● 腕帯式のコンパクト血圧計。医療機器らしくないピアノ調塗装
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製品本体(右)と腕帯。エア管で接続される
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オムロンヘルスケアから発売されている「HEM-7301-IT」は、腕帯式のデジタル自動血圧計だ。USBを経由して測定データをパソコンに転送し、専用ソフトを用いてグラフとして見られることが特徴の製品。メーカー希望小売価格はオープンプライス。ヨドバシカメラでの購入価格は12,800円だった。
本体は、突起のないシンプルな立方体の形状をしており、表面がピアノ調のブラックで塗装されている。この手の医療機器としては形状、カラーともにやや異色だ。身の回りにある機器で言うと、ポータブルハードディスクにやや近い印象がある。
測定方式はいわゆる腕帯式で、製品本体と腕帯がエア管によって接続されており、腕帯を二の腕に通し、マジックテープで留めて測定する。筒状の本体に腕を通すタイプの製品に比べ、装着時に手間はかかるものの、そのぶんかさばらず、コンパクトに収納できるという特徴を持つ。
● 84回分のデータを記録可能。平均値の定義はやや独特
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製品本体。ピアノ調の塗装であまり医療機器らしくないのが特徴
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腕帯を上腕部に巻いた後は、本体中央下にある大型のボタンを押すことにより測定が開始される。電源オンと測定開始のボタンが兼用となっているのは個人的には少々違和感を感じるが、今日のデジタル血圧計の多くに採用されているインターフェイスでもあり、目くじらを立てるほどではないだろう。
液晶は、黒バックに白文字という、特徴のある表示方法を採用している。バックライト機能も付属しているので、暗いところでも見やすい。
本製品で測定できる項目は、最高血圧、最低血圧、脈拍の3つ。これらの項目が、測定日時と共に記録される。電源は単四電池×4本で、およそ300回の測定が可能。このあたりのスペックは、これまで本レビューで紹介してきた一般的なデジタル血圧計と比べても平均的だと言える。
本製品では血圧の測定データ84回分を記録することができ、メモリが一杯になると古いデータから順に消去される。仮に朝と夜に計るとすれば、42日分、およそ1カ月半が記録できる計算だ。この回数についても、他社製品と大きく変わるものではない。
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中央が電源オンオフを兼ねた測定/停止スイッチ、左が時計設定、右が記録呼出のスイッチ。ボタン類はこれだけ
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液晶画面。最高血圧、最低血圧、脈拍数が日次とともに記録される。バックライトで暗い場所でも高い視認性を実現している
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単四電池×4本で駆動
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血圧については平均値も表示できるのだが、注意したいのは、本製品の平均値の定義が他製品とは少々異なっていることだ。というのも、記録されているすべてのデータの平均値というわけではなく、過去10分以内に測定された値(最大3回)の平均なのである。説明書によると「短時間に続けて測定したときの参考に」してほしいとのことだが、個人的にはちょっと違和感を感じる。これまで使い続けていた類似の製品から本製品に乗り換える場合は、気付かずに使い続けてしまう場合もあると思われるので注意してほしい。
● パーソナルユース向けに、アラーム機能やゲストモードも搭載
本製品でなかなか気が利いていると思われる機能の1つに、アラーム機能がある。血圧の測定というのはとかく失念しがちなものであるが、本製品は1日2回までアラームを設定できるので、測定する時間を設定しておくことにより、リマインダの役割を果たしてくれる。一人暮らしの人であれば、それこそ目覚まし替わりにも使えそうだ。
このほか、記録せずに測定のみを行なうゲストモードを備えるほか、測定中に体を動かして値が不正確になった時には体動マークが点灯するなど、細かい工夫が光る。また、ソフトケースが付属しているため、旅行や出張の際にコンパクトに持ち歩けるほか、収納にも便利な仕様となっている。
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上腕部に巻いて測定を行なう
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持ち運びと保管に便利なポーチが付属
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ちなみに本製品では、複数ユーザの利用が想定されていないほか、朝夜わけてのデータ記録にも対応していない。基本的にはパーソナルユースを想定した製品であると解釈したほうがいいだろう。
気になったのは、本体側で測定結果を削除する際、1つずつ消すことはできず、一括でしか削除できない点。パソコンへの転送ができることを考えるとそれほど大きな問題ではないが、誤った測定環境でデータを記録してしまった際や、間違えてゲストモードへの切替を行なわないままデータを記録してしまった際など、個別に記録を取り消したいことはあるはずだ。そうした意味でも、個別で記録を削除できる機能の実装を望みたい。
● USB経由で測定データをパソコンに転送可能
さて、本製品の特徴は測定した血圧データをパソコンに取り込めることだ。
専用の健康管理ソフトをパソコンにインストールし、本製品をUSBケーブルでパソコンに接続することにより、測定した血圧データをパソコンに取り込むことができる。本製品は単体でも84回分のデータを記録することができるが、パソコンに取り込むことにより、こうした回数の制限なしに血圧データを保管しておくことができるのだ。
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右側面にパソコンとの接続に利用するUSB miniBコネクタが付属
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パソコンと接続した状態。さながらポータブルハードディスクのようだ
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筆者が実際にそうなのだが、医療機関からの指示で血圧を記録している場合などは、測定した血圧データを定期的に提出しなくてはならない。その際、血圧計に記録されている測定データをいちいち書き出すというのは、非常に労力がかかる作業である。
その点、本製品を使えば、データをまとめてパソコンに取り込めるので、さまざまな汎用性をもってデータを取り扱えるようになる。一定期間のデータをPDFを経由して印刷できることはもちろん、CSVデータとして出力後、エクセルに取り込んでグラフを作ることも容易だ。長期間のデータを記録しておき、値の変化を比較するという用途にはもってこいだろう。
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パソコンにデータを取り込み、オムロン健康管理ソフトで血圧データをグラフ表示したところ。週間表示のほか、月間、年間、全体などで表示することも可能。また、1日を時間帯ごとに3分割し、それぞれ朝昼夜に分けて表示することもできる
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血圧および脈拍の平均値を表示したところ
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血圧および脈拍の頻度分布を表示したところ
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PDFファイルでの出力例。このほか、CSVファイルでの出力も可能なので、Excelへのコンバートなども容易だ
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● パソコン転送機能を使わない場合でも魅力的な製品
2週間ほど試用してみたが、使い勝手もよく、非常に信頼のおける製品だと感じた。パソコンへデータを転送できることが目玉の製品だが、単体でも84回分のデータが保存可能なので、パソコンを使わないユーザにとっても、魅力的な製品だと言える。以前レビューしたタニタ製のコンパクト血圧計はパソコンへの転送機能なしで90回分のデータ記録だったが、ほぼ変わらない価格で、同等プラスアルファの機能を実現しているのは嬉しい。
最後になったが、この製品、ボタンのラベル表示に日本語を用いず、すべてアルファベットやアイコンを用いるなど、医療機器らしさを極力排除しているのも特徴だ。USB経由のデータ転送機能を含め、ある程度ITリテラシーのある層をターゲットにしていると推測される。いわゆる医療機器然とした外見を好まないユーザに特にお勧めしたい製品だ。
■URL
オムロンヘルスケア株式会社
http://www.healthcare.omron.co.jp/index.html
製品情報
http://www.healthcare.omron.co.jp/product/hem7301it_1.html
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2008/05/08 00:06
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