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大河原克行の「白物家電 業界展望」
2007年エアコン市場分析

~エアコンに見られる3つの大きな潮流とは?
Reported by 大河原 克行

 2007年は、家電メーカー各社のエアコン事業にとって、「当たり年」の最終年に突入することになる。

 2006年後半から今年にかけて、各社から発売された新製品は、当たり年最終年度に向けた戦略的商品ともいえ、各社とも、知恵を絞った製品が相次いでいる。2007年のエアコン市場はどうなるのだろうか。


2007年度は当たり年の最終年度

 なぜ、2007年はエアコン当たり年の最終年度なのか。まず、その点から検証してみたい。

 一般的にエアコンは平均寿命は11年といわれている。ここから逆算すると、11年前の'96年に購入されたエアコンが、2007年にはちょうど買い換え時期に当たってくる。


ここ数年は、白物家電に個人消費が集中した'94年~'96年の製品の買い換え時期に当たり、2007年がその最後の年となる(資料:シャープ)
 実は、'94年から'96年は、白物家電に個人消費が集中した時期でもあった。

 '94年から'96年は連続して猛暑が続いた影響で、エアコンの販売台数が急増。'93年には508万台に留まっていたエアコンの販売台数が、'94年には一気に732万台に増加。その後も増加傾向を続け、この3年間で2,356万台ものエアコンが販売されたのである。

 また、'97年4月から消費税率が3%から5%へと引き上げられたことで、'96年後半から'97年3月にかけて、新税率実施前の駆け込み需要が集中。これもエアコン需要を後押しすることにつながった。

 こうした過去の大型需要を背景に、ここ数年は、エアコン買い換え需要の当たり年となっていたのだ。

 先頃、社団法人日本冷凍空調工業会が発表した2006年の家庭用エアコンの出荷台数は、前年比0.5%増の752万394台となっている。7月後半から需要が回復し、第3四半期(7~9月)は出荷台数が前年実績を上回ったが、最大の需要期である第2四半期(4~6月)が前年割れとなったことが、前年並みの実績となった要因だ。だが、それでも、2004年の693万台、2005年の748万台と、2年間に渡って、市場が大きく拡大してきたなかで、前年並みという実績は評価できるものだ。

 エアコンの需要は、気候に大きく左右されるという要素が大きいが、2007年は、当たり年の最終年度として、2006年と同等規模の市場が見込まれるといってもいいだろう。

 エアコンリサイクル料金が、回収された資源の価格上昇により、軒並み525円安くなることも、わずかばかりの追い風になるかもしれない。


生活様式の変化で大型化が進む

新築マンションや新築一戸建てのリビングスペースが拡大し、エアコンの高出力化が進んでいる(資料:シャープ)
 こうしたなか、現在のエアコンには、大きく3つの潮流があるといえるだろう。

 1つは、ここ数年増加している大型化の流れである。

 それは日本人の生活様式の変化に準じたものともいえる。

 現在、エアコンの主流となっているのは、4.0kw以上の能力を持った大型タイプだ。一般的には14畳以上と呼ばれるクラスだが、調査によると、4.0kw以上が全出荷台数の46%を占めるところにまで拡大しているのである。こうした大型製品の出荷比率は年々増加傾向にあり、数年後には過半数に達する可能性も指摘されている。

 これは、新築マンションや新築一戸建てのリビングスペースが拡大。リビングを14畳以上とする新築物件が、実に全体の99%を占めるといった驚くべき数字となっている。オープンキッチンタイプの増加もリビングの広がりに直結している。エアコンを最初に設置するのはリビングが多い。当然、これにあわせて、エアコンそのものの需要が高出力化しているのである。


クリーンに対する要求が進展

利用者の不満には、エアコンの手入れが上位に挙がっており、ユーザーの清潔志向の高さがうかがえる(資料:松下電器)
 2つめには、クリーンに対する関心の高まりである。

 シャープの調べによると、エアコンに対して最も多い不満が、「エアコンのお手入れが面倒」というもの。2位は、「電気代が高い」となっている。また、日立アプライアンスの調べによると、エアコンで解決してほしいニーズは、「省エネ」が1位となっているが、2位には「内部の汚れ」が入り、そのほか、「フィルター掃除」、「空気の汚れ」などが入っている。

 日立アプライアンスでは、「夏の調査では冷房電気代、冬の調査では暖房電気代がそれぞれ最大の不満点としてあがっており、電気代を節約したいといったニーズは、長年に渡って普遍的なものだといえる。だが、その一方で、ここ数年、急速な勢いで高まってきているのが、クリーンに対する要求だ」と説明する。

 昨年、フィルターのお掃除機能を搭載した製品が高い人気を博したのも、クリーンという観点からのニーズであるのは明らかだ。今年は、お掃除機能に加えて、ステンレスやメタルコーティングの採用といった素材面からの見直しも進んでおり、「汚れをとる」から「汚さない」といった考え方へと変わりつつある。


日立の「白くまくん Sシリーズ」では、内部の汚れやすい部分の素材にステンレスを採用することで、汚れやカビを防ぐ構造となっている フィルターを自動で掃除する「お掃除ロボット」機能を備えたナショナル「CS-X」シリーズ。約10年間の手入れが不要になるという。

 さらに、今年の場合は、「クリーン」という観点が進化し、ホコリやカビ菌、雑菌などを除去するといった、いわば「空質」に関する機能にも注目が集まっているのだ。

 2003年のSARSウイルス、2004年の鳥インフルエンザ、2005年のインフルエンザの流行に続き、2006年はノロウイルスが蔓延、こうした菌への対策は、いまやエアコンにも求められる要素となっているのだ。

 各社から発売される高機能エアコンには、空気清浄機並みの機能を搭載したものも登場しており、これらの機能は、今後の焦点となりそうだ。

 さらに臭いへの対策も大きなポイントとなっている。一部調査によると、ペットブームと少子化の影響で、家庭内には、子供の数よりも、ペットの数が多いという現象が起きている。ペットの臭いをどうするかといったことも、家庭における課題の1つとなっており、それを証明するように、消臭剤、脱臭剤の市場は、年々拡大傾向にあるという。

 こうした空質を改善するために、最新のエアコンには、イオンやミストといった技術が採用されており、いまや、空質という観点からの差別化もエアコンには重要な要素となっているのだ。


日立「白くまくん Xシリーズ」では、イオンを含んだミストを放出し、ウィルス、カビ菌などを除菌するほか、室内のにおいも脱臭する機能を備えている 三菱電機「霧ヶ峰 ZWシリーズ」では、本体内部にオゾンを充満させることで、カビの発生を防ぐ構造を採用している

快適な空間を演出する機能にも注目

ナショナル「CS-X」シリーズは、風が直接皮膚に当たって不快に感じないよう、2枚のフラップで風向を上下に切り替える
 そして、今年に入って注目を集めているのが空気の流れを制御する「空調」である。

 松下電器の調べによると、エアコンを使用する上での不満点としては、「メンテナンスの手間」に続いて、「冷えすぎ、暖まりが悪い」という点だという。さらに、シャープの調査では、先に触れた「エアコンのお手入れが面倒」、「電気代が高い」に続き、3位~5位までに「つけっぱなしだと寝冷えする」、「温度ムラがある」、「冷房の風が直接身体にあたり寒い」という声があがっている。

 「冷気および暖気が、直接、肌にあたることがエアコンの空調の不快感につながっている」と松下電器では分析。シャープでも、これを「風ストレス」と呼び、エアコンの不快の原因だと指摘する。

 これらの改善のために、家電メーカー各社では、ロングパネルの採用や、パネルの開閉角度を大きく改善することで、冷房時には天井方向へ風を送り込み、暖房時にはしっかり抑え込んで床面まで届けることに成功。室内均一の冷房や、足下暖房といった環境を実現している。

 「目指したのは高級ホテルのロビーの空調。無風感覚、快適温度、低騒音運転を実現し、無風均一の清潔快適空間を創出することが目標」(シャープ)というわけだ。

 リビングにおいて、究極の空調を目指すことが、これから数年の各社の課題といえるかもしれない。


シャープ「SX」シリーズでは、長さ23cmのロングパネルが上下両方に開き、風を直接人体に当てない仕組みになっている 高級ホテルのロビーのような、究極の空調を目指すことが、これから数年の各社の課題だ(資料:シャープ)

 今後のエアコン各社の中期製品戦略も、そこに向けたものが中心となりそうだ。

 エアコン需要の最後の当たり年に向けて、各社のマーケティング戦略も加速することになるだろう。暖める、涼しくするというシーズンだけの商品であったエアコンが、快適な空間を演出するためのツールとして、あるいは花粉のシーズンにも威力を発揮するツールに進化したという動きは、年間を通じて商機を拡大するという意味でも、見落とせないポイントだ。

 当たり年の最終年度に突入したとはいえ、その先の需要拡大のヒントを、各社が掴み始めているとはいえまいか。先ごろ、気象庁が発表した6~8月の天気予報では、全国的に平均気温が上昇し、夏らしい夏になると見込まれている。エアコン販売にはプラス要素となるだろう。





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2007/03/12 00:00

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