やじうまミニレビュー

セイコー「多機能防災クロック SQ692W」

~ラジオと懐中電灯を内蔵した手回し発電電波置時計
by 伊達 浩二


やじうまミニレビューは、生活雑貨やちょっとした便利なグッズなど幅広いジャンルの製品を紹介するコーナーです


セイコー「SQ692W」

目覚まし時計が主役の防災グッズ

 地震や風水害などに備える防災グッズの1つに「手回しラジオ」がある。本体内に発電機(ダイナモ)を内蔵しており、ボディに折りたたまれている取っ手を回転させることで、電池が切れた状態でもラジオを聞くことができるという製品だ。

 ラジオ単体の製品は少なく、ほとんどは電源があることを活かして、携帯電話の充電機能やLEDライトを内蔵することが多い。代表的な現行製品として、ソニー「ICF-B02」、無印良品「M‐JR20」などがある。

 今回紹介する、セイコー「SQ692W」は、これに加えて電波修正機能を搭載したデジタル時計を内蔵していることが特徴だ。いわゆる電波時計というもので、標準電波を受信して、自動的に時刻を修正するという機能だ。

 


メーカーセイコー
製品名SQ692W
希望小売価格7,350円
購入場所Amazon.co.jp
購入価格4,530円

 メーカーでは、この製品を「手回しラジオ」ではなく、「多機能防災クロック」と称している。つまり、目覚まし時計に、ラジオと懐中電灯と手動発電機と非常用ブザーと携帯電話充電器を一体化したものだ。主体がラジオではなく時計であり、そこに災害時にあると便利なものが合体したというコンセプトなのだ。

 同じコンセプトの製品として、「KR870N」という製品があり、価格も同じ7,350円だ。こちらは時計が電波修正機能を持たず、表示がアナログタイプとなっている。こちらは、電波修正機能と曜日表示付きのカレンダーがないので、「SQ692W」の方を選んだ。

 なお、ラジオの受信バンドは、AMとFMで、FMは地上アナログTVの1~3チャンネルの音声も聞ける。ただし、TV音声が聞けるのは、2011年7月24日に予定されている地上アナログ停波までの間ということになる。

ちょっと大きめの本体

 到着したSQ692W本体は、目覚まし時計としては大きめな製品だ。本体サイズは160×153×78mmで610gある。本体裏側に入る電池が単三電池4本と言えば、少し大きさの予想がつくだろうか。本体は樹脂製だ。

小さめの缶コーヒーと並べたところ。目覚まし時計としては大きめだ本体正面。液晶とラジオとスピーカーが配置されている右側面は、目覚まし時計関係とソケット類
背面には発電用のハンドルが折りたたまれている左側面にLEDライト右上から見ると、ほとんどの操作部分が見える。つまり右手で持って見下ろしたときに、操作がわかりやすいように配置されている

 電池寿命は、時計が約3年、ラジオが約35時間、LEDライトが約45時間、非常用ブザーが約15時間となっている。

 本体が大きいだけに液晶表示部分も大きく、ちょっと離れた場所からでも時刻は見やすい。液晶には照明が付いており、スヌーズボタンを押すと点灯する。時刻の下には日付と曜日も表示される。ちょっとしたカレンダー機能だが便利だ。

 電波修正機能は国内2局のみの対応で、海外には対応しないが実用的に困ることはないだろう。もともと、ラジオの受信周波数帯なども国内向けで、海外で使うことは考えにくい製品だ。

 標準電波の受信は午前2時から3時間ごとで、手動でも受信できる。ただし、標準電波はビルの中などでは受信できない場合もあり、自宅のマンションでは東北寄りの窓ぎわでなければうまく受信できなかった。建物の構造や窓の向きに影響されるのは、原理上しかたのないところだ。

 時計としての機能は、電波受信以外は一般的で、各ボタンの表示が日本語なこともあって迷うことはないだろう。アラーム(目覚まし)機能もあり、スヌーズボタンは液晶上、アラーム時刻の設定ボタンは本体の横のわかりやすい場所にあり、ボタンも大きめだ。アラーム音はピピッという電子音とラジオ音声から選べる。

 電波修正機能を備える時計に比べると、ラジオの機能は見劣りする。選局ダイヤルの動きはあいまいで、なかなか目的の局に合わせられない。コストの問題はあるだろうが、暗い場所で使う可能性がある製品だけに、選局しやすいデジタルチューナーにしてほしかった。実用的に困るというほどではないが、安っぽい。

 なお、FM用のアンテナは伸縮式で、ちゃんとした長さがある。自宅で試した限りでは、アンテナを伸ばせば、FM放送の方が良く入った。イヤホンコネクタが用意されているのも良い。

左上からみるとハンドルとLEDライトが同じ軸に並んでいるがわかる。どこかを照らすときに操作しやすい発電用ハンドルを引き出した状態FM用のロッドアンテナは、こんなに長い
ラジオの操作部分。操作はわかりやすいのだが、選局と音量のダイヤルがふわふわした感じで頼りないスヌーズボタンを押すと、液晶の照明が点灯する

 LEDライトは、やや暗く、照らす範囲も狭い。足下のスリッパなどを探すぐらいはできるが、この明かりだけで生活するのは難しそうだ。防災キットを組むのであれば、これだけに頼らず、もう1本、別に懐中電灯を用意した方が良い。

LEDライトは、もう少し明るさがほしいLEDライトの照明例。照明範囲が狭い別の例。パネル全体ではなく、特定のスイッチを照らす感じ

 携帯電話の充電機能は、ケーブルの先にコネクタを付け替えるタイプで、ドコモ/au/ソフトバンクのコネクタが用意されている。大きめのボディを利用して、背面に携帯電話用のケーブルやコネクタ類を収納されているのは、とても良い。こういうものは、いざ使おうとすると、自分の機種用だけどこかに行ってしまったりすることが多いからだ。

背面のパネルを開けると、電池と携帯電話充電用のケーブル類が入っている。また、電波時計関係のスイッチもここに隠されている充電ケーブルは本体右のプラグに差し込む携帯電話用のプラグは3種類用意されている。USBもあると、なお良かった

 発電機能は良くできている。ハンドルを回すときに、むやみに重くないのが良い。また、本体を支えるための取っ手が大きくしっかりしているので、がっしりと握れる。本体が安定しているので、ハンドルに力を入れやすく回しやすい。1秒間に2回転で2分回すと、ラジオが約20分、LEDライトが約25分、非常用ブザーが約10分使用できる。しかし、ハンドルを2分間回すのは、思った以上に力仕事なので、通常は乾電池で使用し、発電するのは非常時と考えた方が良い。電池の消耗が気になる人は、別売でACアダプタ(1,575円)も用意されている。


手回し発電の例。この動作を数分に渡って続けるのは大変だ

 細かい機能では、非常用ブザーも内蔵しており、本体裏の赤いボタンを押すと「ケキョキョキョキョ」という大きな音がする。万が一、何かの下敷きなどになって、周囲に助けを求める際に有効だろう。

いつもそこにある安心感

 手回し発電機能を備えたラジオはたくさんあるが、この製品は電波置時計が中心となっていて、時刻表示も正確だ。ラジオが中心ではなく、置時計を中心にしたことで、常に目立つ場所に置かれるという利点がある。非常袋にしまい込まれることなく、常に定位置にあって、いざというときにすぐに使えるという安心感がある。

 正確な時計と大きな液晶、わかりやすい日本語表示などが長所で、手回し発電の力の入れやすさや、携帯電話用のケーブル類が収納できるのも好きなところだ。

 欠点は、ラジオとしての品質が物足りず、LEDライトが暗めなところだ。両方とも必要性の高い機能だけに、単なるおまけではなく、もう少しがんばってほしかった。もう1つ気になるのは、デザインで、シンプルで操作もわかりやすいのだが、安っぽい感じはある。これを部屋の目立つ場所に置くのは、ためらう人もいるだろう。

 あえて小さくせず、置き時計に非常時用の機能を入れるという発想は、とても良いので、デザインや品質の面で、うまく育ててほしい製品だ。たとえば、手回し発電を省いて、その分は電池をたくさん載せ、ラジオとLEDライトにお金をかけるという手もあると思う。また、ラジオに緊急地震警報対応機能を入れても面白いと思う。




2010年 11月 1日   00:00