家電製品ミニレビュー

パナソニック「0.8L 電気ケトル NC-KT081」

~安全性が高いシンプルな電気ケトル
by 但見 裕子
パナソニック「NC-KT081」

 手軽にお湯が沸かせる家電といえば、電気ケトルである。電気ケトルは一時的な消費電力は大きいが、必要なときに必要な量だけ湯を沸かすことができ、沸かし終わると電力がかからない。大量のお湯を沸かしてずっと保温する電気保温ポットに比べると、節電という観点からもポイントが高いらしい。

 そんな電気ケトルについて、今回は1月に発売されたパナソニックの「NC-KT081」を試してみたい。これまで電気ケトルを扱っていなかったパナソニックが遂に市場に投入した製品だ。


メーカーパナソニック
製品名NC-KT081
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格6,475円

 NC-KT081の本体サイズは221×148×193mm(幅×奥行×高さ)、重さは約1kg。本体はシンプルな円筒型をしている。電気ケトルには丸っこくファンシーなデザインが多い中、NC-KT081はシンプルなルックスだ。ケトル本体は二重構造になっているので、全体が大きめでしっかり、どっしりした感じがする。

 色はレッドとブラック、ホワイトがあるが、今回はホワイトを選んだ。

パッケージ本体には使用上の注意と警告がシールでつけられている左の通電板に載せて使用する

 部品は、本体と、ふた、本体を置いて使用する通電台の3つ。本体には、 「お湯が注ぎやすい なめらか給湯」 「倒れてもこぼれにくい、転倒湯もれ防止構造」 「お手入れ簡単 フッ素加工容器」という長所が謳われたステッカーが貼られている。

 通電台には、長さ1mの電源コードが付属している。本体に水を入れ、通電台に乗せて電源スイッチを入れるとお湯が沸かせる。コードは、通電台の底に巻き付けてしまうことができる。ふたには、つまんで操作する「ふた開閉つまみ」と、給湯/ロック状態を切り替える「給湯ロックレバー」がある。

ふた。上のレバーで、/給湯ロックの状態を切り替える。下の3本の溝は蒸気口「ふた開閉つまみ」を押しながら持ち上げると、パカッと取れる
ふたを取った状態。口が広く開くので給湯や洗うときに楽だ通電板の裏側。コードを巻き取れるようになっている

 ケトルの内側には200/400/600と目盛りがしてあり、800ccに当たるところには「ココマデ」と書いてある。沸かせるお湯の量は最大0.8Lだが、使う人はその時その時で必要な量の水を入れて使う。

 湯を沸かすにはまず、「ふた開閉つまみ」を持って、ふたをパチンとセットする。単に乗せただけではなくしっかり本体に装着されるので、動かしてもふたは外れない。そして、レバーを「ロック」にセットし、本体を通電台に乗せる。本体は、「スッ」と気持ちよく通電台のでっぱりにフィットする。

電源が入ると赤いランプがつく。見づらいと言うほどではないが少し暗い

 本体の電源スイッチを「カチリ」と入れると、赤いランプが点灯する。このランプは、黒っぽいカバーに覆われているのでちょっと暗い。目の悪い人には少しだけ見えにくいかも知れない。

 最初は無音だが、耳を寄せているととかすかな「ジー」という音がしてくる。続いて「コポコポ」とわき上がる音。蒸気口から湯気が上がりはじめる。

 やがて「パチン」と音がしてスイッチが切れ、ランプが消えた。沸騰すると自動でスイッチが切れるのだ。「パチン」という音は大きくはないがはっきりしているので、わかりやすい。テーブルやデスクに置いて、ほかの用事をしながら沸かしていても、これなら気がつくだろう。

 また、空だき防止機能がついているので、万一水を入れない状態でスイッチを入れてしまっても、自動的に電源が切れるようになっている。

 0.8L沸かすのにかかった時間は4分20秒だった。電気ケトルなので、保温機能はない。「いったん沸かして、何となくそのままにしている」というような、電気代の無駄も避けられる。

 さらに、マグカップ1杯にあたる200ccを沸かしてみたところ、1分33秒で沸いた。朝起きてスイッチを入れれば、顔を洗っているあいだに沸くだろう。


「転倒湯もれ防止構造」や「なめらか給湯」など、安全設計がされている

 ロックを解除して、お湯を注ぐ。一般的なヤカンと違い、注ぎ口にベロ状の小さな整流板が乗っているので、うんと傾けてもバシャバシャお湯が出ることはなく、キレイな線状にお湯が出る。また、湯切れは良く、湯滴が飛ぶこともない。「なめらか給湯」を謳った製品だけに、これなら小さなデミタスカップなどにも、こぼさず安全に熱湯を注げると思った。

 さらに、フタが本体に固定されているので、ヤカンのように注ぐときにフタを押さる必要がないのも嬉しい。

 一定の量のキレイな線状のお湯が出るのは、お茶やスープの時にはぴったりだ。だが一方で、コーヒーを淹れるときには裏目に出る。ドリップにはコーヒー豆に、少しずつ細めにお湯をさしてふくらませる過程が必要だが、NC-KT081だと、ケトルのペースでどんどん お湯が出てしまい、ちょろちょろと少しずつお湯をさすことが難しい。できなくはないが、ヤカンと比べれば難易度は高い。

 安全面ではもう1つ、内部が二重構造になっているので、本体表面を触っても熱くない。お湯を沸かした後、本体は確かに温かくなっているが、“熱い”というほどではなく、ずっと触っていても火傷しないだろう。

ティファールの「アプレシア」と並べる。同容量なのだが、二重構造のNC-KT081のほうががっしりしている
 これまで使っていたティファールの電気ケトルは外側も熱くなるため、取っ手以外のところを触るとヤケドの危険があるのだが、NC-KT081はそのあたりの安全性が高い設計だ。

 また、中の熱が外に伝わりにくいということは、すなわち内部の保温性が高いということでもあって、電気は切れているのにしばらく保温しておけるというのはお得な感じだ。


転倒湯もれ防止機能を試す。満杯に入った状態で横に倒してみた注ぎ口からはこぼれないが、蒸気口から少しずつ水が流れてきた。半量の400ccで1試したときは、全くこぼれなかった

 次に、「倒れてもこぼれにくい、転倒湯もれ防止構造」を試すため、満杯の800ccの水が入ったケトル本体を、フローリングの床に倒してみた。

 満杯の水は、バシャッとこぼれ出すこともなく、一見平静だ。注ぎ口からはまったく水が出てこなかったのだが、しばらく転がしておくと、注ぎ口ではなく蒸気口の小さな穴から、音もなく少しずつ水がこぼれだして床にたまりはじめた。

 満杯の状態の場合に限定していえば、「倒れてもこぼれにくい」というよりは、「倒れても、すぐに起こせば、あまりこぼれない」機能といえるだろう。

 満杯でなく、400ccの水が入った状態で、もう一度横に倒してみたが、この状態だと蒸気口の高さまで水が来ないらしく、まったく水はこぼれなかった。400ccまでの状態でNC-KT081を使う場合、何かのアクシデントで倒れても、熱湯が出てしまうことはないといえるだろう。

炊飯器の隣に置いて使うことにした

 基本的な機能を一通り試したあとは、キッチンに置いて、日常的に使った。どこに置こうかと思ったが、コンセントの関係でキッチンシェルフの上、炊飯器を置いている場所で使うことにした。シンプルであっさりしたデザインなので、まるで前からずっと置いてあったようにキッチンの景色になじむ。


消費電力は高いが短時間で済むので、電気代は1円程度

 消費電力は1200Wと高い。これは電子レンジ、ヘアドライヤーの電力に匹敵するので、節電のためにピーク時の使用は避けたい。また、ピーク時でなくても、高エネルギーの電気製品と同時に使っていると容量オーバーになりかねないので気をつけた方がいいだろう。

 エコワットで、200ccのお湯を沸かした際の電力量と電気代を計ってみると、1時間あたりの消費電力量は0.03KWh、同じく1時間あたりの電気料金は26.2円だった。しかし実際には1分半ほどでお湯は沸くわけで、その場合の電気料金は1円と表示された。

 さらにワットチェッカーで最大消費電力を計ったところ、数字は刻々変化するが、最大で1,187Wになった。 1,187Wというと非常に消費量が多いようだが、時間軸を含めて考えると、使用時間が短いので、電気代としては1回あたり1円ですむという形だ。

エコワットで電気代を調べてみた。200ccを沸かしたときの電気代は1円消費電力は最も高いときで1168wだった

水も時間も電気代も、無駄なく使える

 毎日使ってみると、お茶やインスタントスープをちょっと飲もうというときに使うことが一番多かった。

 今まで使っていたヤカンには目盛りがないので、一杯分にあたる200ccだけ沸かすときにはついつい多めに水を入れていたが、水を多く入れるとそのぶんたくさんのエネルギーを使ってしまう。その点NC-KT081では、必要な量の水を意識して入れられるので、その都度水を使い切るようになった。必要な量を沸かして、使い切るのは気持ちがいい。

 使い切るのは、衛生的な面でも有効だ。一度沸かして塩素が飛んだ水は細菌が繁殖しやすいため、できれば毎回使い切るべきなのだそうだ。

 ガスを使わずに湯を沸かせるのというのも嬉しい。調理時に、3口のガス台を全部使う局面というのは結構あるものだ。先日も、鶏肉の煮込みとお味噌汁が2口で進行中で、残った一つを使って、料理本を見ながら「ジャガイモとカリフラワーの炒め煮」を作っていた。するとレシピに「コンソメスープの素をお湯50ccで溶いて加えます」という記述が現れ、お湯が必用になった。

 こういう時、以前ならお味噌汁の鍋を緊急避難させてヤカンで沸かしていたところだが、NC-KT081で別に沸かす事ができる。50ccという少量でも、空だきの心配なしで沸かせるのもいいところだ。

 また、断熱容器で、しかも短時間にお湯を沸かすので、「キッチンが暑くならない」のもポイントが高い。真夏のキッチンで火を使うと、火のそばはさらに暑くなってしまうものだが、これを使えばほとんどその心配はないだろう。エアコンを思い切り使えない今の時世には向いていると思う。

 手入れは他の電気ケトルと変わらない。電気ケトルは使っている間に、内部に水のミネラル分が湯あかになって付着する。水質にもよるが、2~3ヶ月に一度、クエン酸で洗浄するように推奨されている。パナソニックでは専用のクエン酸を販売店や直販サイトで扱っているが、市販のポット洗浄剤でもかまわないだろう。


バランスのいい、親切な電気ケトル

 難点をあげてみると、重量が約1㎏と、ケトルとしては重いところ。中に入っている水の重量も加わるので、実際にはもっと重くなる。二重構造にして、本体が熱くなりにくく、お湯が冷めにくくしてあるのだから、重くなるのは仕方がないかもしれないが、手の力の弱いお年寄りなどには使いにくいかも知れない。

 さらに、上でもあげたように「ヤカンに比べて、微妙な注ぎ加減がコントロールできない」ことも問題点だ。バシャバシャ出すぎたり、熱湯がはねたりすることを防ぐため、一定の量が出るようコントロールしてあるのだが、その分自由度が低く、手加減が利かない。

 この点、ティファールは熱くなるし、万一倒れたら、本体の注ぎ口から大量のお湯がこぼれ出るのだが、本体は軽く、注ぎ心地は繊細で、コーヒーのドリッパーとしても使いやすい。どちらのケトルがいいかは決められない気がする。いわば東西の文化の違いということになるのではないだろうか。

 とはいえ全体的にバランスのいい、親切な製品だと思う。形はシンプルで、変にデザイン性を狙っていないのもいい。外側が熱くならない、倒れても一度にお湯がこぼれないなど、安全性も考えられている。安全性という点では特に、空だきする心配がないのが、普通のヤカンと違ってとても安心なところだ。

 短時間しか運転しないとはいえ消費電力が高いので、時節柄ちょっと肩身が狭いが、電気ならではの便利さと安全さは捨てがたい。平日の日中といったピーク時の使用はひかえつつ、また、無駄にたくさんお湯を沸かさないように、必要な量をきちんと量って使っていきたい。






2011年6月7日 00:00