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大河原克行の「白物家電 業界展望」
高付加価値白物家電が注目を集める理由

Reported by 大河原 克行

 白物家電市場において、注目を集めているのが高付加価値型の商品である。

 炭の釜を採用した「炊飯器」、同じ筐体サイズながら内容積を大幅に拡大した「冷蔵庫」、フィルター掃除を自動的に行なう「エアコン」など、これまでにはない家電商品が登場。売れ筋価格帯の2~3倍もするような高価な商品が売れ始めているのだ。


平均単価が上昇傾向に

高級製品の普及は年々進んでおり、単価も上昇傾向にある(資料:三菱電機)
 実際、付加価値商品の売れ行きは、数字にも表れている。

 業界団体である日本電機工業会(JEMA)によると、2000年の国内生産平均単価を100とした場合、2006年の洗濯機の平均単価は139に、電子レンジでは138に、炊飯器では113へと上昇している。

 価格下落が激しいデジタル家電とは異なり、白物家電の一部分野では着実に単価が上昇しているのである。

 では、どんな付加価値商品が売れているのだろうか。

 高付加価値化で先鞭をつけたのが、シャープのヘルシオである。

 それまでの電子レンジは、調理するというよりも、むしろ温めるという用途が中心であり、その結果、“低価格のものでもいい”という風潮があった。しかし、ヘルシオでは、過熱水蒸気で調理する方式を採用。これが脱油、減塩の効果をもたらすとして「健康調理器」という新ジャンルを創出した。電子レンジの平均実売価格に比べて、5倍以上の価格差がありながら、発売初年度から10万台を売り切るヒット商品となった。2006年にはラインアップを強化。大家族向けの調理にも対応できるように大型化も図っている。

 また、2006年に三菱電機が発売した内釜に炭を採用した炊飯器は、発売当初、約10万円という価格設定にも関わらず、絶大な人気を博し、半年で1万台を出荷するという人気商品となった。炭による遠赤外線効果で、ごはんをおいしくふっくらと炊きあげることができる点が高い評価を受け、2~3万円が売れ筋とされる炊飯器市場において、隠れたヒット商品として人気を博した。

 最近の白物家電業界ではこうした例の枚挙にいとまがない。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、エアコンといったあらゆる分野で、付加価値型商品が登場しており、まさに各社の商品戦略の中核になっている。


シャープ「ヘルシオ AX-HC1」。電子レンジと比べると、価格は約5倍程度の価格差があったが、発売初年度から約10万台を売り切るヒット商品となった 過熱水蒸気で調理することで、脱油、減塩効果がある

三菱電機「本炭釜 NJ-WS10」。発売当初は約10万円という価格設定だったが、半年で1万台を出荷する人気商品となった 炭による遠赤外線効果により、ごはんをふっくらと炊きあげることができるという

なぜ、付加価値商品が人気を博すのか

 こうした商品が人気を博している背景には、いくつかの要因がある。


日立アプライアンスでは、デザインの品質や感動できる価値への「こだわり消費」を、付加価値商品のヒットの要因としている(資料:日立アプライアンス)
 1つは、購入者の意識が大きく変化している点だ。

 昭和の時代は、「隣の家と同じものが欲しい」という消費者意識がベースとなって白物家電が普及してきた。大量少品種型の製品戦略が軸となっていた時代でもある。

 だが、最近の購入傾向は、その逆であり、むしろ、「隣とは違うものが欲しい」という声が主流となっている。個々の生活スタイルに合ったデザインや機能が求められており、だからこそ、付加価値型の商品に人気が集まっているのだ。

 2つめには、家電各社が取り組んできたここ数年の大規模な構造改革によって、事業部門の壁が取り払われ、付加価値型商品を生み出す環境ができあがった点が見逃せない。

 松下電器が投入したエアコンのフィルター自動掃除機能を搭載した「お掃除ロボット」は、掃除機能に関しては掃除機部門の技術を採用。同社がかつて採用していた縦割りの事業部制度のなかでは、実現できなかったものだ。

 また、東芝が発売した洗濯機では、エアコンで採用しているヒートポンプ技術を採用することで、乾燥運転時のコストを下げ、乾燥の仕上がりの質を高めることに成功している。これも、これまで交流がなかった部門の技術を活用した結果の商品創出といえる。

 構造改革によって活用できる技術の枠が広がり、それが付加価値商品の創出を下支えしているのだ。


ナショナル「CS-X」シリーズ。自動でフィルターを掃除する「お掃除ロボット」では、掃除機部門の技術を採り入れている 東芝のドラム式洗濯乾燥機「TW2500VC」。エアコンで導入されているヒートポンプ技術を利用し、乾燥運転時のコストを下げ、乾燥の仕上がりの質を高めている

変化する生活様式も影響

 白物家電の単価上昇という観点では、日本人の生活様式の変化という点も見逃すわけにはいかない。


メーカーは、リビングスペースの拡大に対応するため、高級機タイプのエアコンを導入している。(資料:シャープ)
 エアコンでは4.0kw以上の能力を持った大型タイプが全体の46%を占めているが、これは、リビングスペースの拡大といった生活の変化が背景にある。調査によると、新築マンションや新築一戸建てにおいては、リビングスペースが14畳以上だとするケースが、なんと99%を占めている。当然、これにあわせてリビングに設置するエアコンも高機能化しているのだ。

 冷蔵庫に関しても、冷蔵室を拡大した商品や、容量全体を拡張した商品が人気となり、いまや400L以上の大型タイプが出荷量の3分の1以上を占める状況になっている。これも毎日、買い物をするという家庭が20%以下に減り、まとめ買いをする家庭が増加していることの現れといえる。

 こうした生活様式の変化によって、大きな出力を持ったエアコンや、大容量冷蔵庫の需要が高まり、単価上昇へとつながっているわけだ。

 また、複数の機能が重なりあって単価が上昇する例もある。最たる例は、洗濯機だ。洗濯機の単価上昇は、洗濯機と乾燥機が一体化したことによる単価上昇要素が大きく影響しているからだ。これも付加価値型製品の広がりの影響の1つといえよう。


顧客視点での商品開発が課題に

 では、付加価値商品は、今後、どう発展していくのだろうか。

 消費者の嗜好の変化、生活様式の変化、そして、事業の壁が取り払われたことによる新製品の創出は、これからも続くことになるだろう。そして、各社とも付加価値製品を戦略的製品と位置づけ、重点的に開発投資を行なっていくのも明らかだ。


シャープ株式会社 電化システム事業本部長 庵和孝氏
 「いまの白物家電には、エンジン革命こそ必要。まったく異なる発想を持ったもの、あるいはまったく違うエンジンを採用することによって、商品そのものを変えるといった発想が必要だ」と、シャープ電化システム事業本部長の庵和孝氏は語る。

 こうしたエンジンを変えた新発想の家電商品であれば、ある程度の価格でも、消費者を惹きつけることができるという。

 シャープのヘルシオは、まさにエンジンを変えることによって成功した一例だ。

 だが、メーカー側にも気をつけなくてはならない課題がある。


松下電器産業株式会社 ナショナルアプライアンスマーケティング本部 本部長 高見和徳氏
 「最も気にしなくてはならないのは、お客様にとって使いやすい商品を開発するということ」と語るのは、松下電器産業ナショナルアプライアンスマーケティング本部・高見和徳本部長。

 「作り手側の訴求ではなく、お客様が満足していただける商品を投入していくことが必要であり、それが試されているのが付加価値商品。もし、気を抜いた商品を出したら、いくらメーカーが付加価値商品だといっても、見向きもされないだろう」と、気を引き締める。

 単に機能を組み合わせたり、むやみに高機能化を図っても、消費者不在の付加価値商品は受け入れられないというわけだ。


2007年に注目される付加価値とは

 2007年は、従来からの付加価値戦略に加えて、高齢化などに対応した「UD(ユニバーサルデザイン)」や、省エネに代表される「環境対応」、あるいは「健康」に対する要求が、付加価値向上のキーとなりそうだ。

 高齢化社会が進展するなかで、誰もが使いやすい家電商品の創出は、メーカーにとって避けては通れないものとなっている。


2007年は、従来からの付加価値戦略に加えて、ユニバーサルデザインや、エコロジー性能などが、付加価値向上の鍵となるだろう(資料:東芝)
 さらに、現在の家電製品は、食器洗い乾燥機で見られる、“手洗いの10分の1の使用水量”といった節水効果、エアコンで実現されている“11年前に製品に比べて、年間3万円近い電気代の節約”といった省電力性など、省エネや環境面に対する要求はますます加速するだろう。

 そして、「健康」という点では、先に触れたヘルシオの例に留まらず、「健康調理」に対する需要が高まる一方、エアコンや暖房機、空気清浄機では、「空質」といった言葉で表現されるように、空気の温度だけではなく、空気そのものをきれいにするといった機能に人気が集まっている。

 人口の減少傾向や、家庭への普及率を見ると、もう限界に達しているとさえ見られる白物家電市場だが、こうした様々な付加価値要素を商品に取り込むことによって、潜在需要を顕在化することができているのだ。

 しかし、すべてを手放しで喜ぶわけにはいかない。

 白物家電事業の業績は、すべてのメーカーが好調といえる状況ではないからだ。依然として、赤字から脱却できない企業や、前年割れで推移している企業もある。

 白物家電の付加価値商品はピンポイントでは売れているのだが、これが線となり、面となり、業績を拡大するというところには到達していないのが現状だ。

 2007年は、付加価値商品戦略を、いかに収益につなげられるかが鍵になるだろう。





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2007/01/11 00:00

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