3つのルールで節電の基本をおさらいしよう

~節電本番の7月まであと半月
by 伊達 浩二

中部/関西/九州でも節電が必要に

電力10社のサービス地域。現在、東京/東北/中部/関西/九州の5社が節電を要請している(東京電力資料)

 東日本大震災とそれに伴う原発の事故、中部電力浜岡原子力発電所の停止と、それに伴う他の原子力発電所の運転再開の遅れにより、中部/関西/九州の3つの電力会社でも、節電が呼びかけられる事態となった。

 すでに、東北と東京の2つの電力会社の地域の人々は、5月から夏期の15%節電が呼びかけられていた。震災直後の計画停電から数えれば、約3月間の余裕があったので、節電の準備は進んでいるのだ。首都圏では扇風機が飛ぶように売れているし、クールビズも実行中だ。弊社もそうだが、オフィスの照明器具から蛍光灯が半分抜かれている例も多く見かける。

 しかし今回のように、節電が要請されている7月まで半月しかない状態で、「来月から節電してください」と言われても、何をどうすればいいのかわからないという方も少なくないと思う。

 ここでは、なぜ、そうするのかとか、どうしてそうなのか、という話は最低限にして、とりあえずこういうことから始めると節電できますよ、というお話を短めにまとめてみよう。ごく基本的なルールなので、すでにご存じだったり実行中という方も多いと思うが、おさらいと思ってお付き合いいただきたい。

基本ルールは3つ

 では、いきなり本題に入ろう。ルールは3つだけだ。

● 人のいないところでは、電気器具を使わない

 人の居ない部屋では、照明器具、エアコン、TV、パソコン、空気清浄機などの電気製品は、電源スイッチをオフにする。

 もちろん、冷蔵庫のように、人がいないからと言って電源を切っては困るものは、この限りではない。

 ただ、ちょっと意識してみると、誰もいない場所で、誰も使っていないのに、電気を使っているという場面は、よくあるものだ。

 いつも点いていた廊下やトイレの灯りを、人が使うときだけ灯すというような工夫で良い。センサーライトなどを導入すると、手間もかからずに実行することができる。

● 長い時間電気を使う電気製品は、消費電力を抑える工夫をする

夏の日中の家庭における消費電力。(資源エネルギー庁資料)

 長時間使用する電気製品の消費電力を少しでも減らすことができれば、大きな節電効果がある。

 代表的な例は冷蔵庫だ。冷蔵庫は365日24時間動いているものだから、少しでも消費電力が減ると、節電効果が大きい。まず、温度設定を「強」から「中」または「弱」に変える。また、食品を詰めすぎないようにしたり、扉の開閉回数を減らすのも有効だ。

 エアコンは、フィルター掃除を行ない、設定温度を数度高くすることで消費電力が減る。健康に支障のない範囲で、扇風機に置き換えるという手もある。

 また、照明器具は、白熱電球を使用していたところを電球型蛍光灯やLED電球に置き換えることで、電気を使う量が少なくなる。もっと簡単な方法では、2つ点けていた照明器具を1つにするだけでも良い。

● 昼間は電気製品を使う作業をできるだけ避ける

 今回の節電は、何が何でも電力を使うなという「総需要抑制型」ではなく、夏の平日の昼間は節電してほしい、という「ピークシフト型」の要請だ。

 つまり、世間が仕事をしていて、エアコンをバリバリ使っているような時間帯(13時~15時ぐらい)には、あまり電気を使わないでほしい、というお願いだ。

 家庭を例にすると洗濯、掃除のような電気製品を使う作業は、できるだけ平日の日中で消費電力がピークになる時間帯は避けるようにしたい。特に、洗濯機や食器洗い乾燥機などの乾燥機能は消費電力が大きい。使う時間を朝や夜にするとか、乾燥機能だけ使わないなどの工夫が有効だ。

3カ月間続くので、無理をしない

 電力会社によって多少の差はあるが、今回の節電は7月から9月まで3カ月、1年の四分の一という長い期間に及ぶ。

 したがって、あまり負担の多い節電方法は続けることが難しい。ダイエットと同じで、極端な方法は長続きしない。絶食ではなく、食事をコントロールするしかないのだ。

 たとえば、エアコンは絶対に使わないのではなく、健康に差し障りがない範囲で設定温度を上げるだけでよい。また、電力に余裕のある夜間の就寝時にエアコンを使うのはかまわない。寝苦しい熱帯夜にエアコンを使わずに不眠や不健康になるよりは、部屋を冷やしてちゃんと寝た方がずっと良い。

 ここに書いた方法以外には、節電の方法はたくさんある。しかし今回求められている15%の節電であれば、ここに書いた方法をきちんと行なうことだけで、十分に達成することができる。

 もっと詳しい節電の方法を知りたい方は、以前に掲載した『政府公認の節電対策ガイド「家庭の節電対策メニュー」を読む』や、『効果的に節電する方法を考える【増補版】』などの記事をご覧いただきたい。

節電は、自分のためにも、人のためにもなる

各電力会社間の接続概念図。沖縄を除くと、相互に電力を融通できる仕組みになっている。少し前の資料なので、送電容量はこの図より大きくなっている(東京電力資料)

 節電をすると、3つ良いことがある。

 1つは、みんな節電をして電力需要が下がることで、予想できない大規模停電という大きな危険を避けることができる。また、東京電力と東北電力では計画されている計画停電を避けることができる。

 2つめは、電気代が安くなる。家族構成やライフスタイルにもよるが、これまで意識していなかった人は、思ったよりも効果があることにびっくりするだろう。

 そして3つめは、人に電気をあげることができる。今回は全国的に電気が足りないので、あなたが使わなかった電気は、余裕のある電力会社から、余裕のない電力会社へと送られる。地理的に離れている沖縄電力を除く9つの電力会社は、相互に電気を融通しあえる仕組みになっているのだ。

 たとえば、中国電力を使っている人が節電をして、中国電力に電力の余裕ができれば、その電気は関西電力や中部電力に送られる。もし、その送電で関西電力に余裕ができれば、余った電気は東京電力に送ることができる。そして東京電力に余裕ができれば、被災地であり、電気を一番必要としている東北電力に電気を送ることができる。

 あなたが節電して使わなかった電気は、どこかの誰かが節電して分けてくれたものかもしれない。そして、あなたが使わなければ、その電力は誰かに譲ることができるのだ。

 この夏は、自分の健康や生活に支障が出るほど節電に努める必要はないけれど、ちょっとした工夫で、人のためにできることがあるのだと思えば節電も楽しくなる。節電が要請されている7月まであと半月。少しずつ節電の工夫を重ねて、本番に備えたい。





2011年6月15日 00:00