データで読み解く家電の今

実は“縦型”が伸びている洗濯機市場。大容量トレンドで平均単価上昇

販売実績を基にしたデータから、国内家電市場の実態を検証(協力:GfK Japan)

 各社が力を入れているドラム式に加え、デザイン重視の縦型など、様々な選択肢が増えてきた洗濯機市場。洗浄方法の工夫やシワになりにくい乾燥機能など毎年のように機能強化が図られているが、市場のトレンドはどうなっているのだろうか? GfK Japanのデータから、国内洗濯機市場の現状を探ってみよう。

パナソニックのななめドラム洗濯機「Cuble」

 国内洗濯機市場の販売台数は、2011年以降500万台を超え、それ以前より高い水準で推移していた。しかし、こうした需要の前倒しをうけ、'15年は500万台を下回る480万台となった。

 洗濯機をタイプ別に分類すると、主に縦型、ドラム式、二槽式の3タイプとなる。各社の上位モデルの多くがドラム式で、宣伝などにも力が入っているように見える。しかし、数量シェアにおいては、横ばいからやや減少傾向だ。ドラム式の数量構成比は、'11年の14%から、'15年は11%と減少。二槽式はほぼ4~5%で変わらず、伸びているのは縦型で、'11年の82%から'15年には85%となった。

東芝の縦型洗濯乾燥機「AW-10SV5」
ハイアールの二槽式洗濯機「AQW-N350」

 ドラム式の伸びが止まっている理由について、GfK Japanの行村 真実子アナリストは、「縦型と比べドラム式は本体サイズが大きいため、設置スペースを要し、搬入自体が困難な場合も考えられる。価格面では、同じ容量でも縦型乾燥機能なしの方が4割ほど安く、大きな差がある。乾燥機能の代替手段は、天日干し以外にも浴室乾燥や除湿機などを使用しての部屋干しなどもあり、ドラム式ならではの“乾燥の仕上がりの良さ”は使用してみないと分かりづらいことも難しい点」と分析している。

 こうした中、洗濯機の平均単価は上昇している。'11年には56,000円だった税抜き平均単価は、'15年には63,000円まで上昇した。

 この単価上昇を支えているのが、「大容量モデル」の増加だ。

 販売台数の8割以上占める縦型では、'15年では8kg以上が35%を占め、5年間で13%拡大した。ここ最近では10kg超の伸長が顕著で、'11/12年には1~2%だったが、'15年には6%まで拡大している。

 また、従来から大容量モデルを中心に展開しているドラム式も10kg以上のラインナップが増えており、2015年ではドラム式の販売台数の6割を占めるまでに拡大した。

 この傾向は16年も続いており、1-8月の洗濯機市場規模は、数量ベースでは前年並みだが、金額ベースでは単価上昇により前年比6%増となった。

 GfK Japan行村アナリストは、大容量化トレンドについて、「共働き世帯や単身世帯の増加もあり、『まとめ洗い』で手間が軽減できる大容量クラスに人気が集まっている。また、布団やカーテンなど大物を洗いたいという清潔志向もあると考えられる。大物洗いのニーズは高いとみられ、これを示すように、家庭にはなかなか置けない大型洗濯機や乾燥機があるコインランドリーは営業施設数が増加傾向にある。Wi-Fi完備、女性専用、カフェ併設など利用環境が整ってきていることも魅力かもしれない」と分析している。

出典「販売実績を基に推計した国内市場規模データ/GfK Japan調べ」