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世界初、手首だけで1拍ごとの血圧が測定できる技術をオムロンが開発~脳卒中や心筋梗塞を予防
(2016/4/19 13:26)
オムロンヘルスケアは、手首だけで1拍ごとの血圧を測定できる技術を、世界で初めて開発した。製品化の時期は未定だが、現在は約10時間連続で血圧測定ができるプロトタイプが完成し、臨床研究をスタートしている。
同社は、高血圧の重症化に伴う、脳卒中や心筋梗塞などの発症を防ぐために「脳・心血管疾患の発症ゼロ」プロジェクトに取り組んでいる。高血圧が引き起こす脳・心血管疾患は、認知症や寝たきりなどにつながる可能性があるが、血圧を管理することで抑制できるという。
血圧を管理する機器として、同社は1970年代より家庭用血圧計を販売。病院だけでなく家庭でも血圧を計ることが重要としている。一般的に、病院で計る診察室血圧と、自宅で計る家庭血圧の数値には差が出ることがあり、その場合は家庭血圧による診断を優先するように促されている。特に早朝に見られる高血圧の状態は、自宅で計測しないとわからない数値であり、より正確に計れる家庭用血圧計が普及することで、高血圧が抑えられる可能性があるという。
血圧は1拍ごとに変動。睡眠中の血圧上昇は脳卒中などの原因に
しかし、心臓は1日に約10万回拍動しており、1拍ごとに血圧は変動するという。現在普及している家庭用血圧計では、一時的な血圧しか測定できないため、1日数回の測定では血圧変動・脳卒中などのリスクを捉えきれない。中でも夜間や早朝の高血圧や急激な血圧変動が、脳・心血管疾患の発症リスクを高めることが指摘されている。
実際に、プロトタイプを使った臨床実験では、8人の高血圧患者をもとに、血圧変動のリズムを研究。ある被験者のデータでは、睡眠時に無呼吸が22秒続いたときに血圧が100mmHgまで低下し、再び呼吸が始まると血圧が190mmHgまで急激に上昇したことがわかった。こうした急激な変化が、脳血管疾患を発症する引き金になるため、血圧を連続して計測することが大事だという。
より細かいデータが集まると、対策を立てやすくなるとしている。たとえば、夜間に血圧が急激に上がる人は、食後に飲んでいた薬を寝る前に飲むなど、薬を飲むタイミングを変えるといった対策を取ることができる。
1拍ずつの血圧を測定するために、センサーを46個×2列で配置
新たに開発した1拍ごとの血圧を測定する技術には、オムロン独自の血圧センサーを採用した「トノメトリ法」を用いている。1列に並んだ圧力センサー46個を、血管の中央に当たるように平行に2列配置。手首に装着するだけで、1拍ごとの血圧を連続して計測できるという。
仕組みとしては、橈骨(とうこつ)動脈など体表に近い動脈に圧力センサーを押し当てることで、1拍ごとの血圧が検出できるという。適切な強さで圧迫して血管の上部を平らな状態にし、圧力センサーが押す力と血管が戻ろうとする力が等しくなる圧力から、血圧値を測定する。
臨床実験に使われている、プロトタイプによるデモンストレーションも行なわれた。スクリーンに映された血圧の情報は1拍ごとに変動し、被験者が息を止めると血圧が低下、力を入れると血圧が上昇する様子が確認でき、1拍ごとの血圧が計測されていることがわかった。
ただし現在のプロトタイプでは、連続で測定できる時間は最大10時間ほど。夜間と早朝の血圧変動を捉えることを目的としている。本体も大きく、長時間の装着にはまだ向かない。製品化の時期は未定だが、今後開発を進めていくことで、24時間の連続測定を可能にし、小型化も実現していくという。