日立、リチウムイオンなど電池事業を強化。2014年度に売上高2,500億円を目指す


リチウムイオンを軸に電池事業を強化。2014年度に売上高2,500億円


日立のリチウムイオンバッテリー。写真はHEV(ハイブリッドカー)用の角形電池
 日立製作所は、日立グループにおける電池事業戦略について説明。2014年度に、売上高2,500億円を目指すとした。

 同社は、4月1日付けで社内カンパニーとして「電池システム社」を設置。日立製作所 執行役専務兼 電池システム社社長の角田義人氏は、「リチウムイオン電池は、2020年には4兆円規模の市場に拡大すると見られている。産業用途を柱に、これまでの電池デバイスのビジネスに留まらず、日立グループの連携による電源ソリューション、電池応用製品といった新たなビジネスを創出する。また、リチウムイオンを軸として電池事業の強化を進め、今後はUPS(無停電電源装置)やスマートグリッド(電力の需要/供給を自動で最適化する電力網)などの大型産業用途を対象とした、電池の放充電を最適な状態に制御するシステム、保守・サービスを含めた電源事業を推進し、2014年度には売上高2,500億円を目指す」とした。

 2009年度の電池システム社の売上高は1,421億円。そのうち約4割が電池事業だが、2012年度には約5割に、2014年度には7割にまで引き上げる。

電池事業は、既存事業から新用途を開拓し、電力や新エネルギーに展開していく狙いがある日立製作所 執行役専務兼 電池システム社社長の角田義人氏

 電池システム社は、小型民生用、中小型産業用リチウムイオン事業を行なう「日立マクセル」と、車載用リチウムイオン電池事業を担う「日立ビークルエナジー」を構成会社とし、さらに鉛蓄電池事業およびリチウムイオン電池事業を担当するグループ会社の「新神戸電機」とも連携していく。

 今年5月には、大型産業用電池事業強化の一環として、環境負荷の低い社会インフラが整えられた次世代都市「スマートシティ」の実現を視野に入れた開発プロジェクトチームを発足。3年間で50億円を投資し、広範囲な産業用途に対して、標準的に適用可能なセルおよび制御プラットフォームを開発する。また、生産や調達活動の一元化により、個別垂直統合モデルらの脱却により、投資効率を高め、民生用電池から大型産業用電池まで幅広い電池事業分野における事業運営の最適化を図るとした。

社内カンパニーの「電池システム社」の構成図。日立マクセル、日立ビークルエナジー、新神戸電機と連携していく日立グループの電池事業について、全体的な最適化を促進していくという競合他社との比較。日立は民生機器から産業用まで、幅広い用途をカバーしているのが特徴

日立の電池事業は「モノづくり力」「先端技術力」「つかいこなし力」が違う

日立の電池事業の強みは「モノづくり力」「先端技術力」「つかいこなし力」の3点という
 角田社長は、日立の電池事業の特徴を、民生用から産業用まで幅広い用途をカバーする電池事業基盤と、システム事業部門とのグループ内連携によるソリューション提案、研究開発による先端技術の3点を指摘。さらに、「民生・車載電池のモノづくり力」、「研究部門の先端材料技術力」、「日立グループ連携のつかいこなし力」の3点を日立の強みとして、特に「産業用を柱に日立の総合力を集約する」とした。

 「民生・車載電池のモノづくり力」では、高い安全性、ハイパワー、高容量を追求した日立のモノづくり力ととともに、電池の生命線といえる電極製造では、高精度分散・塗布技術において、日立マクセルが45年間に渡り7億個の出荷実績を誇る磁気テープの技術を活用。さらに50年間、100万個にのぼる車載電池向けマイクロ電池の製造技術で培った溶接技術、封止技術を活用するなど、高い信頼性を有する電池システム技術を活用。こうした実績と技術による電池製造をベースにするとした。

 「研究部門の先端材料技術力」では、材料合成から電池の試作評価までの一貫プロセスによる技術開発、電池反応、劣化メカニズムの総合解析を駆使した新規材料開発を強調。「日立グループ連携のつかいこなし力」では、電池セルの性能を最大限引き出す制御技術、情報通信、産業機械、電力といったシステムとして使いこなす、日立グループの製品力を活用できるとした。

「モノづくり力」では、電極、電池の製造で高い信頼性を実現しているという「先端材料技術力」では、新しい電池材料開発をアピール「つかいこなし力」では、電池の性能を最大限に引き出す制御技術を備えているという

スマートフォンや電気自動車など、成長市場領域で拡大を図る


日立が製造している電池のラインナップ
 日立マクセルが開発するリチウムイオン電池は、医療用や多機能ウォッチなどで利用される1円玉サイズの「マイクロ電池」、携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機、電子辞書などで利用される「モバイル電池」、電動工具や電動アシスト自転車、無線機などに用いられる「円筒形電池」、電動二輪車や無停電電源装置などに活用される「ラミネート電池」で構成される。電池製造では、2010年度中に年間2,250万本の生産体制を確立することになるという。

 角田社長は、「民生用電池はハイエンドスマートフォン向けに展開。円筒型電池、ラミネート電池、マイクロ電池は成長市場領域に事業を拡大させていく」とした。

 また、今日付けで発表した経済産業省の低炭素型雇用創出産業立地推進事業費補助金の対象事業として採択されたラミネート電池に関しては、総額20億円の投資計画を明らかにし、富山工場に組立設備、京都事業所に電極生産設備を導入し、少量多品種対応と、高効率生産を両立する考えを示した。
電動バイクなどに搭載される「ラミネート電池」携帯電話などモバイル機器に多く採用されている「モバイル電池」工具や電動アシスト自転車に活用される「円筒形電池」
こちらはハイブリッドカー用の電池セルプラグインハイブリッドカー用の角型電池
 日立ヒーグルエナジーでは、2010年3月には累計100万セルの出荷を達成した実績をもとに、商用バス、トラック向け拡販を強化。2010年度には新量産ラインを稼働させ、乗用車向け本格搭載を開始する。この分野に向けて、HEV(ハイブリッドカー)用円筒形電池、HEV用角形電池、PHEV(プラグインハイブリッドカー)用角形電池をラインアップ。大型、高容量タイプの強化により、産業分野への展開を進める。

 さらに、電源ソリューションにおいては、スマートコミュニティなどの産業用市場の新用途開拓の強化により、2012年度に10億円、2014年度に100億円の受注を見込むとした。


(大河原 克行)

2010年6月17日 17:44