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大河原克行の「白物家電 業界展望」
日立が見せた白物家電事業に賭ける本気ぶり

Reported by 大河原 克行

見学会が開催された日立アプライアンス多賀事業所
 日立の本気ぶりがヒシヒシと伝わってきた。

 2月下旬に報道関係者を対象に、茨城県日立市の多賀事業所で開催した見学会で、同社は、ドラム式洗濯乾燥機、掃除機、電子レンジ、IHクッキングヒーターの4つの商品に関して、デモストレーションを行なって見せた。

 これが単なる商品紹介のデモストレーションではなかったのだ。すべてにおいて、数多くの競合他社の最新商品を持ち込み、比較実演してみせたのである。

 ドラム式洗濯乾燥機では、運転時の振動や、乾燥時に出る湿度の差を競合他社商品と比較。掃除機では、長い糸状のゴミの吸引力や後方排気部分の空質、貯まったゴミの捨てやすさなどを実演。電子レンジでは、実際に鳥肉を焼き、焼き上がりの違いを見せ、記者に試食させた。

 そして、IHクッキングヒーターでは、短時間で湯が沸騰することを示し、さらに、そのあとに牛乳をわざとこぼし、競合他社の商品では、トッププレートの表面温度が200℃以上になるため、牛乳が表面にこびりついてしまい拭き取りにくいのに対し、日立の商品では、表面温度は鍋底以上の温度にはならず、表面にこぼれた牛乳をサッと拭き取れるさまをみせた。


日立アプライアンス家電事業部多賀家電本部長・鎌田栄氏
 デモストレーションが変わるたびに、社員が、大道具係さながらに、各社の商品を一堂に並べ、撤収する。床には設置位置を示すテーピングがしてあったから、何度も練習を繰り返したのだろう。

 「ここまでやるべきか、という意見もあった。だが、日立の商品の強さを訴えるのであれば徹底してやってみようと、社内の意見がまとまった」と、日立アプライアンス家電事業部多賀家電本部長・鎌田栄氏は語る。

 もちろん、デモストレーションの内容は、日立が強い部分や、強調しておきたい部分であり、競合他社からすれば、別の角度から強みを訴えられる部分もあるだろう。しかし、各商品において、それぞれの商品に求められる本質的な部分で、日立が強いことを強調していたのは確かである。

 広報から、「他社と比較しているデモストレーションや資料の撮影はご遠慮ください」と制限がかかったのは残念だったが、日立の本気ぶりが伝わってくるデモストレーションであったのは間違いなかった。


ドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム BD-V1」のスケルトンモデル スチームオーブンレンジ「MRO-BV100」 紙パック式掃除機。左から「CV-PK10」、「CV-PK500」

日立ブランドを担う白物家電事業

日立アプライアンス 家電事業部長の石井吉太郎常務取締役
 日立にとって、白物家電事業は重要な役割を担う。

 日立製作所の2006年度連結売上高見通しが9兆7,000億円であることに比較すると、家電事業および空調事業を担当する日立アプライアンスの売上規模は、2006年度見通しで4,400億円と、わずか5%にすぎない。さらに、そこから業務向け空調機器の売り上げを引くと3,000億円弱の事業規模に留まる。

 だが、「日立と言われて想起するものはなにかという設問で、冷蔵庫、洗濯機と回答する人が最も多いというデータが表すように、日立のブランドを背負っているという自負が我々にはある」と、家電事業を指揮する家電事業部長の石井吉太郎常務取締役は語る。

 日立アプライアンスが、同社基本方針のなかに、「白物基盤商品の高付加価値による需要創造とブランド力強化」を掲げているのも、白物家電が、日立のブランドを支える商品である、という強い認識があるからにほかならない。

 「白物市場は、成熟産業の代表といわれるが、高付加価値商品に注目が集まるなど市場は安定的な成長を続けると予想される。2004年には全世界で7兆5,000億円の市場規模が、2010年には8兆5,000億円にまで拡大する。そのなかで、日立は、独自開発技術によるオンリーワン機能と、基本性能の徹底追求によるナンバーワン性能を実現するダントツ開発によって、お客様が満足する商品を作り続ける。2010年には、日立アプライアンス全体で5,200億円の売上高を目指す」と石井常務取締役は語る。


日立アプライアンスの基本方針 2010年度には売上高5,200億円を目指す 高付加価値商品とIHクッキングヒーターが軸

家電事業の鍵は「なにを作るか」

「なにを作るか」が大事だという
 石井常務取締役は、「家電事業のすべては、なにを作るか(What to Make)で決まる」と語る。

 「なにを作るかというのは、いわばお客様の潜在ニーズの掘り起こし。私の仕事の7割はここにかかっているといえる。あとは日立の総合力、技術力でなんとかできる」。

 その「なにを作るか」において、最も重要なのは、やはり顧客の声だという。

 ところが、石井常務取締役は、一方でこんなこともいう。

 「私の経験からも、アンケートをとり、その声をもとに商品化しても、売れた試しがない」。

 これは、先に言葉とは矛盾する言葉である。顧客の声を聞くという手段の1つはアンケートという手法で実現できるはずだ。だが、そこからはヒット商品は生み出せないのだという。これは、ヒアリングという手法でも同じだという。

 ではこの矛盾ともいえる言葉の真意はなにか。

 「アンケートをもとに商品化しても、その時点では、すでに遅いということがほとんど。お客様の声を素直に聞くことは大切だが、我々がやらなくてはならないのは心の奥底の声を聞くこと。掃除機には小さくても、強力な吸引力を、冷蔵庫にはコンパクトなのに、庫内が広いもの、洗濯機には静かに、かつ洗浄力が高いものという要求がある。技術の観点から見れば明らかに相反するが、日立の技術でこうしたことが解決できれば、お客様が驚き、満足できるものが投入できる」。


強い製品を作る「Sプロ」

企画・開発・製造・営業の担当者が揃って製品開発に当たる「Sプロ」
 こうした製品を生み出すために、日立では、Sプロと呼ばれる商品開発体制を確立している。

 正式には、「ソリューション・プロジェクト」と呼ばれるこの仕組みは、What to Makeを実現する仕組みともいえる。

 プロジェクトに認定された商品は、商品企画の段階から、研究開発、設計、製造、資材、品質保証、デザイン、宣伝、販促、営業、マーケティングの全部門が参画して、月1回から2か月に1.5回の割合でミーティングを行ない、一日がかりで徹底的に議論する。洗濯機や掃除機などの商品に関するミーティングは、それら商品の設計、製造を担当する多賀事業所で、冷蔵庫の場合には、同様に、冷蔵庫の設計、製造を担当する栃木事業所でそれぞれ行なう。

 会議では、市場はなにを求めているのか、それを解決するためには日立のオンリーワン技術をいかに活用し、いかにナンバーワン機能を実現するのか、といったことを繰り返し追求し、研究、開発の進捗状況、マーケティングの進行状態を確認する。

 「2006年度以降は、こだわり消費に応えるプレミアム商品の開発に焦点を当てている。感動できる価値や、高品質なデザインの実現を目指す」と石井常務取締役は語る。

 実は、石井常務取締役は、Sプロの会議には欠かさず出席する姿勢を見せている。そこには石井常務取締役が果たす重要な役割があると考えているからだ。

 「妥協を許したり、困難から逃げるための理由はいくらでも思いつく。だが、それを許さない役割を誰かが果たさなくてはならない。また、高い目標を設定すること、それへの挑戦を後押しするのも私の役割。10%の機能強化は誰でも思いつく。だが、それを2倍に引き上げるという目標は誰もやりたがらない。なんとしてでも、これをやり遂げるんだという方向で、全部門がまとまらなくてはSプロは成功しない」

 これを補足するように鎌田本部長も、ドラム式洗濯乾燥機の例を出しながら次のように語る。

 「ドラム式の分野に最後発で参入する当社が、先行他社と圧倒的な差を出すにはどうしたらいいか。そして、ビートウォッシュで実現した高い能力を、ドラム式でどう実現するかという課題もあった。その解決策の1つが、ドラムのサイズを大きくするという方法。だが、ドラムの直径を20%大型化すれば、振動は200%アップする。その振動を他社以上に低く抑えなくては、最後発で勝つことはできない。妥協を許さない研究開発が続いた」という。

 石井常務取締役は、IHクッキングヒーターの例を引き合いに出す。「商品化の1年前の時点では、目標に掲げていたトッププレートの表面温度が鍋底以上に高くならないピュアIH加熱の開発を諦めかけていた。だが、研究開発、設計部門の踏ん張りで、これを解決し、圧倒的ともいえる製品が投入できた。もちろん、新たな挑戦にはたくさんの失敗もある。だが、妥協しない風土が社内に定着しつつある」と語る。

 2006年度に投入した商品は、ほとんどがSプロによって商品化されたものだ。その成果については、「まだら模様」と石井常務取締役は手綱を緩めないが、着実にシェアを引き上げている。


今後の「成長の柱」と位置づけるオール電化

IHクッキングヒーター「HT-A20WFS」
 その日立の家電事業部が、今後の事業の柱として挑んでいるのが「オール電化」である。

 現在、オール電化の国内市場規模は、2005年実績で約3,300億円。これが年率20%台の高い成長率を維持し、2010年には7,500億円の市場に拡大すると見込まれている。

 この市場における日立のシェアは約15%、これを20%程度にまで引き上げ、「オール電化事業の基盤確立とともに、トップグループ入りを目指す」(石井常務取締役)と語る。

 昨年4月の旧日立H&Lと、旧日立空調の統合により設立した日立アプライアンスは、両社の統合によって、ヒートポンプ技術と給湯機技術、ポンプ技術などの開発リソースを集約し、オール電化における技術開発体制を強化。同時に両社が持っていた営業インフラを相互に活用することで販売体制の強化も可能になった。

 さらに、同社では、IHクッキングヒーターと、200Vビッグオープンレンジ、IH連動レンジフードファンをシステム連動の形で提案。これを「縦の統合」と位置づけ、「ガスオーブン同等の強い火力や、大きなレンジ庫内、システムキッチンに採用しやすい低外壁温度の実現に加え、レンジフードファンで課題とされていた吸い込み力が弱い、結露する、音がうるさいという問題を、IH連動フードファンの投入によって解決した」(同社)という。

 「白物家電メーカーにとって、オール電化は、唯一残された大規模で、確実な成長市場。ここでの橋頭堡を築くことが、日立の家電事業の成長につながる」と石井常務取締役は語る。

 日立アプライアンスにおけるオール電化の事業比率は約5%。これを2010年の全社5,200億円の売り上げ規模のうち、約10%をオール電化事業で占める考えだ。

 今後、オール電化でどんな商品を投入するのか。日立の総合力を生かした商品投入が注目される。


オール電化の市場規模は、2010年度に7,500億円になると予測される IHクッキングヒーターを軸に、ビルトイン型のオーブンレンジやレンジフードファンなども揃える




URL
  日立アプライアンス株式会社
  http://www.hitachi-ap.co.jp/

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2007/03/05 00:00

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