そこが知りたい家電の新技術
販売累計100万台、日本で最も売れているスティッククリーナーとは
~エレクトロラックス 家電事業部最高責任者 Henrik Bergstrom氏にインタビュー
by 阿部 夏子(2013/10/1 00:00)
日本で最も売れているスティッククリーナー「エルゴラピード」
スウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックスが先日、新しいコードレススティック掃除機「エルゴラピード・リチウム」を発表した。エレクトロラックスは、世界150カ国以上で製品を展開する世界的なメーカーだが、今回の製品は世界に先駆けて、日本で発売した。これは、キャニスター型の紙パック掃除機「エルゴスリー」に引き続き、2回目のことで、同社が日本市場に注力しているのがよくわかる。
今回は、エルゴラピード・リチウムの発表に合わせて来日したエレクトロラックス スモールアプライアンス事業部 最高責任者 上席副社長のHenrik Bergstrom(ヘンリック・バーグストローム)氏に同社の今後の戦略について伺った。
――まずは、今回発売した「エルゴラピード・リチウム」について教えてください。
エルゴラピードの特徴である、棚にしまわずに使える、ハンディクリーナーとしても使えるという点はそのままに、使い勝手を向上させたモデルです。具体的には40カ所を改善しています。ヘッドやモーターといった大きな部品はもちろん、空気の流れや中のフィルターなど中の部品も変更しています。
――具体的にはどういった点が改善されたのでしょうか。
特にカーペットをかけやすくなりました。ヘッド後方部に搭載しているホイールサイズを大きくしたことで、カーペットにヘッドが沈みにくくなりました。実際手に取ってもらうと分かるのですが、ヘッドが思った通りの方向に自在に動くようになっています。持った時の角度や重みなど、使いやすさを一番重視しています。
またモーターファンを改善したことで、ダストピックアップ率(実使用に基づいたゴミの集じん率。欧州などで多く用いられている掃除機性能を表す数値)も向上しています。メンテナンスについても、4月に発売した「エルゴパワー」にも搭載している波形のフィルターを採用したことで格段に向上しています。
バッテリーに関しても、製品名通り、リチウムイオン電池DC18Vを搭載しており、約4時間の充電時間で、最大35分の連続運転に対応します。
――エルゴラピードは世界60カ国で発売しているそうですが、国によって本体構造やサイズを変えたりということはしていますか?
エルゴラピードに関していえば、設計はグローバルで同じものを使っています。例えば、アジアと欧州では、身長や体の大きさが違いますが、実は床からの手の位置というのは、身長が違っていても、それほど差があるものではないんです。そのため、体格によってサイズを変える必要はありません。
もちろん、国ごとに設計を変えるというのは、今後の考え方の1つとして可能性はありますが。
――デザインに関してはいかがでしょう。
エルゴラピード・リチウムでは前面にメタルを採用したり、高級感のあるデザインを採用しました。しかし、私たちが意識しているのは、トレンドよりも普遍的で変わらないデザインです。エルゴラピードシリーズと一貫性があるようなデザインを目指しました。本体カラーに関しても、よりトラディショナルな色を採用しました。
「操作性ではダイソンより優れている」
――エルゴラピードの新モデルを日本で最初に発売した理由を教えてください。
我々にとって、最も大きく、重要な市場だからです。エルゴラピードというのは、世界60カ国で販売しており、これまでに800万台を売り上げた、我々にとって非常に重要な製品。特に日本での販売実績は高く、2004年の発売以来、2014年には100万台の販売累計を見込んでいます。
日本のユーザーは、非常に要求が高く、機能性や集じん性能はもちろん、デザインにこだわる人も多いです。そこで、フィードバックを得られるというのも、我々にとって大きな利点になっています。
――日本では今、エルゴラピードのようなコードレススティッククリーナーの市場が非常に伸長しています。その代表格がダイソンのDC45シリーズですが、ダイソンの製品と比べた時のエルゴラピードの強みとはどういったところにあるのでしょう。
エルゴラピードの一番の強みはやはり操作性ですね。モーターを中心部に配置したことで、軽い力で操作できる。また、ハンディクリーナーを取り出して使えるという「2in1」構造や、ヘッドブラシに絡んだ毛をカッターで切断して、そのまま吸い込むというブラシロールクリーン機能、本体自立機能など、独自の機能も搭載しています。
ダイソンのことはもちろん意識していますが、我々も昨年掃除機100周年を迎えています。その経験から掃除機分野においては、操作性が一番重要であると認識しています。
また、コードレススティッククリーナーの人気は、日本を含むアジアだけでなく、ヨーロッパや北米などほかの国でもそのような傾向があります。手の届くところに掃除機をおいて、気になったときにいつでも使えるというのは、世界のトレンドになっています。
新世代のエルゴラピードはIFAではなく、日本で発表
――先日、ドイツのベルリンで開催された世界最大級のコンシューマー・エレクトロニックス・ショー、IFAでもスティッククリーナーが出展されていましたね。アメリカのネイルブランド「O・P・I(オーピーアイ)」とコラボしたエルゴラピードと同タイプの掃除機が出展されていました。あれは日本での発売予定はあるのですか?
あのモデルは、欧米市場向けに発売されたもので、日本での発売は今のところ考えておりません。IFAは、欧州市場をターゲットとしたショーなので、展示も欧州向けの製品がメインになっています。
――IFAのブースにおいては、スモールアプライアンスと呼ばれる家電製品の展示よりも、ビルトインのクッキングヒーターや、オーブンなど設備系の展示がメインになっていたように感じました。
はい。その通りです。実際、掃除機などのスモールアプライアンスの展示は、全体の1割程度でした。しかし、その場で、新しい家電製品の発表をしたのも事実です。キャニスター型の掃除機と、ハンディクリーナーの2つです。IFAは特にヨーロッパのメディアから注目されているので、そのような発表をする場所としては最適だと思います。しかし、新世代のエルゴラピードは、IFAではなく、ここ日本で発表しました。それほど、我々にとって日本は重要な市場であるということです。
今後も、日本市場を重要な市場と捉えて、引き続き、リサーチを続けていきたいと思います。
――本日はありがとうございました。