|
日立アプライアンス 多賀事業所
|
日立アプライアンスは、洗濯乾燥機、掃除機、IHクッキングヒーターなどの生産拠点である茨城県の多賀事業所を、報道関係者に公開した。
日立と聞いてなにを想起するかという質問で多くの人が「冷蔵庫」、「洗濯機」と答えるというデータからも明らかだが、多賀事業所は、「日立の代表である白物家電事業において、時代を常にリードしてきた拠点」(日立アプライアンス家電事業部多賀家電本部長・鎌田栄氏)というように、現在、同社の白物家電事業における基幹生産拠点だ。
日立アプライアンス多賀事業所は、上野からJR常磐線の特急で約1時間30分の常陸多賀駅から、車で約5分の位置にある。'39年(昭和14年)に電気製品の量産工場として設立され、洗濯機や掃除機の第1号製品の開発、生産のほか、変圧器や計測器、インクジェットプリンター、ワードプロセッサなどの製造にも携わってきた。これまでの経緯からも、「日立の原点とも言えるマザー工場」(日立アプライアンス常務取締役 家電事業部長・石井吉太郎氏)ということになる。
掃除機ゴミパック式「チリコン」や、全自動洗濯機「静御前」や「からまん棒」、大容量ステンレス糟ファジー洗濯機「これっきりボタン」、光リモコン掃除機「かるワザ」などのヒット製品は、すべて多賀事業所で生産されたものであり、同社のエポックメイキングともいえる家電製品を数多く輩出している。
|
|
|
JR常陸多賀駅
|
多賀事業所の正門
|
説明会が行なわれた本館
|
|
|
|
事業所内には各生産棟が点在している
|
日立アプライアンス 常務取締役家電事業部長・石井吉太郎氏
|
日立アプライアンス 家電事業部多賀家電本部長・鎌田栄氏
|
|
東京ドームの7.5倍の敷地面積を持つ多賀事業所
|
現在、家電事業部の生産拠点は、冷蔵庫、瞬間式HP給湯器、ルームエアコンなどを生産する栃木事業所、パッケージエアコン、貯湯式HP給湯器などの生産を行なう清水事業所、大型冷凍機の生産を行なう土浦事業所のほか、海外向けの洗濯機、エアコンの生産を行なう上海日立家用電器有限公司、同じく全自動洗濯機、二層式洗濯機、掃除機、ジャー炊飯器などを生産するタイの現地法人、Hitachi Consumer Productsがあるが、そのなかでも洗濯機、掃除機、IHクッキングヒーター、電子レンジ、ジャー炊飯器、空気清浄機、ポンプ、換気扇などを生産する多賀事業所は最大規模となる。
多賀事業所の土地面積は、42万6,316平方m。約13万坪となる面積は、東京ドーム約7.5倍の広さに匹敵する。建物面積は、17万7,478平方m(約5.4万坪)、就業人口は1,132人。
多賀事業所を拠点とする多賀家電本部は、デザインセンタや生産技術部、資材部、第一製造部、第二製造部などのほか、洗濯機の設計を行なう家電第一設計部、掃除機などの設計を行なう家電第二設計部、調理器などの設計を行なう家電第三設計部、家電製品で利用するマイクロプロセッサの設計を行なう電子制御設計部を配置しており、設計から調達、生産までを担う体制を整えている。
また、デジタルエンジニアリングによる短期間高品質開発、セル方式による多品種高効率生産を実現する一方、再資源化、省エネルギー化、使用水量の低減やCO2排出量の削減などの、環境対応のモノづくりでも先進的な取り組みを見せている。
環境マネジメントに関する国際規格ISO14001の認証を取得。さらに品質マネジメントシステムに関する国際規格ISO9001も、洗濯機、掃除機、クッキングヒーターなどで取得している。
品質管理については、電波障害測定室、大型環境試験装置、蛍光X線分析装置などを導入することで、原材料の選定から完成試験に至るまで厳しい試験を繰り返している。基本的には、全量検査を基本としており、品質にこだわる日立ならではの文化が強く根付いている。
では、主要な製品の製造工程を写真を通じて見てみよう。
● 掃除機の生産ライン
|
|
昭和31年に開発されたヒッターバックと呼ばれる製品。扇風機のガードのようなものが取り付けられている
|
歴代の掃除機は多賀事業所で開発、生産されている
|
|
|
|
掃除機の生産ライン。2002年8月からセル生産方式を開始。それまでは6本のベルトコンベアラインで生産していた
|
セルラインは、1階フロア、2階フロアを含めて57セルある。1人で日産130台が目安。セル方式で30%の効率化を実現
|
販売店向けの特別モデルなどを含める約45機種を生産。生産機種の切り替えも柔軟に行なえる
|
|
|
|
25点の部品を組み立てることになる
|
コードリール
|
月産では65,000台から70,000万台。年末の需要期には月10万台を生産する
|
|
|
組み立てが終わると完成品は検査工程に移動
|
高精度商用検査室。完成品の吸い取り能力などを全量検査する
|
● ドラム式洗濯機の生産ライン
|
|
操作パネル部分はスクリーン印刷されて入庫したものを工場内でパネルの形に成形する
|
洗濯機で使用する各種大型部品の射出成形工程もある
|
|
|
|
駆動部や外装部組(通称:ブクミ)を経て本体組立ラインに
|
本体組立ラインはベルトコンベアで流れるが、ドラム製缶ラインをはじめとした部品の組立工程をまわりに配しており、工程の一本化を図る
|
外枠製造ラインは大型のプレス機が導入されている
|
|
|
|
パネルなどの塗装も工場内で行なう。現在、9部品を塗装している
|
側面の外枠を取り付けたところ
|
ドラムが取り付けられ完成に近づいた段階
|
|
|
|
水漏れや乾燥など39項目の全量検査をインラインで行なうほか、抜き取り検査を行ない、品質精度を高める
|
完成した製品を出荷口へ
|
現在、月産1万2,000台規模となっている
|
● IHクッキングヒーターの生産ライン
|
|
|
IHクッキングヒーターの生産棟は2005年までは日立化成が入っていた
|
戦前に作られた建物だという
|
IHクッキングヒーターのスケルトンモデル
|
|
|
|
1,200本の極細銅線が束ねられて、コイルが完成する
|
完成したコイル
|
オールメタルタイプと、通常タイプで用いる芯線が異なる
|
|
|
構成部品は細かい部品が多い
|
グリルの外装
|
|
|
内部基板
|
基板にはヒートシンクも見られる
|
|
|
|
生産は7、8人で構成するセルライン方式
|
セルは14ラインある
|
1ラインで1日50~70台を生産。月産1万台の規模。30%増で成長している商品だけに、すでに施設が手狭となっている
|
|
|
|
細かな配線作業なども多い
|
IHクッキングヒーターの外枠の組み立て
|
基本構成は変わらないが、電力会社向け、システムキッチンメーカー向け、住設メーカー向けなど78機種を生産している
|
|
|
|
ピンクの鍋には水を入れて、インラインで加熱テストを実施
|
梱包作業は手作業で行なっている
|
完成したIHクッキングヒーター。出庫口に運ばれる
|
■URL
日立アプライアンス株式会社
http://www.hitachi-ap.co.jp/
■ 関連記事
・ そこが知りたい家電の新技術 日立 掃除機「パワースター きれい宣言 CV-PK500」(2006/11/14)
・ そこが知りたい家電の新技術 日立アプライアンス 洗濯乾燥機「ビッグドラム BD-V1」(2007/02/19)
・ 【創刊特集】白物家電業界 キーパーソンに聞く 第2回:日立アプライアンス 常務取締役 家電事業部長 石井吉太郎氏(2006/10/03)
( 大河原 克行 )
2007/02/23 14:28
- ページの先頭へ-
|