パナソニック、三洋電機とパナ電工の完全子会社化を発表

~「Panasonic」ブランド統一は“利益の最大化につながる”
堅く手を握り合う、三洋電機の佐野精一郎社長、パナソニックの大坪文雄社長、パナソニック電工の長榮周作社長(左から)

 パナソニックは、三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化することを発表した。

 2011年4月を目途に、TOB(株式公開買い付け)と、その後の株式交換により子会社化する。最大買い付け総額は最大8,184億円を見込んでいる。

 さらに、ブランドに関しても、将来的には、原則「Panasonic」へ統一する方向性を打ち出し、電池などの一部事業や地域に関しては、「SANYO」ブランドを継続する。

 また、パナソニックでは、2012年1月をめどに、「コンシューマ」、「デバイス」、「ソリューション」の3事業分野ごとに、3社の事業/販売部門を統合・再編する計画を示し、それぞれの事業特性に最適なビジネスモデルに再構築する。

“独立性を意識しながらの体制では、致命的な遅れが出る”――パナソニック・大坪社長

パナソニック 大坪文雄社長

 7月29日午後6時30分から、大阪市内のホテルで行なわれた記者会見では、パナソニックの大坪文雄社長、パナソニック電工の長榮周作社長、三洋電機の佐野精一郎社長が出席。大坪社長は、「世界の同業他社は、目標を定め、そこに対して100メートル競争のスピードで事業を拡大しているのに対して、我々は中距離競争のスピードで短距離走の相手と戦っていたのではないか」と語った。

 「パナソニックは、2004年4月にパナソニック電工の株式を51.0%を取得、2009年12月には三洋電機の株式を50.05%を取得し、それぞれ連結子会社し、すでに経営方針についての一本化が図られているが、今回の完全子会社化を経て、3社の力をより一層強く結集し、3カ年中期計画『Green Transformation 2012(GT12)』の達成と、2018年の創業100周年ビジョンに掲げているエレクトロニクスNo.1の環境革新企業の実現に向けた取り組みを加速する」

 また、大坪社長は、「これまでのように3社がお互いを尊重し、独立性を意識しながらコラボする体制では、致命的な遅れが出ると感じた。100%子会社化することで、シナジーが出やすくなる。3社が持つ経営資源をテーブルに並べて、より強い体制に組み替える。真に一体となったパナソニックグループとして取り組んでいくことを決意した。ここにいる3人の社長は同じ思いでいる」などとした。

 大坪社長は、今年6月の株主総会後に両社長に完全子会社化の話をし、「その場で、前向きな答えをもらい。7月から具体的な検討を開始した」という。

“早くブランドを一本化した方が利益の最大化につながる”――三洋・佐野社長

 三洋電機の佐野社長は、「パナソニックの連結子会社になって以降、経営戦略を共有し、当社の強みを生かしてシナジーの最大化に取り組んできた。しかし、取り巻く環境は想定以上に急速に変化しており、韓国、台湾、中国企業との競争に打ち勝ち、成長していくには戦略実行のスピードアップや、さらなる総合力を発揮が必要となる。それにはパナソニックによる完全子会社化、グループによる再編をし、三洋電機の強い事業を構築できる体制を構築し、最適なビジネスモデルを確立することが不可欠であると判断した。パナソニックグループの企業価値向上に直結し、三洋電機の企業価値を高めることになる」としたほか、「三洋電機は再編後も、法人として残していくことになる」とした。

 また、パナソニック電工の長榮社長は、「パナソニック電工は住まいに関連した事業を行なってきた。今回の完全子会社化でパナソニック電工の社員が、真のパナソニックの社員になる。親も子もなくなる。製販技のバリューチェーンをグループで生かすことができ、これが中期計画の達成を加速することになる」とした。

三洋電機 佐野精一郎社長パナソニック電工 長榮周作社長

 SANYOブランドをPanasonicブランドに統一することについては、大坪社長が「将来は統一する方向で考えていたという点では、これまでと同じ」とし、「ブランドは重要な価値を持つもの。家まるごと、ビルまるごと、地域まるごとというパナソニックが目指す方向において、エコのブランドとして統一していくことになる」とした。

 一方、三洋電機の佐野社長は、「白物家電、デジタル機器などはできるだけ早くブランドを一本化した方が利益の最大化につながる。60年以上に渡って親しまれたブランドがなくなることは社長としては寂しい思いもあるが、三洋のプロダクトブランドとして親しんでもらったものは重用してもらえるだろう。プロダクトブランドに『by Panasonic』という文字がついたとしても、三洋電機の技術や気持ちはこれからも継続していくことができる」と語った。

完全子会社化と事業再編で600億円の営業利益


 大坪社長は、今回の完全子会社化の背景を次のように語る。

 「パナソニックは、創業以来、くらしに関連した分野を中心に幅広くエレクトロニクス事業に取り組んできた。また、パナソニック電工は、電材部門、電器部門、住設建材部門、電子材料部門、制御機器部門、その他部門において事業を展開し発展してきた企業であり、三洋電機は、エナジー部門、電子デバイス部門、デジタルシステム部門、コマーシャル部門、コンシューマエレクトロニクス部門、その他部門において国内外で存在感を発揮してきた企業。3社は、すでにグループ企業として経営戦略を共有し、様々な施策を行なっているが、環境・エナジー関連市場の急拡大、新興国市場の急成長などが、事業拡大の好機をもたらす一方で、日米欧に加え韓国、台湾、中国企業などとの競争が、デジタルAVCネットワーク分野にとどまらず、二次電池や太陽電池、電気自動車関連などの分野においても激化してきた。

 競争に打ち勝ち、新たな市場で成長力を発揮するためには、戦略実行のスピードアップと、さらなる総合力の発揮が不可欠。パナソニックによる両子会社の完全子会社化は、意思決定の迅速化とグループ・シナジーの最大化により、GT12をよりダイナミックに加速し、さらなる飛躍を果たすことを企図したものだ」

 


 さらに、「お客様接点の強化による価値創出の最大化」、「スピーディで筋肉質な経営の実現」、「大胆なリソースシフトによる成長事業の加速」の3つの観点が今回の完全子会社化によって実現されるメリットとし、コンシューマ事業分野においては、グループのマーケティング機能をグローバルに再編し、前線の機能強化を図ることで顧客起点の商品づくりを加速する。

 デバイス事業分野では、ビジネスモデルが共通するデバイスごとに、開発・製造・販売の連携を強化し、マーケティングと技術を一体化した提案型ビジネスの強化と、社内用途に依存しない自立した事業に進化させる。ソリューション事業分野は、ソリューションごとに開発、製造、販売を一元化し、各ソリューションを包含した「家・ビル・街まるごとソリューション」の加速を図る。さらに本社部門においても、組織を統合、スリム化を推進しつつ、戦略機能を強化。「筋肉質でスピーディなグローバル本社を目指す」としている。

 事業再編については、ワーキンググループを設置し、今後、検討を進めていく。

 パナソニックでは、GT12において、「エナジーシステム」「冷熱コンディショニング」「ネットワークAV」の各事業を中核事業とし、次代の柱事業として「ヘルスケア」「セキュリティ」「LED」を位置づけているが、これらの各事業においても、3社の研究開発力や市場開拓力を結集し、事業成長を加速するとした。

 パナソニックでは、今回の完全子会社化によって内部に500億円の純利益が生まれ、さらに統合シナジー効果によって、「堅く見積もって」(大坪社長)、600億円の営業利益を創出できるとした。「営業利益の半分の300億円が純利益だとしても800億円。想定される8,000億円の10%の利益を単年度で創出できる」とした。

 なお、公開買付けは、パナソニック電工1株当たり1,110円、三洋電機1株当たり138円とし、8月23日から10月6日の期間に行なわれる。

パナソニック 河井英明役員

 パナソニックの河井英明役員は、「パナソニックが買い付け予定株式のすべてを買い付けた場合、最大買付総額は8,184億円となるが、当該買い付け資金についてはパナソニックの手元資金を充当。買い付け実施後において、必要に応じた外部資金の調達を検討しており、その一環として、パナソニックは発行予定額5,000億円を上限とした新株の発行を行なう」としたほか、「GT12では、フリーキャッシュフローが3年累計で8,000億円以上の創出実現を目指しており、2013年3月までにネットで資金プラスへの回復を目指す」とした。

公開買い付けの概要完全子会社化のスケジュール。完全子会社化は2011年の予定財務方針と今後の取り組み





(大河原 克行)

2010年7月30日 00:00