藤山哲人の電力自由化対策室

第3回:プランや電力会社選びで悩んでいるヒト必見! 乗り換えない方がお得なヒトもいる!

 電力自由化というと、なんだかとっても電気代が安くなりそうに感じてしまう。確かに月に何千円も得をする場合もあるのだが、「え? たったこれだけ?」というヒトも多数いる。衝撃的なのは、契約を変更すると電気代が上がってしまうヒトもいるということだ。

 ここでは乗り換えてはダメなヒト、乗り換えを検討した方がいいヒト、乗り換えないと損をするヒトの3タイプを見分ける方法を説明しよう。また乗り換えを検討した方がいいヒトに、オススメの電気代比較サイトも併せて紹介する。

東京電力から乗り換えなくても電気代が安くなる?

 電力自由化というと真っ先に東京電力からの乗り換えを思い浮かべてしまうが、東京電力の新しいプランに乗り換えるという自由化もある。月々の電気代の請求書を見ると、右上に「従量電灯B(C)」と記載があるが、これが従来型のプランだ。

プランは右上にある「ご契約種別」の欄にある。その下の「A」と付いた数字が、契約のA(アンペア数)。従量電灯Cの場合は、数字のあとがkVAになっている

 ここに新しく「追加」されたのが、次の新しいプラン。

スタンダードプランとプレミアムプラムが追加された

 「スタンダードプラン」は、従来の従量電灯B(C)にポイント還元が付いたものと言っていいだろう。「プレミアムプラン」は電気を多く使う世帯向けで、どんなに電気を使わなくても毎月9,700円(400kWh相当)かかるが、それ以上使った場合の割引率が高くなるというもの。ポイント還元や付帯サービスも充実した、まさにプレミアムなプランだ。

 それ以外にもオール電化向けや、「昼は割高、夜は割安」になるプランなどもあるが、基本は従量電灯B(C)に加えスタンダード&プレミアムの3パターンと考えていい。ちなみに4月から電力自由化が始まっても、プランはおろか電力会社すら選び切れず、電力会社を切り替える契約をしなかった世帯は、そのまま従来式の「従量電灯B(C)」が適用される。

 つまりこれまでどおり東京電力から電気を買う場合でも、スタンダードやプレミアムプランに変更します! と申請しなければ、従量電灯B(C)が適応されてしまう。割引率が高いプレミアムプランがピッタリという世帯は、この記事を最後まで読んで、プランを切り替えることをオススメする。

独身~会社員ファミリーは他社に乗り換えても劇的に安くならない

 すごく電気代が安くなりそうな「電力自由化」。でも実際に試算してみると、「え? こんなもの?」「これって月じゃなくて年間の割引額!?」というヒトも多くいるはず。また電力会社を乗り換えたり、プランを変更すると、かえって割高になってしまう場合もあるので注意しよう。

 まずほとんどの場合、東京電力の「従量電灯B」から乗り換えなくていいのが「一人暮らし」世帯だ。またこれに準ずるのが「子どもなしの共働き」世帯。モデルケースとなるのは、次のような場合。

【一人暮らし】
契約アンペア数30A
世帯の人数1人
月々の電気代(平均)5,500円
電力量換算230kWh程度
生活パターン昼間はほとんど電気を使わず、夜~朝にかけて消費

 要は昼間は会社や学校、バイトなどでほとんど家を空けていて、昼間電気を使うものと言えば冷蔵庫とHDDレコーダの待機電力ぐらいというヒト。東京電力の資料が一番分かりやすく、正直(笑)なので掲載しておこう。

東京電力のホームページ掲載の「各料金プランの目安」

 消費電力が300kWh未満の世帯は、最低限の電力しか使っていないということで、もともと電気代が安く設定されている。電気代の請求書を見れば分かるとおり、現在の電力の単価は3段階に分かれていて、1段階目は安く、3段階は高く設定されているのだ。

請求書左側に記載されている「1~3段料金」。1段目は単価が高く、3段目は低く設定されている

 電気は一般企業が供給するものの、もはや欠かせない社会的インフラなので、最低限の電力では利益を出さない(というか、おそらく赤字だと思う)価格設定。税金でいう控除額の範囲と考えるといいかもしれない。

 なので該当する世帯が電力会社を乗り換えると、かえって割高になるため、何もアクションせずに従来の「従量電灯B」プランのままにしておくのがいい。ただし、インターネットやその他のインフラとセット割で、従来の電気代と相変わらずトントンという場合は、切り替えてみる価値はあるかもしれない。

 試しに試算してみたのは、東急パワーサプライ。インターネットの料金は4,200円節約できるが、電気代だけで見ると、実は年間で760円程度しか安くならない。月額にすると63円。つまりネットはスマホのLTEで十分というヒトは、同時加入の縛りであるインターネット代が無駄になってしまうのだ。

「東急パワーサプライ」のサイトで試算。年間の電気代節約額は、わずか760円だ

 また電力会社によっては、消費電力量が少ない場合は契約できない場合もあるだろう。ただし「ウチでは契約できません」といわれるのでなく「乗り換えていただくと、かえってお高くなりますよ」とやんわりお断りされるだろう(笑)。

 同じような理由で、「電気代だけ」で見ると乗り換えしないほうがいい場合が多いのは、次のケース。

【サラリーマン世帯の3人家族で奥さんはパートタイム】
契約アンペア数40A
世帯の人数3人
月々の電気代(平均)8,500円
電力量換算340kWh程度
生活パターン夕方から子どもが学校から帰り、夜~朝にかけて家族がそろい電力を消費

 一人暮らし世帯よりは電力を使うものの、子どもが学校に通い、お父さんは会社勤め、お母さんは週の半分ほどパートに出ているというような世帯だ。昼間に電気を使うのは、冷蔵庫と録画機器の待機電力に加え、子どもが学校から帰ってから、お母さんがパートを休みの日のエアコンとテレビ、電子レンジ程度。

 このような世帯も電気代だけで見るとあまり安くはならない。ただし、インターネットやガソリン代、ガスや電話代とセットにすると、お得になるプランが続々出てくる。とはいえ、今利用しているインターネット接続会社(メールアドレスなどが変わるなど)やガソリンスタンド(近所にその会社スタンドがないなど)、ガス会社や電話会社を乗り換える手間やリスク、要不要もあるので注意が必要。

セット割のリスク

 積極的にインフラ代を安くしたいというヒトは、後述のサイトなどを参考にして、自分に最適なプランを選び、グロスで安くすることをオススメする。ただそれが面倒な場合は、従来の「従量電灯B(C)」(ノーリスク)か東京電力の「スタンダード」(割引率は低いがリスク最小)プランをオススメしておこう。

じっくり検討すべきは個人事業主と高齢者&子育て世帯

 電力自由化の恩恵を最も受けられる世帯は、自宅が仕事場という個人事業主、また常にエアコンを運転し誰かが在宅しているという高齢者夫婦や未就学児がいる子育て世帯だ。

 モデルケースとしては、次のようになるだろう。

【個人事業主や24時間在宅世帯】
契約アンペア数50A以上(A契約ではなくkVA)
世帯の人数2人以上
月々の電気代(平均)17,000円以上
電力量換算340kWh程度
生活パターンほぼ1日中エアコンを運転しながら生活している世帯

 まず確実にプランの変更や電力会社を検討した方がいいのは、月の電気代が17,000円以上の世帯。普通の家庭ではあまり行かない額だが、エアコンをほぼ1日中運転していたり、2部屋で使っている場合、24時間稼働しているパソコンが何台かある個人事業主などなどだ。電気ポットや温水便座なども消費電力がかさむ。

月の電気代が17,000円を超えた請求書

 もし月々の電気代がこの額を超えて(消費電力量換算で640kWh以上)いる場合は、プラン変更はマスト、電力会社の変更も真剣に考えたほうがいい。

 先に紹介したサラリーマン世帯より高く、月10,000円以上かかっている場合も、プラン変更は必須だろう。加えて他のインフラとセット割を使うと、グロスで千円以上は安くなるはずだ。

電気代が10,000円以上の世帯もプラン変更を検討した方が良いだろう

1分でオススメの電力会社とプランが分かるWebサイト

 さて自分は今のままのプランでいたほうがいいのか? プランを変更した方がいいのか? はたまた電力会社を乗り換えたほうがいいのか? というところまでは、お分かりいただけただろう。

 次に電力会社とプランを選ぶことになるが、参入企業が多く、それぞれにいつもプランを持っているため選択肢が膨大。しかも提携先のポイント、提携インフラ各社、割引率などまちまちで、自分にピッタリのプランを探すのは、金脈を探し当てるようなもの。

 そこでオススメしたいのが、インターネットでピッタリの電力会社とプランをオススメしてくれるサービスだ。東京電力管内だけでなく全国的に検索できるため、みなさんにオススメしたい。

 中でもオススメしたいのは、次の2サイト。

エネチェンジ

https://enechange.jp/

電気比較サイト「エネチェンジ」のサイト

 もともとイギリスの電力自由化で同様の世帯と企業をマッチングするサービスを展開してきた会社。すでに実績があるだけでなく、電力ビッグデータの解析をシステムに取り込んでいるとあって、マッチングの信頼性も期待できる。面倒なことは苦手なのでシステムにオススメをお任せして選んで欲しいというヒト向け。

価格.com

http://kakaku.com/energy/

「価格.com」の電気料金比較ページ

 日本独自の老舗価格比較サイト。より細かいプランまで候補にしてくれる。細かい部分は手動で絞り込んでいくので、必要なインフラを取捨選択したり、ビッグデータを元にした標準的な家庭とはちょっと違うハズという場合は、こちらがオススメ。

どちらのサイトも入力項目は少なく、1分もあれば候補を選んでくれる。いずれにしてもフツーに生活したときの電気代の請求書を最低1枚、ベストは1年分用意して欲しい。

 エネチェンジを例にとってみると、こんな感じだ。

1ページ目は基本的な情報。自宅の郵便番号と現在の電力会社、を選ぶ。次に用意した請求書から消費電力に関するデータを入力する
次のページで入力するのは生活スタイル。家族の人数やガスとの併用、昼間に在宅しているか否かを指定。たったこれだけで入力終了
診断結果は、こんな感じで表示される

 おすすめ順は、電気代だけでなくポイント還元や他のインフラとのセット割など、さまざまな割引を感覚的に選んでいけるのが特徴だ。もちろん単に電気代が安い順に表示することもできる。

次回予告~変動アンペア契約でお得になる場合も!?

 これまで慣れ親しんできた30A、50Aというアンペア契約。この契約は夏や冬にエアコンをフル稼働させても、ブレーカーが落ちないようする契約だった。つまり過ごしやすい春や秋は、それほど電気を使わないので、無駄な基本料を払ってきたわけだ。

 しかし電力自由化以降で導入される、変動アンペア契約を利用すると、昨年の実績に準じて自動的に契約アンペア数が変わり、無駄な基本料を払わなくていいという契約もできる。ただし、なかなか難しいので、次回はそこを詳しく説明して、どんなヒトにおすすめできるのか? などを解説していく予定だ。

藤山 哲人