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ハーマン・ミラー「Leaf Light(リーフライト)」
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ハーマンミラーは1923年の創業以来、優れたデザイナーと手を組み、数々の息の長い名作を世に送り出している。1994年に発売され、既に14年経た今でも「オフィスチェアの代名詞」といっても過言ではない“アーロンチェア”を世に送り出した企業だ。ハーマンミラーは「そこに発生する問題を解決するためにこそ、デザインはある」という哲学を持ち続けている。「時代を先取りする」のではなく、「時代を創造する」または「未来を創造」してきた企業である。そんなハーマンミラーが初めて照明器具を手がけた。
今回はその照明器具をご紹介したい。製品名は“Leaf Light(リーフライト)”。デザインは、イヴ・べアールという、アメリカ人の新進気鋭のデザイナーが手がけた。彼は、2007年にはタイムズ誌上、「地球上でもっとも先見の明のある25人」としても選ばれていて、貧しい国の子供たちにも行き渡るように開発されたノートパソコン“100ドルラップトップ”なども手がけた、社会的意識も高いデザイナーである。そんな彼が、自然からインスピレーションを得たという有機的な造形に、環境を意識した最新のテクノロジーが集約された照明器具をハーマンミラーと共同で開発・デザインした。
大きさは、デスクスタンドとして使用すると仮定して、2枚のブレードの角度を直角にした場合、585×220×560mm(幅×奥行き×高さ)となる。カラーバリエーションは、ホワイト、ブラック、レッド、ニッケル、ポリッシュドアルミニウムの5色。今回購入したのはポリッシュドアルミニウム色。メーカー希望小売価格はオープンプライス。楽天市場ででは、98,000円前後で購入できる。
● 最小限のパーツで構成されるライト
本体は、細身の葉のような2本のアッパーブレードとロウアーブレード、ベースと、3点で成り立っているシンプルな構成。アッパーブレード部に20個のLEDが埋め込まれ、その先端には可動の際に触れるツマミがある。ベースにはハーマンミラーのロゴマークを利用したスイッチと、光をコントロールする溝が刻んであるだけ。ベースとブレードを繋ぐためのネジはおろか、ヒンジを調整するビスさえない。また薄いブレード上にデザインと機能を両立させた美しい配線を実現している。
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シンプルなパーツで構成され、デコラティブな装飾も押し付けがましいデザインもない
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ハーマンミラーのロゴを模したメインスイッチのあるベース
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ヒンジを調整するネジもなく、配線も葉の葉脈のような仕上げとなっている
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● 可動部分がとてもスムーズ
ベースのハーマンミラーのロゴマークのスイッチを手前にして、ブレード全体が左右に最大180度回転する。回転させる時には、アッパーブレードのツマミを持つ。軽すぎず重すぎず、とてもスムースに回転し、止めたいところでピタリと止まる。
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右に向けたところ
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中央にしたところ
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左にしたところ
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ロウアーブレードを傾ける際には、ベース部分をある程度しっかりと押さえ、ツマミを持って行なう。全体の可動角度は45度程度だが、この角度の幅がデスクスタンド以外の用途にも役に立つ。
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ベース部分に配された可動部分さえも、極力見せないデザインとなっている
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ロウアーブレードをこの傾きにして、アッパーブレードを机上面に水平にした時、ライトと机上面の距離は約53cm
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2つのブレードの可動範囲は、ブレードを折りたたんだ状態から垂直位置まで約210度の範囲で調整できる。この時もベース部分をある程度しっかりと押さえ、ツマミ部分を持って行なう。この角度の範囲を利用し、デスクスタンド以外の利用もダイナミックに対応する。
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LED部分が2つのブレードに挟まれた形となり、ブレードの隙間から光があふれ出す。この時の高さは約520mm
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間接光としての応用例。光源が一切見えず、ライトの側面とベース近辺のみが照らしだされる
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間接光源として壁面から天井面までをを照らしだす、フロアライトとしても利用できる。この時の高さはベースから頂点まで約950mm
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輝度が十分得られるので、壁面までの距離を考慮して設置する事により、よりインパクトのある光を空間に演出できる
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● “touch”~触れる・なぞるだけのスイッチ&コントロール
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触れるだけでライトのON/OFFが行なえるメインスイッチと、触れる、なぞる事で光量と光のトーンを調節する溝
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次に、ベース部を見てみよう。「パチンッ」「カチッ」と、音の出るようなスイッチはなく、タッチ式のスイッチ、コントロールがあるだけだ。
中央に配された「ハーマンミラーのロゴ」がON/OFFをつかさどるメインのスイッチだ。ロゴマークに触れる度にライトのON/OFFが行なえる。ONの際には瞬時に「パッ」と点灯し、OFFの際には2秒弱時間をかけてスーッとライトが徐々に消える。ちなみに、消灯する直前の明るさを記憶している。
ロゴマークを取り囲むように配された2つの溝が光量と光のトーンを調整するための溝だ。右側の溝は光量を調節する溝。右に行くほど明るく、ロゴマークに近づくほど暗くなる。左側の溝は光のトーンを調節する溝。左に行くほど涼しげな青白い光(クールライト)となり、ロゴマークに近づく程電球色のような暖かな色合い(ウォームライト)となる。使用する人の様々な背景、用途に応じて、最適な明るさと色味をコントロールする。
● 調光してみよう
どのぐらいの幅で光の量がコントロールできるのか。実際に机上に白い紙を置いて、光量が見えやすくした。画像は見た目の印象に近づくように調整している。光のトーンはクールライトに固定した。ライトは机上面から約50cmの位置にある。
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コントローラーの一番右の位置をタッチした時。明るさはなんと1,240ルクス。細かな仕事にも十分な照度が得られている
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コントローラーの中間の位置をタッチした時。明るさは約640ルクス。このぐらいでも本を読んだりするのに十分な明るさだ
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調光を一番絞った時の画像。明るさはほんの7.5ルクス。ロウソクの明るさ(約10ルクス)よりも一段階さらに絞り込んだ明るさだ
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細かい作業に適した明るさから、睡眠時、まったく邪魔にならないぐらい絞り込んだ、ほのかな明るさまで無段階で調光できる。画像はクールライトで撮影したが、ウォームライトの時はクールライトより10%ぐらい輝度が落ちる。
これまでさまざまな照明器具を見てきたつもりだが、ここまで光量に幅のあるコントロールが可能な照明器具は初めてである。
● 光のトーン(色温度)を調節してみよう
この機能は世界初となる。細かな作業に適した昼光に近い色温度(色温度は高い)から、くつろぎに適した電球色(色温度は低い)のような温かみのある色温度を、このリーフライト一台でまかなえてしまう。後に触れるが、この撮影の際、色温度の推移がわかりやすいように光量を50%弱絞り込んだ状態で撮影している。
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コントローラーの一番左の位置をタッチした時。涼しげな昼光に近い色合いとなっている。仕事をしたり、細かな作業をする際に適している色温度である
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コントローラーの中間の位置をタッチした時。光の色に少し温かみが加わり、青みが消えている
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トーンコントローラーの一番右端をタッチした時。まさしく電球の色合い。くつろぎの灯りとして最適な色温度だ
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色温度も無段階でコントロールできる。仕事モードからくつろぎモードまで、たった一台で、特に難しい操作も器具を変える事なく、その溝を指でなぞるだけで簡単に光のトーンがいとも簡単に実現できてしまう。まさしく革新的だ。
● 光のトーンをコントロールできるその仕組み
光のトーンを変えるために用いられている光源をお見せしよう。アッパーブレードの裏側には20個のLEDが規則正しく並んでいる。縦3列に対して、それぞれの列に7灯・6灯・7灯という構成だ。
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100%点灯から50%点灯までは全てのLEDが点灯し照度を作り出している。クールライトLEDとウォームライトLEDのそれぞれの光量を調節して、色温度のコントロールを実現させている
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クールライトLEDの輝度はウォームライトLEDの輝度より高い。そのため、色温度を高めに(クールライト寄り)設定したときのほうが照度が高くなる。それを列の中央に寄せる事により、ライト直下部の照度をより高めやすい配置となっている
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人々がくつろぐ為に要求される光の条件は、ある程度抑えられた光量と、暖色系の、広がりを持つ光である。それを考えてか、できるだけウォームライトが広がるよう、LEDは外側に配置されている
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2色のLEDの光量を別々に調節し、色温度をコントロールする仕組みである。最大時、1,240ルクスをほこる照度を確保するために、20個全てのLEDが点灯する。50%ぐらいまでは全てのLEDが点灯し、両色のバランスを変えて色温度をコントロールする。従って50%程度の調光までは、劇的な色温度は望めないものの、目では、はっきりと認識できる。そして、50%以下の調光時、そのトーンが前章の画像のようにドラマチックに変化する。
この照明器具を手にした初めのうちは、その斬新な形状に目を奪われる。暫く見ているうちに気づいたのだが、よくよく見るとヒンジ部分には調整ネジがない。下の画像を見れば一目瞭然だが、こんな所にもハーマンミラーの技術力と自信が見て取れる。
この薄いブレードのどこに配線が施されているのか? この製品の名前はLeaf、“葉"である。したがって葉の葉脈を表現したかのようなデザインの中に、その配線は施されているようだ。
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ヒンジは使用していくうちに緩むもの、という常識をこの照明器具は否定しているかのよう。調整するためのネジやツマミが初めから排除されている
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ブレードにひねりが加えられ、美しい曲線表現されている。その曲線の流れの中に配線も納めてしまっている
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無機的な形状を持つアルミブレードに、有機的な葉脈を思わせる質感と形状を取り入れる事により、デザイン性と機能性の両立を図っている
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一般的に高輝度LEDは高熱を発する。LEDの周りの器具の素材も熱伝導の高いアルミニウムなので、触ったらさぞ熱いかと思いきや手で触れられる程度の温度に抑えられている。これは使用している素材と優れた熱放散設計のたまものだ。
ベースにはスイッチらしい、はっきりとした凹凸がない。リーフライト消灯時、ロゴマークを模ったメインスイッチは発光している。真っ暗い部屋にこの照明器具を設置していてもスイッチを探す事はないだろう。
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ブレードの表面に凹凸をつけることにより表面積を大きくし、熱放散の効率を上げている。ここでもデザイン性と機能性の両立を実現している
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暗闇に浮かぶメインスイッチ。消灯時もなにげに美しい
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● 消費電力はたったの9W
高輝度LEDを使用し、最大1,240ルクスの光を生み出すリーフライト。LEDとは言え、電気代もかさむかと思いきや、消費電力の平均はたったの8~9W。一般的な60Wタイプの電球型蛍光灯の消費電力が13W前後に対して、その半分程度の消費電力で倍以上の明るさを実現する。非常に省エネルギー性にも優れていると言えよう。また、LEDの寿命は6万~10万時間。24時間点けっぱなしと仮定して、約7年以上LEDの交換が必要ないのである。
また、余談になってしまうが、製品の素材は95%がリサイクル可能。そしてこの製品は37%のリサイクル素材が使用されている。製品の開発、製造、流通にまでこだわりを持つハーマンミラーならではの製品だ。
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ワット数が低い照明器具のため、ACアダプターが同梱されている。電圧もプラグもユニバーサル仕様となっている。100V~240Vに対応し、プラグ部分を差し替えが可能なため、世界中で使用することができる
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ベースの裏側のソケットにACジャックを差し込んで使用する
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この特徴を効果として取り入れる場合はむしろ面白い。しかし細かい作業をする場合は、光源と手元の距離に気をつけよう。光源と物体の距離があればあるほど、画像のような複数の影は消えて1つになってしまう事を書き記しておく
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ブレードが薄く、しかもそれぞれのブレードの長さが50cm前後ある。とても精巧なヒンジを使用している為、ブレードは望む位置で部分でピタリと止まる。しかし、ブレードの角度を変えたり、少しでも揺れる要素があると、ブレードがいつまでもビヨーンビヨーンと揺れ続けてしまう。
合計20個のLEDを使用しているという事は、光源が20個あるとも言える事だ。しかも2種類の色の違う光源を使用している。照らしだされる物体が光源に近いほど、以下の画像のように、その影はかなり特徴的となる。
● ハーマン・ミラーの哲学を感じる一品
ハーマンミラーは、アーロンチェアをこの世に送り出して「ワークチェアのあり方」に革命を起こした。今回は「照明器具のあり方」にも同じように、「哲学」と、今までにない製品を世に送り出そうとする「意気込み」が感じられる。
値段は確かに一般的な照明器具の値段と比較すると非常に高価である。しかし、室内において人が活動するさまざまな場所、さまざまな用途に対し、たった一台で応えてくれそうな照明器具である。ある時はデスクスタンドとして、ある時は間接光として、またある時はアクセントライトとして……と。
また室内を取り巻く色温度は時間と場所で大きく変わる。直射日光の入らない北向きの部屋にある寝室、仕事をする場として蛍光灯が煌々と照らしだしているオフィス、白熱灯を用いたくつろぎのリビング……求められる多様な“光の質”を指一本で作り出してしまえる“Leaf Light”。使えば使うほど、その価値と持つ喜びを味わえる照明器具である。
■URL
ハーマンミラージャパン株式会社
http://www.hermanmiller.co.jp/
製品情報
http://www.hermanmiller.co.jp/product/leaf_light.html
リーフライトスペシャルサイト
http://www.leaflight.info/slideshow/slideshow.asp#touch
イヴ・べアール(英語)
http://www.fuseproject.com/
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