やじうまミニレビュー
岩谷産業「カセットフー 風まる」
イワタニの「カセットフー 風まる」 |
いよいよ始まるアウトドアシーズン! えっ?「そりゃ夏だろ?」って……。筆者は長年のアウトドア野郎だけど、暑いし疲れるので、真夏にキャンプをしない「へたれキャンパー」なのである! 夏の屋外ベーべキューなんてのも論外。暑い上にコンロも熱く、滴る汗でBBQに塩味をつけるなんてのはゴメンだ(笑)。
そんなキャンプや屋外BBQの必須アイテムが、ガス式のカセットコンロ。炭火のコンロは肉や焼きソバで占領されるので、スープなどの飲み物作りに欠かせないのだ。飲み物だけペットボトルなんて寂しすぎるでしょ?
今回紹介するガス式のカセットコンロは、独自の二重風防を備え、風は通さないが、燃焼用の空気は通すというスグレもの。イワタニ(岩谷産業)の「カセットフー 風まる」(以下、風まる)だ。
メーカー | 岩谷産業 |
製品名 | カセットフー 風まる CB-KZ-1 |
希望小売価格 | 8,400円 |
購入店舗 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 4,979円 |
■アウトドア用コンロとしては格安。それでも火力が安定する秘密とは?
風対策が施されたカセットコンロは、過去に当レビューで「マーベラス」という、同じイワタニ製のものを紹介している。本格的なアウトドアコンロだが、実売価格でおよそ1万円と、ちょっと手を出すにはためらってしまう。
しかし風まるは、マーベラスとほぼ同等の火力で、かつ風にも強い。それでいて実売価格は5,000~6,000円と、マーベラスのほぼ半値。ヤカンしか乗せられないキャンプ専用のシングルバーナーの価格帯とほぼ同じだが、風まるは屋内外で使えて大きな鍋も乗せられるので、圧倒的に汎用性が高いのもポイントだ。
風まるが風に強いのは、独自の風防を備えているからだ。通常のカセットコンロは、火がつくバーナー部分があらわになっているが、このコンロではバーナーの四方が風防で囲まれている。さらにその内側には、バーナーをさらに丸く囲む風防が設けられている。そのためバーナーは、風にあおられても火力が安定するというわけだ。五徳の上に鍋を置くと、一般的なコンロとの違いがよく分かるだろう。
コンロの外側が風防に覆われていて、鍋を乗せるとバーナーに直接風が当たらない | 風防の出っ張りの横には穴が開いているので、燃焼用の空気は取り込める | さらに内側にも風防があり、外側の風防から入った風が直接バーナーに当たらないようにしている |
ここで、“バーナーの回りをガッチリ風防で囲ってしまい、大きな鍋を乗せたら燃焼用の空気が入らないのでは?” という心配をお持ちの方もいるだろう。写真では分かりづらいので、左下のイワタニのWebページにあるカットモデルの図を見てもらいたい。
五徳と外側の風防兼土台には、わずかな隙間があり、ここから燃焼用の空気が入るようになっている(ニュースリリースより) |
まず外側の四角い風防には、空気穴がいくつも開けられているので、燃焼用に必要な十分の空気を通すも、風のほとんどを跳ね返すようになっている。
しかしこれだけでは、穴に向かって吹く風は中に直接入ってしまう。そのため、バーナー近くにある丸い第2の風防が跳ね返すというワケだ。燃焼用の空気は、丸い風防の下にあるわずかな隙間からバーナーに送られるので、酸欠になって火が消えてしまわないようになっている。
「言われてみれば確かにそうだ!」とうなずける風防のおかげで、バーナーはキャンプ用の特殊なタイプではなく、一般的なコンロのモノが採用されている。おそらく、これが安さの秘訣になっているのだろう。
■風のある屋外でも10分で沸騰
左からキャンプ用のシングルバーナー(火力不明)、風まる(火力3,000kcal/h)、同社の旧式コンロAP-1(火力2,200kcal/h) |
さて、風に強いという風まるが、どの程度のものなのかを見るために、風に強いキャンプ用のシングルバーナー、一般的なカセットコンロ、そして風まるの3つを、実際に屋外で使って比較してみた。
実験内容は、1Lの水をヤカンに入れ、何分で沸騰するかの時間を計った。この日の風は、南からの風で風速4.5m/s。写真の手前から奥に吹く風で、木の葉がカサカサと音を立てるほどの風だ。
まずは、キャンプ用のシングルバーナーからテストしよう。火力は不明だが、一般的なカセットコンロから出る炎(ガス)が「シュー」という軽い音に対して、コイツから出る炎は大量のガスを使うため「ゴー!」というまさにガスバーナーの音がする。10年以上使っているが、全開で使うのは未だに怖いほど音がデカイ。
結果は、時々吹く風に炎が揺らめくも、安定した青い炎を出し続け、4分44秒で沸騰した。
キャンプ用のシングルバーナーはヤカンを乗せるので精一杯だが、火力は強い。その他にストップウォッチと温度計、水を測るペットボトルを用意 | キャンプ用のシングルバーナーには小さな穴がたくさん開いているため、風にあおられても青い炎(高温)を出し続ける | キャンプ用のシングルバーナーは4分44秒で水1Lが沸騰した |
次に試したのは旧式の一般的なカセットコンロだ。無風のときは高温の青い炎が出ているが、ちょっとでも風が吹くと炎があおられ低温のオレンジ色の炎になってしまう。沸騰するまでにかかった時間は13分49秒。かなり時間がかかってしまった。
次に一般的なカセットコンロを使用。無風のときは青い炎が出てしっかり加熱できる | 風が吹くと炎があおられオレンジ色の低温の炎になってしまう | 沸騰するまでにかかった時間は13分49秒。かなり時間がかかった印象だ |
ラストは風まるで沸騰させてみる。一般的なコンロに比べれば、炎は青く安定していたが、風向きによっては時々一部の炎がオレンジ色になっていた。これはヤカンが小さいため、風防とヤカンの隙間から入ってしまった風によるものだろう。30cm程度の鍋にすれば、外側の四角い風防まで隙間がなくなるので、さらに安定した火力が得られるはずだ。
結果は、9分19秒で沸騰した。さすがにキャンプ用のバーナーと比べると遅いが、フツーのカセットコンロと比べれば、かなり早い結果になった。
ラストは風まるでチャレンジ。炎は青くかなり安定しているが、時々部分的にオレンジになることも | このような大きな鍋を使うとより安定した火力になる | 沸騰までにかかった時間は9分19秒。なお写真は温度計は98.2℃になっているが、これはちょうど風にあおられてしまったため |
製品名 | 火力 | 沸騰までの時間 |
シングルバーナー | 不明 | およそ4分 |
イワタニ 風まる | 3,000kcal/h | およそ9分 |
イワタニ AP-1 (一般的なカセットコンロ) | 2,200kcal/h | およそ14分 |
以前紹介した「マーベラス」は、キャンプ用のシングルバーナーのように小さな穴がたくさん開いているバーナーを備えていて、水を沸騰させるのに10分かかっていた。それを考えると、火力の性能はほぼ同じながら、価格は半額の風まるは、かなりコストパフォーマンスに優れているといえるだろう。
また、今回は小さなヤカンを使ったが、外側の風防まで届く鍋を利用すれば、マーベラス以上の火力を得られるかもしれない。
■扇風機で強風を送っても、安定した青い炎を保つ
見た目に風に強そうな風まるだけに、どれだけの強風に耐えられるのかが非常に気になるところ。そこで、コンロから30cm離したところに扇風機を置いて、再び沸騰実験してみた。なお、ここでは風まると一般のカセットコンロの炎の違いについてのみ見ている。
26cmの鍋をコンロにかけ、30cm離した扇風機から弱、中、強の風を送ってみる | 無風時の炎は青く高温で均一に広がっているが、風を送るとどうなるのか? |
【一般のカセットコンロ】
弱で風を送ると火が1/3ほど消えてしまった | 中では半分の火が消え、すこしガス臭い | 強にすると火は消えないが、かなりガス臭く、バーナーの中央にあった小さな炎も消えてしまった |
【風まる】
弱で送風しても炎の一部がオレンジ色になるが安定している | 中にしてもほとんど弱と変わらず安定 | 強にするとオレンジ色の部分が増えるも、火が消えることもなく、ガス臭くもない |
ここでは26cmの鍋をコンロにかけているが、大きな鍋だと特に風防の効果が絶大になるのがわかった。風まるは扇風機を強にしようとも、火が一切が消えることもなく、一部の炎はオレンジ色になるが大部分は青い高温の炎となっている。かたや一般的なカセットコンロも火が立ち消えしてしまうことはないが、強で風を送ると半分ほどの火が消えてしまい、あたりがガス臭くなった。
風まるをより安定した火力で使うには、最低でも内側の風防より大きい20cm以上の鍋を使うといいだろう。中でもベストなのは26~28cmの鍋だ。
■家の中でも便利に使える
鍋の定番「ちゃんこ」を作ってみた風まるはアウトドアでもインドアでも使える汎用性が◎ |
さて、ここで真夏の暑い中ではあるが、風まるを使ってちゃんこ鍋を作ってみた。
調理に使ったのは大きな鍋だが、火力はまったく問題なし。途中で水分が飛んでしまったためポットのお湯を継ぎ足してたが、最大火力にすれば数分で沸騰するので、オアズケを食らうこともない。火力は無段階に調節できるが、中火と弱火のところでカチッ! というクリック感があるので、火の調節もすごく楽だ。
だが何より風まるのいいところは、夏の暑い日に鍋を作っても、扇風機で涼を取れる点だろう。
火の調整は無段階だが、中火と弱火でカチッっとクリック感がある | 扇風機を回しながらの鍋は、そうそうできるモンじゃない! |
メンテナンス性も良好だ。鍋料理ではコンロはさほど汚れないが、焼き肉などをすると油だらけになってお手入れが大変。だが風まるは本体がかなり分解できるので、油汚れも簡単に落とせる。なお、炎が出るバーナー部分は取れなかった。
またアウトドアだけでなく、家でも重宝するのがキャリングケースだ。しっかりした樹脂製で、上に何かを積んでも大丈夫だ。コンロの機能とは無関係だが、車に積んだり、家の棚にしまっておくのに、標準でついてくるケースはありがたい。
風防と一体になった五徳は持ち上げるだけで取り外し可能 | 風防と五徳は、クリップを4カ所外すと分解できる | これで五徳の下に入ってしまった汚れも簡単に落とせる |
バーナーの真鍮部分(金色の部分)は取り外しできない | インドア、アウトドアでも重宝するのがキャリングケース。しっかりした樹脂性で、縦置きにしてもコンロがしっかり固定される |
■安いのに四季を通して屋内外で楽しみが増える万能コンロとして超オススメ!
強風でも安定した火力が得られ、アウトドア仕様としは格安のコンロとして使える風まる。家でも外でも使えるカセットコンロとして汎用性も高いので、次のような人には強くオススメしたい。
・これからアウトドアをはじめようという人
キャンプ用のシングルバーナーを買うよりも、大きな鍋を乗せられ、家でも使える「風まる」の方が絶対におすすめ。またキャンプ用のツインバーナーを購入しようか迷っている人は、「風まる」2台をオススメしたい。2口タイプはだいたい2万円ほどするが、風まるならその半額程度で2つのコンロが用意できる。
「風まる」があれば、オールシーズン、インドア、アウトドアを問わず四季の楽しみが増える |
・夏場でも鍋をつつくファミリーに
扇風機を回してもまったく火力が落ちないので、暑い時期でも涼しく鍋を食べられる。もちろん一人暮らしや夫婦だけの世帯でもOK。
・ファミリーキャンパーのサブの火力として
すでにツインバーナーを持っている場合でも、家族が増えるとコンロが足りなくなってくるもの。そんなときのサブのコンロして風まるがオススメだ。
あと数週間もすれば、秋の味覚のシーズン到来する。秋のキャンプやBBQなどはもちろん、キノコ狩りやクリ拾いに風まるを持って行けば、その場で味わえる。しかも冬になったら家で鍋料理のテーブルコンロとして使える点も見逃せない。
シーズンを問わず、またインドア・アウトドアを問わない汎用コンロの「風まる」なら、四季折々の楽しみが増えることだろう。
2012年 8月 24日 00:00
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