家電製品ミニレビュー

フジ医療器「KEN OKUYAMAモデル KN-15」

~フェラーリのデザイナーがデザインした真っ赤なマッサージチェア
by 阿部 夏子

インテリアとして成立するマッサージチェア

フジ医療器「KEN OKUYAMAモデル KN-15」

 マッサージチェアというと、みなさんどんなイメージがあるだろうか。私がすぐに思い浮かぶのは、「温泉や銭湯などにあるもの」「お金持ちのおじさんのおうちにあるもの(横にはゴルフバッグがある)」といったもので、とてもではないが、20~30代の自宅に置くことは考えられなかった。

 そのイメージが変わったのは、昨年このコーナーで紹介したパナソニックの「マッサージソファ EP-MS40」を使ってからだ。部屋のインテリアと合わせておいておけるサイズ感やデザイン、マッサージチェアを“マッサージソファ”と呼んだ同社の取り組みはこれまでなかったもので、新鮮に感じた。

 今回紹介するフジ医療器の「KEN OKUYAMAモデル KN-15」(以下、KN-15)は、インテリア性を追求しつつ、デザイナーの名前を製品名に冠し、さらにデザインを重視したマッサージチェアだ。



メーカーフジ医療器
製品名KEN OKUYAMAモデル KN-15
希望小売価格オープンプライス
参考価格198,000円


 フジ医療器は、創業56年のマッサージ機器専門のメーカーだ。というより、そもそもマッサージチェアを初めて作ったのが同社の創業者であったという。マッサージチェアでトップシェアを誇る同社では、これまでにもカラーやサイズをリビング向けにした製品を展開してきたが、あくまでマッサージ機能が第一だった。そのフジ医療器が、デザイナーの名前を付けたデザイン重視の製品を出したのだから、これはかなり思い切った製品だと言えるだろう。

 製品の詳細に入る前に、まず今回の製品のデザインを担当したデザイナーの奥山清行氏について簡単に紹介しよう。奥山氏はゼネラルモータースやフェラーリ、2013年導入予定のJR東日本「E6系新幹線」のデザインを担当する著名なデザイナーで、現在は自身のデザイン会社KEN OKUYAMA DESIGNの代表を務める。車や新幹線などどちらかというと男性的で、未来的なデザインをされているというイメージがあるが、KN-15も例外ではない。

 スッとした形状に光沢のある表面で、マッサージの“癒し”というイメージよりは、もっと攻撃的な雰囲気だ。そのビジュアルやコンセプトが発表会の時から、かなり気になっていたKN-15。今回約1カ月間、製品をお借りできることになったので、実際に使ってみた。

やっぱりカッコイイ!

 本体を初めて見た時に、まず思ったのは「大きい!」ということ。本体サイズは700×1,070×1,130mm(幅×奥行き×高さ)、重量は62kg。自宅のマンションの廊下をやっと通るサイズだ。本体には、リクライニング機能と足のマッサージを行なうオットマン(足のマッサージを行なう台)が備わっているので、最大サイズ時はさらに大きく、700×1,800×740(同)となる。奥行きが2m近くなるので、まずは設置場所を考えてから導入した方が良さそうだ。

 リビングに置いて、改めて見るとやはりカッコイイ。存在感があって、部屋のインテリアの主役になる。光沢のある真っ赤な生地は、派手かなと思っていたが、高級感があって意外に馴染む。紺色のステッチがアクセントとなって、統一感を出しているのかもしれない。

製品本体マッサージ使用時は付属のクッションを外して、オットマン(足のマッサージを行なう台)を出す本体背面
本体側面オットマンを出して、リクライニングを倒したところ。全長1,800mmほどになる電源は本体背面の隅に設けられている

 この製品のデザインのコンセプトは、デザイナーの奥山氏が「自分の部屋に置きたくなるようなモダンなデザイン」だという。発表会会場で、コンセプトを聞いた時は「普通の(インテリアに凝っていない)家に置くのは厳しいかもしれない」と思っていたが実際置いてみると、それほど違和感がなかった。カラーリングや質感は確かに、近代的なイメージだが、形自体は曲線を多用していて柔らかいイメージなので、案外馴染みやすいのかもしれない。

 KN-15はソファとしての役割も兼ねている製品のため、座り心地も優れている。通常マッサージチェアの中には、もみ玉やらローラーやらが内蔵されていて、椅子として普通に座ると背中がゴツゴツして座り心地が良くない。見た目にも凹凸があって、美しくない。KN-15では、この凹凸をカバーするために専用のクッションを付属する。

 ソファとして、使用するときはこのクッションを背面に置いた状態で、マッサージするときはクッションを外した状態で使用する。セットしたクッション裏側には揉み玉を収納するスペースもちゃんと設けられているなど、工夫されている。

本体の背部分にはもみ玉が内蔵されているため、そのままだと凹凸があるソファとして使用するときは付属のクッションをもみ玉に被せるマッサージチェアとしえ使用するときはクッションを外す

 KN-15では、首、肩、腰、背中、座面(お尻の裏やものの裏当たりのこと)、ふくらはぎ、足裏とほぼ全身のマッサージに対応している。4つのもみ玉で「もみ」「たたき」「ローリング」の3つのほか、揉み玉が細かく揺れながら移動する「さざなみ」の4つの動きを再現する。そのほか、座面部分はエアークッション、ふくらはぎは左右4枚づつの揉み板、足裏はローラーを使ってマッサージする。

 本体には自動コースとして「全身」「肩」「腰」の3つを搭載するほか、「もみ」「たたき」「さざなみ」の動きを選択して自分好みのマッサージをすることもできる。細かい幅や上下の位置まで選択できるようになっているため「肩のここが痛い」とか「腰のあそこを重点的にもみほぐしたい」などの希望にも応えてくれる。

ふくらはぎと足裏のマッサージを行なうオットマン背中の部分には4つの揉み玉が内蔵されている
4つのもみ玉で広範囲のマッサージを行なう(図は製品情報ページより)本体で再現できるマッサージはもみ、たたき、さざなみ、ローリング(背筋のばし)の4つ脚部のマッサージはもみ板とローラーを使う

 コース選択やマッサージ開始などの操作は全て付属のリモコンで行なう。このリモコンがまたカッコイイ。本体カラーと合わせた真っ赤なリモコンで、持ちやすいように、丸みを帯びた形状を採用している。リクライニングやオットマンの操作も、全て電動でスイッチ1つで行なえる。

本体付属のリモコン専用の収納ポケットが設けられている使用中は起動中のコースのランプが点灯する

オットマンを電動で出すところ。ボタンを押している間だけ動く仕組みだ

揉み心地は、さすがマッサージ専門メーカー

 マッサージ機能は思ったよりもずっと本格的。感心したのは、自動コースを選んだ時のマッサージの構成だ。安いマッサージチェアだと、もみ玉がただ上下に動くだけなんてものもあるが、KN-15ではマッサージの順番や動きまできちんと計算されている。

 マッサージ屋さんに行ったことがある人ならわかるだろうが、マッサージには施術の順番がある。まずは、背中をさするようにして血行を良くしてから、全体を軽くマッサージ、その後に力を入れてツボを押していって、最後はまたさするようにして終わる。そのマッサージの一連の流れがしっかり再現されている。


もみ板やもみ玉が動いている様子

 座面やふくらはぎ、足裏まで全身をマッサージすると、体がほぐれていくのが分かる。特におすすめしたいのは、入浴後のマッサージ。血行がいい状態で、マッサージすることで、疲れが一気に取れる。マッサージ後は体がぽかぽかして、寝付きも良くなる。

 自動コースのマッサージはかなり本格的で、ツボにググっと入ってくる。私は根っからの肩凝りなので、このグーっと入ってくる感じがとても気持ち良かったが、人によっては強すぎると感じる人もいるようだ。5歳年下の妹などは痛がって、最後までコースを続けることができなかった。マッサージには好みもあるので、一度量販店やショールームで試してみるのがお勧めだ。

座面が高く、座り心地が良いのでマッサージをしない時もKN-15に座ることが多かった

 私もこれまで色々なマッサージチェアを試してきたが、KN-15は本格的な部類に入ると思う。背もたれが高く、大きめなのもあって座り心地も抜群。長時間座っていても疲れにくいので、マッサージをする時だけでなく、DVD鑑賞やゲームをやる時などついつい、KN-15に座ってしまっていた。

設置性に一言!

 使い心地、デザイン共に満足度が高いKN-15だが、どうしても譲れない不満な点がある。それは移動が大変なのと、設置しにくいという2点だ。

 まずは移動について。本体には移動のための後輪が設置されていて、移動の際は背もたれ部分をそのまま後ろに倒して、後輪を使って移動させる仕組みだ。ただ、これがなかなかスムーズにいかない。重いのはもちろん、ギシギシと鳴って、思っている方向に進めない、小回りがきかないといった状態だ。また、本体から出ている電源コードとリモコンコードの位置も問題で、気を付けないと、後輪に絡まってしまうような場所にある。

本体を移動する時は背もたれを後ろに倒して、後輪を使って移動するリモコンのコードや、電源のコードが後輪近くに設置されているため絡みやすく、移動するときに邪魔だった

 設置については、本体後ろに空きスペースができてしまうという問題がある。もともと、KN-15はマッサージチェアなので、リクライニングで倒すことを考慮して後ろに空きスペースを設けるのはわかるのだが、一番起こした状態でも、普通の椅子に比べるとかなり倒れている状態で、後ろにデッドスペースができてしまう。

本体後ろにデッドスペースができてしまうため、壁に沿って置くことができない1番起こした状態でも、一般的な椅子に比べるとかなり倒れている。写真はわかりやすいように、テーブルの近くに設置したところ
部屋の隅などに置けないため、写真のように部屋の空きスペースに設置せざるを得ない

 リビングに設置するという使い方を想定するとなると、これは少々使いづらい。たとえば壁際に沿って置くとか、ソファと並べて使うといった使い方ができないのだ。マッサージチェアを嗜好品と捉えるなら、設置性や移動のしやすさといった問題をとやかくいうつもりはないが、家具や家電として考えるなら、それは重要なポイントとなる。メーカーにはぜひ改善して欲しいところだ。

パナソニックと比べてどうなの?

 冒頭でも話した通り、デザイン性にこだわった家具寄りのマッサージチェアというと、パナソニックの「マッサージソファ EP-MS40」がまず思いつく。私自身、実際にマッサージソファを使って、このコーナーでも紹介している。ソファの役割を兼ねたマッサージチェアを欲しいと考えている人なら、一体どちらがいいのか気になるところかもしれない。

 あくまで私の主観だが、2機種の違いを一言でいうと、パナソニックは万人向け、フジ医療器は玄人(くろうと)向けといったイメージだ。

パナソニックの「マッサージソファ EP-MS40」マッサージソファは自宅のソファと並べて置くことができたKN-15は置いてあるだけで絵になるような存在感がある

 パナソニックのマッサージソファはデザインや使い心地がソフトで、ママ、パパ、お姉ちゃん、家族みんなで楽しめる製品。サイズもKN-15に比べると小さめで、リビングに無理なく置ける。

 一方KN-15は、もっとこだわりがある人向け。デザインも万人向けとは言えないし、マッサージも本格的なので合わない人もいるだろう。ただ高級感があって、デザイン性の高い製品なので、所有する喜びが得られる。そのセンスがマッチした時の満足度は高いだろう。

疲れが残らない、熟睡できる

毎日マッサージすることで、疲れが残りにくくなった

 デザインうんぬんと色々語ってきたが、私が一番満足度が高かったのはやはりマッサージ機能。お風呂上りにKN-15に座って、好きな海外ドラマを見て、マッサージをしている時が至福の時間だった。

 効果として実感できたのは、疲れが残りにくくなったということと、熟睡できるようになったということ。

 会社員の方ならおわかりいただけるだろう。月曜日に仕事が始まって、曜日が進むごとに体が重くなっていくあの感じ。取材が重なった週など、金曜日には出社するのがやっとという有様になってしまう。KN-15を使い始めてからは、その疲れが溜まっていく感じがなくなった。その日のコリをその日のうちに解消しているからなのか、マッサージチェアを使うことで気持ちがリフレッシュできるのか、確かに疲れが溜まりにくくなった。

 KN-15のような機能もデザインもという製品の場合、どちらかを重視しすぎてバランスの悪い仕上がりになってしまうことがある。その点、KN-15ではどちらも犠牲にすることなく、質の高い製品に仕上がっていると思う。基本機能への満足度が高いだけに、設置性や移動のしにくさが余計にひっかかる。今後の改善に期待したい。




2010年11月4日 00:00