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アサヒ陶研「セラエコフィルター」
~紙フィルターなしでおいしいコーヒーを淹れる
Reported by 本誌:正藤 慶一
いつまでもそばにあると思っていたものほど、いざ失ってみると悲しいものである。
……何だか失恋した男の胸の内のようだが、これはコーヒーの紙フィルターの話である。コーヒーフィルターは10~100枚以上の大容量パッケージが多いため「そろそろ残りの数が少なくなってきたな」と思っても、まだ足りるだろうとタカをくくって放置してしまうことがある。そして、いざ飲もうという時に無くなっているのに気づき、あの時買っていれば……と、後悔の念に苛まれる。1年にあるかないかというめったにないシーンだが、だからこそショックを感じてしまう。
そんなコーヒーフィルターだが、最近では使い捨てずに再利用が可能なものが増えている。そうかこれなら、いざ飲もうという時にフィルターが無いからといって、困ることもない。さらに、紙のフィルターを使い捨てないため「エコ」にも僅かながら貢献できるのだ。今回は、使い捨てないコーヒーフィルターにスポットを当ててみよう。
とはいっても、まずいコーヒーは飲みたくない。せっかくならおいしく淹れられるモノが欲しい……と探した結果、アサヒ陶研の「セラエコフィルター」にたどり着いた。ホームページの紹介文によると「セラミックスの遠赤効果が、コーヒー本来の味をそのまま再現してくれます」とのこと。遠赤効果についてはよく知らないが、この“本来の味”という表現にコロッときてしまい、購入を決意。単体でも売っているようだが、今回はポットとセットになったタイプを、直販サイトにて8,190円で購入した。なお、製品名は「ニューセラエコフィルター」という名前だったが、パッケージには「ニュー」の文字が記載されていなかったため、本稿では「セラエコフィルター」に統一して表記する。
セラエコフィルターは、ドリッパー・フィルターの2段構造となっており、いずれも素材は有田焼の陶磁器を採用している。説明書によると「製作工程上、精度を保持するため1セットずつの合せ焼きで焼成しています」とのこと。確かに、100円ショップで売られている品物のような安っぽさは、見た目には感じられない。
まずドリッパーだが、サイズは130×105mm(直径×高さ)といったところで、一般的なものとほとんど変わりがない。次にフィルターだが、こちらは内側に開けられた横6行×縦3列=18個の穴が特徴的だ。穴の直径は、下の列から順に8/9/10mmほど。これほど大きいと、コーヒーの粉末は通り抜けて、そのままサーバーへと流れ出てしまうのでは……と、作る前から不安になってしまった。
セラエコフィルター。左がドリッパーで、右がフィルター
写真のように、重ねて使用する
今回はポット付きのセットを購入した。ポットにはフタと茶こし用のフィルターも付いている
フィルターとドリッパーを重ねた状態で、コーヒーの粉を入れて湯を注ぐ
何はともあれ、まずはコーヒーを淹れてみよう。まずは、一般的なドリップと同様に、ドリッパーとフィルターをコーヒーサーバーの上に載せる。次に、ドリッパーとフィルターを重ねる。ここでコーヒーの粉をフィルターに入れ、お湯を注ぐ。
ここで紙フィルターだと、“ジャー”という音とともに、サーバーにコーヒーがドリップされるのだが、このセラエコでは、数滴がしたたるのみで、残りのほとんどは流れ落ちない。ドリッパーとフィルターの両方が密着しているため、ドリップが止まり、コーヒーに蒸らし効果を与えることができるのだ。
蒸らしが十分に終わったら、フィルターを少しだけ右回りにずらす。すると、ドリッパーとフィルターの間に僅かなスキマが発生する。そこにコーヒーが流れ込むため、ドリップが行なわれる。ここでは、蒸らしたコーヒーの粉を少しだけドリップさせて、コーヒーにコクを与える狙いがあるという。
しばらくするとまたドリップは止まるので、ここでフィルターをもう少し右に回す。すると、スキマはより広がることで、一気に「ジョロロ~」とドリップされる。これで作業は完了。あとはコーヒーがすべて落ちきるまで待つだけだ。
お湯を注ぐ前に、ドリッパーの出っ張りと、フィルターの凹み部分を確認しよう。写真のように、ドリッパーの出っ張りが、フィルターの「●」の部分に寄っている状態ならOK
お湯を注ぎドリップが止まったら、フィルターを右に回し、「●」と「●●」のマークの間にドリッパーの出っ張りが位置するようにする
再びドリップが止まったら、ドリッパーの出っ張りを、フィルターの「●●」の印に合わせる。これで完了
【動画】初期状態でお湯を注ぎ入れても、ほとんどドリップされない(WMV形式,1.72MB)
【動画】上の写真のようにフィルターを動かしたところ。ここで蒸らし粉をドリップすることで、コクを引き立てる狙いがある(WMV形式,1.29MB)
【動画】フィルターを一番右まで回すと、いよいよ本格的にドリップを開始する(WMV形式,2.5MB)
さて、できあがりを味わってみよう。……おお、これはうまい。かなり重厚で深みのある味。コーヒーの液体の中に、香りの成分がギッシリ詰まっているような感じだ。一方、ペーパーフィルターで作ったコーヒーはというと、これはこれでおいしいのだが、味が薄くて、スカスカな感じがしてしまった。この差はおそらく、“セラミックによる遠赤効果”というよりも、ドリップ時間の差が大きいのではないかと思う。
ところで、先ほどセラエコの味を「重厚な味」と述べたが、中には「濃すぎるのはちょっと……」という方もいるだろう。その場合は、最初の蒸らし時間を短くすれば、薄めにできる。逆に濃い味を望む場合は、もっと長く蒸らしておけば良いだろう。また、水で長時間放置することで、水出しコーヒーを作ることも可能だ。というわけで、コーヒーの味、そして豊富なバリエーションが楽しめるという点で、セラエコは紙フィルターで作るよりも優れているという判断を下したい。
できあがり
微量の蒸らし粉がコーヒー内に混入するが、これがコーヒーのコクを引き出すという
しかし後片付けについては、紙フィルターの方が楽だ。紙フィルターはフィルターにコーヒーの粉がまとまっているため、ドリッパーとサーバーをササッと洗うだけで済むが、セラエコはこれにフィルター掃除も加わる。さらに、フィルターにはコーヒーの粉末が詰まっているため、洗った後は流しに溜まった粉を取り除く必要がある。また、溝にはコーヒーの成分が溜まりやすいため、しっかり洗わないと色がこびりついてしまう。これらをふまえると、面倒くさがり屋の人には、はっきりいって向かない。また、せっかくフィルターという資源を使わなくて済んだのに、その分、水資源を使ってしまうというのはエコには気になるところだ。
もう1点指摘したいのが、本製品は陶磁器なため、ワレモノである点だ。日常的にプラスチックのドリッパーを使っている人は、普段の感じで使うと“パリーン!”といってしまうこともあるかもしれない。冒頭にて、セラエコとポットがセットになった商品を購入したと書いたが、実は試しているうちに、このポットに見事にヒビが入ってしまった。そこまでぞんざいに扱ったわけではないつもりなのだが……まあ、素材の耐久性を求める方も向かないだろう。
使用後は、ドリッパー・フィルターともに洗浄する必要がある
溝にコーヒーの色が付着しやすい
素材は陶磁器のため、当然ワレモノとなる。取り扱いには要注意(写真はセット購入したもののヒビが入ってしまったポット)
以上のようなネガティブな面も見られるが、フィルターなしでコーヒーが作れ、しかも蒸らし時間で味のコントロールができるというのは、それだけで十分に価値がある。これがコーヒー本来の味かどうかは知らないが、少なくとも普通に作るよりかおいしく淹れられるというのは確かだろう。普通のコーヒーでは満足できない、そんなこだわり派の人に使っていただきたい製品である。
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URL
アサヒ陶研有限会社
http://www.asahitouken.jp/
製品情報
http://www.asahitouken.jp/seraeco/index.html
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