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大河原克行の「白物家電 業界展望」 2兆円規模目指す、ヤマダ電機の出店戦略を探る
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Reported by
大河原 克行
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ヤマダ電機 代表取締役社長兼CEO 山田昇氏
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株式会社ヤマダ電機 の代表取締役社長兼CEOである山田昇氏は、「LABI(ラビ) 千里」の開店にあわせて、3月6日に行なわれた記者会見で、今後、7店舗の都市型店舗「LABI」を出店する計画があることを明らかにした。
これまでのところ、2008年6月に予定されている群馬県の高崎駅前、東京・渋谷の道玄坂の「SHIBUYA 109」の隣接地への出店のほか、すでにSL広場前にLABIデジタル館を出店している東京・新橋においても、線路を挟んだ銀座側に10階建てビルを建設し、今年夏にも新店舗を出店することが明らかになっている。
これ以外に4店舗の出店に向けて予定地を取得していることが明らかになったわけで、同社が都市型店舗を急ピッチで展開していく姿勢を示したものといえる。
山田社長は具体的な出店場所については言及しなかったが、「いずれもいい場所を確保できている。だが、いい場所には必ず競合も進出している」と、都市型店舗を展開するカメラ量販店や、地元大手量販店との競合環境にある立地での出店になることを示している。
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2008年6月には、群馬県高崎市のJR高崎駅前に「LABI」を出店する。画像は完成予想図
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既に「LABI 新橋デジタル館」を出店した新橋地区にも、新店舗を出店する。場所は東京メトロ新橋駅の5番出口すぐ
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新しい新橋店は2008年の夏オープン予定
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● LABIで展開する都市型店舗戦略
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「LABI」とは「Life ABIlity Supply(ライフ・アビリティー・サプライ)」の略(写真はLABI1なんば店)
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では、ヤマダ電機が展開する「LABI」とは、なにを狙った店舗なのか。
LABIは、「Life ABIlity Supply(ライフ・アビリティー・サプライ)」を略した造語で、都市部やターミナル駅前に進出する都市型店舗のブランドとなる。
同社によると、「のんびり・じっくり 自分のぴったりを探そう」をコンセプトに、新しい電化製品を「発見」し、商品を手にとって「体験」し、それらを「楽しみ」、人々に「発信」していくことを目的にした、体験型の店舗づくりを目指したものだという。
2006年3月に出店した大阪・なんばの「LABI1 なんば」の出店を皮切りに、仙台、池袋、品川大井町、新橋デジタル館、秋葉原パソコン館を相次ぎ出店。今年3月の千里で7店舗目を出店した。
ヤマダ電機には、全国展開するテックランドがあるが、これは同社が得意とするロードサイド型の郊外型店舗のストアブランド。売り場面積を1,000坪クラスとし、約20万人の商圏を対象に、出店を続けている。
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ロードサイド型店舗とは違い、LABIでは広域商圏を狙う(写真は「LABI千里店」)
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これに対して、LABIは、広域商圏を狙った店舗と位置づけられ、「商圏設定はテックランドの4~5倍」(山田社長)としている。商圏ターゲットは、30万人以上となり、なかには100万人を想定した店舗も含まれることになる。
「ヤマダ電機には、都市型のLABI、郊外型のテックランドがある。さらに、FC(フランチャイズ)店舗による地域密着型の店舗展開が可能となっている。量販店では、地域密着のサービスで手が届かないところがあり、都市型店舗、郊外型店舗ではカバーできない部分をFC店がやる。この3つの業態がうまくネットワークして、サービスを提供できる」とする。
同社では、商圏人口5~10万人を対象とするテック・FCと、5万人未満を対象にサービスを重視した展開を進めるコスモス・FCの2系統でのFC展開を進めてきた経緯がある。さらに、同社では、ネットワークを主体としたテックサイトと呼ばれる店舗を都内と岡山に出店。夜11時まで営業するスタイルもとっている。
「都市型店舗を展開する競合他社との違いは何かといえば、郊外型で培ったノウハウと、都市型店舗展開をミックスさせることができる点。配送や設置といった物流の仕組みや、アフターサービスやビフォアーサービスという点でも、お客に近い郊外店からカバーすることもできる。この仕組みを十分に発揮したい」と山田社長は語る。
今年2月には、持ち株比率50%以上の子会社をあわせた店舗数が1,028店舗と、1,000店舗を突破。国内量販店として最も店舗数が多いエディオンとの差は、数十店舗にまで近づいている。
昨年6月に連結子会社化したぷれっそホールディングスのマツヤデンキ、サトームセン、星電社の各店舗との連携も、地域密着の観点から強化されることになりそうだ。
● LABI1なんばは400億円近い売上高に
一方、7店舗を出店したLABIにおいても、2種類の展開がある。
1つは十分な売り場面積を確保できる店舗において、幅広い品揃えを行なう店舗。なんばや池袋、千里の店舗がそれにあたる。最新店舗となる千里店は70万点の品揃えを誇るという大規模店舗。なんば店は80万点、品川大井町店は100万点の品揃えを誇る。
もう1つは、十分にスペースが確保できず、数多くの製品展示ができないため、専門商品を取り扱うという店舗である。秋葉原のパソコン館、新橋のデジタル館がこれにあたる。
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LABIにも2種類の展開がある。1つは「LABI 池袋(写真)」や「LABI1 なんば」のように、売り場面積が広く、幅広い品揃えが行なえる店舗
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もう1つは「LABI 秋葉原パソコン館」のように、売場面積に制約があるため専門商品を取り扱う店舗
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「LABI 新橋デジタル館」も専門店タイプ。そのため、生活家電は取り扱っていない
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LABIの第1号店である「LABI1 なんば」。売場面積の約6,000坪は、LABIの中でも一番広い
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こうした中、やはり注目されるのが、第1号店となった「LABI1 なんば」の動向だろう。
山田社長は、「なんば店は、今年3年目を迎えようとしているが、初年度に掲げた売上目標300億円はクリアし、400億円近い売り上げ実績を残している」とコメントする。
開店当初は、厳しい状況が伝えられていたが、1年後の2007年4月に隣接するなんばパークスと2階連絡通路が開通。これによって、巻き返しに転じていた。ただ、梅田に出店しているヨドバシカメラとの売り上げの差は、やはり歴然だ。年間売上高では3倍近い差が開いているのが実状である。
だが、山田社長自身、なんば店に対しては、ターミナル型店舗という意識を強く持ってはいないようだ。
「なんば店は、都市型の交通事情を生かした利便性を持った店舗とは違う。1,000台の駐車場があり、生活家電よりも、情報関連商品の売り上げ構成比が高い」と傾向を分析。車で店を訪れて、デジタル家電やPCといった機器を購入していくというスタイルが目立つことを示し、「その点では、LABIが目指したコンセプトには、なんば店よりも、駅に直結している千里店の方が近い。千里では、なんばとは違う客層が獲得できるはず」とする。
LABIの第1号店は、都市型ではありながらも、一部では郊外型の要素を持ち、そして、専門店としての要素も兼ね備えたものになっているというわけだ。
● 価格、保障、ポイントで訴求
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競合店でヤマダよりも安い価格で売られていた場合は、その店舗と同じ価格で販売する「安心価格保証」を掲げる
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カメラ量販店の特徴は、ポイント制度がサービスの中心となる。それに対して、ヤマダ電機は、「安心価格保証」、「長期無料保証」、「ポイント進呈」という3つの観点から、顧客サービスを展開していることを強調する。
安心価格保証は、同一エリア内の競合他店との価格比較によって、それを上回る価格で販売していた場合には、他店と同じ価格で販売するというもの。常に地域ナンバーワンのロープライスを目指す施策である。
また、長期無料保証は、最大10年間の無料保証のほか、デジタル商品購入時に還元ポイントを使用して加入できる「5年保証」、他店で購入した商品も対象とする長期総合保証制度「New The安心」などのアフターサービスを実施。デジタルサポートサービスやパソコンサポートコールセンターも設置して、充実に努めている。
一方、ポイント展開においては、ヤマダ電機は、他店とは違う考え方を取っていると語る。
というのも、「ポイントは顧客を獲得する手段」(山田社長)として、あくまでも価格訴求と、サービスによって差別化する姿勢を見せているからだ。
その考え方は、来店しただけで1ポイントを獲得できるという仕組みに表れている。
1ポイントは1円の換算であり、来店するだけで、ポイントを蓄積するにはかなりの来店回数と時間を要する。一日2回まで蓄積できる仕組みをフルに利用しても、1年間通い詰めて、730ポイント(730円分)にしかならないからだ。だが、それでも来店するだけでポイントが蓄積できるというのは、来店の楽しみが増えることにもつながる。
そして、ギフト・生活関連商材を扱う新商品カテゴリーの「ELENTA(エレンタ)」の展開も、ポイントサービスの観点から重要な取り組みだと山田社長は語る。
ELENTAは、品川大井町店に続き、千里店で展開したもので、千里店では、1万種類のギフト・生活関連商材を扱っている。
「ポイントの使い道が、電機製品だけでなく、生活雑貨にまで広がれば、利用範囲はさらに拡大する。ELENTAは、それを実現するための活用方法でもある。ポイントを使ってもらうための仕掛けに力を注いでいるという点では、競合他社との考えに差がある」とする。
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店舗を訪れる楽しみを増やすため、来店するだけでポイントを加算するサービスも行なう
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1万種類のギフト・生活関連商材を扱う「ELENTA(エレンタ)」。貯めたポイントを活用する取り組みのひとつだという
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● 滞留時間を長くする施策も
一方、ヤマダ電機は、店舗づくりにおいて、滞留時間の拡大を目指している。
どの店舗にも共通しているのは、休憩できる場所を店内に設置している点だ。
千里の新店舗でも、店内に座って休憩できる場所を用意。「ゆとりの空間によって、長く滞留できる環境を提供することにも力を注いだ」と語る。店内の通路を広くしているのも商品をゆっくり見るためのものであり、この点では、カメラ量販店よりも力を注いでいるといえよう。
また、LABI千里では、初めてレストランフロアを作った。これは、すでにヨドバシカメラが展開している手法だが、15店舗の飲食テナントを誘致して、ショッピングの合間に食事ができる環境を提供。家族で楽しめる空間を創出して見せた。
これも滞留時間拡大に向けた施策の1つといえる。
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商品がゆっくり見られるように、店内の通路を広くとっている。「長く滞留できる環境を提供することにも力を注いだ(山田氏)」
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LABI千里ではレストランフロアも用意されている
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● 依然として続く拡大戦略
しかしその一方、いま、ヤマダ電機では、派遣社員の就労に関する対応問題が1つの課題となっている。
ヤマダ電機の社員が、メーカーから派遣された販売に対して、業務指示などをしていたとして、大阪労働局が昨年、同社に対して、これを是正するように指導した問題だ。
山田社長は、「管理体制が指摘されたなんば店はもちろん、新店舗でも、直接雇用に切り替えるなど対策を図ってきた」と、改善に取り組んでいる姿勢を示す。
業界全体で改善すべき課題なだけに、業界大手のヤマダ電機の対応が注目される。
ヤマダ電機の今年度の経営スローガンは、「販売目標(連結)2兆円以上ステージへ基盤構築スタートの1年」としている。
今年度通期見通しは、売上高が前年比23.2%増の1兆7,780億円、営業利益は35.2%増の750億円、経常利益は25.6%増の901億円、当期純利益は22.2%増の530億円。昨年12月までの9カ月間の業績を見ると、ほぼ計画通りに推移しており、スローガンにあるように、来年度以降の売上高2兆円への道筋も見えてきた。
そして、今年4月には、同社過去最大規模となる1,600人の新卒者を採用し、将来の基盤づくりにも余念がない。
さらに、ヤマダ電機は、明確な目標として、「売上高3兆円の達成」とともに「市場シェア30%獲得」を次なる目標として掲げている。業界内にはヤマダ電機への寡占化を懸念する声があるが、拡大戦略や買収戦略の手綱を緩めるつもりはなさそうだ。先頃も、岡山で計画がストップしたの場外馬券場の予定地に、1万4,700平方mのテックランドを出店することが明らかになったばかりだ。
ヤマダ電機が、今後、どんな一手を打つのか、様々な観点から注目しておきたい。
■URL
株式会社ヤマダ電機
http://www.yamada-denki.jp/
LABI
http://www.yamadalabi.com/
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2008/03/17 00:06
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