やじうまミニレビュー
ビクセン「日食グラス」
■7月22日の日食に備える
ビクセン「日食グラス」 |
すでに数カ月前から話題になっているが、今年(2009年)の7月22日は、日本の各地で日食が起こる。
簡単に言えば、日食とは太陽と地球の間に月が入り、太陽の一部が欠けて見える現象だ。太陽の一部が欠けて見える「部分日食」や、全体が隠れる「皆既日食」のように、隠れる範囲によって種類がある。
7月22日の日食は、トカラ列島が皆既日食になるため、観測ツアーなどが話題になっている。しかし、皆既日食ではないものの、日本列島のほとんどの地域で部分日食になるのだが、私の周りでは、それはあまり知られていなかった。「えっ、日食ってトカラ列島とかまで行かなければ見られないんじゃないないの」という人が多いのだ。
編集部のある東京を例にとると、9時55分から太陽が欠け始め、12時30分まで続く。欠ける比率を食分というが、東京では0.749なので、太陽全体の4分の3が欠ける。これぐらい長く大きく欠ければ、ちゃんと観察してみようという気になる。なお今回は、日本列島の北の地域ほど欠ける時間と食分が小さい。
さて、太陽を観測するには、肉眼では無理で、なんらかの道具が必要となる。太陽があまりに明るいため、光を遮断するものが必要となるのだ。
私が小学生のころに初めて太陽観測をした数十年前は、光を遮る道具として、黒色のプラスチック下敷きや、ロウソクのススをつけたガラス板などが推奨されていた。しかし、現在では、これらの道具では可視光線や紫外線をきちんと遮ることができず、眼の健康によくないとされている。もちろん、サングラスでもダメだ。詳しくは国立天文台のページを参照してほしい。
どうすれば良いかというと、専用の日食グラスを使うことが推奨されている。今回は、世界天文年2009日本委員会の公認観察器具に選定されていることで、ビクセンの「日食グラス」を購入した。
メーカー | ビクセン |
製品名 | 日食グラス |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | 楽天市場 |
購入価格 | 1,500円 |
■遮光のための工夫
届いたパッケージには、「日食グラス」と、ペラ1枚の「日食グラス取扱説明書/太陽(日食)観察ガイドブック」が入っている。
観察ガイドブックは、必要な基礎知識がもれなく書かれている。たとえば、ただし、基本は学校の授業を想定しているようで、ボリュームや派手さはない。イラストが黒板の前に立つ先生だったり、日食記録ノートの例だといえば、雰囲気がわかってもらえると思う。
ガイドブック全景(表) | 各地の日食時間がわかる日本地図 | ほのぼのとした学習指向のイラスト |
ないものねだりになるが、大人が楽しむためには、ポスター大の日食日本地図などの派手な要素があると良かったと思う。また、屋外で扱うことを考えれば、耐水性の高い紙で作って欲しかった。
日食グラスは、眼の周囲を覆うためか、上下が大きめになっている。眼のところに組み込まれている遮光プレートは、表から見ると銀紙に見えるほど光を反射している。遮光度を上げるために、アルミ蒸着されているそうだ。
なお、製品情報によれば、「この「日食グラス」は、安全性を最大限考慮し、ビクセンが独自に開発した高品位遮光プレート”ソーラープロテック”を使用しています。”ソーラープロテック”は、光学吸収材アクリル樹脂にアルミ蒸着メッキ仕上げを施した極めて優れた遮光性能を持ち、可視光線透過率・紫外線透過率・赤外線透過率のすべてにおいて、太陽観察器具の基準となるJIS規格(規格番号T-8141「遮光保護具」に関する基準)に準拠しています」と記されている。
試みに、日食グラスをあてて、蛍光灯を至近距離で見ても、全然見えない。可視光線の透過率は、0.000039(100万分の39)なので、これも当然だろう。逆に言えば、太陽から来る光というのは、それほどのエネルギーを秘めているということだ。
■太陽の直視と撮影
日食の前に普通の状態の太陽を見てみる |
さて、せっかく購入した日食グラスなので、日食の前に実際に太陽を見てみよう。
ガイドによれば、ツバのある帽子をかぶり、日食グラスの両側を手で包みこむようにして持つことが推奨されている。
ただし、このグラスは眼の上下左右をかなりカバーしてくれるので、片手で眼に当てるだけで、無事に太陽を見ることができた。
中天にある太陽を直に見ることは、とても久しぶりで、「おー、ちゃんと丸い」と感動した。
実際に長時間観測する時は、手が疲れてしまうので、グラスの両端にある穴にゴム紐などを通して顔に固定すると良いだろう。
学習用途であれば、これで太陽を見ながらメモやスケッチをするわけだが、面倒くさがりやの大人としては、デジカメで撮影できないかと考えてみた。
ただし、日食グラスの遮光プレートの部分は、横26mm、高さ10mmしかないので、コンパクトデジカメにしか使えない。
まず、片手でグラスを支えながら、もう片手でデジカメを構える。グラスの左目側に右目をあて、グラスの右目側にカメラのレンズを当てて、手持ちで撮影する。
手持ちのデジカメで太陽を撮影してみた | グラスを片手で持ちながら、もう片方の手で撮影を行なった | 太陽の撮影例。シャッタースピードが遅くなるので、手持ちではぶれてしまう |
撮影データを見ると、感度がISO400でも絞りF2.8~F4.6で、シャッタースピードが1/4秒と、とても遅くなってしまう。それだけ遮光プレートが光を遮断しているということだ。このシャッタースピードでは、手持ち撮影は難しい。ちゃんと撮影するためには、日食グラスをもう1つ購入し、遮光プレートの部分を切り抜いてデジカメに固定し、三脚を使用するなどの手段が必要だろう。
なお、本格的な日食撮影については、僚誌デジカメWatchで紹介されているので、そちらを参照してほしい。
■早めの発注がオススメ
今回はビクセンの製品を中心に紹介したが、同様の製品がいくつか出ている。
自分で試した範囲では、星の手帖社の「欠ける太陽を見よう! 皆既日食」(500円)が、付属のポスターが大きくて、見応えがあった。天文ショーを楽しませようという心が伝わってくる。グラス本体は縦が短いタイプなので、顔の大きい大人はツバ付きのベースボールキャップなどを併用した方がいいだろう。逆にフィルタ部分はビクタンのよりも大きいので、コンパクトデジカメ用に加工するには向いている。
星の手帖社「欠ける太陽を見よう! 皆既日食」 | こちらの日本地図はA2版と大きく迫力がある。各地の情報も詳しい | 星の手帖社のグラスは上下が短い。ツバ付き帽子などを併用すると良いだろう |
ともかく7月22日の当日に手元にないと役に立たない道具なので、届くのが間に合わないとどうしようもない。今週が発注のラストチャンスだろう。早めに入手されることをオススメしたい。
2009年 7月 9日 00:00
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