職場ではもはや当たり前になりつつある、パソコンでのスケジュール管理。しかし、個人レベルではまだまだ手帳人気は根強いようだ。12月に入って、手帳売り場はますます盛り上がりを見せている。
基本的なスケジュール管理はグループウェア任せの我が編集部も、この盛り上がりは見過ごせない!! というワケで勝手に「今年使いたい手帳」をピックアップしてみた。もちろん、まだ年も明けてないのでレビューにはならないが、ちょっとしたヒマを潰す読み物として楽しんでいただければ幸いだ。
■ ほぼ日手帳2009 by 伊藤 大地
■ ラコニック「B6横型 週間バーチカル式見開き型」 by 阿部 夏子
■ 吉本手帳'09 by 正藤 慶一
● 自由度求めてたどり着いたのはやっぱり定番「ほぼ日手帳2009」
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ほぼ日手帳2009
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正直言うと、これを紹介するのだけは避けたかった。
いや、ほぼ日手帳が嫌いなワケではない。これだけ有名で、毎年、そのリニューアルの内容が細かくネット上で公開されているこの手帳を、わざわざここで紹介する意義があるのかと考えると、うーん……となってしまう。
そう考えて、今回、相当な数の手帳をチェックしたのだが、やはりこのほぼ日手帳は、実用手帳として出色のデキであると確信した。わざわざ「実用手帳として」と断りを入れたのは、ちょっとゆるくて面白い、そんな「ほぼ日」カラーを切り離しても、純粋に実用手帳として優れている、ということを伝えたかったからだ。
メーカー | ほぼ日刊イトイ新聞 |
製品名 | ほぼ日手帳2009 |
購入店 | ロフト |
購入価格 | 6,800円 |
まず、レイアウト。
ほぼ日手帳は、1日1ページを基本に、方眼で覆われたレイアウトになっている。方眼は、文字を書きたいときは罫線になるし、イラストを描く際にもジャマにならず、一番使い勝手がいい。印刷の色は月ごとに違うのだが、どれも方眼が必要以上に目立たないように、線の太さと色の濃さを調節している。
手帳にはおきまりの時間軸も、ほぼ日手帳では控えめ。目盛りはページの左隅に小さく書かれてあり、「使いたい人はどうぞ、使わない人は無視してね」とばかりに、さりげない存在になっている。要は、メモ欄とスケジュール欄の区切りが曖昧で、使い手の好みで、ページ全体をメモ欄、イラスト欄にできるのだ。
多くの手帳は時間割に多くのスペースを割いていて、これが気に入らなかった。というのも、日々、先が読めないニュースを追いかけて仕事をする関係上、きっちり時間帯が決まったスケジュールは決して多くない。必要なのは、ToDoやアイディアを日付と連動させて書ける十分なスペースだ。多くの手帳にある時間割は、あまり役に立たず、ただ日付が入っただけのノートが理想に近い。この点で、理想に当てはまるレイアウトなのだ。
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左側に時間軸があるが、使ってもいいし使わなくてもいい、そういう体裁だ
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祝日。わかりやすいが、色が薄いので書くのにジャマにならない
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月ごとにテーマカラーが分れている
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次にデイリーかつ綴じ手帳であること。
実は1日1ページのデイリータイプで、製本された形のいわゆる「綴じ手帳」になっているものは、結構少ないのだ。
手帳もレイアウトにこだわりだすと、必然的に、リフィル(用紙)を選べるシステム手帳へと傾いていく。しかしシステム手帳は、リングがあるせいで書ける面が狭いわりに場所を取るし、リフィルそのものの管理が面倒くさい。だが、ウィークリーでは書くスペースが足りない。デイリーかつ綴じ手帳、となると、選択肢が異様に狭くなる。
デイリーかつ綴じ手帳が少ない理由は簡単で、1日1ページで綴じ手帳にすると、分厚くなってしまうからだ。そこで、ほぼ日手帳は、薄くて軽いながらも裏移りしにくい、「トモエリバー」という紙を使っているらしい。実物を見ると、「こりゃ裏移りしそうだな」と思ってしまうくらい薄いのだが、実際に書くと、確かに裏移りがない。そのかわり、水性系インクの場合、乾くのに少々、待つ必要があるが、これは仕方のないところだろう。いずれにしても、この厚みでデイリーで、綴じ手帳というのは、貴重な存在だ。この完成度はやはり、ユーザーの意見を吸い上げつつ、バージョンを重ねてきた成果だろう。
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極薄のペラペラ紙なのに裏移りがない
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どうしても週単位のウィークリーが欲しければ、オプションのサテライトノートを加えれば大丈夫
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ウィークリーのサテライトノート
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ところで、「ほぼ日手帳」というと、「あぁ、あの糸井重里が作った手帳?」みたいなリアクションをされることが多い。確かに、売り場を見ると、ビジネス書の著者や、財界の著名人が作った機能的な手帳が人気を博しているようだ。だが、こうした“有名人手帳”とほぼ日手帳は、まったくの別物だ。こういった有名人手帳は、作り手の考え、使い方に従ってはじめてその効果を発揮する、言ってみれば自己啓発の教材のような位置づけだ。一方で、ほぼ日手帳は、いかに多くの人が、様々な用途で使えるかがコンセプトで、使い方を自分で作っていく手帳である点が、有名人手帳とは一線を画している。
というわけで、ずいぶんアツく語ってしまったが、2009年のマイ手帳は、日付入りノートみたいな感覚で使える、ほぼ日手帳にキマリとしたい。
■URL
ほぼ日刊イトイ新聞
http://www.1101.com/
製品情報
http://www.1101.com/store/techo/index.html
直販サイト
http://www.1101.com/store/techo/2009/shopping/index.html
● 2カ月分の予定を一度に確認できる横型見開き手帳
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LACONIC(ラコニック)「B6横型 週間バーチカル式見開き型」。ビビッドな黄緑が目立つデザインだ
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週末に手帳売り場を覗くと、とても手帳を手に取れないほどの賑わいで驚いた。パソコンや携帯電話でのスケジュール管理ツールがこれほど発展してもまだまだアナログでスケジュール管理をしている人は多いのだ。
かくいう私も手帳支持派。仕事でのスケジュールはウェブに頼っているところもあるが、仕事以外のスケジュールを書き込むとワケがわからなくなってしまうので、ウェブとは別に、予定をキッチリ手帳に書き込む方だ。1日の予定の見通しを立ててから行動したいという性格もあって、書き込む事柄は予定そのものに加えて、場所や時間、会う人まできっちり書き込みたい。
そんな私が2009年のパートナーとして選んだのはLACONIC(ラコニック)の「B6横型 週間バーチカル式見開き型」のもの。ラコニックは手帳メーカーとしては有名で、カラフルな色と、大きめなサイズ展開で、女性にファンが多い。本格的な文房具屋さんで……というよりはロフトや東急ハンズなどで必ず見かけるメーカーだ。
メーカー | LACONIC(ラコニック) |
製品名 | B6横型 週間バーチカル式見開き型 |
購入場所 | ロフト |
購入価格 | 1,785円 |
私自身過去に同社の手帳を愛用していたこともあってお馴染みのメーカーだったが、今年の新作を手にとって驚いたのが、見開きが横型になっていたこと。普通、手帳は文庫本のように縦型の見開きのものが多く、レイアウトも縦型になっているのが一般的だが、この製品では横に長く紙を使うことで、コレまでとはひと味違う使用感を提供している。
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マンスリー欄が見開きで2カ月同時に確認できる
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一般的な手帳とは異なるレイアウトの中でも、特に目を引いたのがマンスリーが2カ月同時に確認できるということ。これって実はありそうで無かったことで、私自身、このマンスリーのレイアウトが気に入って購入を決めた。
仕事をしている人にとって、月をまたいでの予定や企画は当たり前のことだろう。月をまたいでの予定を、2カ月見開きのスケジュールで考えられるというのはかなり違う。1枚めくれば良いと言う人もいるだろうが、視覚的に2カ月見通しで見れるというのは、頭の中でも連続で考えられるようになるので、予定の見通しを立てやすくなるのだ。
横長の特徴は、ウィークリー欄にもバッチリ活かされている。当たり前だが、B6を縦型に使用しているものより、書くスペースが幅広いので、たくさんの分量を書き込める。朝8時から翌日7時まで24時間の時間罫線はあるものの、それほど主張が強くないので単なるメモ用罫線として使えそうだ。
特に私のような仕事の場合、時間ベースよりも日付ベースで動くことが多いので、時間罫線の主張が強いものは敬遠してしまうが、これならばユーザーで使い方を選べるのでよさそう。
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ウィクリー欄は、通常のものよりたっぷりスペースがとってあり、書き込む欄も多め
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時間軸は設けてあるものの、ほとんど目立たない造りになっている
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時間軸の罫線はあるものの、小さく目立たないので、それ以外の用途で使うのにも向く
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そのほか、細かい使い勝手に関しても文句ない。
細かく見ていくと、マンスリーの欄には、大安、仏滅などの中国暦、日本の祝日、三日月、満月の日がそれぞれ記載されている。また、路線図も充実している。東京近郊、大阪近郊、東京の地下鉄、大阪の地下鉄、札幌、仙台、横浜、京都、神戸、福岡まで乗っているのだから、出張の多い人でも安心だ。
携帯やパソコンの普及で、なんでもインターネットで調べられる時代になったとはいえ、手帳にここまで載っているのはなにかと安心できる。
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2本のしおりがついている
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東京・大阪以外の地方都市の路線図も網羅している
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マンスリー欄には大安といった暦の情報のほか、祝日や、月の満ち欠けの情報も記載されている
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綴じ部分の方がページよりも幅が広いため、ページが開きやすい構造
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一点気になったのが、バッグなどに入れたときの耐久性。綴じ部分からの幅が広いだけに、折れ曲がったり、開いてしまう可能性は縦型のものより高そうだ。持ち歩いて使う場合には専用のバンドなどを用意するなどした方がいいだろう。
B6という大きめのサイズで、ボリュームもあるので、サブとして使うよりは、使いこなしたい人向けの製品。買い換えてすぐ、スムーズに使い始められるのも良い手帳の証だろう。
● 使えるのはもちろん、笑いも取れちゃう贅沢な手帳「吉本手帳'09」
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故・横山やすし氏のオビが強烈な「吉本手帳'09」。カバーには氏のセリフにあるように合革を採用するが、「YK」「笑」「吉」といった文字があしらわれたデザインは評価が分かれるだろう
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記者がそれぞれオススメの手帳を紹介するこの企画だが、実を言うと私はあまり手帳を使っておらず、もっぱら携帯電話やネット上のスケジューラーを利用している。そのため、ここでもっともらしいことを述べてもあまり説得力がない。ここは思い切ってウケ狙いに走らせてもらう。
紹介する手帳は、吉本興業の「吉本手帳'09」である。吉祥寺のロフトで定価の2,100円で購入した。
吉本興業については、もはや説明するまでもないが、数多くのお笑い芸人を抱える大手芸能プロダクション。この手帳は、その吉本興業の社員が実際に使っているものと同じものとのこと。ここ数年は毎年販売されているようだ。
メーカー | 吉本興業 |
製品名 | 吉本手帳2009 |
購入場所 | ロフト |
購入価格 | 2,100円 |
購入理由は、手帳のオビが目に入ったから、という単純なモノだ。ロフトに並ぶ手帳のオビには、「この手帳で○倍仕事がはかどる!」「スーパー○○術」などと、仕事の効率がアップする謳い文句が並んだものが多い。しかし、この吉本手帳のオビには、故・横山やすし氏のイラストがドーンと描かれている。横山の“やっさん”といえば、「やすきよ漫才」で一世を風靡しながら、晩年は仕事をドタキャンするなど破天荒な生き様が目立った伝説の漫才師だ。仕事や暮らしを円滑に進めるための手帳なのに、オビに“やっさん”とは、吉本ならではの逆説的なメッセージだろうか……。とりあえず売り場では明らかに目立っていた(浮いていた?)ので、購入してみた。
手帳はオビのやっさんのセリフにあったとおり合皮を採用。皮にはルイ・ヴィトンをもじったような「YK」「笑」のマークがあしらわれている。お世辞にもセンスが良いとは思えないが、かといってまともにツッコミを入れるのも憚られる“脱力系”のデザインだ。購入時にボールペンが付属しており、これを手帳の穴に通すことで手帳のストッパーとして使えるのはなかなか便利だが、そのペンには「This is a pen.」と記されており、これまた脱力。ここまでお遊びの要素を求めるのが、吉本が吉本たるゆえんなのだろうか。
ストッパーを外して中のページをぺらぺらと見ると、中身は意外に普通な点にびっくり。スケジューラーは見開きページが1週間分で、時間軸をタテに1日の予定を記入していくスタイルが中心。メモ用のページも用意されており、普通にカレンダーもある。外見のゴテゴテさに騙されたが、なかなか使える手帳といった印象だ。さすがは、実際の社員も使っているだけあるといったところだ。スケジューラーの1ページ目には、数々の人気バラエティ番組の構成作家を務める高須光聖氏の記入例もある。使い方が分かりやすいというのも好印象だ。
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購入時にボールペンが付属する。ペンは手帳のカバーを留めるストッパーも兼ねており、無くす心配もなさそう
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外見からは想像が付かないほどマトモなスケジュール表。見開きで1週間、上から下までのタテの時間軸で用事をまとめる
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スケジュール表の冒頭には、この手帳の特別監修を務める放送作家の高須光聖氏による書き方の見本が記されており、わかりやすい。人気作家だけあって、朝から晩までスケジュールがびっしり詰まっている
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……と思ったのもつかの間、手帳の後半、約1/3あたりから、再び吉本ならではの“遊び”がスタート。「陣内智則とケンドーコバヤシは元コンビ」といったお笑い雑学、日本のバラエティー番組の年表、吉本芸人の出身地リストといった、お笑いファンにはたまらない、逆にいえばお笑いファン以外には「?」な情報ページがたっぷり用意されている。挙句の果てには、「野球の変化球の握り方講座」のような、お笑いにもまったく関係ないイラストまで掲載されている。一応、この中にも「世界時差表」「世界で役立つ言葉」のようなマトモそうなモノもある。ただし、言葉の用例が「なんでやねん」「小さなことからコツコツと」といった具合で、とても実使用を考えたモノとは思えない。
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手帳の後半には、吉本ならではの情報が多数掲載されている。こちらは吉本所属のタレントの出身地を記載したリスト。「明石家さんま」「ダウンタウン」といったビッグネームから、「内場勝則」「桂小枝」といったベテラン、「平成ノブシコブシ」「ジャルジャル」などの若手の名前もある。ただし若手でも「しずる」「もう中学生」「若井おさむ」「ガリガリガリクソン」「R藤本」などの名前はない
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吉本の養成学校「NSC(吉本総合芸能学院)」の卒業者には、出身地のほか「大阪(校)*期」「東京*期」といった表示もある。お笑いマニアの人なら「おかけんた・ゆうたのけんたさんはダウンタウンとNSCで同期だったんだ」と楽しめるはずだ
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日本のバラエティ番組の歴史を年表で振り返るページもある。これによると、日本初のバラエティ番組はNHKの「ジェスチャー」とのこと
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何と野球の変化球の投げ方講座まである。「はたして手帳に書いてある意味があるのか」と疑問を持つのも呆れてしまうが、この中にひとつだけ突っ込みを入れてほしそうな握り方がある
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英語をはじめ、全16の外国語の用例が記されたコーナーも。割とまともじゃないかと思いきや、もともとの日本語が「小さなことからコツコツと」では……。実際にこれを参考に喋る人など西川きよしさん以外にいるだろうか
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全体的に見ると、最初にボケをかまして「こりゃダメそうだな」と思わせといて、「案外ちゃんとしているじゃん」と驚かせながら、気が抜けたところで再びボケたおす、といった周到な構成になっている。もはや笑いを通り越して「そこまでやるか吉本興業!」と感嘆してしまう。
ネタとして楽しむのはもちろん、実際に手帳として問題なく使えることを考えれば、かなり贅沢な手帳だ。ここに挙げた以外にも、細部まで遊びが盛り込まれているので、見ているだけでも飽きない。話のきっかけとしても使えそうだ。ビジネス感を前面に売り出した大マジメ手帳に辟易している人をはじめ、お笑い好きの人や芸能界を目指す人に、自信を持ってオススメしたい手帳や! 正味の話!(やっさん風に)
■URL
吉本興業株式会社
http://www.yoshimoto.co.jp/
製品情報
http://www.fandango.co.jp/eshop/action/ItemDetailDispPAction?shopCd=5&itemCd=4943656823042
2008/12/02 00:02
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