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おいしいごはんの決め手は? 象印が「大火力」を追求する理由

象印と東京農業大学による共同記者説明会。おいしいごはんの決め手になるという、象印の「大火力」の秘密について語られました

私たちが日常的においしく食べているごはん。何気なくスイッチをいれて炊いている人も多いと思いますが、炊きあがりの「おいしさ」はどうやって生まれるもので、使う炊飯ジャーなどによって何が変わるのでしょうか?

象印は、20年以上にわたってごはんに関する共同研究を行なう東京農業大学と、「おいしいごはん」の実現に向けた取り組みの発表として、9月7日に記者説明会を開催しました。ごはんのおいしさに不可欠といわれる「火力」。なぜ火力が大事で、象印は理想的な火力を実現するために炊飯ジャーにどんな技術を詰め込んでいるのでしょうか。炊飯ジャー開発のキーマンに取材しました。

高い火力を維持しながら吹きこぼれを防ぐ「大火力ユニット」が重要なわけ

象印マホービン 第一事業部 宇都宮定部長

おいしいごはんを炊くためには「熱の加え方が最も重要」。30年以上も炊飯ジャー開発に情熱を傾け続けてきた、象印マホービン 第一事業部の宇都宮定部長は語ります。

熱の加え方には火力と圧力という二つの要素があります。圧力をかけると沸点が上昇し、その分だけ熱が多く加わることになります。火力については、ガスコンロの弱火/中火/強火をイメージすれば分かりやすいですが、「いかに継続的に強火を出し続けられるかがごはんのおいしさの秘訣」だと宇都宮部長は語ります。

「沸騰維持工程で、圧力も火力も高ければ高いほど良いのは分かっているのですが、それには大きな課題があります」と宇都宮部長は続けます。

その大きな課題の一つが「吹きこぼれ」です。炊飯時には、お米のデンプン質が水に溶けてネバネバした粘性のある「おねば」ができあがります。そのおねばの泡が蒸気経路を通って炊飯ジャーの外まで出ていってしまうのが吹きこぼれの原因です。昔の「かまど炊き」では土間に羽釜を置いていたため問題になりませんでしたが、現代の住宅環境では大事故に発展する可能性もあるため、吹きこぼれを起こさないよう火力の調整をしながら炊飯するというのが一般的です。

吹きこぼれが生じるメカニズム

これを抑える最も簡単な方法は火力を弱めることですが、これではおいしいごはんを炊くという目的から本末転倒です。そこで象印が開発したのが「大火力ユニット」という象印独自の特許構造です。

大火力ユニットは、上がってきた泡が小さな穴を通る際に、泡をつぶしておねばと蒸気に分離させるメカニズムです。宇都宮部長は「穴の大きさや長さ、冷える時間、泡を砕いた後に液体化したおねばを内釜に戻す還流弁など、すべて設計で網羅しています。ものすごくノウハウの詰まった設計です」と説明します。この構造により、大火力を維持しても吹きこぼれを抑え、強火を入れ続けてごはんのおいしさを引き出すことが可能になりました。

大火力ユニットの仕組み。炊飯時に出てくるおねばの泡をつぶし、蒸気だけを放出することで吹きこぼれを抑えます
【公式動画】象印独自の大火力ユニット

もう一つの課題が、甘みと弾力の両立です。宇都宮部長によれば、甘みを出すこと自体は技術的に難しいことではないといいます。酵素の活性化温度である40~50℃をキープして酵素反応を活性化させる、あるいは炊飯時間を長くして圧力をかけ続けるといった手法があります。

しかし、甘みを増やそうと加熱時間を延ばすほど、弾力が低下してしまうというトレードオフが生じます。「細かいノウハウは言えませんが、甘みを引き出しながら弾力をキープすることが、今の炊飯技術の最も重要な要素です」と宇都宮部長は語ります。

この難題を解決してきたのが、象印の技術的アプローチと東京農業大学の科学的アプローチの融合です。

「東京農業大学のおかげで安定したデータが取れるようになり、思い切った開発ができるようになりました。この東京農業大学のバックアップと、象印の技術力の融合が、今の炊飯ジャーの進化につながっています」(宇都宮部長)

手ごろな普及モデルにも研究成果がしっかり反映

象印と東京農業大学の共同研究は2005年から20年以上にわたって続いており、その研究成果は炊飯ジャーのフラッグシップモデル「炎舞炊き」から普及モデルまで全てに活かされています。

甘みを強めながら弾力性も保つという“肝”は炊飯プログラムにあり、そこは記事では紹介できない象印のノウハウが詰まっているようです。一方で、ごはんの甘みを引き出すための高い火力を実現する上で重要になるのが、先ほど紹介した「大火力ユニット」です。

フラッグシップモデル「炎舞炊き」NX-AB10型のスケルトンモデル

火力が高いと良さそうというのは、多くの人がイメージしていることだと思いますが、象印では単に高火力ということだけでなく、“高火力を維持する”ことを重要視しています。派手な機能や構造ではありませんが、この「大火力ユニット」という構造があるからこそ、吹きこぼれを恐れずに、火力に妥協することなく、大火力をかけ続けることができます。

このコア技術が、フラッグシップである「炎舞炊き」はもちろんのこと、IH炊飯ジャーのスタンダードモデル(NV-KA型)まですべてに搭載しているため、どのモデルも自信を持っておすすめできる裏付けとなっています。

フラッグシップモデルの「炎舞炊き」から、IHタイプのスタンダードモデルまで、大火力ユニットがごはんのおいしさを引き出す

ごはんをおいしくするためのデータによる可視化とは

20年以上にわたる象印と東京農業大学の共同研究ですが、それ以前の象印の炊飯ジャー開発において、味の評価は「官能テスト一辺倒だった」と宇都宮部長は振り返ります。官能テストとは実際に人が食べて評価する手法のことです。

「意見がそろう時は簡単に方向性も決まるのですが、意見の相違があった時にはどの方向に向かっていけばいいのか分からないという状況に陥っていました。官能テストは非常にアナログで感性的なため、官能テストをなんとか数値化、定量化できないかと考えて第三者機関を探していました。そこで米の研究の権威である東京農業大学に相談して今に至ります」(宇都宮部長)

宇都宮部長は当時の判断について次のように語りました。

「当時の学術文献では、ごはんの評価をする上で物性値(食感)が70%、科学的な部分が20%、外観やにおいがそれぞれ5%程度と、物性値がごはんのおいしさの判断基準として大きかったのです。そのため、まず物性値を安定的にデータとして取れなければ、今後の炊飯ジャーの開発はないと考えました」

米飯の物性特性の重要性

東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科の辻井良政教授は、米飯のおいしさを数値化する上で大事なのは、食感に影響を及ぼすかたさ、粘り、弾力、付着性といった物性の計測による見える化であると説明します。「数値化することでおいしさの指標になります。品種改良や品質管理などを行なう上でも物性値を評価することが重要です」(辻井教授)

東京農業大学 応用生物科学部 農芸化学科の辻井良政教授

「炊飯性能に完成はない」さらなるおいしさ追求へ

宇都宮部長は「フラッグシップの『炎舞炊き』からエントリーモデルまで多様な炊飯ジャーを開発していますが、そのベースには自社の技術力と東京農業大学の科学力の融合があり、それが全ての商品に寄与していると感じています」と語ります。

「米文化の継承と発展のためにはおいしさの提供が不可欠」と語る辻井教授と、「炊飯性能やごはんのおいしさの追求に終わりはありません。これからもおいしいごはんを届けていく」と語る宇都宮部長。より詳細で化学的な検証と、それをもとにした新しい技術の開発というサイクルを可能にする両者のタッグによって、これからもごはんのおいしさがさらに際立っていくことが期待できそうです。

(提供:象印マホービン)