三菱電機、太陽電池セル専用工場を新設
三菱電機は、太陽電池セル工場の完成を発表した。今回新設したのは、長野県飯田市の中津川製作所 飯田工場敷地内の第2工場で、同社ではこれまで扱っていなかった単結晶シリコン太陽電池セル・モジュールの生産ラインを設けた。同社では、工場の新設により、年間生産能力を従来比約1.2倍の年間270MWとし、さらなる生産能力強化を図るとしている。
長野県飯田市の中津川製作所 飯田工場。写真手前が太陽電池セル第1工場、奥が新設の第2工場 |
三菱電機 専務執行役 リビング・デジタルメディア事業本部 事業本部長 中村一幸氏 |
三菱電機 専務執行役 リビング・デジタルメディア事業本部 事業本部長 中村一幸氏は、「太陽電池市場は、政府による補助金制度や余剰電力買い取り制度などが追い風となって、業界全体で昨年比約2.5倍の順調な市場拡大を続けている」とし、さらなる戦略強化を進めていくと話した。
具体的な戦略として、商品力、生産体制、販売体制の3つを強化していくという。
太陽光発電システムは世界的に需要が伸びている事業分野で、2009年度は2006年度比約5倍となった | 三菱電機では今後のさらなる需要拡大を見込んで商品力・生産体制・販売体制の強化を図るという |
商品力強化としては、これまで同社では扱っていなかった単結晶シリコン太陽電池セル・モジュールへの参入を挙げた。
同社ではこれまで多結晶シリコン太陽電池セルのみを扱っていたが、特に都市部への需要を見込んで、従来より発電効率の高い単結晶シリコンタイプの開発を進めるという。単結晶シリコンタイプは、多結晶シリコンタイプに比べ発電効率が高く、設置スペースが限られた都市部の住宅への設置に向くという。
三菱電機ではこれまで、多結晶シリコン太陽電池セルだけを扱ってきた。多結晶シリコン太陽電池セルは、イニシャルコストが抑えられるというメリットがある | 発電量が多結晶タイプに比べ高く、都市部などへの設置に向く単結晶シリコン太陽電池セル | 設置場所やターゲットの異なる単結晶シリコン太陽電池と多結晶シリコン太陽電池の2系列化により多様なニーズに応えるとする |
同社では、太陽光発電システムの普及には都市部への設置が不可欠とし、導入時のコストが抑えられる多結晶シリコン太陽電池をボリュームゾーンと捉え、発電効率を重視した単結晶シリコン太陽電池との2系列化を図るとする。
また、太陽電池パネルだけでなく、電力を変換するパワーコンディショナー、設置場所を考慮した独自のラインナップなど、製品の組み合わせでも戦力強化を図っていくとする。
6月10日より発売する国内住宅用4本バスパー電極採用太陽電池モジュール | 左は従来モデル。電極の数が2本で、出力はバンパー電極4本採用タイプに比べ劣る |
生産体制については、単結晶シリコン太陽電池の生産ラインを備えた飯田工場を新設し、太陽電池モジュールの生産能力強化を図るほか、国内のほかの生産拠点の強化をも進める。具体的には、中津川製作所 飯田工場で単結晶/多結晶シリコン太陽電池セルの年間生産能力を年間270MW体制にするほか、2010年度中には京都工場でも同様の体制を整える。また、中津川製作所では、パワーコンディショナの生産能力を従来の約1.5倍となる月産6,000台とするという。
中津川製作所 飯田工場以外の工場についても生産体制強化をすすめるという | セル生産能力の大幅拡大を計画する |
販売体制については、太陽電池システムを構成するすべての商品を自社で開発、生産する「最適システム」を強みとして挙げた。同社では、提案・設計・施工をグループ各社で分担して行なうことで、連携の強みを生かせるとした。具体的な取組みとしては、インターネット上で太陽電池システムの設計、見積もりなどが行なえるサポートシステムを販売店に提供するほか、施工研修の強化を挙げた。また、欧州や北米など海外での販売体制強化も進めるという。
三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 太陽光発電システム事業部部長 永澤淳氏 |
三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 太陽光発電システム事業部部長 永澤淳氏は、事業展開について「2009年度は世界的な経済不況の影響で、厳しい状態が続いたが、8月くらいからは市場が徐々に回復してきている。太陽電池の工場は現時点でフル稼働している」と述べ、今後の展開については、「政策を見守ることが大事」と話した。太陽電池事業は世界的に注目され、今後さらなる市場拡大が予想される事業分野だが、スペインではフィードイン・タリフと呼ばれる政府による余剰電力の固定価格買い取り制度が見直されたことで、売上が落ち込んだという経緯がある。
また、海外での市場展開について中国などの一部メーカーなどは、アメリカなどに現地工場を持って、事業を展開していることについては、「現時点では何もコメントできないが、現地で調査、検討を進めている段階。需要動向を見極めていきたい」と話した。
(阿部 夏子)
2010年3月1日 14:41