やじうまミニレビュー
三菱鉛筆「筆鉛筆」
小学校の書道の時間。のびのびとしたいい字を書くね、と先生に言われた。半紙いっぱいに広がった字は、他にほめようがなかったのだろう。自分でも、字が上手くないことは薄々感づいてはいたが、社会人になってからは人前で字を書く機会も増え、このままではまずいと思うようになった。
かといって、本格的に書道を習うのもちょっと…と思っていたところ、ちょうど良い硬筆書写用の鉛筆を見つけた。今回ご紹介する「筆鉛筆」は、名前だけ見ると、鉛筆なのか筆なのかよくわからないが、れっきとした鉛筆である。これなら、ちょっとしたスペースで空き時間に手軽に書写の練習ができる。そして、この製品の面白いところは、10Bという芯の柔らかさと、その太さだ。
さっそく、楽天市場で注文した。価格は、380円だった。
メーカー | 三菱鉛筆 |
製品名 | 筆鉛筆 |
希望小売価格 | 420円 |
購入場所 | 楽天市場 |
購入価格 | 380円 |
届いたのは、ちょっと成金風の、キンピカボディの鉛筆だった。三菱鉛筆というと、一般的に使われているあずき色の鉛筆、uniシリーズが思い浮かぶのだが、この筆鉛筆は雰囲気が違う。普通の鉛筆の4倍以上の価格だけあり、本体の装飾もどことなく高級感を匂わせている。
パッケージによると、筆鉛筆の芯には高級粘土が使われ、折れにくく、黒くて濃い字が書けるのだそうだ。これによって、トメ、ハネ、ハライなどの硬筆書写の技法を鮮やかに表現できるという。
1本で400円する鉛筆というだけあって、パッケージもしっかりした紙でできている | パッケージ裏には、筆鉛筆の特徴である濃さ、太さ、芯の強度の説明がされている | 黄金色の本体が高級感を醸し出している |
筆鉛筆の文字が刻み込まれている | 芯はさすが10Bと思わせる太さだ |
これまで4B、6Bの鉛筆を使った経験はあるが、10Bの鉛筆を手にとったのは初めてだった。本体の太さや重さ、長さは普通の鉛筆となんら変わらないのに、芯だけが異様に太い。計ってみたら、なんと直径4mmもあった。これは普通の鉛筆の約2倍である。
鉛筆削りで削ってみると、ニョキッと芯が現れる。普通の鉛筆と並べてみると、その太さがわかるだろう。
普通の鉛筆と同じ鉛筆削りで削れる | 途中経過。芯の太さが際立っている | 普通のHBの鉛筆と比べてみたところ |
実際にいくつか文字を書いてみる。芯が太いので、普通のHBの鉛筆よりも芯先がぶれずに安定した書き心地だ。すぐに、芯が斜めに磨耗してくる。これで線の太さが出せるようになり、トメ、ハネ、ハライの部分を表現しやすくなった。さらに、芯が柔らかいので、力を入れると力を入れたぶんだけ濃く発色する。
筆で書いた時のトメ、ハネ、ハライとは別物だと感じたが、普通のHBの鉛筆で書いたものに比べたら、やはり「筆鉛筆」というだけの事はあり、細部まで表現するには向いている。
筆鉛筆で書いたところ。上段から、トメ、ハネ、ハライ | HBの鉛筆で、筆圧は強めで書いたところ |
トメ | ハネ | ハライ |
横書き。横書きだと縦書きよりも鉛筆を傾けるからか、線が太めになった | 縦書き。上から読んでも下から読んでも筆鉛筆だと気づく | 芯が柔らかいぶん、減りが早い |
般若心経の写経に挑戦してみた。筆鉛筆だと、筆や筆ペンで書くよりも小回りがきき、漢字の羅列が書きやすい。黒鉛の濃淡で、味わい深い仕上がりになった気がする。ただ、一行書くたびに芯先がかなり磨耗するので、鉛筆削りを頻繁に利用することになった。やはり芯が柔らかいと芯先が丸みを帯びるのも早いので、気になる人は脇に鉛筆削りを常備しておくと良いだろう。
ひたすら縦書きで漢字を書く | 芯の減りは早い |
デッサンには使えるだろうか。下手の横好きで試してみたところ、これがなかなかうまくいった。木炭ほどとは言えないまでも、ぼかしもきくし、濃淡をつけやすい。芯先がすぐに丸みを帯びて太くなるのも、デッサンの線を引くにはちょうどいい塩梅だ。
芯の減りの早さや、芯先の丸みがデッサンにはちょうど良い | ぼかしもきく | 濃淡もはっきりつけられる |
持ち歩くにはキャップが欠かせない | 消しゴムで消えきらなかった |
このように濃く太い線を続けて書いていると、やはり黒鉛も多く出る。手が黒く汚れたり、紙が汚くなるのは、目をつむるしかないだろう。また、持ち歩きには、キャップは欠かせない。キャップをせずに筆箱に入れたら、筆箱の中が真っ黒になりそうだ。
色々試しているうちに少し気になったのが、書いた字が消しゴムで消えきらないことだ。しっかりした筆圧で書いたからか、芯が濃いからか、ゴシゴシ消しゴムでこすっても、なんだかうっすらと書いた字の跡がみえる。
筆鉛筆は、字を上達させたいときや、写経のように、一文字一文字、心を込めて書く時に使いたいと思った。
ちなみにこの筆鉛筆、三菱鉛筆のホームページには見当たらない。実は、地域限定のローカル文房具で、店頭では群馬県と埼玉県でしかお目にかかれないのだそうだ。県外からだと、インターネットで手に入れることが可能だ。
一方、同じ三菱鉛筆から、デッサン向けを主として、『ハイユニアートセット』という鉛筆のシリーズが出ているそうだ。こちらにも10Bの鉛筆があり、全国の文具店、画材屋などで購入できる。機会を見て、使い比べてみたいと思う。
2010年 11月 11日 00:00
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