家電製品ミニレビュー

東芝「電気ケトル PHK-800R」

~ついに登場、沸騰時に音が鳴る電気ケトル
by 正藤 慶一

なぜ無い? 沸騰時に音が鳴るケトル


東芝ホームアプライアンス「電気ケトル PHK-800R」
 水を入れ、スイッチを入れるだけでお湯が沸かせる家電製品といえば「電気ケトル」。火を使わず、必要な分だけ沸かせる点がウケたのか、家電量販店を覗けば、海外メーカーから日本メーカーまで、数々の製品が並んでいる。

 しかし、そんな数多くの電気ケトルにあって、ひとつ疑問だったのが“沸騰時に音が鳴る”機能を持った製品がひとつもないところ。ガスで沸かす普通のヤカンなら、ピーと音が鳴るものもあるが、電気ケトルでは、スイッチがOFFになる「ガチャッ」という音がわずかにするだけ。そのため、ちょっと離れた場所で使った時には、沸騰に気付かないこともあった。

 なぜ、音が鳴るケトルは存在しないのか、何か問題でもあるのだろうか……と考えていたが、この春、ついに音が鳴る電気ケトルが登場した。東芝の「PHK-800R」という製品である。

 果たして、どんな音が鳴るのか、そして音があることでどんなメリットがあるのだろうか。さっそく使ってみたい。

メーカー東芝ホームアプライアンス
製品名電気ケトル PHK-800R
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格6,528円


重量感のある本体。台座の形状がいつもと違う……

本体サイズは156×220×220mm(台座込みの数値)と、意外と大きい。左はティファールの小型タイプの電気ケトル「アプレシア」
 到着した本体は、意外と大きく、重かった。ティファールの「アプレシア」に比べると、大きさは一回り以上大きい。重さも、アプレシアの553gに対し、1,023gと2倍ほど重い。これで内容量は同じ800ml。アプレシアは小型・軽量を売りにしたタイプなので、比較するのはアンフェアかもしれないが、その差にびっくりしてしまった。

 使う前に、ひとつ気になったことがあった。ケトルの台座(電源プレート)の形状が、これまでの製品とまったく異なっているのだ。現在市販されているほとんどのケトルは、丸い台座の中央に黒い突起があり、これがケトル本体と繋がることで通電する仕組みだった。しかし本製品では、台座は楕円でやや大きめ。さらに、ケトルとの接続部は、真ん中ではなく隅に配置されている。ケトル本体との接合方法も、ケトルにある2つの突起物を台座に差し込むというもの。メーカーによれば、この接合方法は、ほこりやゴミから接点を守るためのものらしい。

台座の形が、アプレシア(右)のような一般的な形と異なり楕円形。さらに、本体との接合部も台座脇に用意されている本体の接合部も異なり、2つの突起物を台座に差し込む形となっている(写真上がPHK-800R、下がアプレシア)

 さっそく、本体内に水を入れて沸かしてみよう。容量ギリギリとなる800mlを入れて、台座に乗せる。フタは片側だけではなく全部が開くタイプで、水が投入しやすい。手が完全に入る広口なので、手で洗う際にも便利そうだ。

 台座に乗せると、それだけで“ピッ”というビープ音が鳴る。取っ手付近の「沸騰」ボタンを押すと沸騰がスタートするが、その際にもまた“ピッ”と鳴る。沸騰前から、音を鳴らす気満々である。


“ピーッ、ピーッ”で沸騰。うるさい室内でも気付く

 それから約4分後、沸き上がりとともに音が鳴り、運転が自動停止した。音の様子は以下の動画をご確認いただきたい。

PHK-800Rが沸騰したところ。ビープ音で沸きあがりを知らせる

 音は、“ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピー”というビープ音。携帯電話の着信音や炊飯器の炊きあがりの“炊きメロ”と比べると、いささか寂しい印象。音の種類や音量も変えられない。しかし、たったこれだけの音でさえも、これまでの電気ケトルには採用されてこなかったのだ。意外と大きな一歩なのである。
アプレシアなど、一般的な電気ケトルは、沸きあがった際に“ガチャッ”とスイッチがOFFになる音がする

 さて、この音によるメリットは、本体と離れた場所でも沸騰が気付けるところだ。試しに、空調機器がうるさい部屋で使ってみたところ、ちゃんと沸騰を知らせるビープ音が確認できた。一方、音のないアプレシアでは、カチャッというスイッチの音がわずかにするだけ。音があったほうが、当たり前だが分かりやすかった。

空気清浄機の音がする部屋で、PHK-800Rを使ったところ。約3mほど離れた位置から撮影しているが、沸騰を知らせる音はしっかり聞こえた一方のアプレシア。電源がOFFになるガチャッという音は聞こえるが、わかりにくい

ワットチェッカーで消費電力を確認したところ、消費電力は1,150~1,250W程度だった
 ちなみに沸騰時間は800mlで4分48秒だった。アプレシアでは同じく800mlで4分35秒。大きめのマグカップ1杯分となる300mlだと、PHK-800Rが1分53秒、アプレシアは1分52秒。差はあるがわずかなもので、沸騰スピードは特に気にするほどでもないだろう(室温はすべて20℃、水道水を利用)。消費電力は1,150~1,250W前後だった。なお説明書には、沸騰の目安時間として、800mlで約4分10秒とあった(室温と水温がそれぞれ23℃の場合)。

こぼれロックにコード巻き取り機能など豊富な機能

 このPHK-800R、音以外にも便利な機能を備えている点も特徴だ。

 まずは「出湯ロック機能」。フタのボタンを押すことで、注ぎ口を閉じたり開けたりできる。使用しない場合はロックをしておけば、誤って倒してもお湯がこぼれるのを抑制できる。子供がいる家庭では、重宝する機能だろう。

ロックをした状態で本体を倒しても、お湯がこぼれない。ロックをしていないとこぼれるので注意

台座のコードは、掃除機によくある自動巻き取り式。便利!
 もうひとつが、コードの巻き取り機能だ。通常の電気ケトルでは、片付ける際に台座に手動でコードを巻き付ける手間がある。しかし本製品では、コードを引くと自動的に台座内にコードを巻き取ってくれる。掃除機でよくあるコード巻き取り機能が、電気ケトルにも導入されたというわけだ。これは、従来の面倒臭さを知っているだけに、特に便利に感じた。

 また、個人的にはお湯が一気に出ずに、トロトロとゆっくり注げるのも気に入った。安いケトルだと、結構ドバッと出てしまい、カップの周りを水浸しにするなんてこともあったが、本製品はケトルを急に傾けても、速度は一定だった。

お湯は一気にドバッと出ずに、ゆっくりと注がれていく

 注意してほしいのが、フタにある蒸気噴出部。銀色なので目に付きやすいが、ここから蒸気が一気に吹き出る仕組みになっている。そのため、この部分はとても熱い。一度誤って触れてしまったことがあったが、火傷しそうなほどだった。注意していただきたい。ただし、取っ手や本体の脇といったそのほかの部分は、あまり熱さは感じられなかった。これは、樹脂とステンレスの二重構造である点が大きいだろう。

 また、冒頭でフタが完全に取り外せると述べたが、実はフタを開けたままでも電源がONになってしまう。運転スタートから10分後に自動停止する「マイコンオートパワーOFF」機能のようなサポート機能は付いているが、もちろんフタを開けての使用は説明書で禁止されている。

フタにある銀色の部分が蒸気の噴出口使用中は、本体全体はあまり熱を持たないが、蒸気噴出口だけはものすごく熱いので触れないように注意
フタは完全に取り外せる手もスッポリ入るので、お手入れには便利ただし、通電中にフタを取ったり、フタを取った状態のまま通電するのはやめよう

調理時などちょっと離れて使うシーンに

 全体的に見れば、音が鳴るという他のケトルにはない機能に加え、熱くならない本体、巻き取りできるコード、こぼれを防ぐロック機能など、家庭で使うのに十分な機能を備えた、ハイレベルな製品と言えるだろう。確かに本体は重く大きいかもしれないが、それに見合った機能は十分に備えている。

 キッチンで料理の準備をしながら、リビングでは電気ケトルでお湯を沸かしたりなど、ちょっと離れた場所で使う場面には、この音付きのPHK-800Rが重宝するはず。特にうるさいというほどのものでもないので、普段使いでもまったく問題ないだろう。音という、これまでに無かった機能を搭載しつつ、基本性能もしっかりと備えた、レベルの高い電気ケトルといえそうだ。



2010年5月12日 00:00