていただきたい。

【おまけ:LED電球を優先的に変えるべき場所は?】

 ノイズとは関係ないけれど、電気代を安くするポイントも受講生にこっそりお教えしよう。白熱電球をLED電球に替えて、もっとも顕著に電気代が安くなるのは、長い間点灯しているリビングやキッチン、ダイニングのものだ。たとえば居間シーリングライトが60Wの白熱電球4灯を使っている場合は、18〜24時まで(6時間)使っているとすると、月あたりの電気代は約860円。それをLEDに変えると110円となる計算だ。1カ月で750円違うので、請求書の千円の位が変わってくるはずだ。

 またお父さんの帰宅が遅い家庭では、外灯や玄関灯もかなり長く点灯しっぱなしになるだろう。60Wが2灯とすれば、LEDに替えれば月300円以上電気代が安くなる計算だ。

 次に長いのは、風呂やトイレ(特に読書する人)あたりか。逆に、廊下のダウンライトや階段灯などは、特にこまめにON/OFFをしている家庭では、電気代に反映されにくいはずだ。

 まずは、長時間灯っぱなしにしている電球からLED化していくことをおすすめする。節電効果は電気代にはっきり現れるので、楽しく節電できるようになるはずだ。



日本電球工業会
http://www.jelma.or.jp/
電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈の一部改正について(経産省)
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/gijutsukijunkaishaku/kaiseibun.pdf




2011年6月23日 00:00