そこが知りたい家電の新技術

ダイソン初のロボット掃除機は「パーフェクトではないが、今ベストな1台」

ダイソンでロボット工学主任を務めるMike Aldred(マイクアルドレッド)氏

 昨年、9月の発表以来、熱い注目を浴びていたダイソン初となる、ロボット掃除機「ダイソン 360 Eye ロボット掃除機」が、当初の予定より約半年ほど遅れて、10月23日より発売された。日本先行発売という形でローンチされたこの製品、一体、他社のロボット掃除機とは何が違うのだろう。ダイソンでロボット工学主任を務めるMike Aldred(マイクアルドレッド)氏に話を聞いた。

開発期間17年間、投資額53.2億円

 ダイソンと言えば、言わずとしれた英国の掃除機メーカー。「吸引力」にこだわった掃除機を次々と発表し、日本では今や国内メーカーを差し置いて、掃除機のトップシェアを獲得する。吸引力と機能性にこだわってきたメーカーだけに、ダイソンのロボット掃除機と聞くと、少し意外な気がする。しかし、実際には17年も前から開発に取り組んできたという。

 「我々は、17年前からロボット掃除機の開発に取り組んでおり、私は、ロボット掃除機の開発をするために、1999年にダイソンに入社しました。当時、ジェームズ・ダイソン(ダイソン創業者であり、チーフエンジニア)からのオーダーは、フルサイズ製品に搭載されている技術をロボットに盛り込んで欲しいということでした」

 それから17年が経過して、他社からもロボット掃除機が次々に発売された中、なぜこのタイミングになったのか。

 「17年前というと、ロボット工学がうまれたばかりだった。我々にとって、重要だったのは、信頼できる安全なロボットを作ることでした。ダイソンで最初に作ったロボット掃除機は、ジェームズのリクエストには応えられていたが、ダイソンの体質として、常にレベルアップを求められる。また、当時はセンサーが非常に高額だったため、本体の価格も高くなってしまった。ダイソンという会社は単に商品を作るのではなく、常に最高の商品を作ることを目指しています。長い開発期間の間、ビジョンシステムを始め、バッテリーや出力、サイクロンシステムの小型化などあらゆる面を見直してきました」

ダイソンで最初に作ったロボット掃除機。サイクロンシステムを中央に備えたダイソンらしい製品
開発中に作成した製品のモック

 完成したロボット掃除機は、まさにダイソンらしい製品だ。独自のサイクロンシステムを搭載しているため、一般的なロボット掃除機に比べて本体は高い。上部に配置した360°ビジョンシステムで、室内を撮影、周囲環境を把握し、その情報を基に詳細な間取り図を構築し、効率良く室内を掃除するという。

 また、その動き方も独特だ。直線に進むのではなく、部屋の中央から小さい四角を描く様に動く。本体周囲の小さい四角を掃除し終わったら、つぎに一回り大きい次の四角をなぞっていく。

「ダイソン 360 Eye」
製品裏側
機体幅一杯に配置されたブラシ
一般的なロボット掃除機の約4倍の吸引力を誇るという
ダストボックスを取り外したところ
一般的なロボット掃除機と比べたところ。直径は小さいが、高さがある
ソファやベッドの下などに入り込んだときに点灯するという、本体側面のライト

 実は、「ダイソン 360 Eye」が発表された約1年前から部屋が暗いと動作しないのではないかという噂があった。ダイソン 360 Eyeは、カメラで室内を撮影して進むため、室内が暗いと、画像が認識できないのではないかという憶測だ。

 「確かに暗闇だったら、動かない。しかし、本体側面にはIRセンサーを搭載しており、室内が真っ暗ではなく、少しの光があればカメラの露出を長くすることで、撮影を続けることができます。また、ソファやベッドの下などに本体が入り込んだときは、本体側面のライトが点灯します」

 真っ暗ではないにしろ、室内が薄暗いと本体動作にもなんらかの影響はあるのだろうか。

 「ナビゲーションシステムには、ほとんど影響がない。しかし、室内が暗いと動作が少しゆっくりになるということはあるでしょう」

掃除機能ありきの製品

 「ダイソン 360 Eye」は、従来のロボット掃除機とは違うアプローチが目立つ。開発中、ベンチマークとした製品はなかったのか、という質問にははっきりと「ない」と答える。

 「我々は、掃除機メーカーとして、掃除機能ありきのロボットを目指してきました。既に発売されている製品のうち、満足な掃除機能が搭載されている製品はなく、掃除するための製品として機能していない。きちんとした掃除ができるのは、ダイソンのロボット掃除機だけだと考えています」

一般的なロボット掃除機で採用されているサイドブラシは搭載していない
充電ステーションもこれまでとは違うデザイン
コンパクトで、軽い。これはジェームズ直々のリクエストだったという

 一方、ダイソンのロボット掃除機は、他社のロボット掃除機と異なり、円形の本体からはみ出して、室内の隅や角を掃除するサイドブラシは搭載していない。部屋の隅や角は掃除機できるのだろうか。

 「ダイソンのロボット掃除機では、部屋の隅は掃除できません。しかし、それは他社製品も同様です。部屋の角をきれいに掃除できるロボット掃除機というのは、存在しません。サイドブラシは全く機能しておらず、横にゴミを寄せているだけ。我々が見る限り、パーフェクトなロボット掃除機は存在しない。その意味では、ダイソン 360 eyeも、現時点でベストな製品ではあるが、パーフェクトな製品ではありません」

 今後、パーフェクトに近づくためにはどのような改良が必要になるか。

 「それは、カスタマーが教えてくれるでしょう。実際に使ったユーザーがどう思うか。フィードバックをもとに改良を重ねていきます」

 今回の製品は日本先行発売となる。ダイソンにとって日本はどのような市場なのだろうか。

 「ダイソンにとって、日本は素晴らしい市場です。日本人は新しい機能が好きで、市場は無限の可能性を秘めています。今回、ダイソン初のロボット掃除機を発売するにあたり、日本市場でのリサーチはとても重要なものでした。日本市場を調査したところ、騒音の問題や、充電時間など、新たな改良すべき問題がでてきました。発売時期が当初の予定より遅れた理由の1つは、これらの改良のためです」

 年末を前に、急遽発売が発表されたダイソンのロボット掃除機。これまでのロボット掃除機とは異なるアプローチを搭載した製品で、業界からの注目度も高い。実際に自宅で使ってみてどうなのか、製品の評価はこれからだ。家電 Watchでは、「ダイソン 360 Eye」のレビューを執筆中。そちらも是非、注目していただきたい。

(阿部 夏子)