家電製品ミニレビュー

クマザキエイム「ききさいしゅ~季々彩酒~」

~果実酒が1日でできる超音波果実酒メーカー
by 但見 裕子
クマザキエイム「ききさいしゅ~季々彩酒~」

 果実酒を漬けるのは楽しい。

 色鮮やかな果物を、ホワイトリカー、氷砂糖とともにビンに漬け込んで、氷砂糖がゆらゆらと溶けるところ、果物が微妙に色を変えていくさまを眺めるのはいいものだ。

 何日か眺めて、見飽きたら、冷暗所にしまって、いったんその存在を忘れよう。何カ月か経ってから出してきて、味見をするのが楽しみだ。

 あるいは1年後、また同じ果実酒を漬ける時季まで忘れ去っているのも、しっかり円熟させるためにはまたよしだ。

 とはいえ、そのような月単位、年単位の悠長なことは、多忙な現代人の生活には必ずしも適していないかも知れない。「せっかちで、漬けた翌日からしょっちゅう味見をし、そろそろおいしくなってきた頃にはビンの中身が半分になっている」などという知人の話も聞いたことがある。

 そんな人にもおすすめできそうなのが、今回紹介する「ききさいしゅ~季々彩酒~」だ。


メーカークマザキエイム
製品名「ききさいしゅ~季々彩酒~」
希望小売価格14,800円
購入場所直販サイト
購入価格9,800円

 ホワイトリカーに漬けた果実を、理想的な温度設定のもと(約35℃)、超音波(40キロヘルツ:40,000回/秒)で振動させることで、果実のエキスを早く溶け出させるという。クザマキエイムはオーディオ機器を中心に作っている会社であるようで、その音響方面の技術から発想された製品なのかも知れない。

 漬ける果物の種類にもよるが、早ければ一日で出来上がるそうだ。

 「季々彩酒」の本体は、最大径190㎜、高さ275㎜。ジューサーミキサーの、食品を入れるガラスボトルを外した下半分によく似た形をしている。色は白とピンクのツートーンで、他の色は選べない。

 正面に操作パネルがあり、「コース」「スタート」「ストップ」「温度調節」等の操作を行うようになっているほか、現在の温度と、経過時間を表示するようになっている。この本体に、付属の専用ガラスビンを設置して使うようになっている。

 付属ビンは2個つくので、時間差で違う種類の果実酒を仕込むこともできるだろう。

 取扱説明書とは別に、「季々彩酒 基本のレシピ」というブックレットがつき、これには各種の果実酒の作り方が載っている。

取扱説明書とレシピブック。レシピブックには様々な果実酒、薬用酒のレシピが載る本体と付属のガラスビン。ビンの容量は約700cc

 さっそく、出盛りの青梅を買ってきて、梅酒を作ってみることにした。

 梅の実を洗い、水気をとって、爪楊枝でヘタを取る。これをガラスビンに入れ、氷砂糖とホワイトリカーを入れる。この工程は、普通の梅酒漬けとまったく同じだ。ただ、ビンの容量は700ccと小さいので、梅は7粒、氷砂糖は一握りほどしか使わない。ここが、少しおままごとっぽくて面白いところだ。

材料の青梅、ホワイトリカー、氷砂糖青梅のヘタをつまようじで取る漬け込み込み直後の梅酒。梅は7粒ほどの少量なので、何だかおままごとのようだ

 2つのビンに同じように梅酒を仕込んだ。片方は季々彩酒で超音波で漬け込みし、片方は普通に置いておいて、くらべてみようと思う。

 まず本体の内側に、水位線まで水を入れる。この水を介して温度を調節するらしい。水の量は100ccほどだろうか。この中に、用意したガラスビンをポチャリとセットする。

 操作パネルのコースメニューから「即製」を選ぶ。「即製」でない場合は、自分で温度設定をすることになっており、これは、柔らかい果実がくずれるのを防ぐために温度を弱めにする時に使うらしい。あとは「スタート」ボタンを押すだけである。

 スタートすると、炊飯器のスイッチを入れたときのような「ジー」という弱い音がして、現在の温度と、経過時間が交互に表示される。

本体にセットしたところ。漬け時間表示は「00」となっている漬け時間と現在の温度が、交互にパネルに表示される

 温度はだんだん上がり、制御温度である35℃を中心に、数度の幅で変化しているようだ。
超音波の作動は、5分間作動/5分停止を繰り返すそうで、その切り替えの時「コチッ」あるいは「チリチリ」という音がする。また、かすかにだが連続して「ジー」という音が続いている。

 普通の生活音の中ではまったく気にならないが、夜、静かにしている時にはかなりはっきりわかる音。ただ、間にドアが1枚あれば、まったく問題ない程度だ。

 翌日、丸1日経った段階で見比べてみた。右側のただ放置しておいた方は、氷砂糖の大半が溶けずに残っており、梅の色も青々しい。

 左は「季々彩酒」で超音波をかけたもの。梅の色がかすかに変わっているような気がする。しかしこれも、氷砂糖が少しだが溶け残っていたので、もう1日、「季々彩酒」にかけることにした。

 本体に入れた水だが、弱めの温度とはいえ丸1日熱を加えて、蒸発していないか少し心配だった。しかし、見たところ少しも減っていないように見えた。これなら2日や3日はまったく問題なさそうだ。

左が丸1日「ききさいしゅ~季々彩酒~」で即製したもの。右はただ漬けておいたもの。氷砂糖がまだ溶けていない本体内部の水は、丸1日動作後でも、ほとんど減っていない

 丸2日経過したものを味見してみることにした。35℃の人肌カンに保たれた梅酒はあまり嬉しくないので、いったん冷ましてからにした。

 飲んでみる。うん、梅酒だ。

 やや風味が固くて、ホワイトリカーがつんとくる感じもするが、梅酒と呼んで問題ない飲み物になっている

 次に超音波を当てず、放置しておいたほうのも飲んでみる(まだ氷砂糖が残っているが)。これはもう全然なじんでいない。ほとんどホワイトリカーのままだ。

さらに一週間、同条件で保存したもの。季々彩酒で超音波即製した左は、きちんと梅酒の味になっていたが、右はまだほとんどなじんでいない

 超音波の過程はここまでにすることにした。ただ漬けておいたバージョンとともに、いったん忘れ、約1週間後、もう1度味をみてみた。

 「超音波」バージョンのフタをあけると、けっこう華やかな梅酒の匂いがする。口に含むと、前回よりさらに梅のエキスが出てよくなじんでいる。かなりおいしい。お料理屋さんで「食前酒の梅酒でございます」とおしゃれなグラスに入れて持ってこられても特に文句はない、それほどちゃんとした梅酒になっている。

 2日間超音波を当てたことが、そのあと普通に漬け置いた過程にも、好影響を与えたらしい。

 ただ漬けて放置しておいた方は、梅の匂いは少し出てきたが、口に含むとツーンと来て、全然なじんでいない。ホワイトリカーに皮一枚だけ梅の風味を着せただけだ。いちおう氷砂糖もみな溶けたが、不思議に、その甘みさえあまり感じられない。まだ全然おいしくない。

 このあと、口直しもかねて、4年前に漬けた自家製の梅酒を飲んでみた。さすがは4年ものだ。トロッとしておいしい。香りも深い。

 しかし、「超音波」ものと4年ものとの差は、「超音波」ものと「放置」ものとの差より、ずっと小さい。きちんと梅酒の味がするという意味で、仲間だ。

 季々彩酒のレシピブックには、梅酒の他にもグレープフルーツ酒、りんご酒、レモン酒など15種の果実酒、にんにく酒、クコ酒など7種の薬用酒、さらにサワードリンク、果物シロップなどのレシピが載っている。

 読んでいて楽しそうだ。いろいろやってみたくなる。

 果実酒を漬けてみたいが、大量にできてしまうのは困るという人、性格的に気長に待てないと言う人、少しずついろんなものを試してみたいという人に、とてもおすすめだと思う。





2009年6月30日 00:00