データで読み解く家電の今

高付加価値なエアコンは冬に売れる。夏だけじゃないエアコン商戦

販売実績を基にしたデータから、国内家電市場の実態を検証(協力:GfK Japan)

 今回取り上げるのは「エアコン」。商戦期としては「夏」というイメージをお持ちの人が多いと思うが、冬にも底堅い暖房需要があり、冬場の暖房訴求に取り組むメーカーも増えてきている。GfKジャパン 行村真実子アナリストによれば、「年間のエアコン販売台数は夏場(6-8月)が過半を占めるが、各社とも暖房訴求の強化や寒冷地向けモデルのラインナップ拡充などが見られ、今後の冬場の拡大に期待がかかる」という。

富士通ゼネラル「nocria X」2017年モデル

 家電量販店の動向をみると、エアコンの販売は2013年をピークに減少傾向。'14年夏に発生したエルニーニョ現象は'16年春には終息したと見られ、'16年(1-11月)の販売台数は前年比3%増と回復基調にある。

 冬場は電気・ガス料金の増加が気になる季節だが、エアコンの省エネ性能は年々向上しており、'15年に販売されたモデル(冷房能力4kWで⽐較)の年間消費電力量は'09年のモデルから1割下がっている。「消費電力量が下がっているだけでなく、人感センサーや気流コントロールといった機能を搭載したモデルが増加しており、快適性も向上している。室内の人の有無や位置を把握し風量や風向きを調節する人感センサー搭載モデルの数量構成⽐は'16年(1-11月)で全体の4割強に達した。また、各社はフラップの数やセンサー技術を向上させており、部屋の温度を変えるだけでなくいかに快適に過ごせるかといったことに注⼒していることがうかがえる」(⾏村アナリスト)という。

ダイキンルームエアコン「うるさら7 Rシリーズ」2017年度モデル

 こうした各社の取り組みもあり、冷房能力クラス別の販売をみるとここ数年構成比に際⽴った変化はないものの、平均価格(税抜)は'11年の89,700円から、'15年には96,800円、さらに'16年(1-11月)には98,000円まで上昇している。

パナソニックのエオリア「CS-WX407C2」は、ダブル温度熱交換器を搭載

 機能や性能の向上のほか、本体サイズなどにも変化がうかがえる。「昨今の住環境(マンションなどの集合住宅)に合わせ、ハイサッシやカーテンレールの上など限られたスペースにも設置できる高さの低いモデルが増えている。ただし、その分奥⾏きが広いモデルも増えている」(行村アナリスト)。

 また、夏場(6-8月)より、冬場(10-12月)のほうが付加価値の高いモデルの販売が増加する傾向にあるという。「エアコンの主な買い替え理由は『故障・不調』だが、冬はエアコン以外の補助暖房を使用するケースも多いため比較的余裕をもって購入を検討しているとみられる。この時期の購入者は、暖房だけでなくオールシーズン使⽤する前提で付加価値の高いモデルを買いに来ている。夏は2.2kWなど小部屋で使用されるモデルが売れ筋となる⼀⽅、冬はリビングなどで使用される4kW以上の付加価値の⾼いモデルの販売割合が高くなる」(行村アナリスト)という。

日立「ステンレス・クリーン 白くまくん Xシリーズ」

出典「全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ」